あたしは魔法を愛さない。   作:殊羽

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事の始まり

現実には、本当に非日常的というか不可解な現象というか・・・・・兎に角、そういうものがあるのだと、あたしは中学卒業間際の時期になってから知った。

 

 

今日(こんにち)、日本では魔法界関与規制を解除し、日本人であろうと、魔法の才能があれば魔法・・・・・魔術を学ぶ学校に呼ばれるようになった。

魔法界関与規制とは、日本人の血を引いているのなら、ハーフであろうとクォーターであろうと魔法界への関与を禁ずる法律だ。間違っても魔法界に関与しようとすれば魔法界関与取締係に捕縛され、記憶を消されてしまう。

イギリスなんかは何とかして規制をかいくぐって魔法の才能がある子供を救い出そうとしてくれていたようだが、そこはうちの国が優秀だったのか防がれたし、魔法界に関わっている者が入れない防壁(この国では結界という)を張られてしまったようである。すべては各方面に顔の広い祖母から聞いた話だが。

兎にも角にも、その影の法律が撤廃されて、日本人でもホグワーツなどの魔法魔術学校に行けるようになったのだ。

 

 

あたしはもうすぐ中学を卒業する。高校受験という陰鬱だが自らが進みたい夢の為には通らなければならない儀式が無事受かって不安なことはなんにもないのだ、部活はどこに入ろうか、等と呑気に考えていたのだ。いられたのだ。

あの日が訪れるまでは。

日本国民にテレビで首相から、魔法界の事について、この国の影の法律について聞かされる、知らされるその時までは。

あたしは中学卒業間際(早生まれなので14歳だ)。新入生として呼ばれるらしいが普通、ホグワーツに呼ばれるようになるのは11歳。つまり年下と共に学ばなければならない。

正直、あたしは苦労して受かった高校に行かず、呼ばれたホグワーツという外国にある知らない学校に行くなんて嫌だ。

しかし国の公認で各小学校高学年中学校高等学校で才能を見極め、組み分けをするのだという。選ばれた人はホグワーツへと行く。

つまり、拒否権は無いわけだ。今日がその日である。

 

 

 

「えぇー、みなさんもご存知の通り、この中にね、魔法の才能がある子がいるかもしれない、とのことでね、今から検査するそうですよ。では、体育館に行きましょうか。全校生徒をまとめて調べるということなのでね。」

おじぃちゃんで穏やかなちょっと癖のある喋り方をする担任の声すらも今のあたしには耳障りすぎる。

ワクワクしているクラスメイトもだ。どうして苦労して受かった学校に行かずにホグワーツに行きたいと思うのか理解ができない。そんなことを思いながら廊下で並んでいると見慣れた顔があたしの顔を覗き込んでいた。

「浮かない顔だねお前は」

「・・・・・何の用なのゆーすけ」

コイツは祐介。幼馴染み。家がお隣の、小さい頃からの仲良し。

「いや・・・・・何か思うところでもあるのかと思ってさ。幼馴染みだし俺になら話せるでしょう?話して欲しいな」

・・・・・確かにずっと一緒だったコイツになら愚痴ってもいいかも知れない。

「・・・・・ゆーすけ、あたしね「おーい、祐介ー!!」いや、行っていい。気にしないで。」

「・・・・・なんて間が悪いんだろうねアイツは。ごめん、後で聞かせて」

そういって祐介は友達のところへ行った。行けと言ったのはあたしだが複雑な気持ちだ。昔はあたしを、あたしの方を優先してくれたのに。もう中学生とか高校生になると昔の時のようには振る舞えないのだろうか。

 

 

体育館に集まり集合して、整列する時間が遅いといういつものお叱りを受け、校長がお話をして、その後ホグワーツのダンブルドア校長とマクゴナガル教授を紹介した。どうやらこの人達がこの学校での検査を担当するようだ。

2人の間には椅子。その椅子の上には、いかにも魔法使いが被りそうな帽子がある。

暫くすると帽子が歌を歌い始めた。

だが英語で、どういう意味なのか分からない。

せめて日本語で歌って欲しかった。

帽子が歌い終わった後、マクゴナガル教授が紙をもって私達に向き直った。

「では、名前を呼ばれた人はこの椅子に座りなさい。石田知樹!」

マクゴナガル教授に名前を呼ばれた人が椅子に座る。

帽子をかぶせられる。だが反応しない。

「・・・・・貴方には才能はないようです。戻ってもよろしいですよ。影方翔!」

 

 

もうすぐであたしの番だ。

魔法の才能がある子はまだ一人だけしか発見されていない。いや、魔法使いがそんなにうじゃうじゃいたらびっくりするが、前に1人(しかも1年生)だけ居るというのは恥ずかしいだろうし居づらいだろう。

「・・・・・能木すせり!」

あぁ、呼ばれてしまった。

逃げられないので前に行き椅子に座る。被せられる組み分け帽子。

被せられた瞬間、組み分け帽子が喋った。

『うぅん、この子は才能に満ち溢れとる。要領もいいし、優しさや正義感、そして、普段は理性で押さえつけとる、破壊衝動といえばいいものか・・・・・危うい感情がある。難しいぞ・・・・・』

(組み分け帽子って案外渋い声なのね・・・・・。)

組み分け帽子はひとしきり唸って悩んでいる。明らかに前の人の比じゃないくらいに長い時間をかけているあたしに全校生徒の目が突き刺さる。居づらい。

(もうなんでもいいから早く決めてくれないかな・・・・・出来れば平和に過ごせるところがいいけど)

そんなことを考えているといつの間にか帽子が唸るのをやめていた。

『よし、決めたぞ。・・・・・グリフィンドール!!』

高らかに声を上げた帽子を取って椅子から立ち上がる。ダンブルドア校長があたしにおめでとう、と言い抱き締めてくる。

壇上に上がるとあたしよりも前に呼ばれた1年生が嬉しそうに私に近寄ってくる。

「あぁ、良かった!ずっとずっとこのまま1人で壇上にいなければならないのかと思ってたっす!先輩が来てくれてよかったー!」

やはりか。そりゃあそうだろう、一人しか選ばれてなかったのだから。しかも2年生からは誰1人として選ばれていない。

「えぇ、居づらかったでしょう、一人で好奇の視線独り占めだもの。まぁ、2人でも居づらさは余り変わらないでしょうねぇ。」

「でも、1人より、2人っすよ!」

「まぁそうかもしれないけど・・・・・どうやら3人に増えるみたいよ。」

今しがた検査・・・・・もとい組み分けを終えたもう1人が壇上に上がってくる。

「ゆーすけ」

「よ、なんとかグリフィンドールだったよ。お前と同じになれてよかった」

「えぇー!先輩達グリフィンドールなんすかー!?僕、レイブンクローっすよー!!寂しいっす!!」

「これ以上は増えなさそうだから、諦めなさい。」

組み分けはいつの間にか終わっていて、結局3人だけが選ばれたようである。

ゆーすけは私に笑いかけながら、後輩君はワクワクしながら、新しい土地での生活を夢見ているのだろう。だが私は、そうではない。どちらかといえば、この運命に対する嫌悪感しかない。

(・・・・・嫌だなぁ、どうして人の進もうとしていた道を容赦なく塞ぐのだろう。

あたしはこんな力要らなかったのに。あたしはこの力を自覚した時から、こんな力、大嫌いなのに。)

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