あたしは魔法を愛さない。   作:殊羽

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1章3話

「・・・・・り・・・・・すせり・・・・・すせり、起きて」

誰かに揺さぶられている。眠いし疲れてるからやめてほしい。

「すせり!」

大きな声で名前を呼ばれてようやく起きる。目の前にゆーすけの顔があり驚く。

(そうか、さっきの声はゆーすけの声かぁ・・・・・よかった)

「ごめん、御早うゆーすけ。起こすの大変だったでしょう?」

「御早う。そこまで大変じゃあないよ、すせりだもの」

それよりも早く行かないと、と言われてここが飛行機の中だと思い出す。随分と寝てしまったようだ。

飛行機を降りると浩二君が待ってくれていた。

「もー!すー先輩ってば遅いっすよー!待ちくたびれたっす!」

「ごめんね。・・・・・でもなんでその呼び名を知っているの」

『すー』と呼ばれていたのは小学校低学年までだ。そこからは皆羞恥心やらを覚え始めたのか呼ばれなくなっていたのに。

「あぁ、俺が教えたんだよ」

「お前かふざけんな」

「なんでそんなに嫌がるの?可愛い呼び名なのに」

『すー』なんてもう久しく呼ばれてない呼び名を使われても違和感しかない。それに正直恥ずかしいし、私には合わない。

なのに浩二くんは気に入ったのか『すー』と呼ぶようである。というかうるうるの上目遣いで「だめっすか・・・・・?」と言われたら断れないしなにそれ天然でやるのずるい。そのかわりゆーすけを後でシメる。

 

 

「確かここから列車に乗るんだよね。」

ホグワーツに行く道のりはダンブルドア校長先生から聞いている。そうでないとイギリスなんて来たことがないから右も左もわからない。

私達は駅のホームで、自分達が乗る列車の番線を確認するためにチケットを取り出した。

「えぇっと・・・・・9と3/4番線から行くみたいっすね!でも、そんな番線あるんっすか?聞いたことないっすけど」

「あるよ。10番線に行こう」

「すー、行き方知っているの?」

「本で読んだ」

9と3/4番線は9番線と10番線との間の柱から行ける。人に見られたらアウトな場所に道を作ったなと最初に聞いた時に思った。どうせ対策はしてるんだろうけど、一応人が見ていないタイミングで入ろうということになった。

まずはゆーすけが入った。その次に浩二君。そして私。

柱を抜けた先は普通の駅のホームと変わらない、だけどここにいる殆どの人間は魔法使いで、私達もその端くれなのだ。

 

 

 

汽車に乗ってまずはローブに着替えた。ギリギリになって慌てて着替えるのも面倒くさいからだ。

3人で席に座り、遅すぎて最早昼食とも呼べる朝食を食べる事にした。因みにお弁当を持ってくるのは私の役目になっている。風呂敷に包んだお弁当を簡易的なテーブル(これはゆーすけが持ってきた)に置く。

「あっ、すー先輩手作りっすか?」

「まぁね・・・・・」

「すっごいなぁ!俺なんか不器用過ぎて料理どころか理科の実験なんかも失敗するんっすよー!」

「あはは、それはもう一種の才能だね」

まぁ、人間向き不向きがある。私の場合、料理に関してはそういうのを考える前に強制されていたからなんとも言えないのだが、喜んでくれるならいいか。

ご飯を食べて、暫くすると女の子と男の子が訪ねてきた。

気の強そうな可愛い顔立ちとウェーブのかかった長い髪の毛が特徴的な女の子とぽっちゃりしてて、おどおどしてはいるが心の優しそうな男の子だ。正直アンバランス過ぎる組み合わせだと思う。

「ねぇ、ネビルのカエルを見なかった?ヒキガエルなんだけど・・・・・」

「知らないよ。それに、まずは名乗ったらどうなんだい」

ゆーすけは礼儀を大事にする。だから名乗らずに要件を先に言った女の子に憤りを感じているのだろう。正直、私もどうかと思ったし浩二君も眉をひそめている。

「っ!ご、ごめんなさい。私はハーマイオニー・グレンジャー。そっちの子はネビル・ロングボトムって言うの」

ゆーすけは怒ると目つきが鋭くなって怖い。だからかグレンジャーさんはちょっと吃驚しながら自己紹介をした。

「初めまして、能木すせりと言います」

「初めまして、尾上祐介です」

「は、初めまして!陽山浩二っす!」

グレンジャーさんが名乗ると私達も順々に名乗る。

(ん・・・・・?ロングボトム・・・・・もしかして)

「もしかして君、ロングボトム家の御子息ですか?」

「えっ・・・・・う、うん・・・・・」

ロングボトム家は聖28一族の中の血筋の一つだ。

聖28一族とは間違いなく純血の血筋と認定されたイギリスの一族の事だ。つまり貴族。

まさかこんな早くにお目にかかるとは思わなかったが、もしかしてホグワーツにはそういうのがうじゃうじゃいるのだろうか。更に行きたく無くなってくる。

「あ、あの・・・・・あんまり僕純血っぽくないし、凄いわけじゃないから・・・・・」

「でも俺たち自分が純血かどうかも分からなくなってるから羨ましいっすよ〜!」

「そ、そっか・・・・・えへへ」

「そういうのどうでもいいから。カエル探しだっけ?頑張ってね」

折角ちょっと和やかな雰囲気になっていたのにゆーすけは不機嫌なのか2人を追い出そうとしている。その態度にロングボトム家の御子息は今にも泣き出しそうだし、グレンジャーさんは表情がどんどん険しくなる。まずい、列車の中で騒ぎを起こすわけにはいかない。

「ええっと・・・・・私達はヒキガエル見てませんけど、他の子なら見ているかも知れません。それに、使い魔ならばいずれ自らの元に戻ってくるのでは?」

「そうだね・・・・・ありがとう。ごめんね、お邪魔しちゃって・・・・・」

「ほんと「大丈夫っすよ!困った時はお互い様っす!!」・・・・・」

浩二君ナイスフォロー。それにしてもゆーすけは何故こんなに苛立っているのか。

怒りが収まらないのか、未だゆーすけを睨んでいるグレンジャーさんに耳打ちをする。

「グレンジャーさん、すいません。彼にはキツく言っておきますから」

「・・・・・えぇ、ありがとう。ごめんなさいね気を使わせてしまって。それにしても貴方とは気が合いそうだわ、時間があったらまたお話しましょう?」

「こちらの落ち度ですからお気になさらず。ふふ、私もお話したいと思っていました、是非。」

どうやら怒りは収まったようだ。グレンジャーさんは嬉しそうにあたしに微笑んだ後、ゆーすけを睨んで去っていった。ロングボトム家の御子息もその後をついていく。他の子たちにも聞きに行くのだろう。

なぜ初っ端からこんなトラブルがあるんだ。

(落ち着いたし取り敢えず)

ドゴッ!!

「いっったぁ!!!」

もう1発くらいかましてやろうとするが浩二くんに止められた。ちっ。

「いや、舌打ちしたよね今!?すーってば酷くない!?何もしてないじゃん!!」

「えっいや、したっすよね!?さっき殴られるような事したっすよね!?自覚なし!?」

どうやらゆーすけは自分がトラブルを起こしかけた自覚がなかったようである。その様子に浩二くんも呆れていた。あたしは怒りがまたふつふつと込み上げてきた。なぜあたしがイライラしなければいけないのだ。

「やっぱりもう1発・・・・・」

「すー先輩!気持ちはわかるっすけど抑えてっすー!!」

この後結局もう一回殴ってゆーすけを叱ったが反省の兆しが見えず、浩二君と共に頭を抱えた。

何がそんなに気に入らないんだこの子は・・・・・。

そんなことがありながらも列車は無事にホグワーツへと着いた。

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