列車を降りると沢山の生徒、それからその先に手を振っている大柄の男性が見えた。
「わぁ、アレ何?人間?」
「ハグリッドね、ホグワーツの鍵と領地の番人よ。昔は生徒だったらしいのだけど、在学中に不祥事を起こして退学。今の校長であり当時変身術の先生であったダンブルドアが引き戻して職を与えたそうよ。」
ゆーすけの問いに本とその他諸々から得た知識を教える。すると、ゆーすけはあからさまに顔を嫌悪感で歪めた。
「いや、問題起こした元生徒を何故校長先生は呼び戻したんだい、危ないじゃないか」
それについては同感だ。しかも折られた杖を使っているらしいので、魔法の逆噴射での大惨事を引き起こす可能性だってあるのだ。自ら危険に突っ込むような変人でもないので、ハグリッドとはあまり関わりたくないと思っている。
ハグリッドはちょっと訛りのある英語で「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!」と叫んでいる。
ハグリッドの後をついていくと、明らかに舗装などされていない細い道が現れた。
「え、これを進むんっすか」
と、引き気味に言ったのは浩二君だったか。確かに暗くて足場が見えないし木が邪魔だし泥は跳ねてローブにつくし異様に長い。
・・・・・終わりが見えない。
仕方がないので暗すぎるのをどうにかしようと「ルーモス」と唱えた。杖の先が光り、周りが明るくなった。これで多少は進みやすくなっただろう。私の周りの子もホッとした顔をしている。
「あぁ、そんな便利な呪文あるんだ。俺もできるかな?」
「いや、それよりも習っていないはずの呪文をなんで使えるかってところを突っ込むべきっすよ。」
ようやく抜けるとホグワーツの幻想的な光景が目に入った。
殆どの生徒は感嘆の溜息を吐き、これからの学校生活に夢を見るんだろう。周りの人達には悪いが正直、ここに来たくなかった私はあまり感動出来ていない。
この湖を越えてホグワーツ城へと行くらしいのだが、どうやら4.5人でボートに乗るらしい。勿論ゆーすけと浩二君から離れるつもりは無い。だって知らない土地でぼっちは怖い。
最終的には私達のボートには癖っ毛なのか跳ねまくっている黒髪に多少濁ったエメラルドの瞳の男の子が一緒に乗っている。
その黒髪の少年はおどおどしながらも私達に話しかけてきた。
「初めまして。凄いね、ホグワーツって。」
「初めまして。そうですね、これからの生活が楽しみになるくらいです。そういえば貴方の名前は何ていうのですか?」
「・・・・・ハリー・ポッター。同い年なんだから敬語なんていいよ。」
まるで言いたくないとでもいうように少年は自分の名前を言った。
ハリー・ポッターといえば、魔法界では有名も有名な人物だ。まさかこんなに早くに出会うとは。あれ?これ列車の中でも思ったことでは?
「そう、ハリー・ポッターっていうの。私は能木すせり、そっちの背が高くて髪の毛が長い男の子が私の幼馴染の尾上祐介、そっちの背が小さくて可愛らしい男の子が陽山浩二君よ。」
ハリー・ポッターは私の反応に少し驚きながら「僕のこと知らないの?」と聞いてきた。
「知ってるわ」
「知ってるのにその反応なの?・・・・・いや、嬉しいんだけどさ。どうしてなのかなって思って」
「だって貴方は例のあの人と出会って殺されかけたのはまだ赤ちゃんの時でしょう?何も覚えていないはずよ。私だったら記憶にない事を勝手に偉業にされて、不特定多数の、それこそ本当に自分の事を知らない人間に自分の名前を呼ばれるなんて自分を見られてないみたいで嫌だと思ったんだもの。」
私がそう言うと、ハリー・ポッターは嬉しそうに目を輝かせた。
「まさか、そこまで分かってくれる人がいるなんて思いもしなかったよ!えっと、スセリって呼んでもいいかな・・・・・?」
「いいよ。私も貴方のことハリー・ポッターではなくハリーと呼んでもいいかしら。」
「もちろんだよ!これからよろしくね!」
少し濁った目を輝かせながら手をぶんぶん握ってくる彼が不覚にも可愛いと思ってしまった。
私達は組み分けに参加しない。日本でもう済ませてしまったからだ。他の1年生は別室で待機するのでハリーとはここでお別れだ。ちょっとだけ不安そうな顔をしながらハリーがこちらへ顔を向ける。
・・・・・少し弟が出来た気分だ。
「ハリー、ちょっとこっちへ来て。」
ハリーは呼ばれると私達のところへ来た。やはり不安そうだ。
「どうしたの?」
「さっき道でローブが汚れたでしょう、ついでに綺麗にしようと思って。『スコージファイ』」
呪文を唱えるとハリー、浩二君、ゆーすけ、そして私のローブが新品のように(実際新品なのだが)綺麗になった。
「わぁ・・・・・凄いね、もう呪文が使えるんだ!ありがとうスセリ!」
「どういたしまして。それから、組み分けは案外怖いものでもないけれど、良い気分のするものでもないわ。まぁ、今は深く考えずに皆と行ってらっしゃい。因みに私とゆーすけはグリフィンドール、浩二君はレイブンクローよ。」
ハリーと別れた後、マクゴナガル教授が私達を食堂に案内してくださった。今度は浩史君が不安そうだ。それもそのはず、私たち3人の中で1人だけレイブンクローなのだ。しかもあの、いじめが横行している寮だ。
浩二君にあらかじめ伝えておいたのが間違いだったのか余計に不安になっている。というより、怖がっている。
しかも1年生の癖に上級生たちと共に椅子に座っているので好奇の目が凄いのだ。一人だとさぞ心細かろう。私の場合、ゆーすけが隣にいるからまだマシだが。
私達(主に浩二君)の精神のためにも早く組み分けを始めてほしい。
ちなみにこの作品のハリーは、原作よりもダーズリー家で酷い扱いを受けていたので人間不信気味です。