アイツは頼ることを知らない。
知らないというのは少し違うかもしれない。
アイツは困っている奴等がいたらいの一番に駆けつけ、自分を頼ってもらう。だが、自分自身が頼ってもらうことはない。だから俺はもしアイツに何かあって頼られるようなことがあれば、誰よりも最初に駆けつけ終わったらこう言うんだ。親友だろ
これはいつしか坂本雄二が言っていた台詞だ。
僕はいつも皆に、雄二に頼ってばかりなんだ。だから、何か会ったときは必ず言ってね、
これは明久が私に言ってくれたことだ。
だから私は二人とは違って見守ろうと思う。
でも、もし明久に頼ってもらったなら私はいの一番に力を貸そうと思っています。
弟が言っていた。明久はケリをつけに行くと
「明久はどうしてあんな奴ら気にかけるんだ?」
「今更ね、お人好しだからに決まってるじゃない」
あれはお人好しってだけじゃ収まらない、納得がいかないと大川君があれやこれや呟いている。
「大川、恋は難しいの」
そこへ納得のいかない大川に代表が声をかける
「恋?あれがか?」
「恋は時に人をどこまでも変える…恐ろしくも美しくも」
「どこか得意気だね代表」
「経験談だから…」
「はは…何か少しゾッとしたよ」
どこかの学園長室でくしゃみが聞こえた気がしたけど気のせいのようだ。
「優子、ここは私がやっとく」
「大丈夫だよ代表、あと少しだし」
「吉井、」「え、」
「心配なんでしょ?」
何というか反論するのもこのAクラスだと今更な気がするので少しだけ諭されるのは悔しいけどご好意に甘えることにし、教室をでた。
「乙女だね~」
「あんな木下さんみると少しからかいたくなる」
「あら、久保君でもそう思うんだ」
「変かな?まあ、でもその倍吉井君もからかいがいがあるけどね」
「それは分かる気がするよ」
「それは愛子もでしょ??」
「え、な、なんで」
「だって最近の愛子も乙女…」
「な、そんなことないよ~?」
「乙女だね~」
「大川君?うるさいよ?」
「秀吉、大丈夫だった?」
最初に見つけたのは弟の秀吉だった。
「まあのう、何とか…」
秀吉の少しやりきれないような顔を見ると、大方多分私の思った通りだったのだと思う。
「明久は…あれからちっとも変わっとらんのじゃな」
「そうね、」
「変わろうとしているのもなんとなくのう」
明久が家に初めて来たのは何の前触れもなく、突然のことだった。同じような背丈の子で直ぐに同年代であることはわかったけど、住んでる世界が違ったのだと幼いながら分かったのも直ぐだった。
何故こんなことを突然思い出したのかと言うと、
土屋君と明久が戻ってきたときに見せた彼の相づちのような挨拶は
「…大丈夫だよ」
初めて会って挨拶を交わした幼いながらも気を使い微笑んだあの頃の顔そっくりだったから、
大丈夫とは言わんばかりのその表情はとても静かで寂しさを覚えるものであった。
そしてこの後、明久が話してくれた昔の姫路さんや島田さんのこと、明久の声が震えている気がした、私は何も言わず黙って話が終わるのを待った。