「んー……やっぱりジハードに格闘家としての才能はないわね」
「それでも……自力で竜化も出来なければ固有能力も封じられた私が、緊急事態にあおいたちを守るには、この小さな体だけで闘う力が必要なんです」
「キールとリールならともかく、あおいを守らないといけないような状況は素直に諦めた方がいい気がするけど」
「……ひ、必要なんです!」
「だったら、やっぱりブラックドラゴンの本能に頼ったほうがいい気がするけどね。封印されててもその本能の牙は数多あるドラゴン族の中で圧倒的だし」
「それをしたくないから、こうして、ミネア姉さんにお願いしてるんじゃないですか……」
昼下りの時間帯。組み手に勤しむ二匹のドラゴン娘達を見学しながら、あたしは手にした湯呑を傾けてお茶をすする。
縁側って言うんだっけ? ここに座ってると妙に落ち着くというか、陽の光がいい感じにあたってゆったりとした気持ちになる。
眺めてる二人はゆったりとは程遠い様子なんだけどね。
「ジハードさんも頑張りますね。ミネアさん相手にあれだけ粘れるなんて」
「よく知らないんだけど…………ミネアさんってそんなに強いんですか?」
あたしの隣で。同じように湯飲みを傾けているルナさんにあたしは聞く。
ドラゴンとして戦ってるのは何度か見てるけど人化してる格闘家のミネアさんがどれくらい強いのかっていまいち分からないんだよね。
こうして組手を見る限り高度なことをしてるのは何となく分かるんだけど、それがどれくらい高度な事かは中級冒険者程度の魔法使いであるあたしには分からない。
「それはもう。上位ドラゴンとしてステータス的な差ももちろんあるでしょうが、それを差し引いても、武器持って暴れる冒険者を無傷で簡単に取り押さえたりしてますからね」
「それは…………確かに凄いですね」
紅魔の里に来れるような冒険者だ。その多くは魔王軍との戦争中にその前線で戦えるような実力者になる。
以前にダストからミネアさんは人の身体で戦うことになれてないようなことを聞いてたけど、今は大分なれてるって事かな? ルナさんの話が本当なら人の姿でもかなり強そうだ。
「まぁ、最年少ドラゴンナイトさんの相棒ですからね。あれに合わせてたら自然とそうなるんじゃないですか?」
「それにしてもあいつの周りは凄い人ばっかりな気がするけど……」
ルナさんの言いたいことも分かるけどそれだけで説明がつかないような……。
(…………、でも、ゆんゆんは確かにそうあろうとしたから凄くなったんだよね)
それに、ジハードちゃんもダストがいなければその固有能力を十全に発揮できないらしいし。ロリーサもダストと真名契約したことで今の力を手に入れた。
全部が全部って訳じゃないけど、あいつの影響は思った以上に大きいのかもしれない。
「確かに。あっちの方はそういう問題以前の話ですしね」
「あー…………まぁ、あおいは特にねぇ……」
家の中に目を向ければ、そこには魔法の勉強をしているあおいがいる。
「レイン、『ライトニングブレア』のエイショーってこれでいーの?」
「ええっと…………はい。合ってますよ」
内容はスキルシステムを使わない魔法…………今は最上級の属性魔法を勉強しているらしい。
そして、その教師は出会った頃より少し若く見えるレインさんだ。
「じゃあ、ここをこーするとどうなるの?」
「威力は上がるけど制御が難しくなる改変ですね。この後実践しますけど、これはもっと慣れてからしましょう」
「えー……でも、こっちのほうがかっこいいよ?」
「かっこよさで暴発したら死にかける魔法の詠唱を改変しないでください……」
「あおいはあれだから置いとくにしてもレインさんも凄いですよね。地獄でルナさんみたいに若返って、そして地獄で長い時間をかけてスキルを使わずに魔法を覚えなおしたって」
「私の時より若く若返ったらしいですし、多分ほとんどのスキルと魔法を使えなくなったはずですからね。それが今では以前以上に魔法を使えるようになってるという話ですから…………かなり頑張られたんでしょう」
ルナさんやレインさんが行った若返り。それは悪魔に経験を喰らわれることによる副産物だ。レベルドレインやレベルリセットポーションでレベルが1に戻るのとは違い、スキルや魔法を主として、文字通りの経験をなくすらしい。
それを利用してレインさんはスキルシステムなしで様々な魔法を使えるように勉強・研究したらしい。バニルさんやリリスさん、アリスさんと言った存在の助力があったとはいえ、今の時代にスキルシステムなしで魔法を覚えるのは並大抵の事じゃない。その上で使える魔法の種類で言えば紅魔族の平均を超えているんだから偉業と言っていいと思う。
この間、もうあおいに教えられる魔法が後少ししかないとか言って遠い目をしてたけどそれはそれ。
普通の魔法使い代表としてあたしはレインさんのことを本当に尊敬している。
「でも、レインさんも凄くなっちゃうとあたしの周りにいる普通の人がフィーしかいないんですよね……」
「えっと…………それ言外に私も普通じゃないと言ってませんか?」
「…………。そう言えば、ルナさんもミネアさんもここにいてギルドは大丈夫なんですか?」
「え? なんですかそのあからさまな誤魔化し。私普通ですよね?」
「…………。そう言えば、ルナさんもミネアさんもここにいるってことは受付嬢いませんよね? ギルドは大丈夫なんですか?」
「泣きますよ!?」
いや……いろんな意味でルナさんが普通の人だと言い張るのは無理だと思いますよ?
流石に面と向かってはそんなこと言えないけど。
「うぅ…………ゆんゆんさんにも同じようなこと言われましたが、リーンさんに言われるのは流石に堪えますね……」
「それはそれでゆんゆんに酷いこと言ってません?」
まぁ、人間辞めてるレベルのゆんゆんに普通じゃない言われてもふーんって感じになるのも分かるけど。
「それでギルドの話でしたか? それなら例によって仮面の悪魔さんが代わりに受付嬢やってくれてますよ」
「…………嬢?」
「嬢ですね。謎の美女受付嬢やって気を持たせた所で正体ばらすといういつもの悪感情集めしてるみたいです」
「あー……なるほど。仮面の人はいつも通みたいですね」
流石はダストの悪友。本当にいい性格してる。
「まぁ、女性に化けていなくてもバニルさんはいつも受付嬢を自称してますけどね」
「それはどうなんですか?」
普段はどう見ても男の人なんだけど。
「悪魔に性別はないらしいですし嘘ではないんじゃないですか?」
「本当でもない気がしますけど…………」
……まぁいいか。あの人の事を真面目に考えたら多分負けだ。
「バニルさんと言えば…………最近ルナさんはバニルさんとどうなんですか?」
「どう……と言うと?」
「えっと…………なんか進展があったりしないのかなって」
思い出すのはダストに化けたバニルさんと楽しそうにデートをしているルナさんだ。
いろんな人から話を聞く感じでも多少以上の意識をしてるのは間違いないと思ってたんだけど……。
「……ああ、そういう話なら特にはないですかね」
「? もしかして、他にいい人が出来たとか?」
「いえ、そういうことも特には……」
「…………え? あなた本当にルナさん? 実は仮面の人が化けてるとか……?」
出会いがないといつも嘆いてたルナさんがこんな冷静に進展や出会いがない事を言うなんて……。
「何でそうなるんですかと言うか…………すごーく失礼なことを考えられてる気がするのは気のせいですか……?」
「いや、だって…………えぇ…………?」
「えぇ…………」
何故か二人して信じられないというか納得いかないという表情をしている気がする。
「その…………ルナさん、真面目な話いいですか?」
「はい」
「ルナさんは、その…………結婚したいというか出会いを求めてるんですよね?」
アクセルにいるときからルナさんの結婚願望は有名だった。婚期を伸ばすために悪魔に頼って若返りまでするんだからそれは相当なもののはずだ。
「そうですね。それは間違っていません」
「でも、以前と比べるとあんまり焦ってないように見えるんですが……?」
若返ったことで婚期は確かに伸びた。それで以前より余裕が出たのは確かだと思う。
でも結局それからまた時は流れているし、その余裕が出た若返ってすぐの頃よりも今のルナさんは落ち着いて見える。
「実際焦ってませんからね」
「ええっと…………それはどういう?」
進展や出会いがないのになんで焦らないんだろう? 仮面の人に出会いの確約を貰ったとか?
「確かに結婚はしたいって今でも強く思ってます。でも、例えそれが叶わなくてもいいかなとは最近思えるようになりました」
「強く思ってるのに叶わなくていいんですか?」
「はい。叶ってほしくは凄いありますけど…………叶わなかったからって今がなくなる訳じゃありませんから」
「今って?」
「バニルさんに揶揄われたり愚痴をこぼしたり、冒険者さん達の冒険話を聞いたり、休みの日にこうして友達とお茶を飲んだり…………そんな今です」
そう言っているルナさんには本当に焦りとかそういうものは見えなくて。むしろ──
「だから……いいの? そんな今があるから願いが叶わなくても?」
「少なくともバニルさんとは死ぬまでこんな感じで付き合うんだろうなって…………そう思ったら別に」
──どこか幸せに見えた。
「…………いいなぁ」
「いい……ですか?」
そんな様子に無意識にこぼしたあたしの呟きをルナさんは不思議そうに首を傾げる。
「私が言うのも何ですが……バニルさんは色んな意味でオススメしませんよ?」
「いや、そういう話じゃなくて!その…………ルナさんは自分の幸せをちゃんと見つけてるんだなぁって」
ルナさんが言う「今」というものが羨ましいとはあまり思わないけれど。でも、それを自分の幸せだと受け入れているルナさんは羨ましく思える。
あたしが今探しているものを、ルナさんはもう見つけてるんだって。
「そういう話ならリーンさんも──」
「──ママ、ママ! 今からマホーのじっせんするからいっしよにきて見てて!」
「ちょっ、あおい! あたしは今ルナさんと大事なお話して…………って分かったわかった! 分かったからそんな泣きそうな顔しないで!」
あたしを引っ張って行こうとするあおいに一度は抗議してみるも、その泣きそうな顔には白旗を上げる。
……最近ダストやゆんゆんが忙しそうであおいが寂しがってるし、その分はあたしができる限りカバーしてあげないと。
「と言うことでルナさんごめん! この埋め合わせはまた今度…………あ、それともルナさんも一緒に行く?」
「……いえ、今日はロリーサさんともお話しようと思ってたので」
「そっか……じゃあロリーサ! リール達とルナさんの事はよろしくね!」
「了解です!」
メアちゃんに本を読み聞かせていたロリーサにあたしは後の事を頼む。頼まれた本人は無駄に自信満々な様子で敬礼している。
…………自信があるのはいいんだけど、あの子って自信がある時に限ってポカするイメージあるんだよなぁ…………本当に大丈夫かな?
ま、まぁルナさんも一緒だし大丈夫…………かな?
「ママ! 今日のマホーはすごいんだよ! カミナリがドガン!ビュン!なんだって!」
「今日から最上位の属性魔法だっけ? もう覚えてないの『マジックキャンセラ』と爆発系の魔法だけじゃない?」
「…………そうなの? レイン」
「そうですね。ちなみに今日教えている『ライトニングブレア』以外の最上位属性魔法や爆発魔法は魔力の関係で私は使えませんし、『マジックキャンセラ』も練習中でまだ使えません。実践まで教えられるのは今度教える予定の炸裂魔法だけですよ?」
だけと言うけど十分すぎるくらいというか本当に凄い。一つだけと言うけど紅魔族でも最上位の属性魔法は覚えてる人少ないし、炸裂魔法なんてその魔法一つで一生食べるのに困らない魔法だ。
「となると、あおいがこれ以上魔法を覚えるには他に師事する人が必要って事ですか?」
「座学であれば今まで通り私の方で受け持てますが、それ以外は誰か別にお願いした方がいいでしょうね」
その辺りはゆんゆんとも相談して誰か適任を探さないといけないかな。……まぁ、適任以前に教えられる人限られてるからどう頼むかって話になりそうだけど…………あおいのためだから仕方ない。
────
「私の事羨ましいってリーンさん言ってましたけど…………ロリーサさんはどう思います?」
「あはは…………まぁ、ノーコメントと言うか、多分受付さんと同じ感想だと思いますよ」
「ですよね」
あおいに手を引かれ歩いているリーンの横顔。それを見て受ける感想は誰が見てもそう変わらないものだろう。
「きっとリーンさんも気づいてて分かってはいるんですよね。そしてそれをきっとまだ認められないだけ…………私がそうだったように」
「私には人間さんの……それも女の人の機微はよく分かりませんけど…………リーンさんが今とても幸せな気持ちなのは分かります」
高位の悪魔でないサキュバスでもそれが分かるくらいにはリーンの感情は明るく包まれている。
「まぁ、私と違ってリーンさんの状況でそれを認めるのは大変なのも分かりますけどね」
もしかしたらとルナは思う。
(ダストさんが傍にいる限り、リーンさんは認められないのかもしれませんね)
──ダスト視点──
「きゃーっ! 本当にゆんゆんさん!? こんなに美人さんになっちゃうなんて…………早くお姉さんと結婚式を挙げましょう! ちょうどここは教会だし!」
「しませんよ!? ちょっ……苦しいから抱きしめてこないください!」
「想像ついてた反応とはいえ、旦那が傍にいるのに女に結婚を迫るシスターってマジでなんだよ」
「アクシズ教団最高司祭よ!」
誰も役職は聞いてねぇよ。
……いや、言われたら確かに納得するしかねぇ役職だけどよ。
アクシズ教団第二本部。よく分からんがいつの間にか出来た紅魔の里にあるアクシズ教団の拠点に俺とゆんゆんはやってきていた。
教会に入った瞬間セシリーがフルスロットルなのはまぁ想像通り。
「ようこそいらっしゃいましたダストさん。歓迎しますよ」
「よぉ、ゼスタ。邪魔するぜ。…………でも、意外だな。ゼスタもセシリーと同じかそれ以上の反応すると思ってたんだが」
あおいへのあの反応を考えればヤバい反応するのは間違いないと思ってたんだが。
俺の嫁さんは世界一美人で可愛くてエロいからな。
「ああ、ゆんゆんさんですか。ゆんゆんさんは昔私を陥れてくれたので悪魔っ子の次に興奮しないんですよ」
「まだそのこと根に持ってたんですか!? もう何年も前の事なんだから水に流してくださいよ!」
「ゆんゆんお前一体全体どんなひでぇことしたんだよ……」
「酷いことなんて私してないよ!? いや……ちょっと不幸な行き違いはあったかもしれないけど!」
いや、でもよ……。
「だってお前みたいな美人で可愛くてエロい奴にアクシズ教徒が反応しないなんて普通あり得ないだろ? 相当酷いことしたんじゃねぇのか?」
「え? 美人で可愛くて友達が多そう? もう……ダス君ったら私の事が好きなのは分かるけど、あんまり人の前で褒められるのは恥ずかしいよ」
「ゆんゆんさん、ゆんゆんさん。その反応は多分間違ってるわよ? あと誰も友達多そうとか言ってないと思う」
「セシリーさんに冷静にツッコまれた!?」
いや、誰でもそうなるというか…………お前の反応であのセシリーがちょっと恥ずかしそうにしてるの気付け。
そしてセシリー以上になってるだろう俺の気持ちにも気づけ。
「さて、冗談はここまでにしましょうか。お久しぶりですね、ゆんゆんさん。アクア様と一緒に魔王城への道を旅した時以来でしょうか」
「えっ!? あ、はいお久しぶりです。…………あれ? 冗談? ゼスタさん私に怒ってたんじゃ……?」
「流石に何年前かも分からない出来事を何時までも根に持つほど狭量ではありませんよ」
「そ、そうですか。それなら良かった。…………良かったのかな? セシリーさんみたいにゼスタさんが襲ってきたらちょっと怖いんだけど……」
「はっはっは。流石に私も命は惜しいですからね。ダストさんのいる所でセクハラなど出来ませんよ」
…………流石ゼスタ。ゆんゆんにセクハラしようとしたらいつでもぶっ飛ばせるように俺が構えてたのに気づいていたか。
セシリー? こいつは見た目だけは美女だからゆんゆんにセクハラしても目の保養になるからセーフ。やりすぎたらゆんゆんがぶっ飛ばすだろうし問題なしだ。
「ちなみに俺がいない所だろうがゆんゆんにセクハラしたら戦争だから覚えとけよ」
「あ、ゼスタさん、この表情のダス君は本気も本気なので気を付けてくださいね? 私もダス君以外の男の人にセクハラされるつもりはありませんけど、一応」
ゆんゆんにエロいことしていいのは俺だけだからな。つまらない独占欲だと言われようがセクハラは許せない。
セシリー? こいつは(以下略
「安心してください。私がゆんゆんさんに手を出すことはありませんから」
「お、おう? ゼスタがつまんねぇ嘘つくとは思わないが…………やけに素直だな?」
自分の欲望に素直に生きる。そんな悪魔みたいな生き方がアクシズ教の教義だ。それに一番殉じて生きてるだろうゼスタがこんなに聞き訳がいいと訝しがるのも仕方ないだろう。
「当然でしょう。あなたたち二人はアクア様に祝福された夫婦。その仲に割って入るようなことが許されるはずがない」
「…………、なるほど」
アクアの姉ちゃんに関わることと宴会をしている時だけは無害だもんなアクシズ教徒って。
どこまでも想像を超えて滅茶苦茶な奴らだが、女神アクアに対する敬愛の念だけは本物なんだ、アクシズ教徒は。
「? どうしたの? ダスト君もゆんゆんさんも私の事をそんな熱い目で見つめて。そんなに見つめられても秘蔵のところてんスライムはあげられないわよ?」
「いらねーし熱い目でも見てねぇよ。むしろ冷めた目で見てるっての」
「はい。ゼスタさんですらちょっとまともなこと言ってるのにセシリーさんは……」
相変わらずゆんゆんに対するセクハラをしているセシリーへ、俺とゆんゆんはジト目を向ける。
「え? なんでお姉さんが何か悪いことしてる雰囲気なの? お姉さん何も悪いことしてないわよね?」
「いやゼスタに言わせれば俺らは女神アクアに祝福された夫婦だぞ? その仲を邪魔するようなことしてていいのかよ?」
俺の言葉にゆんゆんもうんうんと強く頷く。頷いたことで抱き着いてるセシリーの胸に顔が埋もれてるが…………まぁどうでもいいか。今度ロリーサに見せてもらう夢の参考になるだけで今は関係ない。
「邪魔って何が? ゆんゆんさんもダスト君も私のお嫁さんとお婿さんなんだから仲を邪魔することになんてならないでしょ?」
「…………、なるほど」
「あー……はい」
「えと…………え? なんで二人ともそんな諦めた表情をしているの? お姉さん何もおかしなこと言ってないわよね?」
おかしなことしか言ってないが…………こいつにそんなことを言っても仕方ないだろう。
とりあえず少し考えて返す言葉を決める。
「セシリー、お前は間違いなくアクシズ教団の最高責任者だ」
「間違いないです」
「なんでこのタイミングで認められたの!? なんだか納得いかないんだけど!?」
いや、もう間違いなくお前はアクシズ教団の親玉だよ。文句なしだ。
「…………、なるほど。流石セシリーさん。つまり私もダストさんとゆんゆんさん平等に愛せば──」
「──これ以上話をややこしくすんな! ゼスタ、俺ににじり寄ってくるのはやめろ! マジでぶっ飛ばすぞ!」
本題に入る前から。俺もゆんゆんも死ぬほど疲れさせられ、今すぐ帰りたい気持ちになるのだった。