比企谷八幡は自転車に乗る   作:あるみかん

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比企谷八幡は雨でも自転車で登下校する

~用語解説~

 

 

・回復能力と心肺機能

前述したが、一度疲労した筋肉は休息を取らないと回復しない。

一方心肺機能の疲労はある程度運動しながらでも回復できる。

例えば集団中央は空気抵抗を受けにくいので、呼吸や脈拍を落ち着かせるなどの回復に努めることもできる。

近代ロードレースの「軽いギアをたくさん回す」というのはこれが理由。

ちなみにこの回転型がスタンダードになったのはアームストロングがぶっちぎりで勝ったから。

それまでは重いギアをパワーで踏むことこそ正義だった(軽いギアは女子供のやることとバカにされたとか)。

 

 

 

・リア充

女の子とキャッキャウフフしなくても八幡にとっては自由に自転車に乗れる、熱いレースができればそれはリア充なのである。

 

 

 

・トノサマバッタ

バッタ目バッタ科トノサマバッタ属の昆虫。

体長約4~7センチ。デカイ。後ろ足もデカイ。

後ろ足のギザギザをさわるとけっこう痛い上、口から変な汁を出すこともあるため素手で捕まえるのはなかなかに困難と思われる。

なお、今後本編に登場予定は(当然)ない。

 

 

 

 

 

 

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「うーっす」

「こんにちはー」

「頼もう!」

 

三者三様の挨拶をし、部室にはいる。既に雪ノ下は椅子に座って本を読んでいる。

 

「いらっしゃい、今日は練習は?」

 

「ロードは今日もなしだな。いい加減一度くらいは材木座を走らせたいが初心者にこの天気はな……」

 

そう、先日のレースが終わってから3日。ずーっと雨なのである。多少の雨ならレースは行うがいくら材木座といえども転倒、落車は避けたい。自転車痛むし。

しかし、こうも外を走れないと気が滅入る。カーテンレールに吊るしたてるてる坊主(作:篠崎ミコト)は太陽をもたらしてはくれなかった。

部室を見渡す。

俺……雨男

篠崎ミコト……雨男っぽい

材木座義輝……雨男(確定)

雪ノ下雪乃……雪おn「比企谷君?」

何か失礼なことを考えなかったかしら?という問いと同時に室温が下がる。気のせいじゃなく。

 

「ま、まあなんにせよローラー練習くらいしかできないし、今日はミーティングでもしようと思っているがどうだろう」

 

「ミーティング?」

 

「ああ、現状自転車部のほうは決めなくちゃならんことや足りないもの、すべきこと……ぶっちゃけ課題は山盛りだ。それに篠崎と材木座は奉仕部の行動指針とか知らないだろう」

 

俺ははっきり覚えている。

 

こいつら2人の奉仕部と聞いてだらしなく歪んだあの顔を。

 

「というわけで、まずは雪ノ下にもう一度奉仕部の方針を示してもらおうと思う」

 

 

 

 

 

 

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「…………といったところが奉仕部の方針ね」

 

「つまり、あくまでも本人の努力次第。僕たちはそのお手伝いってこと?」

 

「ええ、飢えた人には魚をあげるのではなく、魚の捕り方を教えるということよ」

 

いつか雪ノ下が涙を流した日に聞いたことを再び聞き、ふと疑問が浮かぶ。

 

「なあ雪ノ下。奉仕部って今年からだよな?教師含めてどれくらいの人間が奉仕部の存在を知ってるんだ?」

 

「……多分あまり知られてないわね。依頼人は平塚先生が選んで連れてくるって言われたし」

 

少し気まずそうに雪ノ下は言う。……平塚先生って生活指導だったよな。まさかとは思うが自分が面倒だからってこっちに丸投げとかないよな……。

 

「なら、こちらから動こう。俺と雪ノ下は平塚先生のところへ行ってPCを確保。最悪奉仕部と自転車部の部費で買う。その後、生徒会に打診して、行事なんかで連携をとれる体制にしておく。

材木座と篠崎はポスター作成。書けないようなら美術部あたりに外注しよう。

奉仕部って言われても一般生徒にとってはどんな部活かわからない。まずは最低限の知名度をあげよう。」

 

ホワイトボードに書き連ねる。

 

「雪ノ下、何か意見はあるか?」

 

「パソコンは何に使うのかしら?」

 

「依頼の内容、対処法、結果なんかをまとめておけば似たような依頼の時に対応しやすいだろう。たとえ依頼が失敗に終わっても後から見直し次に繋げることができる。

あとは学校からの許可が降りれば学校のホームページにリンクを貼って匿名の相談窓口みたいにしてもいいしな。材木座、お前そういうの得意だろ?」

 

材木座が、我に任せるがよい!とデカイ身体を反らして言う。もちろん自転車部としても使わせて貰う。レースの申し込みや練習を撮って動画でチェックしたり。

 

「……正直驚いたわ。意外にも真剣に考えていたのね」

 

雪ノ下の誉めているのか貶しているのかわからないお言葉をいただいて奉仕部のミーティングは終了。

 

「少し休憩を挟みましょう。紅茶でも淹れるわね」

 

そう言って移動する雪ノ下の先には高そうなティーセット。ポットの湯を少し冷ましてからティーポットに注ぐ。

しばらくして運ばれてきたのはティーカップと3つの紙コップ。

 

「どうぞ。カップがないから紙コップだけど。よかったら自分のカップを持ってくるといいわ」

 

ふーっ、ふーっ、と紅茶を冷ましてからひと口啜る。

……なにこれうまっ!普段飲むのはマッ缶かスポドリかコーラの炭酸抜きなんだが、これは本当に美味い。

 

「凄い美味しいよ!雪ノ下さんは紅茶淹れるの上手いんだね!」

 

という篠崎の言葉に照れながら、普通に淹れただけよ、と答える雪ノ下。素直に誉められ馴れてないのか、彼女の顔は紅くなっていたのだが。

 

 

 

 

 

 

 

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「さて、自転車部の方に入る。とりあえずおれが思い浮かぶ問題をホワイトボードに書いていくから、他になにかあれば教えてくれ」

 

と告げて書いていく。

 

・自転車の台数

 

・材木座の処遇

 

・今年の目標

 

・練習内容

 

「……と、こんなもんか。他になにかあるか?」

 

「公道を走るわけだから交通ルールやマナーは大事だよね」

 

と篠崎。次いで、

 

「マネージャーって何をしたらいいのかしら」

 

と雪ノ下。さらに

 

「我の処遇ってなに?!」

 

と怯える材木座。別に獲って喰うとかじゃねーから。

 

 

 

「まずは自転車の確保だな。篠崎に心当たりがあるって聞いたが」

 

「うん、ちょうどいいから今から聞いてみようか」

 

と言い、スマホを取り出す。

 

「あ、もしもし篠崎です。お久しぶりです……」

 

どこかに電話をかけている。スピーカーにしてないのに喧しい声が聞こえてくる。

 

「……それで、遥輔さんの自転車をお借りしたいんですけど……え、勝手に?え?」

 

しばらくしてこちらをむく篠崎。表情は微妙である。

 

「……どうだった?」

 

「とりあえず確保。……土曜日神奈川までとりに行かないと」

 

「さっき遥輔さんって言ってたよな?あれ、もしかしてあの「天才」深澤か?」

 

「うん、遥輔さんいまアメリカで自転車乗れないから誰かが乗ったほうがいいって深澤さんが……」

 

(深澤さん?)「?本人じゃないのか?」

 

「うん、深澤ユキさん。一応、僕の彼女。……です」

 

「ほーん」

 

 

……

 

………

 

 

 

「「なにいいいいいぃぃぃっっっっっ!!!!!」」

 

 

 

 

篠崎ミコト(高校2年生 彼女持ち)

 

 

 

 

 

 

 


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