比企谷八幡は自転車に乗る   作:あるみかん

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今話から2年生です。
奉仕部面々とある2作品から1名ずつ出てきます。


比企谷八幡は運命の出会いを果たす

今日から2年生である。

去年は入院していたので桜の季節に総武の制服を着るのは初めてだ。

それにしても俺の前の席の奴等が五月蝿い。金髪の爽やか系に茶髪カチューシャのチャラそうな奴はじめ数人か群がっていて非常に目障りである。

ほれ、隣の席の小柄なツンツン頭の奴が肩身狭そうにしてるし。

あ、金髪縦ロールのケバい女子とピンクっぽいお団子ヘアーの2人が増えた……さらにメガネの地味系の女子まで増えた。

にしても茶髪カチューシャ五月蝿いな……ウェイウェイいってんじゃねえよ。ケッ、リア充は爆発して砕け散れ。

 

 

 

 

 

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新学期最初の授業はロングホームルーム。

ぼっちには鬼の所業である「自己紹介」の時間だ。

といっても特に話すべきことなどないのだが。

 

このクラス2ーFは男女20人ずつ。窓際から男子が3列で6、7、7人。次いで女子が中央から廊下側へ7、7、6人。

八幡の席は中央列の前から3番目。自分の番が来るまでボケーっとして誰の自己紹介も聞いちゃいなかった。

 

さっきの小柄なツンツン頭の少年の番が来るまでは。

 

 

「神奈川の桜ヶ丘高校から編入してきました、篠崎ミコトです。好きなものはもずくアイスと自転車、嫌いなものはピーマン、ニンジン、水泳です。よろしくお願いします」

 

 

……

 

………

 

自転車っつったかこいつ?!

しかも神奈川の桜ヶ丘って去年の夏の高校選抜で勝ったとこじゃねぇか?!

こいつも自転車やるのか?!ってことはこいつ選抜メンバーか?!

 

 

そんなことを考えながら悶々としていると

 

「おい、君の番だぞ」

 

前の席の爽やか系イケメンが声をかけてきた。

 

「うん?お、おう、すまん」

 

席を立ち

 

「比企谷八幡です。よろしくお願いします」

 

一言で済ませる。先生の

 

「もう少し何かないのか?」

 

の声に少し考え、

 

「自転車部を作ろうと思っています。」

 

とだけ付け加える。

その瞬間、隣のツンツン頭がキラッキラした眼でガン見してきた。

内心ビビりながら席につく。

結局、全員の自己紹介が終わるまで隣のツンツン頭はじーーーっとこっちを見続けてきた。

 

 

 

 

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「えーと……、ヒキタニ君?だっけ?自転車部創るの?」

「ヒキタニじゃねえ、ヒキガヤだ。ブチコロがすぞ」

「ごめんなさい」

「自転車部なら今日にも創部届けを出しに行くぞ」

「それ、僕もついてっていいかな?」

「別に構わんが……こっちもひとつ聞くが、神奈川の桜ヶ丘って去年の選抜勝った学校だよな?お前も自転車部だったのか?」

 

聞けばこの篠崎ミコト、やはり、桜ヶ丘高校の自転車部でスプリンター。しかも、昨夏の選抜のレースでアンカーを勤めた程の実力者。多分ぶっちゃけ俺より数段速い。

 

「とりあえず放課後に職員室行って創部届けを出すから。ついでに顧問も探そう。目星はつけてるしな」

「うん!」

 

 

ーーそして放課後

 

 

「失礼します、松任谷先生はいらっしゃいますか?」

 

呼び出すのは若い男の先生。この先生には是非とも顧問(監督)になってもらいたい。というのも

 

「松任谷先生は学生時代ロードレーサーだったらしい。何でもツール・ド・沖縄とかも完走してるとか」

 

小声で篠崎に話す。少しして、

 

「君たちか?俺に用があるのは」

 

現れたのは細身ながら筋肉質な男性教師。

 

「2ーFの比企谷と篠崎です。自転車部を創ろうと思うのですが、松任谷先生に顧問になって貰えませんか」

「構わんが……部員の目処はついているのか?」

「とりあえず自分たち2人だけですね」

「部の設立条件は3名以上だ。最低後1人、出来れば後2人集めてからまた声をかけてくれ」

「……わかりました、ありがとうございます」

 

 

 

「ところで篠崎、あの人なんで4人集めろって言ったんだ?」

「多分、インターハイとかが4人1チームのチームロードか何かだと思うよ。選抜レースも4人チームのリレー方式のクリテリウムだったし」

「なるほど……遅くてもいいなら1人心当たりがあるが……」

 

あの厨二病を呼ぶか……

あとはポスターでも張ってなんとか引っ掛かってくれることに期待しよう。

 

 

 

 

 

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数日後、職員室

 

 

「君には舐めた作文を書いた罰をあたえる。ついてきたまえ。」

 

高校生活を振り返って、というお題の作文に八幡は

 

 

「入学式の朝にはねられて骨折したので夏までは通院とリハビリ、それ以降はバイトとリハビリと練習してました。」

 

と書いて提出した。そして国語担当の平塚教諭に呼び出され連れ去られついた先が特別棟。

 

「邪魔するぞ雪ノ下」

 

3階の奥の部屋のドアを豪快に開ける平塚教諭。

 

(陽乃さんと同じ名字?)

 

予想通りというかなんというか、部屋の中には八幡のリハビリを手伝い、入院中に勉強を教えてくれていた女性によく似た少女が文庫本を手に佇んでいた。

 

 

 

 




というわけで、
Over Drive から篠崎ミコト(選手、スプリンター)
シャカリキ!から松任谷譲(顧問予定)
が登場です。

自転車用語がちょこちょこ出てきますので、次回冒頭でここまでに出た分かりにくい単語の解説を入れようかと思います。

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