転生したら女獄卒になってしまった 作:越後屋大輔
私はいつも通り職場の仕事をこなし今でも片思いしてる元カレの経営するお店で食事しながらお酒を呑んでいる、その当人はちょっと日本にでかけているらしい、とはいってもここは外国じゃない、それどころか地球上のどこでもない。詳しい説明は呑みながらするわ。
話は逸れるけど獄卒ってホントに無骨というかデリカシーがなさすぎる。特に私の部下はその辺りが顕著だ、仕事の性質上、ある程度はそれも仕方ないとも思うけど。ちょっと態度を軟化させただけで憑き物扱いするなんて、ったくなんで大ちゃんみたいな
今更ながら自己紹介すると、私は
死んだ私はその時自動車に轢かれそうになっていた女の子を助けようとして道路へ飛び出して自分が跳ねられ死んだ。女の子はなんと異世界の女神様でそちらで私に人生やり直しの機会を与えてくれた。そしてこの世界で最初に出会ったのが刑場からの脱獄犯、そいつらを殴り倒して元の牢獄に送り返したらそこのお偉いさんにスカウトされて私は刑場で獄卒として働くようになり今に至る。
そんなある日、私が下宿に帰ってくるとチビッ子女神様がヤ○さんみたいな派手な身なりの男と一緒に私の部屋で待ち構えていた、しかもその男……オカマだった。
「新ちい人
「ええ。それなりに充実してるわ、それもあなたのおかげよ」女神様の腰に手を回して私は満面の笑顔で答える。
「それは何よりでちゅ」女神様も笑顔を浮かべる、やけに神々しい。まあ神様だから当然といえば当然か。そんな私達を観察するようにオカマは女神様に声をかけた。
「ふ~ん、あなたがウチからこの世界に転生させたのがこの子なのね。こりゃまた気性の荒そうな娘ね?でも嫌いじゃないわ」オカマは私をじろじろ見て印象を語る、女神様が言うにはなんとこのオカマこそが地球の神様だという。私、元夫との愛をこんなのに誓ったの?まあ別れたからもういいけど。そこへ窓ガラスを射ぬいた矢がプニプニした女神様の腕に刺さる、その切っ先から血が出ている。
「ウッ、ウッ。ビェ~ン」女神様が大泣きし出した、そりゃ痛いよね。つーかこんな酷い事したの誰なのよ?
「先代のこの世界の女神ね」オカマが私の疑問に答える、いくら神様とはいえ小さい子供に矢を射つなんて!まして怪我までさせるなんて先代の女神だか何だか知らないが許さない、ぶっ飛ばしてやる!
「ヤメとけ、お前ぇじゃ勝てねーよ」私に話しかけてきた奴がいる。やけに毛深い男だと思ったらサルの獣人ね、それより私じゃ勝てないって随分見くびってくれてるじゃない?これでも100倍パワーの元自衛官なのよ!
「あらルカちゃん。アタシの頼んだ案件もう片付いたの?早いわね」
「天界を訪ねたらお留守だったのでこの辺におられるかと、その件は後程ご報告します。それよりあの駄女神がっ!フザけやがってぇ……スイません、最後の1つ使います」
「ええ、それは貴方にあげたんだから好きになさい」金属製の輪っかを手にしていたサルは何やら呪文を唱える。すると弓を持った金髪縦ロールヘアの美女が姿をみせた、間違いない。この女が犯人だ。
「でぇぇぇやぁぁアーッ!」一発ぶん殴ろうと拳を固めて女のいる方へ跳ぶ。しかし避けられた、その瞬間、途端に頭を抱えて苦しみだす金髪女。
「イタイ、痛いですわ!どなたかこれを外して下さいませんこと?!」その頭にはサルが手にしているのと同じ輪っかがハマっていて金髪女の頭を締め付けている。何だか知らないけど誰が助けると思ってんの?図々しいったらありゃしない。
「お生憎ね、それ生涯外れないわよ。私達は普通死なないから文字通り永遠の苦しみになるわ。ま、アナタの場合自業自得だけど」オカマが呆れたように金髪女に告げる。サルはもう1つの輪っかを金髪女めがけて投げる、輪っかは小さく4つに分かれると金髪女の手足に食い込むようにハマった。
「な、何ですの?!体に力が入りませんわ」
「そいつはハメた相手の筋力を奪う輪っかだ、さしもの貴様も今度こそ終わりだな」そこへ真っ黒な煙か霧みたいなのがが空から降りてきた、包み込むように金髪女にまとわりついたと思ったら忽ち女ごと消え去った、女がいた場所には頭にハマっていたのとサルが取り付けた4つ。計5つの輪っかだけか残っていた。口を開けたままボー然とする私を尻目にサルは輪っかを拾い集めると女神様の傷の手当てを始めた。
「なにアレ?!」驚く私に神様2人が説明してくれる。
「この世界と地球も含む、全ての世界の神の頂点に在らせられる、最高神様が放ったモノよ」
「ワタチ達は寿命はないでちゅけど
「神様の数えかたは『人』じゃねえよ、通常の単位は『柱』だぜ」と囁く……って、そんなトリビアどうでもいいわよ!
このサルは私と同様転生者で地球にいた頃の名前を長岡瑠華(似合わねぇ名前)といって落石事故で死んだ際、転生の機会をオカマ神様より与えられたのを機に、長年の夢を叶えて孫悟空になった。その見返りにこの異世界を救おうと、この世界の神でありながら、自ら世界の破滅を招いた金髪女に、オカマ神様から貰ったさっきの輪っかを頭にハメて懲らしめたらしい。
「あのまま永久に痛さでのたうち回ると思ってたら、復讐を企んでいたとはねぇ」オカマ神様が嘆息する。
「
「だからこそ、自ら世界の終焉の幕をおろす羽目になったんでしょう」ルカは神様達に敬語を使って話す、私も事の顛末を聞かされてあの金髪女に心底ムカついた。当人が消滅した今、どうでもいいけど。
それからというもの、私達はお互い日本の話ができる唯一の飲み仲間になった。場所は当然越後屋だ。会話は日本の事に限らず、冒険者をやっているルカはこの世界の別大陸や諸外国の話を聞かせてくれるし、私は部下や囚人奴隷の愚痴をこぼす。あの店で会う度同じやり取りを繰り返すのだった。
大ちゃんが神妙な顔をして裏口から入ってきた、日本から戻ってきたみたい。私に気づくと
「今日、小雨さんに会ったよ。君のお墓参りに行ってきたって」朱家の三女で私のすぐ上のお姉ちゃん。そうか私ホントなら死んでたんだよね、勿論忘れていた訳じゃない、でもなるべく考えないようにしていた、親兄姉悲しませてなにやってんのかな(;_;)。泣いていい?自分の命日なんだもん、いいよね。
「普通は家族のする事だろ?自分の命日に自分を偲ぶなんて聞いた事ないぜ」ここまでずっと私の愚痴を聞いてくれていたルカが呆れながらも言葉を続ける。
「残してきた肉親に会いたいか?と言ってもムリだな。俺は転生した時、それも可能な存在になったが、お前の契約条件じゃ地球に帰るのも叶わん」
「アンタはどうなのよ?ヒック、まさか既に天涯孤独でしたとかいうんじゃないでしょうね?」ここは人間辞めてまで、家族に会えるチャンスを手にいれたヤツに聞くのが一番いいわね。
「いたよ、妻と子供2人。俺ァあっちにも神様の使いでたまに行くが再会したところでこんな姿じゃ名乗れやしねえ、尤も今は妻もそれなりに幸せだからな。俺もそれで満足さ」あ、無理だわ。私はこいつみたいに割り切れない、ヤッパ両親や兄姉に後ろめたい気持ちは否めないわ。ヤバい、また泣きそう。
結局大ちゃんに家族の様子を時々伝えてくれるように頼む事にした、私には他にどうしようもないもん。因みに彼が店の裏口を通じて両世界を往き来できる理由は本人も知らずルカと私も神様達に口止めされている。
翌朝、目が覚めるとお店の座敷に敷かれた布団の中だった。あのまま酔い潰れて寝てしまったのね、大ちゃんが優しく声をかけてくれる。
「おはよう、朝ごはん食べられる?」大ちゃんと2人っきりで?なんか新婚さんみたい、とか思ってたらもう1人いた。ガッカリ、最近雇われたパックスとかいう大男だ。3人で朝食を摂ってからエドウィンを後にしながらふと思う、この先私は今後も残してきた家族に負い目を感じて生きて行くのだろうか。それとも綺麗サッパリ忘れるべきか?答えは見つからないまま私は一生この十字架を背負って生きて行こうと思う。
最後ちょっと重い話になりましたが「異世界料理~」本編や他の作品でフォローしていきます