看板娘のモンスター   作:ばたけ

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この素晴らしい看板娘に初の接待を!

「いらっしゃいませー」

「声が小さい!もう一回!」

「い、いらっしゃいませぇ!!」

「うるさい!」

こんなあほなやりとりをしていると、お客様がやってきた。

 

はい、私です。安楽少女、改め『楽薬(ラクヤ)』です。

……。なんですか、この名前。なれないというか、むず痒いというか……。

まあいいんですよ、そんなことは。

そんなことより、初めてのお客様です。

 

その人は、きれいで、少しくせっげの長い髪をもった、少し顔色の悪い美人なお姉さんでした。

長い髪で片眼が隠れ、妖艶な雰囲気を生み出せるのは、多分胸部の特大サイズのアレにあるのでしょう。

うらやましくはありませんが。

あっても肩がこるだけでしょう、あんなの。

負け惜しみなんかじゃありません。ほんとにいりません。

べっ、べつにあんなのうらやましくなんてないんだからねっ!

……………。

ぺったんこに需要ないですよね。知ってましたよ。

でも需要がないからといってなんだというのでしょう!

需要なんてなくとも生きていけると、私は教わったばかりなのですから!

……。ごめんなさいちょっとだけうらやましいです。

「ねえねえ薬屋さん、胸が大きくなる薬とかありませんかね」

「あるかボケ。仕事しろ」

 

まずそのお姉さんにむかって、きらっきらの接客スマイルを浴びせかける。

もともとこの辺りは私の特性で得意分野だ。楽勝です!

「顔色が悪いですね、風邪薬をお探しですか?」

「……はい、そうなんです。げほっ」

「……聖職者(プリーステス)に治してもらわないんですか?」

「オイコラ」

ぱしん、と頭をはたかれた。星が出るほどじゃあないものも、ほんの少しくらっとします。

「……は、はい。なにぶん、お金がないんです」

「はーそうか、そうですか。それではサヨナラ、お元気で」

「薬屋さん!」「奇野くん!」

うちの店長は人としてどうかと思う。怪物(モンスター)より化物(モンスター)だ。

ぶすっとした顔をした薬屋さんの代わりに、私は適当に薬を出しておきます。

「このポーションなんていかがでしょうか?」

ポーション。さっき知ったが、飲みやすい液体に回復魔法をかけ保存しておくものらしいです。

外注で作ってもらっているらしいです。これ置いとかないと客が来ないとか何とか。

「……ぁ、えっと、ポーションはダメなんですよ。あれるぎーで」

「はあ、アレルギーですか」

ポーションアレルギーなどもあるのでしょうか。初めて知りました。

「了解。当店特性風邪薬ですねー。10000エリスになります」

「こら!微妙にぼったくらない!」

「ちっ。でも現に『風邪薬』なんて売ってんのここだけだぜ。希少価値があるとは思わないか?」

「でもそういうのはやっぱり倫理に反してるよ。そもそも何で風邪薬の成分とか覚えてるのさ」

「昔から読書が好きでね。主に読んでいたのは薬の成分表とか。やっぱ楽しくならない?」

「同意を求めないで」

「何で?面白いよ?」

「そう思ってもらえるならきっと薬の成分表も本望だろうね……」

だらだらとお客様の前でしゃべる二人です。接客としては最悪だなあ、と笑顔がひきつりました。

お客さんはレジの前に薬(紙袋が9個入り)をおいた。

「風邪薬ですね、1500エリスです。毎食後にどうぞ」

「お前さえ言わなければばれなかったのに」

「まだ言ってるの?」

袋を渡す際、お医者さんはニコッと笑いました。

こういう所がお客さんの心をつかむんです。わかってますか薬屋さん?と流し目で見ます。

すると薬屋さんは、何かお思いついたような笑みを浮かべました。

おぬしもなかなか悪じゃのうと笑うお代官様のような、クククと笑う自信家のような。

「お買い上げ、有難うございました。くれぐれも浄化されないよう、気を付けてくださぁい」

「————っ!!!」

妙にねっとりと。何かを含むような、含みしかないような。無邪気な子供のような、邪悪な悪蛇のような。

止めるべきなのでしょうか。でも本当にこの人が悪い人なら、と固まります。お医者さんも似たような様です。

それに対して、お客さんは大げさというほどの反応しました。

肩を震わせ、だらだらと大げさなほどの冷や汗を流し。

それから半分涙目でうちの店主を見ました。

「大丈夫、誰にも言いませんって」

「お願いします」

「まあしかし、その薬―――」

「あと8500エリスですねっ!ただいま―――」

「いえ」

そこで言葉を切りました。

それから少し考えました。

きっとその間には意味があるのでしょう。

含ませるだけの意味があるのでしょう。

「早く元気になって下さいね」

当たり前の言葉は、当たり前の笑顔と共に、当たり前に放たれました。

含ませた意味も、きっと優しい意味だったのでしょうか。

お客さんは、それまでの涙を引っ込めて、安堵に満ちた笑顔を浮かべました。

「・・・はい!」

「では、お元気で」

「ありがとうございました!」

「いえいえ」

 

「なんだったんですか?彼女」

私はお客さんがいなくなった店で、薬屋さんに尋ねます。

「あの人は――」

そこで一瞬間をあけました。

「ある時は超過激なやり手の魔導士!またある時は魔王軍に組する最強のリッチー!しかしその実態は――」

「実態は……」

すでに聞き逃せないワードが数個出てきていますが、それを超えるワードがー

「この町で一つの魔道具展を経営している、心優しい人間さ」

ずん、と、心の中に響いた気がしました。

アンデットの王たるリッチーが、こんな街の風景に溶け込める。

世界は案外懐が広いのかもしれないと思えた瞬間でした。

動揺を顔に出さずに、へえと答えます。

ここで泣いたりしたら、負けだと思ったからです。

でもついにやけてしまうのはなぜでしょうか。

オイコラ、そんな優しげに私を見ないで下さい。なんか恥ずかしいっ!

カランコロンとベルが鳴りました。私は逃げるようにその場を離れます。そしてすう、と息を吸い込みます。

「いらっしゃいませ!」

とびっきりの笑顔が、浮かべられた気がしました。




どんどん長くなっている気が……、いや、これくらいがちょうどいいのか?
これからも頑張っていきたいです。
期末テストやっと終わったー!
終わった……。
ああいうのはもういい点数を取ることでなくこなすことが重要なのではと思いだす今日この頃。
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