俺は『簡易機動型 丁』   作:飯妃旅立

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サブタイは適当の法則。


他力本願寺

 

 それに気が付けたのはほぼ偶然だった。

 

 アリエスさんにWill’Oは意思の力だ、みたいなことを言われてから、というかそれを意識するようになってから、微かだがアブダクター以外のWill’Oの気持ち? もわかるようになっていた俺は、とりあえずWill’O技術の使われていそうな場所(ほぼすべての場所に使われているのだが)を片っ端から彷徨っていたんだ。

 勿論見つからない様に。

 

 いつもの転送装置君や監視装置君以外にも、灯りだとか移動装置だとか、セルガーデン内部の足場を動かしているWill’O磁性流体とか。

 まぁ反応が返ってきたのは極わずかだが、それでもしっかりと意思を確認することが出来たんだ。

 

 ならばと思い、俺はパノプティコンの最上階……その上に向かった。

 外側から見た時にクレーンとかが見える場所だな。

 そして正にクレーンに話しかけようと、クレーンのWill’O磁性流体に干渉しようとして――。

 

 ――ォォォォオオオ!

 

 上方、遥か先の空に、とんでもないWill’Oの塊が居る事に気が付いた。

 俺が今まで見てきたアブダクターは多岐に渡るが、そんなもの目じゃないくらいのとんでもない塊。

 

 即座に全パノプティコン内の警報装置に干渉する。

 既に全て対話済みであり、クラッキングする必要は無い。

 やろうと思えばモニターに文字を出力してもらうことだって出来たりする。 

 今回はソレを使う。

 

 どうでもいいことを言おうとしていたプロパ君の映像に介入、外側の監視装置の映像を挿し込み、音声合成装置君とモニター君に頑張ってもらって現状を伝える。

 

『天獄アブダクター接近中! 咎人の皆さんは迎撃を、市民の皆さんは避難してください!』

 

 プロパ君の声を使う事で、信用度は上がっただろう。

 すぐにパノプティコン内が騒がしくなり始めた。

 まぁ、安全保障局辺りは違う騒がしさをしているのかもしれないが、コラテラルダメージという奴だ。 違うか。

 

『天獄アブダクター、残り1分で到達します!』

 

 転送装置君に働きかけて、俺のいつもの小型部隊や砲撃四脚、汎用四脚を勝手に出陣させる。

 ここまで近づけばもう見える。

 

 先行はディオーネ。 後続はコウシンとパラドクサだ。

 身体が小さくなったからか、ゲームで見ていた時より壮大で巨大だが、どうしてか……あまり恐怖を感じない。

 まぁいい。

 むざむざ襲われるのを待つ必要は無い。

 先手を打つ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうなっている!?」

 

 ナタリア・’’9’’・ウーは走っていた。

 先程、なんの連絡も無しにいきなり緊急警報が鳴り響いた。

 どれほど緊急であってもまず安全保障局(こちら)に連絡が来るのが常であるし、それを怠れば被害も混乱も大きくなるとわからないほど間抜けた上層部ではないはずなのだ。

 

 それになにより、プロパ君の声が普段の数倍……いや、数十倍はスムーズだった事に驚きを隠せない。

 あれは敢えて「親しみを残すため」「技術向上を悟らせないため」にたどたどしい口調にしてあるというのに、今の警報はその辺に居る咎人や市民となんら変わりない口調をしていた。

 

 緊急時だからといえば仕方なくも感じるが、同時に何故普段からやらないのかと問い詰められたらどうする気だと、ナタリアは奥歯を噛みしめる。

 

『天獄アブダクター、侵入します! 種別はディオーネ! 第2階層にいる人は姿勢を低くし、その他階層に居る人はフラッシュG及び怯みダメージの大きい武器で攻撃を行ってください! 少なくとも光線は防げます!』

 

 さらに言えば、この的確なオペレートが怪し過ぎる。

 歴戦の咎人でも天獄アブダクターとの交戦経験がある者は極僅かであり、その咎人の戦闘映像を熟知している者など1人2人居て多い方だろう。

 更には天獄アブダクターの種別を判断、且つ倒し方を知っている者など……。

 

『1分後に1層のロウストリートにコウシンが侵入します! 咎人各位、迎撃の準備をしてください! 他所のパラドクサはこちらが引き受けます!』

「こちら? ……どこのどいつだ、勝手な事を……!」

 

 ――今が非常事態でなければすぐにでも調べ上げ、その身分を最下層まで落としてやるッ!

 

 ナタリアは内心をも憤らせながら走る。

 自らもまた、パノプティコンを守る市民であるが故に。

 

 途中で合流した咎人数名を引き連れ、ナタリアはディオーネの現れたモザイク広場へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大型はパラドクサの頭部と武装ポッドを集中攻撃しろ。 お、ナンブ持ちがいるのか。 なら全ロックを集中させてくれ。 ヴォルフ持ちも同じだ。

 簡易輸送型は逃げ遅れた市民(シヴィリアン)を回収、出来るだけパノプティコンの奥へ移動。 簡易装甲型と簡易狙撃型はその援護な。

 簡易近接型及び簡易機動型は天兵を見つけたら見敵必殺、その他咎人のフォロー。

 

 俺達人工アブダクターが、天獄アブダクターに劣っていないと言う事を見せつけてやれ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……終わった、のか……」

 

 誰かが呟いた。

 壁には大穴が空き、内部の鉄筋が完全に露出した個所ばかりの、ボロボロのパノプティコンの一画。

 ロウストリートであるにも拘らず、全ての咎人が武装しているという異常な光景を咎める者はいない。

 ただ、「生き残った」という事実を噛みしめていた。

 

 そして、

 

『最後の天獄アブダクターの撃破を確認。 ハメルンPTの勝利です。 お疲れ様でした』

 

 普段より大分(だいぶん)なめらかに喋るプロパ君のその一言によって、咎人も……そして市民も、大きな歓声をあげた。

 

 地上に居る者にとって天罰とは、天獄とは絶対的な恐怖の象徴だ。

 それが自らのパノプティコンに起こると言う事は刑期の加算よりも恐ろしい物であり、咎人であればロスト、市民であれば連れ去られるという事が確定したということでもある。

 否、あった。

 

 それは今日、覆されたのだ。

 

 

 

「……」

 

 ノクィートはマティアス、ウーヴェ、マリーと共にロウストリートへ侵入してきた天獄アブダクター・コウシンと闘った。

 戦果は上々、いや最高だったと言えるだろう。

 咎人にロストは無く、アクセサリが連れ去られると言う事も無かった。

 的確な指示を受け、的確な行動をとったが故の当たり前の結果ともいえるだろう。

 

 そんな伝説染みた結果を出した彼女は、未だ後片付けに追われるロウストリートを出て、ガソリンのテーブルで自らの手を見つめながら座っていた。

 

「よっ! お疲れ様だな、相棒」

「……マティアス」

 

 彼女の隣に座りこんできたのは同じくコウシンと交戦したマティアス。

 

「ものたりねぇ、って顔だな?」

「……」

 

 無言は肯定だった。

 ノクィートは戦闘狂というわけではない。 だが、折角戦うのならば楽しみたいと思う性質(たち)である事は自他ともに認められている。

 天獄アブダクターの襲来は彼女にとっても唐突な物だったのは事実だ。

だが、ベアトリーチェを助けた時点で彼女の呟いた「天罰が来る」という発言から、何かが来るのはわかっていた。

 その恐怖を見るに、相当なものが現れるのだと少しだけ期待していたのだ。

 

 だが、結果はどうだろう。

 

 確かに敵PTの繰り出す大型アブダクターよりは強い。 動きは独特で攻撃力は高く、機動力もある。 

 だが、これをして天罰というのなら……何をそんなに恐れているのだろう、というのが内心感じた事だ。

 そしていま、マティアスに見抜かれた己の気持ちである。

 

 聞けば自らの戦ったコウシン以外にもディオーネという竜の姿をしたアブダクターや、パラドクサという蜘蛛のようなアブダクターが侵入したらしいではないか。

 ディオーネの方はナタリアや咎人のベテラン達に、パラドクサの方はアブダクターが迎撃したらしいのだが。

 

「おい」

「ん……? げぇっ!?」

 

 と、ノクィートとマティアスに対して鋭く冷たい声を投げかける者が現れた。

 何事かとマティアスがそちらを向けば、そこには赤い服を纏った長身の女が1人。

 ナタリアだ。

 

 彼女は思わずえずいたマティアスを完全に無視し、ノクィートの前までツカツカと歩いてくる。

 マティアス含めベアトリーチェに関する事情を把握している幾人かは冷や汗をかいていたりするのだが、最も中心だろうノクィートは素知らぬ顔で、涼し気だった。

 

「なんだよ、ナタリア」

「相変わらず口が悪いな。 まぁいい。 貴様、コイツに見覚えはないか?」

 

 そう言ってナタリアは抱えていた端末をノクィートに見せる。

 そこに映っていたのは、簡易機動型。

 

「……そりゃあるけど」

「従来の物ではない。 意思を持ち、他のアブダクターへ指示を出す……現在のWill’O技術ではあり得ない動きをする簡易機動型だ」

 

 見た事がある。

 しかしそれは違法な手段で侵入した違法な区画での事であり、見たことがあると馬鹿正直に言えば場所を追及されるだろう。

 だからノクィートは嘘を吐く事にした。

 

「あぁ、さっき見たよ。 天罰が来た時に、開いた壁の穴から見た」

「……第3情報位階権限のロウストリートに開いた穴、という事か。 つまり……」

「なんでそんなの探してんの?」

 

 純粋な疑問だった。

 どうあってもアレは味方の小型であり、こんな指名手配染みた方法で探すものではない。

 もっと言えば、ユリアン含め市民(シヴィリアン)に探させればいいだろうという意見も含んだ疑問ではあったのだが。

 

「貴様が知る必要は無い。 と、言いたいところだが……この簡易機動型は現在捜索中でな。 保存場所に戻らず、どこかをふらついているらしい。 貴様ら咎人にも捜索ボランティアを課す。 期限は発見し、捕獲するまでだ」

「敵対したって事?」

「いや、先程発行された復興ボランティアには割り込むようにして戦場に突如出現し、咎人達をサポートしていた。 敵対しているわけではないと見ている。

 だが、何者かが後ろで操っているにせよコレに意思があるにせよ、一度は確認をしなければならないのだ」

「ふぅん……ま、わかったよ。 黒い簡易機動型な」

 

 ガソリンにいた面々はナタリアの開示する情報量に驚きを隠せなかった。

 それほどまでに重要な案件である、ということも、彼らには伝わった。

 

「精々はげめよ」

「あいよー」

 

 そしてこのノクィートの態度もまた、信じられないものの一つだった。

 














これで人間との意思疎通が可能になったよ!!
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