AIは夢を見るのか   作:不知火 椛

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第一部
1話 日常と夢見


「ほら、行くよ・・・ハル君!」そう呼ぶ声があった。

 

夢を見ていた気がした・・・そう、子供の頃姉さんに連れられ遊びに行く夢だ。

子供心にとても嬉しかったのを覚えている。遊びに行った公園は確か・・・

 

「――おい、ハルキ、ハルキ!」そう呼ぶ声を聞き、我に返る。

 

「え?あ、うん。どうしたの、タケル」ひとまず僕は呼びかけに応答する。

 

「どうしたの?じゃねーよ!一瞬、本格的に壊れたかと思ったぞ。」とタケルに突っ込まれる。

 

「いや、・・・その、ごめん・・・夢を――」と答える事が出来ずに僕は謝る。

 

「夢?そんなわけないだろ?お前、本当に大丈夫か?人間ならともかく()()()()()()の俺たちが見るわけないだろ?大感染の時みたいに変なのに感染とか・・・じゃないだろうな?」と心配しているタケルに

 

「大丈夫だよ。システムチェックに何か引っかかっているわけじゃないし、問題が報告されているわけでも無いから、タケルが神経質になりすぎなだけだよ。」と笑って返す。

 

大感染――かつて第六世代が感染した

artificial intelligence virus 通称AIV 

AIにのみ感染するウイルスで当時はパニックに陥るほどに混乱した。理由はメインのプログラムの改変と改変不可能とされていた安全装置(リミッター)の解除だったのだ。本来AIはAI統括システム――開発code;レイが一括管理していたのだが、感染した第六世代のアンドロイドには開発者権限(マスターコード)が使えなかったのである。開発元の倉島重工は事態収拾のため、開発中だった第八世代のプロトタイプと発売済みだった第七世代そして、第一世代(オリジン)と言われる3体が投入、即座に事態を収拾させた。即座に対応したと言えど、被害はあった。死者1名、負傷者(重症102名、軽傷1564名)、監禁被害者2万3078名、拘束被害者7万8419名――総被害者10万3164名第六世代アンドロイド―破壊措置1475体、部分損傷8733体、機能停止及び無力化2万1451体、決して軽い被害とは言えなかった。安全と言われていたアンドロイドの信頼を失墜させるには簡単な出来事であった。

 

「そー言って、何か変なのに掛かってるんだぞ~」とタケルは恐ろしいことを言う。

 

「嫌なこと言うなよ、怖くなってくるじゃないか」と言った。

 

「いやいや~、こう言うときの俺の予感は当たるんだよ。」自信満々に言う。

 

「おいおい、そう言って本当になったらどうするんだよ。恨むからな。」と言うと。

 

「ははは、ま、冗談だけどな~」と言って茶化した。

 

「たちの悪い冗談はやめてくれよ。本当に不安なんだからな。」とトーンを変えて言う。

 

「悪い悪い、でも、色々とおかしかったぞ?大丈夫か?」と先程とは違い真剣な目になる。

 

「大丈夫だって。」と大丈夫アピールをする。

 

「まあいいや、あんまりくどいとあれだしな。」とタケルは引き下がる。

 

と、2人が座っていたテーブルに

 

「やっほー、2人ともそんな所で何やってんの?」と明るい声が掛かった。

 

「いや、聞いてくれよナルミ。それがよ、ハルキの奴がさおかしいんだよ。さっき呼びかけても上の空でさ~」とナルミに話しだしたのだ。

 

「ダメだよ~、ハル君無理なんかしたら~」と注意が飛んできた。

 

「はははは、大丈夫だよ。無理なんかしてないって、システムチェックも大丈夫だったし、タケルが誇張し過ぎだったんだって。」と笑って返す。

 

「そうなの?それならいいんだけど・・・」と少し安心した様に言う。

 

「そうそう、タケルが心配し過ぎなんだって。」と笑って返す。

 

「で、なんでこんな所に?」と聞いてきた。

 

「ああ、いつものアレだよ。」

 

「ああ~、アレね・・・。」と微妙な表情で答える。

 

アレとはタケルが何故か行っている女性型アンドロイドの評価である。まず、大前提としてわかって欲しいのがタケル自信もアンドロイドである。にもかかわらず、TAKERU@TELと言うハンドルネームで新作の女性型アンドロイドの評価を行っており、何故かその評価が好評なのである。その理由はよくわかっていないのだが、ユーザー曰く、「一番評価が分かりやすい」や、「どのアンドロイドにするか非常に参考になった」、「TAKERUの評価を待ってからアンドロイドを買う。」と言うユーザーまで居る始末である。(無論高評価を貰っているのは大半が男性ユーザーなのは言うまでもない。)本人曰く、「みんな俺の意見がわかる奴は浪漫をわかってるな!流石だぜ兄弟!」と意味不明の供述をしており、実際の所は謎である。しかし、その評価はメーカも無視できない規模になっており、直々に交渉に来る始末である。(本人は断ってはいたが)

 

「なるほど、だからハル君も上の空だったんじゃないの~?」とタケルの方を見るナルミ。

 

「なっ!そんなことないよな!なあ、ハルキ!」と必死に言ってくる。

 

「あははは。」と笑って返す。

 

「うう、否定も肯定もされなかった・・・だと!?」とガックリとうなだれた。

 

「ほらやっぱり、だからそうだって言ったのに。ね、ハル君?」と顔をのぞかせて来た。

 

「あ・・・、うん。」と一瞬夢の姉と重なって見えたが、何とか返した。

 

「(え?姉ちゃん?)」とまた考え込む。

 

「ハ、ハル君?やっぱり、ハル君どこかおかしいんじゃない?一回本格的にメンテ行った方がいいと思うよ。」とナルミもそう言いだした。

 

「なあ、やっぱりこいつ今日変だろ?明日でもいいから行って来いよ!悪い事は言わねえから。」とタケルも便乗し言ってきた。

 

「う、うん。2人がそう言うなら、明日辺りにでも行って来るよ。」とハルキは折れた。

 

「そう、ハル君ちゃんと――」とナルミが言葉を紡ぐ事は出来なかった。

 

「ナ、ル、ミ~」とナルミに飛びかかって行く影があった。

 

「ク、クルミ姉!?」とナルミは飛びかかってきた人物に声を掛ける。

 

「そうだよ、あなたとみんなの頼れるお姉さん!クルミさんだよ~」と明るく言った。

 

「あ、クルミさんこんにちは。」

 

「クルミさんちーす。」と2人ともあいさつした。

 

「タケルもハル君もこんにちは。3人居るって事は・・・タケルの新作アンドロイドの評価を先に聞いてたのかな?」と笑いながら聞いてきた。

 

クルミさんは神出鬼没で普段は何をやっているかナルミも知らないらしい謎多きアンドロイド。実際タケルも何世代目かはわからないらしい。が、特に怪しいと言う訳でもないので親しくしている。

 

「私もさっき来たばっかりなんです。って、聞いてよクルミ姉。ハル君が少しおかしんだよ!」と早速言ってしまった。

 

「ん?どうしたんだい?」と聞く。

 

「ん~、上手く言語化出来ないんだけど、何か・・・」と言うと。

 

「そうなんっすよ。何か上の空みたいな感じで。」とタケルも言う。

 

「そうか、2人ともそう言うとなると、確かに何かありそうだね。」とクルミは考え込む。

 

「一応完全スキャンとログを洗ってみたんですけど。不具合も上がって来なくて何ともないんですよ。」と結果だけ伝える。

 

「ちょっと、ログ見せてくれる?」クルミさんが言った。

 

「はい、これがログのデータです。」と言ってデータを渡す。

 

「どれどれ、そうね。見た感じは――問題なさそうね。」とクルミさんに言われる。

 

「ですよね?ログに不審な所もないし、2人の心配し過ぎなんですよ。ねえ、クルミさん?」とハルキはクルミに聞くが

 

「でも、ちょっとメモリが怪しいわね。だから、明日ここにいらっしゃい。倉島の紹介状あげるから、ちゃんと来るのよ。」と言ったのだ。

 

「え?もしかして、倉島重工の本社の紹介状ですか?」と聞いてみる。

 

「そうよ、丁度知り合いが居てね。あの人なら受け持ってくれそうだし。大丈夫、周囲から天才って言われてるくらいだから凄腕よ。」と言った。

 

「は、はあ。」とハルキは曖昧に頷く。

 

ナルミもタケルも突然の話に着いていけていない様だ。まあ、俺も着いていけてないんだけど、誰かHELP!

 

「まあ、そう言う事だから、明日倉島重工の本社のホールに来ておいて、なるべく午前中がいいわ。開いてる?」とクルミさんは聞いてきた。

 

「あ、はい。明日は大丈夫です。午前中ですね。」とスケジュールに記録する。

 

「ホールに着いたら受付に私の紹介で来たって言ってもらえれば大丈夫だから。」そう言うと

 

「はい、じゃあ、この話はおしまい!で、タケルは今回の評価どんな感じなの?」とすぐにクルミさんは話題転換をした。

 

「あ、ああ。聞いてくださいよ!今回のやつはやばいですよ。気合入れて評価しましたよ!」とタケルは我に返り今回の評価について熱弁を始めた。

 

「一時はどうなるかと思ったけど、よかったねハル君」とナルミはそう言うとタケルの熱弁を聞き始めた。

 

「これは、いつまでかかるかな?」とハルキは苦笑いしながらタケルの熱弁を聞くのであった。

 

―――――

 

「(ここは?)」ハルキは休眠状態(スリープモード)の中なぜか目が覚めた。いや、目が覚めたと言う表現はアンドロイドにはふさわしくないが、他に形容できる言葉が見つからなかった。そんな不思議な空間で意識が覚醒した。

 

「倉島重工なのか?それにしても周りに何も無いような・・・」と辺りを見渡す。

 

目の前の建物は確かに倉島重工と表記されていた。辺りの光景が現在と異なっていることに首を傾げていると、突然建物から子供が2人出て来たのだ。

 

「ほら、ハル君、行くよ!どっちが速いか競争ね。じゃあ、よーい、ドン!」と姉らしき子供が小さい子にそう言うと走り出してしまった。

 

「あ、ミサキ姉ちゃんずるい!待ってよ!」と走って追いかけて行った。

 

「(人間の中のいい姉弟ってあんな感じなのかな。でも、それにしてもさっきハル君って・・・)」と先程の言葉に首を傾げた。

 

そう、ハルキはアンドロイドである。無論幼少期などあるはずもなく、記憶があるのは起動されてからである。それ以前の記憶などあるはずもなかった。

 

しかし、先程の2人の顔は霞がかったように思い出せない。

 

「(ただの偶然か?それとも、本当に何か・・・)」と深い思考の海に潜って行った。

 

――――――

 

System Start UP・・・ Waiting・・・ NowLoading・・・ Load Complete!

 

ハルキは起動した。現在の時刻は7時である。人間であれば普通の時間である。

 

「さて、今日が始まったか。午前中には倉島重工に行かなきゃいけないんだよな。」と今日のスケジュールに書き込まれた、午前中 倉島重工本社へと書かれたスケジュールをみる。

 

「あまり早すぎても迷惑だろうから10時くらいに行くか。」とそう決めると早速行動に出る。

 

まずは、現在のパラメータをみる。特に異常動作をしている部分は無い様だ。

 

「ひとまずは大丈夫かな?」と声に出して言った。

 

その後趣味である読書をし、(アンドロイドの趣味が読書と言うのも変ではあるが)時間を潰した。丁度9時半を過ぎたころ

 

「ん?ちょうどいい時間だな。」そう言い本を閉じ部屋を出た。

 

2話へ続く・・・

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