君の名は。if物語   作:Mr.ペンギン

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~前回のあらすじ~
とうとう始まった新学期。瀧、三葉はそれぞれ友人と登校した。そして始業式後、SHR(ショートホームルーム)にて、三葉は自分のクラスに教育実習生のミキと副担任の地夫がやって来ることに驚き、更に転校生として光輝、雷華、慶影、そして瀧も姿を見せた。そこで初めて、お互いの姿としてお目に掛かったのだった。


第参話 初対面

~瀧side~

 

俺達転校生組は自己紹介後、言われた席に着いた。何故か全員一番後ろで、窓側から順に俺、慶影、光輝、そして雷華と言うわけだ。このクラスにはいねぇが、まぁ司とか真太も上手くやってんだろうな。

 

にしたって三葉の奴、本当に良い反応したな……!くくく、思った通りだ。俺はあの時内心で、ちょっとガッツポーズをしてやった。ドッキリ大成功ってか……!よくバラエティとかで芸能人にドッキリを仕掛けて騙す番組があるけど、その仕掛ける方の気持ちが少し分かった気がした。とにかく快感だな!っと、まぁそれはさておき、あいつとは早く色々話したいんだが、何を隠そうにも俺も光輝達も転校生なんだ。きっとこれが終わった途端、質問攻めに遭うんだろうな……。

 

さて、今は先生から配布物を貰いながら、話を聞いている感じだ。それを聞き流しながら、俺はちょっと前のあることを思い返した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~

 

遡ること約8分前の階段の踊り場─

 

始業式を終え、それぞれの教室の前に辿り着いていたのだが、光輝から急に呼び出されて、何故か階段の踊り場に移動した。何故か分からないまま、そいつは口を開いた。

 

光輝「のぉ瀧。いきなり訊くんじゃが、すぐにでも三葉と話がしてぇか?」

 

突然そんな事を聞かれた。何でそんな分かりきったことを聞き出そうとするのかやっぱり分からねぇが、俺は頷きながらあぁと答えた。まぁ、事情が何であれ、アイツとはとにかく色んな話がしたいのが、俺の率直な気持ちだ。

 

雷華「けど悲しいかな、今の状況じゃあそりゃあムズいと思うんよ。何たってアタイら、転校生じゃけぇ、質問攻めを食らうんはまず目に見えちょるじゃろ?かく言うアタイも三葉とかとは話がしてぇし、何より今日の宴の料理の準備をせにゃあいけんけん、どの道早ぅ帰りてぇんじゃ。」

 

そいつは目を閉じ、そう染々と語る。ますます何が言いたいか分からん……。思いきって訊いてみることにした。

 

瀧「そうか。で、さっきから何が言いたいんだお前らは。」

 

俺がそう訊くと、今度はさっきまで黙っていた慶影が声を出した。

 

慶影「まぁ早い話が、如何にその質問攻めを振り切ってなっとやってはよ帰るかの『作戦会議』だに。」

 

慶影は巾着から500mlペットボトルと同じ位の大きさはある徳利と盃を取り出し、お茶を飲んでそう言う。

 

雷華「んにゃ。作戦会議する必要なんざねぇよ。何しろもう作戦は考えついちょるけぇの……!」

 

雷華は腕を組み、ニヤリと笑う。

 

瀧「作戦って、んな大袈裟な……。ま、聞くだけ聞いてやるが、一体どうするつもりなんだ?」

 

俺は取り敢えず聞くだけ聞いた。光輝と雷華はニヤリと明らかに不敵な笑みを浮かべ、俺に作戦の全容を説明した。それを聞いた時、俺は文字通り言葉を失った。コイツら、正気か………?!

 

瀧「お前ら、それ本気で言ってんのか!?」

 

雷華「当然じゃ。流石に単なる悪ふざけで言う訳ねかろぅが。」

 

瀧「本当にそうなら尚質が悪ぃよ!っていやいや、んなモン関係ねぇよ!それ、どう考えても普通にリスク高すぎだろうが!」

 

光輝「大丈夫。この数式に従ってやってきゃあ何の問題もねぇよ。」

 

光輝が見たこともねぇ記号やら何やらを交えた数式を書いた紙を俺に見せてそう言った。何だこれ……?何か、超常現象を解き明かして事件を解決する主人公の物理学者を演じる某有名俳優主演のテレビドラマみたいだな……。さっぱり分からん………、って違う!それは今どうでも良い!

 

瀧「そう言う問題じゃねぇっての!!そうだ、慶影!お前からも何か言ってやってくれよ!やらねぇ方が良いだろ?止めてくれよ!」

 

よくよく考えてみりゃあ慶影がいるじゃねぇか。コイツは確か、盲目って自分で言ってたな。面子の中に目が見えねぇ奴がいるのに、やっぱ無謀だ。それに、少なくともこの中じゃあ一番まともなのもコイツだ。俺はそう考えて、慶影にすがることにした。

 

慶影「ふむ……。光輝、雷華……!」

 

そいつはそう言うと、徳利と盃を巾着にしまい、2人に声をかける。よし、良いぞ…!

 

雷華「ん~?どしたん?」

 

光輝「おっ、何なら?」

 

2人はそんな慶影を見て、首を傾げる。表情も特に変わってはいない。そんな2人に、慶影は言葉を放つ。

 

慶影「やれるだけの助力は致す。頑張ろうではござらぬか!」

 

違ーーーーーうっ!!!

 

俺は内心でそう絶叫しながら、新喜劇みたいにその場でずっこけた。そんな俺を他所に、3人はがっちりと硬い握手を交わしていた。何だってんだよ、コイツら……!?

 

瀧「ちょっと待てお前ら!だから無茶だって言ってるだろ!?それと司とか真太とかはどうするつもりなんだよ!あいつら、この無茶苦茶な作戦を知らねぇよな?!」

 

俺はもう我慢の限界で、ひたすらつっこみまくる。取り敢えずその作戦はしたくねぇ!すると光輝が俺に顔を向けた。

 

光輝「なぁに心配いらん。1、2組の方は既に手を打っとるけん大丈夫じゃ。ま、形は違えど、最終的な集合場所と集合時間は合わせちょるけぇ安心せぇ!」

 

そう言うとこのバカは、親指をグッと突き上げてドヤ顔になる。だからそう言う問題じゃねぇんだよ!すると今度は慶影が瀧殿と言って、俺に顔を向けた。

 

慶影「こやつらを止めるのは、土台無理な話でござる。それに─」

 

慶影は一息吐き、今度はどこか嬉しそうな表情を浮かべていた。

 

慶影「こやつらとは長い付き合いでござる。こう言うあんごを共にできて、拙者は嬉しいのでござる。それに、ここでやらねば男の名が廃れるでござるぞ、瀧殿。男であれば、腹を括れ。」

 

あぁ、ダメだ……。2人はともかく、コイツもコイツで何か抜けてるな………。ちょっとでも期待した俺がバカだった……。俺は1人項垂れ、仕方なくその無謀すぎる作戦に参加せざるを得なかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

思い出すと、改めて溜め息が出る。ここまで来たらやるしかねぇ……!もう引き下がれねぇ……!俺は周囲に感ずかれない様に注意しながら光輝と雷華に目配せをする。2人はコクりと小さく静かに頷き、光輝が机の左側の叩いて慶影の気を引かせ、慶影も俺に向けて頷いた。

 

─遂に時は来た。

 

百香里「それでは、今日はこれで終わりましょう。皆さん、明日から授業がありますので、気を引き締めて頑張りましょう。気を付けて帰って下さいね。」

 

先生がそう言った瞬間、過半数の生徒が転校生である俺達に向かって来ようとして、椅子から立ち上がるのが分かった。しかしそれを牽制する様に、いつの間にか窓際に移動していた慶影が席に着く時にさりげなく開けた窓から真下に向かって白杖を素早く投げ付けた。

 

「「「?!!」」」

 

俺達4人と副担任の黒田先生を除く全員が、呆気に取られていた。まぁ、そりゃそうだわな………。かく言う俺だって最初そうだったからな………。

 

慶影「3人共、今でござる!!」

 

慶影はそう言うや否や、窓から飛び降りた。雷華もそれに続く。俺が立ち尽くしていると、光輝が俺の手を取って窓際まで引っ張った。

 

光輝「おめぇら、すまんがわしらは後があるけん、先いぬるわ!聞きてぇ事がえっとあるじゃろうけど、明日にゃあちゃんと答えるけん安心せぇ!」

 

そう言い残して、俺は光輝に引っ張られながら窓から飛び降りた。

 

ぎゃあああぁぁぁぁ!!?

 

俺は内心でそう叫んだ。下には既に慶影と雷華が待っていて、光輝は俺を丸太とか鉄骨を担ぐ様に片手で横に抱えながら降りた。俺はもうダメだと思ったが、光輝は残っているもう一方の片手で地面に少し斜めに刺さった白杖を器用に掴み、それを軸にして着地した。その直後に、俺は光輝に釈放された。

 

た…、助かった………。

 

俺が安堵しているのも束の間、また光輝に引っ張られて、俺達4人は別の場所へと移動した。

 

~三葉side~

 

……………………………………。

 

な、何やったん今の……??4人共、何しとんの……?理解が追い付いていないのは私だけやなくて、ここにいる皆がそうやった。皆がポカンと開いた口が塞がらないのが簡単に見える。

 

地夫「がっはっはっはっは!!流石あっしの息子達や!!派手にやりおるっ!」

 

そんな沈黙が続く中、黒田先生が手を叩きながら豪快に大笑いした。

 

地夫「さて皆さん、今日は帰ってのんびり休みんしゃい。明日から授業が始まるんやろ?さ、もう帰りや。」

 

先生は手をパンパンと軽く叩いて帰宅を促した。するとそこで皆がハッと我に返り、教室から出ていく。

 

地夫「三葉さん!」

 

私もサヤちんやテッシーと帰ろうと教室を出ようとすると、黒田先生に呼び止められた。私が振り向くと、先生は相当年季が入っているであろうボロボロの筆箱から小さなメモを私に渡してきた。

 

地夫「瀧さん達はここにおりやす。12時までに来て下さい。勅使河原さんと名取さんも一緒に連れてきて下さいね。あっしらも事が終わり次第、合流しやすんで………!」

 

三葉「!」

 

先生は私に小声でそう言い残して、ユキちゃん先生やミキ先輩と教室を後にした。そこで私は、この後のことが脳裏に浮かんだ。

 

やっと、瀧君と話ができる………!!やっと、大好きなあの人に会える………!!

 

そう思うと、自然と胸が弾んだ。場所が書かれたメモを暫く見つめ、それをポケットにしまった。そしてそのまま2人の所へ戻ると、2人は私を凝視した。

 

早耶香「三葉どしたん?何かあったん?」

 

サヤちんが心配そうに訊いてくる。サヤちんに大丈夫だよと言うと、すぐに笑顔になった。それより2人に伝えなきゃ!

 

三葉「ねぇ2人共。今、時間ある?これからどうしても紹介したい人に会いに行くんやけど、行こう?」

 

~三葉sideout~

 

~瀧side~

 

真太「はっはっは!お前も大変だったなぁ!」

 

瀧「笑い事じゃねぇよ。ったく、本当に大変だったんだぞ?俺、ガチで死ぬかと思ったんだからな……!!」

 

俺は集合場所で司と真太、そして光輝達と一緒にいた。その集合場所とは、三葉がいつも3人で昼飯を食ってる校庭の隅のあの木陰だ。俺はようやく気持ちが落ち着き、安堵の溜め息を吐いた。なのに─

 

光輝「ひひひっ!まぁ別にえかろーが!!結果オーライじゃ!」

 

雷華「いやぁ~楽しかった!!我ながら上出来じゃわ!!」

 

慶影「ファファファ……!たまにはこう言うのも悪くないでござるな……。」

 

瀧「お前らなぁ、一旦黙ろうか?」

 

この3人は暢気に笑っていやがる……!!結果云々はこの際置いといて、一体誰のせいであんな思いをしたと思ってんだよ……!?本気で死ぬのを覚悟したんだからな………!?

 

真太「良いじゃねぇか、スリルがあってよぉ!」

 

瀧「お前簡単に言うけど、本当にヤバかったんだからな?ディズニーシーのビッグサンダーマウンテンとかUSJのハリウッド・ドリーム・ザ・ライドとかとは全く比べ物にならねぇ位怖かったんだぞ…?!」

 

さっきから真太はおちょくってきやがる……!この話を聞く限りだと、コイツはまだまともなやり方で出たんだろうな畜生……!にしたって変だな…。普段なら確実に一緒にツッコんで来るであろう司が、珍しく全然ツッコんで来ねぇ……??マジでどうしたんだ?そう思っていると、その本人が眼鏡を人差し指と中指で軽く突きながら声を発した。

 

司「確かにそうだ。俺も茂造と雅治に引っ張られて窓から飛び降りた時はどうしたモンかと思ったけど、まさか真上の3年の教室から木に飛び移って、ターザンみたく木にロープを引っ掻けて降りてきた女に、そのまま3人纏めて地上に降り立つなんて考えてもしなかったからな………。」

 

そう言って司は、光輝達と同じくのほほんとしている3人、重谷茂造、空知雅治、具志堅富子を軽く睨んだ。

 

雅治「まぁまぁ。確かにそるばってんおさん、うったちお陰でこんがん皆と合流できたんやろうばい?」

 

富子「はっはっは!なんくるないさー!んなしわーびーけんさんけー良いさー!」

 

茂造「いつまでんなビクビクしとんや?ホンマ楽しかったわ~!せやから司、えぇ加減許してやったらどうや~?」

 

成程……、中身は違えど、コイツにも似た様なことがあったから、今回ばかりは俺をいじらねぇってことか……。ちょっと意外だったが、ラッキーだった。そしてこっちもハズレくじだったんだな……。同志がいて何よりだ。

 

瀧「っつーか、そう言う真太はどうだったんだよ?お前はどうやってここに来たんだ?」

 

流石に俺ばかり言われるのは癪だ。だから俺もどうやって来たのか聞き出してやる。すると真太はさっきまでの余裕の表情から一変、ちょっと顔を引きつらせた。ん?どう言うことだ……??えーっとな……、と言う躊躇いの言葉が暫く続き、漸く口を開く。

 

真太「教師が解散って言った途端に教室のドアが開いて、そこから両腕を構えた裕子が『ふひひひひ……、ぼっけぇえぇおっぱいがでぇれぇ集まっとるのぉ……!アタシが1人残らず揉んじゃるけんアンタら、じっとしねぇよ!!』って目を爛々と輝かせながら女子に迫っていって、教室内が混乱している隙に俺と氷太は全力疾走でここに来た…………。」

 

…………………………………は?

 

俺と司はそれを聞いて、呆然とした。しかし光輝達はやっぱりかなんて言ってたが………。マジか……。

 

瀧&司「へぇ~~~~………。」

 

俺と司は真太に疑いの目を向けた。さっきまでのコイツと同じ様にな。その時、だから言いたくなかったんだよと言う真太の小声でのぼやきが聞こえた。

 

氷太「いんやぁ~、こわかったど~……。」

 

真太のクラスメイトになった転校生、上杉氷太は溜め息をついてそうこぼした。するとその作戦(?)を実行した張本人と思しき女が姿を表した。

 

裕子「いやぁ~、よぉ揉んだ揉んだ!中々良ぇおっぱいじゃったのぉ……!」

 

やっぱコイツだったか……。はぁ……。どいつもこいつも、ここにはまともな奴がいねぇのかよ……!そう思っていた時だった。

 

??「瀧君っ!!」

 

聞き覚えのある声が、俺の耳に飛び込んだ。その声がした方向へ目を向けると、見慣れた女の姿があった。御神体で見た時とは違って、2つの三つ編みを1つに纏め、全体的に誰もが振り向く様な大和撫子を思わせる容姿をした彼女本人だった。俺はそんなそいつに、こう言ってやった。

 

瀧「やっと会えたな。待たせて悪かった、三葉。」

 

~瀧sideout~

 

三葉「瀧君っ!!」

 

彼女はもう1度そう言うと、瀧にまっすぐ走っていき、勢い良く抱き付いた。瀧もそんな彼女をしっかり抱き止める。

 

三葉「やっと会えた……!本物や…、本物の瀧君や……!!」

 

瀧「そうだよ、本物の俺だよ。」

 

御神体のあの時以来再会した2人は、しっかりとお互いを確認しあう。

 

三葉「ねぇねぇ瀧君、そう言えばいつ頃糸守に来たん?」

 

瀧「昨日だよ。昨日の昼過ぎ位にはもういたぞ。」

 

彼がそう言うと、一瞬目をぱちくりさせ、今度は不貞腐れた様な表情に変わる。

 

三葉「昨日!?じゃあ何で昨日顔出しに来てくれんかったん!?」

 

瀧「いやぁ~、本当は顔を出そうかどうか悩んだんだけどよぉ、どうしてもお前を驚かせたくて結局顔を出さなかったってワケ。お前、本当に良い反応したよな~。」

 

彼は茶化すようにドヤ顔を添えてそう言う。三葉は更に頬を膨らませた。

 

三葉「何やそれ!?私がどれだけ心配したと思っとん!?私がどれだけ会いたかったんか分かっとん!?不安やったんやからねっ!!」

 

彼女は瀧の胸をぽかぽか叩きながら訴えた。しかしその直後、お互い吹き出し、笑い合った。しかし何かを忘れてはいないだろか?

 

「うっ、うん………!」

 

痺れを切らし、誰かが咳払いをした。2人が慌てて振り向くと、司や光輝達がジト目で2人を見つめていた。それはもう言葉では言い表せない程最高の顔だった。そんな彼らを見て、瀧と三葉は急いで離れる。そうして、司が1人言葉を漏らす。

 

司「お前ら2人共、やっぱ仲良いんだな……。」

 

瀧三「良くねぇ(ない)よ!!」

 

2人は盛大にハモった。仲が良いこと自体は全くもって良いことなのだが、今の2人には正直、複雑な気持ちでしかなかった。

 

??「三葉ーーーっ!!」

 

そう思っていた時、校舎の方から声がした。三葉にも瀧にもすっかり馴染みがある声だった。やはり校舎からこっちに向かって克彦と早耶香が走ってきていた。

 

三葉「あっ!サヤちん、テッシー!こっちやよーーっ!」

 

三葉が2人に向けて大きく手を振る。そうして2人が到着した。

 

克彦「お前急におらんくなったと思ったら、ここにおったんか……。」

 

早耶香「あーっ!てか、さっきの転校生の子達もおるやんか?!」

 

2人は中腰でぜぇぜぇと肩で息をしながら口々に言う。

 

三葉「そうやよ。瀧君に2人を紹介したいな~って思って。」

 

その言葉を聞き、瀧がギョっとした。この状態で大丈夫なのかと不安になったからだ。

 

瀧「三葉、お前良いのかよ……?流石にあんなに走った後にそれはキツくねぇか?」

 

三葉「そんな事はどうでも良ぇんよ瀧君っ!私は早くサヤちんとテッシーに瀧君を紹介したいんよ!」

 

瀧「お前今、テッシーとサヤちんに対してサラッと酷いこと言わなかったか……??」

 

何故か力説する三葉を見て少々呆れる瀧。そんな彼は、興奮する三葉を一旦落ち着けと言って、深呼吸させて取り敢えず落ち着かせた。そんな2人を見て、その早耶香と克彦が更に驚く。

早耶香「三葉……!?今日初めて会ったばっかなのに、何でもうお互い名前で呼び合っとん………!?」

 

克彦「それにそいつ、何で俺達のあだ名を知っとんや………?!」

 

2人共いよいよ驚きを隠しきれなかった。自分の友人が自分が知らない人物と名前を呼び合って会話するだけに留まらず、そこから更に見たこともない人物にいきなりあだ名で呼ばれては誰だって驚くものだろう。このままでは流石にキリがないと判断した瀧と三葉は、一先ずお互いとその友人を紹介することにした。

 

瀧「じゃ、紹介しとくか。俺は立花瀧。よろしくな。それでこっちにいるのがダチの藤井司と、高木真太だ。」

 

司「藤井司だ。2組に転校してきた。よろしくな。」

 

真太「んで、俺は高木真太だ!1組に転向することになった!これからよろしくっ!!」

 

3人は軽く会釈した。真太に関しては、最早トレードマークとも言える親指をグッと上げるグッドのポーズまで添えた。

 

三葉「そしたら今度はこっちの番やね。私は宮水三葉。それとこっちの2人はサヤちんこと名取早耶香と、テッシーこと勅使河原克彦やよ。」

 

早耶香「え~っと、私は名取早耶香。三葉にはサヤちんって呼ばれてるから、それで呼んでね。よろしく………。」

 

克彦「俺は勅使河原克彦や!ま、よろしくな!因みに俺のことはテッシーって呼んでくれて構わんでな!」

 

こちらの3人もまた、瀧達と同じ様に会釈した。こっちでも、テッシーに関しては真太と負けない位のテンションで挨拶した。

 

瀧「なぁ、俺達は自己紹介したからさ、今度は光輝達、お前らのことを教えてくれよ。」

 

そう言うと、今度は視線を三葉達から自分達とは別の転校生である光輝達に変える。その光輝は、何故か首を横に振った。

 

光輝「わしらの事ァ、後から纏めて言うわ。別に今それをしてもわしらは構わんが、それよりまだ来とらんのがおるじゃろうが?」

 

??「おっ待た~~!!」

 

彼は少し微笑みを含めながらそう言った直後、再び校舎側から声がした。ミキと地夫、そしてもう1人女性の姿があった。その女性の見た目は30代程度で、純白な和服がよく似合う彼女はにこにこと笑って手を振っていた。

 

瀧「あっ!先輩、お疲れ様です!」

 

ミキ「ごめんごめん。本当ならもうちょっと早く来れる筈だったんだけど、作業が思ったより長引いちゃった。」

 

司「いやいや大丈夫ですよ。お疲れ様です。それはそれとして、その2人って確か………!」

 

司はそう言うと、地夫ともう1人の女性を見て驚いていた。それは真太もだったし、瀧は地夫とは既に対面済みだったが、その女性に関してはまだ対面していなかったので、こちらも少し驚いていた。三葉、早耶香、克彦は言うまでもなくその女性を見て頭上に?が浮かんでいた。そんな彼らに、ミキが紹介する。

 

ミキ「紹介するわね。こっちの男性は黒田地夫先生で、現代文担当で、瀧君や三葉ちゃん達のクラスの副担任でもあるの。そしてこちらの女性は黒田玉美(くろだたまみ)先生。地夫先生の奥様で、英語担当の先生よ。」

 

地夫「あっしは黒田地夫や!まぁ、瀧さんや三葉さん達には一度自己紹介しやしたけど、まぁ改めてよろしゅう。」

 

玉美「ハロー♪うちっち、黒田玉美!地夫さんの妻だだよ~!!皆にがんこ会いたかっただだよ!!よろしくネッ★」

 

ミキに紹介されると、地夫は丁寧に挨拶し、玉美はハイテンションで挨拶した。光輝達を除く皆は暫し戸惑ったが、それをどうにか瀧が声を出した。

 

瀧「あっ、そうだ!三葉達にミキ先輩を紹介しとかないとな。こっちが俺達の先輩の奥寺ミキ先輩。」

 

その言葉に三葉達も何とか我に返った。

 

ミキ「そうだったわね。すっかり忘れてたわ。私は奥寺ミキよ。ここには教育実習で来ることになったの。よろしくね。」

 

彼女が軽く自己紹介すると、三葉、早耶香、克彦が先程の様に自己紹介し、挨拶をした。それを終えた時、光輝が手をパンパンと叩いた。

 

光輝「さぁて、やっとこれでここの役者は揃ったのぅ。これで話が出来るわい!」

 

彼の言葉に、これまた三葉や瀧達の頭に?が浮かぶ。

 

真太「話って光輝、何の事だよ……?」

 

その疑問を、真太が光輝にぶつけた。すると彼は意味ありげな笑みを浮かべた。

 

光輝「何のことかって?おいおいおめぇら、昨日あれを渡したろうが?あれのことじゃ。」

 

彼のその言葉を聞いて、瀧、司、真太、ミキがあぁと言葉を漏らし、それを思い出した。

 

三葉「ねぇ、それって何のことなん??教えてや~。」

 

瀧達の様子を見て、今度は三葉が食い付いた。それを待っていましたと言わんばかりに、今度は茂造が喋りだした。

 

茂造「これのことやねん。ほい、渡しとくわ~。」

 

彼はバッグから、昨日の夜に光輝が瀧達に渡した招待状を三葉、早耶香、克彦に渡した。渡されたその中身を見て、3人が目を見開いた。

 

玉美「これ、昨日光輝を瀧君達に渡しに行かせた物なんや。瀧君達は、その宴に来るってはあ聞いたけえが、三葉ちゃん達はどう?そこで光輝やうちっちの自己紹介も改めてやろうと思うの。」

 

瀧「三葉、俺達は行くことにしてるんだ。勿論、来るだろ?」

 

2人が微笑んで、3人に訊いた。暫く考えていたが、3人は同じ答えを出した。

 

三葉「うんっ!私も行くよっ!!」

 

早耶香「私もや!私も行くでね!」

 

克彦「俺も行かせて貰うわ。事情が何やよぅ分からんけど、メシがあるんならガンガン食ったるわ!」

 

3人の答えを聞き、光輝達は満足気に小さく笑った。そんな中、地夫が再び豪快に笑いだした。

 

地夫「がっはっは!!そら良かった良かった!これでもし断られたりしたらどないしよかと思ったけど、やはり心配無用やったな!そしたらせやな……。宮守……、やったかな?そこに18時に集まって~な!迎えに行かせやすんで!ほな、また後程お会いしやしょうや。」

 

彼がそう言うと、光輝、雷華、茂造、雅治、氷太、慶影、裕子、富子、地夫、玉美がそのまま帰宅した。他の皆もぼちぼち帰りだしている頃合いだ。

 

司「腹減ったし、さっさと帰って食うか。」

 

真太「そうだな。」

 

ミキ「じゃ、帰りましょっか。」

 

克彦「おっと、親父の手伝いがこの後あるんやった!帰るわ!」

 

早耶香「私もお姉ちゃんに呼ばれてるんやった!行かんと!」

 

友人達も帰り始めていた。この場に残されたのは、瀧と三葉だけだ。

 

瀧「さて、俺も帰るか……。」

 

彼も帰ろうとすると、突然誰かに手を捕まれた。振り返ると、三葉が彼の手を掴んでいた。彼女は真っ直ぐ彼を見ている。

 

三葉「瀧君。この後何もすることないなら、ウチに来て欲しいんやけど、大丈夫……?どうしても見て欲しいものがあるんよ……。」

 

彼女は不安そうな表情で彼を見つめる。そんな彼女を見て、彼は暫く考え込み、そしてにこりと笑った。

 

瀧「あぁ、勿論だ。」

 

彼がそう言うと、不安そうな表情が消え、ぱぁっと明るい表情に変わった。

 

瀧の進行ルートはアパートから三葉の実家に変更し、司や克彦達が完全に姿を消したのを確認してから、瀧は三葉と共に学校を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まず始めに皆さん、遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。今年も何卒よろしくお願い申し上げます。今年も極力早く投稿が出来るよう努めますので、どうぞ本年もよろしくお願いしますね(  ̄▽ ̄)
では、ここで本編に登場した方言を紹介します。
・なっと:どう(三重)
・~に:~よ(三重)
・あんご:バカ(三重)
・いぬる:帰る(広島)
・えっと:沢山(広島)
・そるばってん:そうだけど(長崎)
・おさん:お前、君(長崎)
・うったち:私達、俺達、僕達(長崎)
・こんがん:こうして、こうやって(長崎)
・なんくるないさー:何とかなるさ(沖縄)
・しわー:心配(沖縄)
・びーけん:~ばかり(沖縄)
・さんけー:~するな(沖縄)
・ぼっけぇ:とても、非常に、凄く(岡山)
・でぇれぇ:とても、非常に、凄く(岡山)
・~しねぇ:~しろ、~しなさい(岡山)
・こわい:疲れる(山形)
・うちっち:私(静岡)
・がんこ:とても、凄く(静岡)
・~だだよ:~だよ、~ですよ(静岡)
・~ねん:~のよ、~だよ(大阪)
・はあ:既に、もう(静岡)

こんな感じでしょうか。
さて次回は、瀧がいよいよ三葉の家に上がり、三葉の家族と初めて対面します!三葉の家で、彼に待ち受けるものとは……?
それでは、今回はこの辺で失礼しますm(__)m
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