瀧達は転校生組は、三葉達とゆっくり話をする為、それぞれとんでもない方法で教室から姿を消した。そして昼、遂に瀧達と三葉達、光輝達が合流した。光輝達が三葉、早耶香、克彦に宴の招待状を手渡すと、そのまま流れ解散となった。瀧もそれに乗じて帰ろうとしたが、突然三葉から家に来てほしいと言われ、そのまま三葉の家へ向かうことになった。
~瀧side~
学校を出た俺と三葉は、三葉の家に向けて歩いていた。やはり普通ではまず体験できないだろう入れ替わりがあったお陰で、話が面白い様に弾んでいて、話題が尽きることはそうそうなかった。
三葉「瀧くん!そう言えばデートどうやった!?」
ん……??こいつ今何て言った?1回脳内再生してみる。………。は?三葉の奴、物凄い勢いで何訊いてんだ……。その時俺には、あの苦い一時が脳裏に甦った。
瀧「あー……、それってミキ先輩とのあれか……?」
自分自身も思い当たるのがそれしかないし、ましてやデートなんて物とはほぼ無縁だが、もし万が一と言うこともあるので、一応確認してみることにした。案の定、彼女は力強く頷いた。それも目を思いっ切り見開いてだ。それを見て彼は、やっぱりかと思いながら短く溜め息を吐いた。
瀧「ボロボロだったよ……。やれやれ……。」
両手をあげて、苦笑いする俺はそう言った。そんな俺 を見ると、三葉は信じられないものを見た様に見開く。ん………?
三葉「何やのそれ?!折角奥手な瀧くんの為に用意したったのに!」
何だとこのアマ!?こいつ、この期に及んで何言ってやがんだ!?入れ替わった直後にいきなりデートをぶっ込んでくる奴がどこにいやがんだよ!そもそも、あんな思いしたのは一体誰のせいだと思っていやがんだ?!
瀧「お前なぁ、『余計なお世話』って言う言葉をよく覚えとけ!それに、よっぽどなプレイボーイじゃねぇ限り、急にデートなんて言われて気持ちの準備がそんなすぐに出来ると思うか普通!?」
俺もこいつに負けない位感情をぶつけてやった。すると三葉は目をぱちくりさせた。
三葉「何なん!?そんな言い方ないやろ?!奥手な瀧くんをお手伝いしようとしただけやのに!そんなんやから瀧くん、いつまで経っても彼女ができんのんよ!!」
瀧「何だとてめぇ!?そういうお前こそ人のこと言えんのか?!お前だって彼氏いねぇじゃねぇかよ!!」
ああ言えばこう言う……!!つくづく失礼な奴だな……!三葉はどうか知らんが、俺はその気になりゃあ彼女の1人や2人位作れるんだっての!あっいや、流石に2人以上はマズいか……。ここは日本で、アフリカとかインドじゃねぇからな。と言う1人ツッコミはどうでも良い…。とにかく─
瀧三「「俺(私)は作れないんじゃなくって、作らないんだよ(やよ)!!」」
………………………。
ぷっ。アハハハハッ!!
見事にハモっちまって、俺は思わず小さく吹き出してしまった。対する三葉も、同じ様に吹き出して大いに笑っていた。お互いちょっと感情的になってしまったが、こうしてすぐに治まった。良かった良かった。ここで俺は、ミキ先輩に言われたあの事を三葉に打ち明けてみることにした。
瀧「それに何かさ、最後に先輩から言われたんだよ。『今は、他に好きな子がいるでしょう』って………。」
俺がそう言うと、ピタリと三葉が足を止めた。何事かと思った次の瞬間、目を爛々と輝かせて両手で俺の肩を掴んできた。
三葉「えっ、それ本当なん?!どんな子どんな子!?」
前後に俺の肩を忙しなくシェイクしながら訊いてきた。うわわわわ!頭がいてぇ!
瀧「待て待て、落ち着け!ゲホッゲホッ!!」
半ば強引に肩から手を離した。はぁ、死ぬかと思った……。
瀧「それが俺にもよく分からねぇんだよ……。」
三葉「えぇーーっ!?良いにん、教えくれてもーっ!」
瀧「あのさぁ、分からねぇのに教えろって無茶言うなよ……。」
三葉「ん~……。納得いかんけど、まぁ良ぇわ。」
三葉が不服そうに不貞腐れた。やれやれ………。
三葉「所で話が逸れるんやけどどうしよう?皆に入れ替わりのこと、伝えとく?」
瀧「いや、それはまだ伏せといた方が良いんじゃねぇのか……?考えてもみなよ、急に『私達、実は3年の時を隔てて入れ替わってました!』なんて言われたらさ、お前信じられるか?」
そう言うと、三葉は確かにと思った。うんうん、こう言う理解が早くて何よりだ……。
瀧「とは言え、いつかは必ず伝えねぇといけねぇから、その時になってからでも別に遅くはねぇんじゃねぇか?」
三葉「そうやね。じゃあ、今はまだばらさんで良いんよね……?」
瀧「の方が無難だろ?下手に何か思われてもお互い嫌だしな……。」
ここで俺は、3年前に飛ばされた時点で思っていたことを思い出した。
瀧「なぁ。折角だし、メアドとLINE、交換しようぜ。」
俺がそう言うと、三葉はハッとし、そして今度は笑顔を向けた。
三葉「うんっ!えぇよ!」
俺達はそうしてメアド、LINEを交換した。電話番号は入れ替わりの時に教えてて、変わってないから省略した。あっ、電話番号と言えば……!
瀧「なぁ、三葉。電話が本当に繋がるか、掛けて良いか?入れ替わりの時、電話を掛けたことが何回かあったんだけど、その時通じなくってさ……。」
俺がそう言えば、きょとんとした。それでも、今度は優しく微笑んでくれた。
三葉「そうやね!、じゃあどうぞ……!」
そう言うと、お互いスマホを手にした。俺は早速三葉の電話番号を出し、電話を掛けた。すると今度は不在を知らせる機械音声が流れず、三葉の携帯がしっかり鳴った。三葉は嬉しそうにスマホを耳に当てた。
瀧「どうだ三葉、聞こえるか?」
三葉「うんっ!瀧くんの声がしっかり聞こえるよっ!瀧くんはどう?」
瀧「無論聞こえてるぞ。三葉の声だな!」
電話も通じることを確認すると、通話を切り、スマホをポケットにしまった。
瀧「良かった。お前に何回か連絡しようと電話を掛けたんだけど、悉く繋がらなかったから不安だったんだよ。」
まさかあんなことになってたなんて……と言う言葉も付け足して三葉に伝えた。
三葉「うんっ!私も瀧くんの番号に何回も掛けたんやけど、それでも掛からんかった………。でも、これで瀧くんといつでも連絡とれるね!」
三葉は笑顔満開で喜んでくれた。
そうこうしている内に、俺達は三葉の家に辿り着いた。三葉がぴょんぴょんと俺の前に飛び出て、まるでウェイトレスかメイドみたいに軽く目を閉じ、軽くお辞儀した。
三葉「は~い着いたで~。ようこそ我が家へ。」
瀧「入れ替わりの時に何回も見てはいたけど、改めて見たら本当に大きいな……!」
三葉「うーん……。ウチって別に大家族って訳やないから、別にここまで広くなくても良ぇんやけどなぁ…。」
そりゃあ家族は3人だけだしな。いや、厳密に言えば親父がいるけど、色々いざこざがあって今は別居中だから、実質3人か……。
三葉「じゃ、中入って~。」
瀧「おぉおぉ、やっぱ前と全く変わってねぇな……!」
本当に三葉の家は外装だけじゃなくって、内装もだいぶ凝ってる。木の特徴が余すことなく引き出されている。見た感じ、釘やら何やらを殆ど使ってねぇな……!!今時中々お目に掛かれねぇから珍しい……!流石は代々神社をやっているだけのことはあるぜ……!きっと司や真太も見たら興奮するだろうな。そんな事を考えながら玄関の中に入ろうとしたら、急に三葉の背中にぶつかった。急に止まったのか?何だ?
瀧「おい三葉。中に入れねぇんだが……。」
三葉「あっ、ごめんごめん。えっとこれなんやけど………。」
三葉は何か指差してたから、俺も覗いてみた。これは…、下駄?
瀧「婆ちゃんのじゃねぇのか?」
三葉「ううん。婆ちゃんがいつも履いてるのは草履やよ。確かに下駄も持ってるけど、それでもこんなんはウチに無いはず……!」
??「あっ、お姉ちゃんお帰り~。」
俺も三葉も戸惑っていると、廊下の奥からタタタタッと規則的な音を立てながら出迎えに来た。あれは……、妹の四葉ちゃんか。そう言えば入れ替わってた時、よく起こしに来てたよな……。そうのんびり思ってると、四葉の表情が今度は驚きに変わった。
四葉「おっ、お姉ちゃん……!!いつの間に彼氏作っとったん……?!」
瀧「っんなっ…………!!?」
こいつ、いきなり何言ってんだ!?何か色々ぶっ飛ばしすぎだ!!
三葉「ちっ、違うわ!!瀧くんは東京から来た転校生で、遊びに連れてきただけやよ……!別にそんな関係って訳じゃあ……!」
あらら……。三葉の奴、見事にパニック起こしてやがる。まぁ気持ちは分からなくはねぇけど、そこまでか……?いや…、そこまでだな!
四葉「えっ!東京からの転校生なん?!」
先程の三葉の発言を聞き、今度は俺に驚きの目を向ける。うわあっ、ビックリした!
瀧「あっ、あぁそうだよ。ついでに言えば新宿からだよ。ほら、東京都庁とか歌舞伎町とか新宿御苑って言う大きな公園とかがある所だよ。」
四葉「でも奇遇やね。実は私のクラスにも転校生が1人来とって、今ウチに遊びに来とるんよ。」
何?転校生だと??隣で三葉を見ると、同じ様に驚いてた。この感じ、何か察しが付くんだが……!
??「四葉ど~ん。」
俺達が立ち尽くしていると、再び廊下の奥から声が聞こえた。そこから現れたのは、薄いピンク色(桜色とも言うよな)の着流しを着た少年だ。やっぱり、こいつも御神体に一緒にいた奴だ……!何となく想像は付いてはいたが、こいつだったのか……!?俺もだが、三葉も目を見開いていた。そんなこいつは俺達を見るなり、少し意味ありげに微笑んだ。
??「初めまして……、いや、さしかぶり……と申した方が正しいでごわしょうか?瀧どん、三葉どん、おはんらにゃあ、兄上が世話になっているでごわすな……!」
三葉「えっ、兄上って……??………!」
瀧「あっ?!こいつの兄貴ってまさか………!!」
服装から喋り方までこの和風を思わせる雰囲気と言い、どこか独特な何かを感じさせるこのオーラと言い、何よりも転校してきた初日に教室から白杖を地面に向けてぶん投げた三重県伊賀市出身のアイツに顔がそっくりだ。誰とは言わねぇが、きっとそう言うことなんだろうな……!
四葉「あれ?隼也くん、お姉ちゃん達を知っとん?」
隼也「うんっ。まぁ、話せば長くなるんでごわすがね。では改めて、おいどん、西部隼也(にしべじゅんや)と申す者!出生国は薩摩の国、鹿児島県霧島市でごわす!又、慶影の弟に候う!以後お見知り置きを。」
やっぱりか!慶影の弟だったのか、こいつ!!年は離れているものの、道理でよく似てる訳だ。にしてもマジかよ?!ここまで姿勢正しく深々と頭下げれるのかよ……!?小4って事は、年齢は9か10歳な訳だ。そんな奴がこんな丁寧に挨拶ができるとは物凄く驚いた……!相当礼儀作法を、厳しく細かく頭に叩き込んでるんだな……!純粋にすげぇな……!まぁ、それはそれとしてだな。
瀧「三葉、お前さっきから何ニヤけてんだ?無気味だぞ。」
そう言うと、俺に失礼やなと言って軽く睨んできた。いや普通誰でもそう思うって……。そう思うのも束の間、再びニヤけ顔を四葉に向けた。
三葉「ははーん。そう言う四葉こそ、彼氏なんかいつ作ったんー?お姉ちゃんのこと言えるん~?ん~??」
成程そう言うことか……。さっき妹に『彼氏作ったん?』って言われてたのをかなり根に持ってるんだな……。大人げねぇな、オイ…………。俺は思わず『お前ガキかよ』とツッコみそうになったが、余計面倒なことになりかねないから敢えて口にしないことにした。四葉ちゃん、不憫だな……。そう思っていた時、四葉ちゃんがさっきの三葉みたく動じることはなく、ここで隼也が三葉に口を開いた。
隼也「うんにゃ、残念ながら違うでごわすど。確かに、四葉どんはわっぜむぜたぁ思うでごわすが、そう言う関係にゃあならんでごわす!これからも最高の友として付き合っていこうと思うでごわすどっ!」
隼也が微笑んでやんわりと返した。うわぁー……、隼也の方が三葉よりよっぽど大人じゃねぇか……。少なくともこの中で、精神年齢が1番幼いのは三葉なんだろうな~……。完全に予想外で目が点になっている三葉と、勝ち誇った様な笑みを浮かべる四葉、先程の純粋な笑顔を崩さない隼也を交互に見る。やべぇ……、滅茶苦茶笑える……!!流石にここで笑ってやった三葉が可哀想だから、どうにか堪えねぇと……!いや、と言うかもうムリ……!!
瀧「ぶっ!!はははははっ!!」
我慢できず、盛大に吹き出した。すると目が点だった三葉が、今度は俺を睨んだ。
三葉「ちょっと瀧くん!!何で笑うん!?」
瀧「何か面白くってさ……!!悪ぃ……、はははははっ!」
三葉「もーーっ!!笑わんでーーっ!!」
俺の胸をポカポカ叩きながら怒る三葉。これはこれでどうなんだよ……?
隼也「四葉どん、2人共ないごっな?」
四葉「単なる夫婦喧嘩やよ。気にせんといて~。」
隼也「んだもしたん、そげんな。」
あからさまにニヤニヤしながらこっちを見て、そんな会話をしている2人。隼也が方言丸出し何言ってるのか全く分からねぇが、今の俺達にとっては良からぬことを言っていることだけは何となく分かる気がする(そうに違いない)……!聞き捨てならねぇ……!
瀧三「「夫婦じゃねぇ(やないよ)!!」」
くっそコイツら……!!完全に楽しんでいやがる……!隼也のあの礼儀正しさにはかなり感心したが、やっぱりこいつも所詮は小4だな……。まだ2人共ケラケラ笑ってるじゃねぇか……!
??「あらあら、何や玄関が騒がしいわね~。」
完全に2人に翻弄されている時、今度は奥の部屋(恐らく居間か台所)から女性の声が聞こえ、規則的な足音がこちらに近付いてくる。何だ……?トーンからして明らかに婆ちゃんの物じゃあないこの声、入れ替わっていた時に家は愚か、糸守町ですら聞いたことはなかったのに、何故かこの声をうっすらと覚えている……?それも最近聞いたような……、そんな気がする……!試しに三葉に視点を変えるが、何やら話しづらそうな複雑な表情を浮かべてた。こいつはどうやら事情を知っているっぽいが、どういうことなんだ……??そうして遂に、その声の主が姿を現した。
………………………………えっ?
俺はその姿を確認した途端、言葉が出なくなった。何故ってこの人は紛れもなく─
四葉「あっ、お母さん!」
三葉と四葉の実の母親にして2人がまだ幼くして亡くなった筈の、そしてあの時、御神体で俺達をこの世界に飛ばしてくれた張本人の、宮水二葉さんだったからだ。
二葉「三葉、おかえりなさい。そっちの子は……、三葉のお友達かしら?いらっしゃい。」
二葉さんは俺達に笑顔を向けてそう言う。ちょっと待て……!!一体全体何がどうなってやがんだよ……!?
隼也「んーにゃ!ただの夫婦でごわすどっ!」
二葉「うふふ、おやまあ。」
三葉「ちーがーーうってばーーーっ!!」
頭の整理がまだ全く追い付かねぇが、何だこの光景……。『小4に振り回される女子高生』か……、何か新しいバラエティー番組の企画が組めそうだな……。にしたって凄いシュールなんだが……。
二葉「ご飯できとるでね、手を洗って居間にいない。」
「「は~い。」」
そう言うと、2人はトテトテと居間へ向かった。それを見届けると、二葉さんが今度は俺達に目を向けた。そして、クスッと笑った。
二葉「お久し振りね、瀧くん♪覚えてくれてて何よりやね。それと無事、来れたみたいやね。」
瀧「なっ、何で二葉さんがここに……?!三葉の記憶通りなら、二葉さんは既に亡くなってるはずじゃあ……!!」
二葉「それなんやけど、実はもう病気は治ってるんよ。免疫細胞も正常運行やし、それ以外も至って健康そのものなんよ。」
笑顔を崩さず俺に話してくれる二葉さん。すると次は、もっともと言い、パチッとゆっくり目を閉じた。
二葉「─私が死ぬ直前、ここじゃ見ないあるスーパードクターが深夜こっそりやって来て、彼の手によって病気は後遺症を残すことなく完治したの。大きな医療機器を使うこともなく、手術の時間もたった4分やったよ。」
瀧「!??」
はっ……??どう言うことなんだ?手術に医療機器をほぼ使わない……?それで手術自体はものの4分……?それで何事もなく病気が完治したって……??訳が分からねぇ………!!
瀧「あの、それってどう言う─」
俺が堪らず訊こうとすると、二葉さんに口元に人差し指を立てられ、発言を遮られた。
二葉「今はまだ言えんけど、時が来たらその時にちゃんと言うでね。やから、それまで我慢しといてね。」
ぐっ……!何だよそれ、生殺しじゃねぇか……!!俺が不服そうに表情を歪めると、三葉が優しく話してきた。
三葉「あのね、お母さん、私にも全然口を割らんのんよ。やから気になるけど、ここは一先ず我慢しよう?ね?」
そうだったのか…!二葉さんがいることもそうだろうけど、同時に事情を教えてくれなくて三葉でも状況がよく分かってないからあんな複雑な表情をしてたんだな…。一体二葉さんが何を考えてるのかは知らねぇけど、そりゃあ実の娘である三葉にすら話さねぇんなら、その意思は堅いんだろうな。だったら、今はそれを汲んでやるしかねぇってことか。
瀧「分かりました。そしたらここではそこは気にしないことにします。」
二葉「ありがとう。良かったわ、聞き分けの良い子で。」
俺の言葉を聞くと、満足そうに二葉さんが笑った。やっぱこうして見てると、本当に三葉の母さんなんだなって思うな………。確かによく似てら……!
二葉「2人も、お昼ができてるから、居間においで~。お腹減ったやろ?」
瀧「えっ?良いんですか?」
二葉「勿論やよ。居間にお母さんもおってな、瀧くんのことを言ったら、是非話をしたいって。やから上がって!」
彼女はそう言い残すと、居間へ戻った。取り残された俺と三葉は、暫くお互い目を合わせた。するとぐぅ~と言う間抜けな音が鳴った。あっ、俺の腹からだ……。そう言やまだ昼飯食ってなかったっけな……。流石に腹の虫が痺れを切らして鳴いたのか。
瀧「じゃあ、俺達も行くか?」
三葉「そうやね。行こっか。」
取り敢えず2人で、三葉の祖母の一葉さん、二葉さん、四葉ちゃん、隼也が待つ居間へ向かった。
~瀧sideout~
~三葉side~
一葉「それじゃ、頂こうかの。」
「「「「「頂きまーす。」」」」」
居間に来た私と瀧くんは荷物をテレビの近くに置いた。それから瀧くんが軽くお婆ちゃんに自己紹介をしてから、皆と同じ様に卓袱台の回りに座り、両手を合わせて食前のお決まりのワードを唱和する。今日のお昼御飯は、白ご飯、豚汁、玉子焼き、鰆の西京焼き、お漬け物やね。どれもお母さんが作ってくれた物や。早速箸を魚に伸ばし、口に放り込む。うん、美味しい。こう言う些細なことにも幸せを感じるんよね。
瀧「あっ、旨ぇ。」
二葉「ふふ、良かった。」
瀧くんも美味しそうに食べてる。何やこうして見ると、瀧くんって結構可愛い所もあるんやね♪
それにしても驚いたのは、隼也くんは耳が聴こえんってことや。四葉が食事に没頭する隼也くんに何か言う度に肩を叩いてたから、何事かと思って訊いてみたら、隼也くんが全聾って言ってて、最初は分からんかったけど、四葉に聴覚障害者やよって言われてハッとした。じゃあ何で玄関では普通に会話が出来たんかって訊いてみたら、それは『対面』してたからやって言ってた。と言うのも、隼也くんは耳こそ聴こえんものの、間違っても『言葉が分からない』訳やないらしくて、相手の口と舌の動きさえ見ることができたら、相手が何て言ってるのか分かるんやって(これを『口語法』って言うらしいんやよ)……!つまり、自分の視界にいる人との会話は出来るけど、それ以外の人とは会話が出来んみたい。慶影くんは目が全く見えん全盲で、その弟の隼也くんは耳が全く聴こえん全聾。2人して重い障害を抱えているのにここまで堂々と生きれるなんて、相当メンタル強いんやね…!!本当にリスペクトや……!
まぁそんな感じであっという間に皆お昼を平らげ、今、卓袱台にはデザートのプリン(私、瀧くん、四葉、隼也くんの分)が鎮座している。私達がプリンを食べてる傍らで、お婆ちゃんとお母さんは熱いお茶を飲んでいる。お婆ちゃんが一口お茶を飲むと、瀧くんを見る。
一葉「瀧さん、あんた、三葉になっとったやろ?」
うっそ!?まだ言ってないのに、何でお婆ちゃん知ってるん?!話を急に振られた瀧くんも大慌てや…!
四葉「何言ってるんお婆ちゃん??そんな訳ないやん?」
隼也くんはともかく、当然事情を知らない我が妹は怪訝な目でお婆ちゃんを見る。まぁ、それが普通の反応やよね。けど生憎やけど、それって本当なんよね……。すると慌てた瀧くんがこっちに視線を向けた。多分、入れ替わりのことを言っていいかって確認してるんやろう。そう受け取った私は、コクリと頷いた。
瀧「ううん、四葉ちゃん。婆ちゃんが言う様に、確かに俺と三葉は定期的に入れ替わってたんだ。」
瀧くんは真剣な眼差しで、皆にそう切り出した。目を閉じて真剣に聞こうとするお婆ちゃん、にこやかに笑うお母さん、真剣な目を向けて事情を改めて理解しようとする隼也くん、そして唯一事情を全く知らない四葉に見守られながら、瀧くんは入れ替わりのことについて順を追って話し始めた。
~三葉sideout~
~瀧side~
一葉「そうかいそうかい。そんな事があったんやね……。」
二葉「へ~、そうやったんか。」
隼也「ふぁ~、んな事が……!!」
四葉「えっ?!皆ホンマに信じるん!?正気?!」
俺が一通り話し終えると、婆ちゃんと二葉さんはお茶を飲みながら、隼也はプリンを食べながらそうこぼした。三葉は緊張しているからか、プリンを食べようとしてスプーンを手に持ったまま動かせずにいた。唯一、四葉だけは未だに疑いの目を向けていた。
一葉「信じるも何も、ワシにも二葉にも同じ様な事があったんよ。あたかも全く知らん人の人生を過ごしとったことがある夢を見とったことがの………。」
うんうん、それはあの避難計画を組む前に、婆ちゃん本人から聞いたから知ってる。でも三葉は『えっ!?』と溢してたから、三葉は知らなかったんだろう。
四葉「そうなん……?!」
二葉「うん。お母さんは分からんけど、私にもあったんやよ。それも今の三葉と同じ位の時期にね。」
四葉「お母さんも…!」
婆ちゃんから、二葉さんも入れ替わってたことがあったって聞いてたけど、やっぱ本当だったんだな……!!三葉が次々に暴露される事実に更に目を見開いていた。
一葉「まぁ事情が何であれ、夢は夢や。どんなに大切やと思っとってもいつか必ず忘れてまう。せやから三葉も瀧さんも大事にしないよ。」
二葉「そうやよ。これもきっとムスビやからね。」
四葉「そっかぁ~……!!…!あっ!やったら、毎朝しこたまおっぱい揉んどったのも納得やね……!!」
……………………おい。
四葉ちゃん、今『毎朝』ってはっきり言ったよな……。三葉がいる中ではっきりそう言ったよな……?!
こん畜生ーーーーっ!!いらねぇこと言いやがって!!
……!?何だ………、この強烈な悪寒は………!?俺はまるで壊れたロボットみたいに恐る恐るそのただならぬ気配の方に振り向いた。そこにはにっこり笑ってる三葉が目に飛び込んだ。表情こそ笑っているが、目の奥が全然笑ってねぇ……!!むしろ凄まじい殺意すらも感じる……!怒ってる三葉も結構かわいいな………って、そんな暢気なこと考えてる場合じゃねぇぞ、俺!!自分の顔から物凄い量の汗をかいているのが何となく分かった。人間って極限状態に追い込まれた時ってこうなるんだな……!
三葉「ちょっと瀧くん……?これがどう言うことなんか、説明してもらうでな…。」
ひっ?!
こいつにもこんな低い声が出せるのか……!凄くビックリだ。思わず震え上がっちまったじゃねぇか。
隼也「瀧どん、おまんも中々のぼっけもんでごわすなぁ~~!!ヒューヒュー!!」
黙れ小僧!!囃し立てるんじゃねぇ!と言うかそれより、毎日自分の姉を側で見続けている四葉からあんなこと言われたし、俺がこうして焦ってる時点で、もう隠しきることはまずできないだろう……。俺はそう悟り、正直に謝ることにした。
瀧「あー……、それは所謂思春期と言うか出来心と言うか……!何と言うか……、ごめんなさいっ!!!」
勢い良く両手をパチンと合わせ、俺はなるべく精一杯の誠意を込めて深々と頭を下げて謝罪の言葉をかけた。
三葉「何が思春期や!!何が出来心や!!あれほど触るなって言ったやろ!?アホっ!!バカっ!!変態っ!!」
物凄い勢いで俺に怒号を浴びせる三葉。うわぁ~……。何かあれだな……、ガキっぽくて本当に可愛いな……。何たって、頬を赤くして膨らませてるんだぞ?感想としては、『怖い』よりも『可愛い』の方がよく当てはまるな。俺は表では申し訳なさそうな表情を作っているが、内心では冷静にそう分析していた。更に追撃しようとする三葉に、まぁまぁって言いながら二葉さんが肩をそっと押さえた。
二葉「三葉、落ち着きない。もう良ぇやん、過ぎたことをそんなに言わんでも。瀧くんもこんなに反省しとんやし……、ね。」
ここで二葉さんの思わぬ助け船が出た。流石にまだ色々洗い出されるのはごめんだと思ってたからちょうど良かった。そうすると三葉が不本意ながらではあったが、何とか収まった。良かった……。俺はホッと一息吐いた。それでも三葉は、『後で覚えてろ』的な目で俺を睨んできた。
四葉「あのさぁ、お姉ちゃんと瀧さんって、ホンマにどう言う関係なん??いくら入れ替わっとっただけや言ぅても、それだけの理由で普通ウチに連れ込むん?」
突然、四葉ちゃんからそんな質問が飛び込んだ。ん、何だ急に?どう言う関係って、まぁ、入れ替わってただけで……、別にそれ以上でもそれ以下でもねぇわな……。
三葉「どんな関係って言われても、入れ替わっとっただけやし……。ただそれだけやよ?」
三葉が無難に答えを返した。まぁ、別に嘘じゃねぇよな。すると、何故か四葉ちゃんがあからさまに期待外れみたいな表情を浮かべた。こいつ、一体何に期待してたんだよ……。
三葉「何でそんな露骨にガッカリするんよ…。」
四葉「だってお姉ちゃん、瀧さんと付き合ってるんやろ?」
三葉「付き合ってない!」
四葉「えっ?でもお姉ちゃん、昨日何かぬいぐるみ抱えて『早く会いたいよぉ、瀧くん……。』、みたいなこと言ってたよね?じゃああれは何やったん??」
えっ……?
こいつ、昨日そんなこと言ってたのか……?!驚かせる為とは言え、こいつには悪いことしちまったな……。
三葉「まだ付き合ってないんやってば!!私やって叶うんなら早く瀧くんと─」
!?
待った!こいつ、今何て……!?これには俺もだが、散々おちょくってた四葉ちゃんや隼也(聴こえはしないが)も流石に耳を疑い、ただただ驚いた。自分の発言に気付いたのか、途中でハッとした三葉は、顔を真っ赤にさせた。
三葉「なっ…、何でもないんよ……!本当に何でもないんやからねっ!!」
そう吐き捨てると、そのまま忙しなく居間から出ていった。
………………………………。
暫く静寂が、居間を支配した。いくら恋愛系に鈍感な俺とは言えど、今さっき三葉が言わんとしたことが流石に分かった。何となくだけどな。俺だってそれが分からねぇ程無知じゃねぇ。俺は何か居ても立ってもいられなくなって、そして感情が高ぶったからとは言え、伝えようとしてくれた三葉にせめて報いるよう俺の気持ちを伝える為に、あいつの後を追うことにした。
瀧「あっ、ご馳走さまでした。美味しかったです。」
だが、一応食後なんで、その感謝の言葉だけは忘れず言って、荷物を持ってあいつがいると思われる場所へ足早に向かった。プリンは大急ぎで平らげたぞ。
~瀧sideout~
~三葉side~
私は1人自分の部屋で体操座りして号泣してた。
はうぅぅ~~~~!!
どーーしよーーー!
瀧くんにあんなこと聞かれちゃったああああ!!それも皆がいるあの場所でえええ!!
瀧くんへの怒りを一先ず抑えたは良ぇけど、四葉から唐突に瀧くんとの関係を訊かれた時、色々想像してまったやんか~……。そりゃあ私としては、瀧くんの彼女になりたいし、あわよくば心だけやなくって体も繋がっちゃったような関係も………って、そこまで言うことないやん!!
でも、少なくとも瀧くんの恋人になりたいって言うのは凄く本当なんやよ。現に、ミキ先輩とのデートが失敗したことを聞いた時、内心ひっそり安心しちゃったし。ミキ先輩はどう思ってるんか知らんけど。瀧くんが言ってた、『他に好きな子がいるでしょう』って話、私のことやったら嬉しいなぁ……。
でも瀧くん、凄い競争率高いし……。だって瀧くんが窓から脱走した後、6~7割の女子が瀧くんの噂しとったもん。『かっこいい』とか『タイプかも』とかそんな感じの。黄色い声があちこちで上がったもんね……。確かに瀧くん、イケメンやし、それでいて性格もとても真面目やし、料理も上手やし……。数えたら切りがない位や。まぁ、ちょっとエッチなのが玉に瑕やけど、それさえ除けば本当に言うことはない人や。そんな瀧くんに私が果たして釣り合うんか、凄く怖いんよね……。
サーーーッ。ストン。
あれ、襖が開いて閉まった音がしたけど、お母さんか四葉でも来たんかな?そう思ってると、今度は肩を叩かれた。顔を起こすと、そこにはお母さんでも四葉でもなく、正しく私が考えとった瀧くん本人がおった。あれ、何や瀧くんがぼやけて見える……。
瀧「三葉。」
瀧くんが心配そうにこっちを見てくれてる……。『大丈夫やよ』って言いたいんやけど、泣いとるせいで上手く口が動かせない。
瀧「三葉、さっきお前が言いかけたこと、俺に教えてくれないか?」
嫌や……。いや、本当は伝えたいけど怖いもん……。瀧くんに振られちゃうのが……。私は分かりやすく顔を横に振った。そんな様子を見て瀧くんは特段動揺することなく、今度は何か考え出した。どしたんやろ?瀧くん、何か頭から電球が光ったようにハッとして、私に微笑んで言葉を続けてくれた。
瀧「じゃあこうしよう。三葉、ただで教えろとは言わねぇ。まずは泣き止んでくれ。そしたら俺、お前に秘密のことを教えてやるから、それから今度はお前が何を言いかけたか教えるってのはどうだ?これならフェアだろ?」
えっ……!?秘密を教えてくれるんや……!!知りたい!それやったら頑張って泣き止まんと!!私はそう思い、急いで近くのティッシュとタオルを顔に押し当てた。ちょっと強情やけど、何とか泣き止んだで!そんな私の様子を見ると、今度は引きつった表情を浮かべた。
瀧「おいおい………。お前には『ムード』の欠片もねぇのかよ……。」
三葉「良いにんっ!何や分からんけど、瀧くんの秘密を知れるんならそれで良いんや!」
それを聞くと、まぁ良いけどとため息混じりに呟く。そんなことよりも─
三葉「瀧くん!私、泣き止んだで!秘密を教えてっ!」
瀧くんの秘密か……。どんなこと教えてくれるんやろ……?楽しみやなぁ……!
~三葉sideout~
~瀧side~
やれやれ……。こいつ凄い勢いで泣き止みやがったな……。そりゃあ確かに『秘密を教えてやる』って言われたら、知りたくなるモンだけど、ここまでか……?ま、この際それはどうでも良いけど……。取り敢えず事情が何であれ、泣き止んだんだ。約束通り、俺の秘密を教えねぇとな……!!
瀧「あのさ、帰り道に話したじゃん。ミキ先輩から他に好きな子がいるんじゃないかって話。お前に話した時、俺にもよく分からねぇって言ってたけど、あれ嘘なんだ。勿論、すぐには分からなかったのは本当だけど、よくよく考えてみたら、意外と簡単に分かっちまったんだよ。だから、その好きな子について、お前に教える。凄く恥ずかしいから1回しか言わねぇぞ。」
俺は真っ直ぐ三葉を見つめながら話す。対する三葉も正座に直して不安そうな目をしながらも、真っ直ぐ見つめ返して俺の話に一生懸命耳を傾けている。だから俺も、余計なことは一切考えずに伝えることにした。こいつだって、伝えようとしたんだし、ここまで来たら今更引き返すわけにはいかねぇ…!俺もずっとあった気持ちを、いい加減伝えなきゃな………!俺はそう腹を括り、口を動かした。
瀧「そいつは俺をバカ呼ばわりするだけじゃ飽き足らずに、俺の財産をカフェでパンケーキやら何やらで散財して、人の人間関係を勝手に変えやがった奴でよ……。そうやって人には余計なことばかりしてるけどその実、自分のこととなるとまるで何かに縛られてるみてぇで塞ぎ混んで、無理矢理我慢してて放っておけねぇんだよ……。」
三葉「……うん。」
瀧「もっと分かりやすく言おうか?そいつは代々神社の家系で、ど田舎に暮らす奴で、俺と定期的に入れ替わってた奴なんだ………!」
三葉「えっ……!?」
ここに来て、心拍数が物凄い上がってるのが実感できるが、もうここまで来たら、後は野となれ山となれだ。さぁ行け、俺!俺は意を決して、次の言葉に繋げた。
瀧「三葉、俺はお前が好きだ!どうしようもない位に好きなんだ!だからその……、お前さえ良いんなら、付き合ってくれ!!」
三葉「……………瀧くんっ!!」
目の前にいた三葉が俺に勢い良く抱き付いてきた。俺はそれをしっかりと抱き留め、背中に手を回す。
三葉「ほんまに……、ほんまに私で良ぇの……?!」
目元に涙を溜めて、顔を上げて上目遣いでそう確認する三葉。色々思うことはあるが、今の俺の感想を分かりやすく一言で言おう。めっちゃ可愛い…………!!これ、反則だろ……!
瀧「当たり前だろうが。俺には三葉しかあり得ねぇよ……!」
抱きしめる腕に力を加える。三葉は涙のせいで少しだけ赤くなった瞳でこっちを見つめている。
三葉「瀧くんの秘密、ちゃんと聞いたで……。やから今度は私のあの言葉の続きを言うでね……。」
そう切り出すと、俺はコクリと黙って頷く。本当に可愛いな……。
三葉「早く瀧くんと、お付き合いたいって言おうとしたんやよ。やから瀧くん、私を瀧くんの彼女にして……!」
こいつ、本当に嬉しいこと言ってくれるじゃねぇか……。いや何だなしかし─
瀧「当然だろ?と言うか、これじゃあお前からコクってきたみてぇじゃねぇかよ……。」
三葉「良いにん。強ち間違っとらんし……!」
瀧「それもそうだな。」
そう言うと、お互いクスリと笑いあった。
「瀧くん………。私とキス……して?」
目に涙を溜めながらも、俺に満面の笑みを向けてそう言う三葉。こんな美人が俺の恋人か……。幸せだな……。そんな可愛い彼女から頼まれたら、やることは1つだ。
「……あぁ。」
「…………んっ//」
お互い目を閉じ、三葉を抱き寄せた。そして遂に、俺は初めて自分の意志で、好きな女の子にキスをした。最初は長々とはやらずに、お互いすぐに離した。
三葉「えへへ……。瀧くんに私の初めて、あげちゃった………///」
はにかんで笑いながら三葉がそう告げた。だあああああ!俺の彼女、贔屓目なしでマジで可愛すぎるわ!!
瀧「お…、俺も初めてだったぞ?その何だ……、……キスするの////」
三葉「そっか……//なら、沢山キスして、慣らしていかんとやね……///」
三葉は、はにかんで目を逸らして唇を分かりやすく突き出しながらそう言った。遠回しに……、まぁそう言うことなんだろうな……。と言うか、『慣らしていかんとね』って何だよ?まぁ良いけどさ。
瀧「分かったよ//なら行くぜ……//」
三葉「うんっ//」
俺達は再びお互いの首に手を回し、抱き寄せてもう一度キスした。今度は長めのキスだ。俺も三葉も少しでも長くキスを共有しあう。何となく目を開けると、襖が若干開いているのが見えた。
………………………えっ??
待てよ。俺あの時、ちゃんと襖閉めたよな?そうさ確かに閉めた筈だが……?!開いている襖の隙間を見ると、にやにやこっちを見ている四葉ちゃん、同じくにやつきながらスマホのカメラをこっちに向けている隼也、微笑む二葉さんが見えた。
ぅおいっ!!?
俺は慌てて三葉を突き放した。
三葉「んっ……//瀧くぅん、もっとぉしようよぉ~……。」
瀧「バカッ!!お前あれを見ても同じ事が言えるか?!」
三葉「ほぇ………??ーーーーっ!?」
甘ったるい声でまだキスをせがんでくるせいで、危うくその欲に負けそうになる。こうなってしまえば間違いなく俺はそれを甘んじて受け入れてる。但し、この状況じゃなきゃな!!俺は目でこいつの後ろを合図した。すると三葉も何となくそれが分かったのか、後ろに向き、顔全体を真っ赤にさせた。王道の表現をすれば、まるで熱々に茹で上がった蛸みてぇだ。
三葉「みっ………、みみみ皆、いいいいいつからそこに………?!」
四葉「うーん…、瀧さんが『さっきお前が言いかけたこと、俺に教えてくれないか?』って言ってた辺り位かな?」
瀧「おいこら、それほぼ最初じゃねぇか!!」
こいつら……、そんな前からずっといたのかよ………!!何でもっと早く気付けなかかったんだよ、俺……!
三葉「それじゃあ、お母さんもずっと見とったてことなん……?!」
二葉「うんっ♪いやぁ、若いって良ぇなぁ~。ロマンチックやったわぁ~♪」
三葉「わああああ!言わんといてえええ!!」
二葉さん、あんたって人は………。本当にこの人、掴み所がねぇな……。二葉さんもだが、それよりも気になるのは─
瀧「隼也、お前さっきまで何してんだ?その手に持ってるスマホで何してんだ?」
最初発見した時から、こいつはスマホをこちらに向けていた。嫌な予感しかしねぇが、どうしても訊かねぇわけにはいかなかった。
隼也「いやぁ、最高の思い出として録画してたんでごわすど~!我ながら力作でごわすっ!!えっへん!!」
ふんすと鼻息を少しばかり荒げ、自信満々に先程まで録画していた動画をそのまま流す。やめろ……!!一連の出来事を思い出すだけでも恥ずい……!
瀧「なぁ隼也。そのスマホ、俺に出してくれるか?」
俺は努めて笑顔で隼也にそう言う。早急に回収して、何としても消さねば………!!そんな俺の言葉を理解した隼也は、突拍子もない答えを返しやがった。
隼也「ん~?何言ってるんでごわすか?おいどん、みん聞こえんやっで、いっとっ分からんでごわすな~。」
こぉんのクソガキがあぁぁぁぁ!!こう言う時に耳が聴こえないことを利用しやがってえええ!!
瀧「調子に乗るなよ小僧!!!」
俺は隼也を捕まえようとしたが、絶妙なタイミングで後ろに飛び退いてかわしやがった。
隼也「へっへ~ん!おはんにおいどんを捕まえれるでごわすか~?おいどんはそう簡単に捕まらんでごわすどー!」
隼也がそう言うと、足早に逃亡を始めた。流石の四葉ちゃんも開いた口が塞がっていなかった。この際四葉ちゃんは別に良い。それよりもあの野郎…、ふざけやがって………!!
瀧「三葉、捕まえるぞ!」
三葉「えっ?!う、うん!!」
俺は三葉の手を取り、急いで玄関に向かった。この時、一瞬頬を赤らめた三葉が可愛いと思ったのはここだけの秘密だ。玄関に着くと、やはり戸が開いていて、しかも下駄が無くなっていた。外に出たことを理解すると、俺達も靴を履いて手分けして探し出すことにした。
人数が多けりゃあ流石にすぐ捕まるだろ!ましてや地元出身の三葉も一緒なんだ。あいつが何であんなに自信満々なのか知らねぇが、どれだけ自信があってもすぐ見つかる!いや……、見付けてしばいてやる!!
そう思っていたが、2人がかりでどこを探し回ってもあいつを見付け出すことは出来ず、結局夕方前に俺達が三葉の家に戻って居間でバテていた所に隼也から姿を表した始末だった……。
何故、土地勘がある三葉がいても、人数ではこっちが多かったにも関わらず、最終的に見付けられなかったかホント分からねぇ…………。
~瀧sideout~
いかがでしたか?
私事で恐縮ですが、この13~15日、念願の聖地巡礼に岐阜、長野、東京へ行って来ました!本当に映画に出てきたものとほぼ一致して、新海さん達スタッフの画力の高さに圧倒されました……!!高山から諏訪までレンタカーで行ったのですが、何しろあの大雪だったので、10回以上程スリップしかけて本気で死を覚悟しました……。ただ、残念ながらバス停等一部回りきれてないところがあるので、また時間があればその時に行きたいですね(  ̄▽ ̄)
では、ここで本編に登場した方言を紹介します。
・~どん:~さん、~達(鹿児島)
・さしかぶり:久し振り(鹿児島)
・おはん:あなた、お前(鹿児島)
・うんにゃ:いや、いいえ(鹿児島)
・~ど:~よ(鹿児島)
・わっぜ:とても、非常に(鹿児島)
・むぜ:可愛い(鹿児島)
・ないごっな?:どうしたの?(鹿児島)
・んだもしたん:あらまあ(鹿児島)
・そげんな:そうなんだ、そうなのですか(鹿児島)
・ぼっけもん:大胆者(鹿児島)
・みん:耳(鹿児島)
・~やっで:~だから(鹿児島)
・いっとっ:ちょっと、少し(鹿児島)
こんな感じでしょうか?
次回は、新たに忍び寄る影が三葉達に迫るが、その正体とは……?そして、四葉の小学校での出来事も明らかに……!
それでは、今回はこの辺で失礼しますm(__)m