新約、とある提督の幻想殺し(本編完結) 作:榛猫(筆休め中)
前回までの新約、とある提督の幻想殺しは...。
ブルネイの艦娘に一人で相手をする上条提督。持ち前の身体能力と反射神経で六隻相手に圧されることなく勝利する。
その戦いを見ていたブルネイの提督である大将の金城は上条提督に模擬戦を申し込むのでした。
side上条
「よろしく頼むぞ、上条大佐」
「はは、お手柔らかに頼みます」
互いに笑い合うと少しずつ距離を置くため、数歩離れる。
数歩ほど歩いたところで体を反転させ、お互いに向き合う。
それを見て少し遠くから様子見していたブルネイの大淀が審判をするために口を開いた。
「では、これより、上条大佐vs金城大将の模擬戦を行います!
勝敗は相手が気絶、または降参するまで!ルールは一切問いません!」
そう、大淀の言う通り、これはルール無用の模擬バトルだ。
武器あり、卑怯ありのなんでもありの喧嘩だ。
だが、間違っても相手を殺してはならない。
その代わり、死ななければ何をしてもいいといったルールもへったくれもないトンデモバトルだ。
金城大将は間違いなく強い...一発でも貰ってしまえばほぼ確実に動けなくなるだろう。
俺は油断なく構え開始の合図を待つ。
「では、試合...開始!」
先に動いたのは俺だった。
高速で
「おおおぉぉぉぉぉっっ!」
風をうならせながら猛スピードで大将の顔面に迫る右手。
捉えた、そう確信した時だった。
【パシッ】
ぬっと伸びてきた大将の腕が俺の右腕を掴んで止めた。
「おら..よっ!」
そんな掛け声でつかんだ右手ごと俺を背負い投げる金城大将。
「くっ...!」
なんとか受け身を取り、衝撃を殺す。
そしてすぐさま転がり起き上がると体勢を整え、再び向かい合う。
対峙しながら俺はどう攻めるかは思案する。
どうする...大将の体格的に投げや足払いは出来ない。
となるといつも通りに攻めるしかないわけだけど、それだとまたさっきみたいに掴まれて投げられるのがオチだ...。
艦娘相手の戦い方は対人相手だと効果は薄いから使えない......。
だとすればアレを使うしか手はない...。
けど、良いのか?アレを使っちまったらきっと大将もただじゃ済まない、下手したら死んじまう可能性だってある......。
使うべきか、使わぬべきか.....
どうすればいい...?
と、そこまで考えていると不意に金城大将が声を掛けてきた。
「上条大佐、お前まだ本気じゃねえんだろ?なら本気を見せてみろ、俺が大将だからって遠慮することはねえ、お前の持てる全力で掛かって来な!」
「......本当にいいんですね?」
「あぁ、男に二言はねえよ」
「なら、お言葉に甘えて......
見せてあげますよ。俺の実力を」
そこまで言うんなら見せてやろうじゃねえか、俺の対人格闘術...。
水鬼師匠直伝の一子相伝(らしい)の暗殺拳、棲艦鬼拳を!
今までの喧嘩の構えを解き、俺は拳法スタイルの構えに切り替え、金城大将を見据える。
「ここから先は手加減は出来ません、死にたくなければ死ぬ気で防御してください」
「言ってくれるじゃねえか、面知れえ!見せてみろ!」
「はあぁぁぁぁ.........ッッ!!」
息を整え、金城大将に狙いを定めた俺は、地を蹴って跳び上がる。
「なっ!?」
「ホアタァーッ!!」
掛け声と共に放たれる鋭い跳び蹴りが大将の腹部に深く突き刺さる。
「がはっ..!!」
腹を押えて蹲る金城大将。
『デタ―!!出ました!棲鬼飛衛拳!!』
ウチの青葉が叫んでいるが無視を決め込む。
俺は掴まれぬよう少し離れて構えを取りなおす。
しかし、少しすると大将は何事も無かったかのように立ち上がり言った。
「今のは驚いた...まさかこんなに良い一撃を貰うなんて流石に予想外だったぞ」
「その割には余裕そうな顔してんじゃねえかよ」
バケモノかよ...と内心で思う......。
巨漢の男でも裕に吹き飛ばせる威力だってのに、ケロッとしているのだから。
「俺も鍛えてるんでね、簡単にやられてたらここで提督なんかやれねえよ」
「そうかも...なっ!」
再度距離を詰め、ストレート気味に一撃を叩き込む。
「ぐっ...」
「いくぜ、おああっ!!あたたたたたたたたたたたたたたたた...っ!
ほわたぁーーっ!!」
『で、出ましたよー!!奥義!棲艦爆裂拳ーーーっ!!』
またまた何か叫んでいる青葉は無視して金城大将を見据える。
「......お前はもう、死んでいる」
秘孔は突いていないので、死んではいないのだが、一応言っておく。
あの後、理由を聞いたらとんでもなくどうでもいい理由でキレてやりあう羽目になったんだよな......。
などと少し昔の事を思い出すが、今は戦いの最中だという事を思いだし意識を切り替える。
そして金城大将を見ると、効いてはいるようなのだが、あまりダメージは通っているようには見えなかった。
「ふう、中々いいパンチだったぜ」
そのタフさに流石の俺も驚きを隠せない。
「おいおいおい、いくら何でも効いてなさすぎじゃねえの?」
「言ったろ、鍛えてるってよ」
「いや鍛えた程度で付くようなモンじゃねえだろ!」
思わずツッコミを入れてしまう。
「まあ、そんなこと今はどうでもいいんだよ、これで終わりか?なら次はこっちからいくぜ!」
大将が踏込み、超スピードで俺へと突っ込んでくる。
俺がカウンターで返そうとタイミングを計っていると、何処から取り出したのか刀を抜き放って斬りかかってきた。
「うおっ!?」
慌てて身を捻ってそれを躱わす。
「へぇ、良く躱わしたな…ならこいつはどうだ?」
通り過ぎた刀が弧を描きながら戻り、俺に迫ってくる。
それに気が付き、慌てて前転の要領で転がり、刀を回避する。
「はぁ...はぁ...チッ...」
「よく躱すじゃねえか、だが、避けてばっかじゃ俺は倒せねえ...ぞ!」
そう言って勢いよく刀身を突き出してくる。
「ッ...!」
突き出してくる刀身にからめるように右手を伸ばし、刀身を掴み止めた。
「ぐっ...!オラッ!」
右手から血が滴り落ちていく。
「なっ!素手でだと!?」
驚く大将を他所に、俺は左手で刀身の腹部分殴りつける。
【バギンッ】
鈍い音を立て、刀がぶち折れる。
俺は心のままに叫ぶ。
「腕に相当自身があるみてえだけどな、それで自信過剰で天狗になってりゃ意味ねえじゃねえか!
もしも、まだ今まで通り提督業を続けるってんなら...。
まずは、そのふざけた幻想をぶち殺す!」
そうして必殺の右手を振りかぶり、勢い良く突き出す。
それを見た金城大将もその太い剛腕を振り上げ突き出してくる。
「俺もな、お前みたいな若い奴に負けてられねえんだよ!!」
交差する二人の腕......。
お互いの拳はそのまま諸にお互いの顔面へと突き刺さっていた。
「ぐぉっ...!!」
「ぐっがぁ...!」
俺は勢いに負けて吹き飛ばされ、海へと落下する。
あまりにも重い一撃に俺はに意識はもう既になく、そのまま静かに沈んでいくのだった。
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次に目が覚めると、そこはベットの上であった。
「あれ...ここって...」
覚えのない場所に混乱する。
すると、扉が開き、金城大将が入ってきた。
「よぉ、目、覚めたみたいだな、どうだ?身体は大丈夫か?」
「え、あ、はい、なんとか...」
返答しつつ、気絶するまでの記憶を思い出してみる。
思い出せたのは、大将の艦隊と一人で
「しっかしこんな早く起きるとは思わなかったぞ、結構本気で殴ったのに、まさか一時間程で目ぇ覚ますなんてな」
化け物みたいな生命力だな...と大将は笑うが、残念ながら俺にはその時の記憶はない。
大将に殴られた?俺、何か失礼なことでもやったのか...?
まさか右手の不幸が大将の艦娘達に触れちまって逆鱗を買っちまったとかか!?!?
不味い不味い!もしそうだったら早く謝らねえと!
「すみません大将!本当に申し訳ございませんでしたぁ!!」
ベットから跳ね起きてすぐさま土下座して謝罪を入れる。
「おいおいおい、なんで謝るんだよ?」
「え?金城大将に物凄く失礼なことをしたので俺が殴られたんじゃ...」
そう言うと大将はポカンとした顔をする。
そしてすぐさまおかしそうに大笑いを始めた。
「あっはっはっはっは!そうか、それで謝ってきたのか、安心しろ、お前は大将としての俺には何の無礼もしてねえよ、ただちょっと喧嘩しただけだ」
「へ...?喧嘩?」
「あぁ、覚えてないか?なら後で話してやるよ。そろそろ俺も店を開けなきゃいけないからな、折角だ、お前たちを招待しよう、俺に店にな」
「え?店?大将がお店をやってるんですか?」
「あぁ、夜はBarを経営してんだ」
「あの、俺、未成年ですよ?」
「なんだ、まだ未成年だったのか、まあ安心していい、Barととは言ったが、料理も出してる。未成年でも十分に楽しめると思うぞ」
「はぁ、それじゃあお言葉に甘えて...」
「決まりだな、それじゃあこっちだ」
金城大将先導のもと、俺は大将の経営する店へと向かうのだった。
大将に連れてこられた先は鎮守府の執務室であった。
しかし中に入ってみるとそこは全く違う空間で......
幻想殺しと艦娘が交差する時、物語は始まる...。