アイシールド21 強くてニューゲーム   作:ちあっさ

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アイシールド21の二次小説って、
あんまりないし、
あってもBLだし、
あっても更新されていないとかなので、
私の中の妄想を文字にしてみました。
BLにはなりませんので念のため。


1st down プロローグ~小学生時代

小学五年生の春、階段から転げ落ちた。

 

頭を打った拍子に思い出した。

 

世界の秘密を。

 

自分の名は小早川セナ。

 

つまり、

 

ここが「アイシールド21」の世界なのだということを。

 

 

落ち着いて記憶を整理していくと、驚くことに、三人分の記憶があることがわかった。

 

一つ目は、今の自分、小早川セナ、小学五年生。

物心ついてから今までの自分のことだ。原作関係なし。

 

二つ目は、原作の「アイシールド21」の小早川セナの記憶。

しかもこっちの方は、原作をさらに超えて、アメリカに渡ってプロの入団試験に合格し、

クリフォードさんと同じチームに入ってパンサー君と勝負している記憶まである。

この試合あたりから記憶がぼやけているが、自分のことのように思い出せる。

いや、自分のことなんだろう。

 

そして三つ目、これがよくわからん、「アイシールド21」を漫画として読んでいた「俺」。

こいつは名前も顔も一切思い出せない。性別は多分男。

 

いや、自分がセナで「俺」という前世の記憶を少し思い出したのかな?

なんだかごちゃ混ぜになっていてよくわからない。

僕はこんな性格だったか?

違ったような気がする。

セナはこんな性格だったか?

これは少し違うような気がする。もっと大人しく気が弱かったはずだ。

 

……もーいーや、悩んでも今という現実にかわりないし。

今の自分は誰だと自問自答すれば、

「僕は小早川セナだ」とはっきりと言えるので問題なし。

とりあえず、今の僕を「小早川セナ」とし、原作通りのセナを「小早川瀬那」としよう。

 

これは、神様が、僕のこの記憶、過去か前世かパラレルかはわからないが、

わからないということは、つまり気にせずに好きに生きよとのお達しに違いない。

なら・・・原作なんて気にしないでおこう、

僕はここに生きている。

それ以上に重要なことなんてない。

やりたいことをやろう。

僕は………………走ろう。

 

 

で、試しにアメリカ横断デスマーチで習得したクロスオーバーステップを公園で軽くやってみたら、

あっさりとできた。

何というか、体が覚えていた。

 

でも全力では出来ない、やったら足を痛めるだろう、必要な筋力も体の柔軟性も足りない。

40ヤード走では4秒2に遠く届かないし、使っていたいろいろな技、

「デビルバットハリケーン」や「フォースディメンション」等もできない、というか禁止。

イメージは完璧に出来るが、体はついてこない。

 

 

自分で計画を立てて朝晩のランニングを始めた。

アメフトができるのは中学生からだ。

いじめられっ子にカバンを持たされて走らされるのではなく、自分の意思で目的を持って走る。

同じ走るにしても、明確なイメージを持っているといないとでは成果が全く違うという。

 

でも。

 

「よぅ、せな~、おはよ~、じゃ、早く持って走れよな」

と、学校に行く時にいじめられっ子に絡まれた。

 

同じ集団登校班で、毎日ランドセル持たされてたんだから当然今日も会うに決まってるか。

慣れた様子で半ズボンの数人の小学生がニヤつきながらランドセルを地面に置いてさっさと学校へ行こうとしている。

でも当然、以前の僕ではないので。

 

「やだよ、自分で持っていきなよ」

 

と、すげなく断った。

 

一瞬驚いた顔をしたいじめっ子(名前忘れた)のリーダー格は、妙に顔を歪ませながら

ヨタヨタと僕の目の前まで戻ってきた。

後から気づいたんだけど、彼の顔と動きは僕に威圧感を与えるための動作だったようだ。

僕の数センチ前まで顔を近づけて、

 

「せ~な~~~、お前、ナマ言うようになったじゃねえかよ~~~」

と、凄む。

半ズボンで。

 

以前の僕ならビビッて言うことをきいていたんだと思う。

でも、ヒル魔さんと毎日顔を合わせ、進さん、阿含さん、我王さんら強者と対戦してきた記憶がある

僕からみれば、小学生の恫喝は、なんというか、微笑ましかった。

 

「もっかい行ってみろよ、あっあ~ん!」

芝居がかっている、ヤンキー物のテレビドラマか漫画でも見て練習したっぽい。

現時点で僕より背が高いけど、半ズボンで声変わりしてない甲高い声じゃあ迫力ゼロ。

阿含さんの「あ」に濁点をつけたような声とは比べるべくもない。

 

多分、夜中に鏡の前で一生懸命ポーズとか顔つきとか練習したのだろう。

そう思うとその微笑ましさに笑いがこみ上げてくる。

顔がどうしてもニヤけてしまう。

しかし、流石に笑っては失礼だと思い、顔を伏せて耐える。

 

「・・・・・・・ふふん」

それを見たいじめっこリーダーは、僕がびびったと思ったのだろう、

満足するように息を吐いたのがわかった。

 

「もう逆らうんじゃねーぞー」

そう言って歩いていこうとする。

 

どうしてやろうか?

1:彼らが視界から消えるのを待って、置いてあるランドセルを川に捨てて学校へ行く。

2:大人しくかばん持ちをする。

3:面倒くさい、叩きのめす。隙だらけの背中にデビルバットダイブ!

 

だが、答えを出す前に助けが入った。

 

「あななたち、セナに何やってるの!!!」

と言ってこっちに走ってくる女子小学生がいた。

 

あ、まもり姉ちゃんじゃないか。1つ年上の幼馴染だ。

「どこのアイドル?」って思うくらいのハーフの美少女。

 

実際、スカウトの人とかがまもり姉ちゃんの家に何度か来ていたが、

本人は超がつくほど真面目でアイドルなんかやる気ないし、親も、

「まだ人として未完成な子供を世間の晒し者にする気はない」

と、ぴしゃりと断ったようだった。

 

気弱だった僕をずっと弟のように思ってくれてていっつも助けられている。

正直まもり姉ちゃんには感謝の言葉しかない。

僕にとって本当の姉のような存在が彼女だった。

 

「大丈夫? セナ」

あっと言う間にいじめっ子たちを追っ払ったまもり姉ちゃんが心配そうに僕を見る。

 

妙な記憶が増えてはいるが、今までの自分のこともちゃんと覚えているので、

今まで通り、気弱で頼りない小早川セナを演じることはたやすいが、

この人に嘘はつきたくなかったので、今の自分の素で対応することにした。

 

「大丈夫だよ、まもり姉ちゃん、僕はあんなのにはもう負けないから」

にっこり微笑んでそう言った。

 

「……セナ、なんだか……変わった……よね?」

当然、首を傾げて疑問に思うまもり姉ちゃん。

そりゃそうだ、ついこの前まではあいつらに泣かされてたんだから。

 

「あ! ……で、でも悪い意味じゃないのよ、落ち着いたって言うか……ね」

なんだか顔を赤くして慌てて言い繕う。

 

「うん、ほら、男子三日会わざれば活目してみよって言うじゃない」

 

(……何だかよくわからないけど男の子なんだし、成長したってことかしら)

 

「ふ~ん、まあいいわ、セナがしっかりしてくれるのなら私も安心だし」

 

まもり姉ちゃんは納得してくれたようだった。よかった。

よくわからない記憶分、いきなり数年分は成長してるからね、脳内のみの成長だけど。

 

「誰だ!!!」

って言われる可能性もあったけど、

そんなことまもり姉ちゃんに言われたら流石にショックで立ち直れないよ。

 

学校が違うのでまもり姉ちゃんとはそこで別れた。

 

放課後、当然のように朝のいじめっ子達に絡まれたが、

リーダ格のいじっめ子を含めた三人を真正面からデビルバットダイブ一撃で吹き飛ばして決着した。

三人とも数メートル吹き飛んで気絶したので帰った。

 

次の日の朝、いじめっ子リーダーがいたのでとりあえずデビルバットダイブをかました。

吹き飛んで気絶したので登校した。

 

下校時、帰り道の公園でいじめっ子リーダーが仲間二人と待ち構えていた。

 

「せな、よくもさっきはやってくれたなー」

と、三人がかりで殴りかかってきた。

 

が、動きは遅いし単純なのでステップで簡単に避けれる。

試しにロデオドライブをやってみたらできた。

理屈がわかっているとはいえ、子供だからか、この体は異様に飲み込みが早い。

 

と、考えてたら一人のパンチが避けられないところまで来ていた。

とっさにデビルスタンガン。っというかただの手刀だけど。

で、パンチを叩き落した。

鍛えていなかったので腕が痛かったが、阿含さんの手刀の痛さを覚えている僕にとっては

無視できる痛みだった。

僕にパンチを迎撃された奴は、腕を押さえて痛い痛いと半泣き状態だ、

 

そんな彼にデビルバットダイブ!

 

一応フォローしておくけど、小学生にやったデビルバットダイブは全て手加減している。

僕のほうもヘルメットないので怪我するし、

相手にぶつかるというより、頭と両手で押し出すという感じで吹き飛ばしている。

 

残り二人も同じように吹き飛ばした。

 

じゃ、帰ろうかな、と思ってたら。

 

「強いな、3対1なら助けがいるかと思ったが、必要なかったようだ」

と、声をかけられた。

 

見ると、僕より少し背の高い、髪の短い精悍な感じの子供がいた。

 

ランドセルを背負っているので同じ小学生みたいだ。

話し方が子供らしくない子だと思って顔をよく見ると、なんかピンとくる知った顔だった。

 

でも知っていたらおかしいので名前を尋ねる。

 

「俺の名前は進、進清十郎だ」

 

 

彼とはその後、いろいろ話をした。

この公園はランニングの途中でよく通るのだそうだ。

その時に3対1のケンカを見て、止めに入ろうしていたが、

僕の動きに見入ってしまって入れなかったのだそうだ。

すまん、と謝られてしまったが、そんなこと言われたらこっちが恐縮する。

 

で、あの動きは何だと聞かれたので、アメフトのステップの話を少しした。

そして将来、というか、中学に入ったらアメフトをやることも話した。

 

「アメリカンフットボールか……」

進君は僕の話を聞いてアメフトに興味を持ったようだった。

僕との出会いが進君のアメフト開始フラグだったのかな。

原作に進清十郎のアメフト開始エピソードはなかったはずなのでまあどうでもいいや。

 

ちなみに、呼び方が「進君」になっているが、

小学生だとたとえ年上でも「さん」付けはないので自然と「進君」となった。

正直、呼び方に違和感があるがしょうがない、高校になったら「進さん」に戻そう。

 

お互いにケイタイなんか持っていないので、名前と学校名、それと、

いるとすれば大体どの時間にどの公園でトレーニングしているかと教えあってその日は別れた。

 

 

次の日の朝、いじめっ子リーダーを含めた三人が、

「もういじめないから許してくれ、今までのも謝るからごめんなさい許して下さい」

と、土下座してきたのでもーいーよーと水に流してあげた。

 

アメフトができるのは中学からだ。

なのでタックルなどの実戦経験は小学生の間はどうしようもない。

なのでいじめっ子達との喧嘩はよい練習になると思っていたので少し残念だった。

小学校を卒業するまで朝と夕方の二回ずっと続けるつもりだったのに。

それを言ったらいじめっ子達は真っ青になって震えていた。

 

クラスメートから感謝された、どうもあちこちで悪さをしてた子だったようだ。

 

まもり姉ちゃんからも褒められた。

 

「セナ、本当に強くなったわねえ、いじめてた子をやっつけたことじゃないわよ、

あなたが負けない心を持ったってことが嬉しいの」

 

そう言ってまもり姉ちゃんは僕に優しい笑顔を見せてくれる。

 

「……でも、少し寂しい気もするけどね、ホント、あっという間に成長するんだもん」

小さい声でつぶやくように言う。

自分が庇護しなければならなかった小さな男の子が、

今や強い意志のこもった目をした凛々しい少年になっている。

 

「え? 何か言った、まもり姉ちゃん」

 

「な、何でもないわ……セナ、かっこよくなったよ」

取り繕うようにエヘヘと笑って言うまもり。

 

「そ、そう……ありがとうまもり姉ちゃん」

こんな綺麗な人に眩しい笑顔で言われると照れるし、そこらの少年なら惚れるだろ、と思うが、

前世っぽい記憶と合わせるともうかなり長い付き合いの姉なので恋愛感情にはなりそうにない。

まあ、まもり姉ちゃんにとっても、僕を弟としての発言なのだろうから誤解などしない。

 

 

それからはトレーニングは朝晩もランニングと放課後に公園でステップの練習を毎日続けた。

過度な筋トレはやらなかった。

筋肉が成長を阻害するとどっかのテレビで見た記憶があったからだ。

 

そうやって数ヶ月が過ぎて、一つ思ったことがある。

それは……

 

セナは、天才の部類に入る、才能の塊ということだった。

 

確かに、原作の小早川瀬那は絶え間ない努力の末に大きく成長し、

その結果、日本最速のランニングバックとなった。

 

でも彼は、高校入学の時点でもう既に最速だった。

それは小学生の頃からパシリで走らされていたからという理由があるが、

それだけでは説明できない。

 

登下校時にランドセルを持って走らされたって、1日1往復でしかない。

言い換えれば一日にダッシュ2本しかしていないことになる。

それだけで高校生の初めには日本屈指のスピードだ。

 

小学生の頃からスポーツの英才教育を受けてトレセンみたいな所で優秀なコーチの下で

理論的なトレーニングに栄養管理等をみっちりやっている子供は大勢いる。

 

そんな子供達を一日二本のダッシュだけで追い抜いてしまった瀬那は絶対天才だと思う。

最初は速いだけの選手という印象で、神龍寺戦で天才の領域に一歩入ったという感じだけど、

実際の所、その速さだけでも十分天才の片鱗を見せていたと思う。

 

さて、そんな瀬名が小学生の頃から本格的にトレーニングをしていたらどうなっていたか?

それを僕が、小早川セナが実践してみようと思う。

 

今日は進君と公園で一緒にトレーニングをする約束だ。

 

「いってきま~す」

僕は家を出て、ランニングで公園に向かって走った。




色々と修正。

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