アイシールド21 強くてニューゲーム   作:ちあっさ

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中学時代の話は省略しようと思ってたけど、ちょっと書こう。
パラレルなワールドなので先々変わっていくし。
ただ、オリジナルキャラは出すつもりはないです。
出すとしても他の漫画のキャラ。


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迷いがなくなって、トレーニングにも集中できるようになってきた。

 

結局、まだ進学先は決まっていない。

 

進君は、僕を誘いはしたが、返事は今しないでいいと言ってくれたからだ。

 

僕の可能性を狭めたくないのだそうだ。

 

「だが、出来れば来年、お前と一緒にプレーがしたい」

と、まっすぐな瞳で僕に言った。

 

・・・・・・・もう、何というか、かっこよすぎだよ、進君。

 

痺れるよ憧れるよ。

 

こんな人が友達だなんて嬉しくなって、まもり姉ちゃんに会った時にその思いを話した。

いかに進君が男らしくかっこいいかを嬉々として話した。すると。

まもり姉ちゃんは口の端をヒクヒク動かしてひきつった表情をしていた。

 

「どうしたのさ、まもり姉ちゃん」

 

「・・・・せ、セナ、友達と仲良くなるのはいいけれど、それ以上行っちゃ駄目だからね、

いいわね、そっちの道は進んじゃ駄目よ、ね!」

僕の両肩をがっちり掴んで真剣な表情でそんなことを言うまもり姉ちゃん。

 

そっちの道ってなんだろう?

 

とにかく、返事は中学最後の大会後にすることになっているので、今は練習あるのみ。

 

 

そして、最後の大会の関東大会が始まった頃から、ようやくにして、僕の頭の中でのイメージに、

実際の体の動きがついてこれるようになってきた。

 

車は新車は最初の数千キロは全力で運転してはいけない「慣らし運転」というのがあるらしいけど、正にそんな感じだった。

 

追いついた。

 

僕の脳に体がようやく馴染んできた。

 

自分ではそんなつもりはなかったが、僕はどうやら自分の体に、

怪我しないようにリミッターをかけていたようだ。

 

この前までは40ヤード走のタイムは4秒4を少し切ったくらいだったが、

 

今、全力で走ったらどうなるのだろう?

 

僕は、次の試合で試してみることにした。

 

 

才能とは、繰り返し反復練習をして体に覚えさせるというプロセスを飛ばして、

イメージをそのまま体が勝手に正確に動いてくれること。

それを才能というならば、それが出来る人間を天才というのならば。

 

小早川セナの前世とも言うべき肉体的経験をも含んだ記憶は、

一度も聞いたことのない技術を、

走り方の微妙なコツを、

経験からしか得られないような判断力を、

最初から何のプロセスも経ずに自らの経験として知っていたセナの才能は、

正に天才と呼ぶに相応しいものだった。

 

元々才能のあるセナが、幼少の時から全盛時の未来の自分自身というこれ以上ないコーチを得、

自分の記憶故に100%完璧に内容を伝えられるという、

通常では不可能なレベルの英才教育を受け続けて来た結果。

 

40ヤード走のタイム:4秒1

 

という、日本人には不可能とされていたタイムを叩き出すに至った。

 

 

え、人間の限界が4秒2で、それを超えたのがパンサー君の4秒1じゃなかったっけ?

パンサー君と並んじゃったよ。

なんかすごいね、僕。

 

一度フルパワーで走ったけど、脚は大丈夫だった。

流石に脚に来る負担は大きかったけど、セーブしながらなら一試合フル出場もできる。

 

試合では、本気を出したのはこのワンプレーだけで、後は走るフリをだけしてるだけで、

マークが皆僕についたので、僕以外がフリーになって大量点差で勝った。

 

 

その試合のそのワンプレーで、セナは、

 

日本アメフト史上、最高のランニングバック

 

という評価を不動のものとする。

 

そして、本人も気づいていなかったが、反応速度も以前とは比べ物にならないくらい鋭くなっていた。

金剛阿含のリアクションタイムは0.11秒で人類のほぼ限界に達しているが、

セナのリアクションタイムは0.12秒、阿含に百分の一秒差まで縮まっていた。

 

 

試合の次の日、休むのも練習だということで完全休養となっている。

まだ中学生なのだから休むのも練習だとか、筋肉に穴が開いているから無理はよくないとか、

そこを休むことで超回復させるのだとか、コーチが言っていた。

言ってることは全ては理解できないが、正しいことを言っているのはわかった。

 

アメリカ横断デスマーチの経験者としては緩い気がするけど、普通の中学生ならばこれが正解なのかな?

 

練習禁止なのでどうしようかと思ってたら、母親から買い物を頼まれた。

暇なので引き受けた。

 

玄関を出た所で、王城大学附属高校の制服を着たまもり姉ちゃんとばったり会う。

 

 

まもり姉ちゃんは今年から王城に通っている。

 

彼女は最初は僕と一緒の高校がいいなと言ってくれていた。

 

でも、もっとレベルの高い高校へいけるのに僕に合わせたせいで行けなくなるのは悪いので、

まもり姉ちゃんの学力に合わせた高校へ行ってほしいと頼み込んでなんとか承諾してもらった。

 

で、まもり姉ちゃんは王城大学附属高校を選んだ。

偏差値も高く、僕では絶対受からない高校だが、

アメフトも強く、スポーツ特待生の制度もあるので僕が来る可能性もあるしね。と言っていた。

 

 

買い物に行くことを話すと、一緒に行きたかったとすごく残念そうだった。

そんなに買い物に行きたかったのか、女の人って買い物好きっていうからね。

 

「生徒会になんか入るんじゃなかったわ、せっかくセナとデートが・・・」

何かぶつぶつ言っていた。

 そう言えば、最近になって僕とまもり姉ちゃんとの関係が少し変わってきたように思う。

具体的には、僕が頼りっきりであったのに、最近は少々頼られるようになってきた。

アメフトで体力がついたからなのだろうか。買い物の荷物持ちなんかもするようになった。

これはとてもよいことだと思う。心配かけてばっかりだったので、対等な関係っぽくて嬉しい。

 

 

頼まれた物を買ったその帰り、僕はクルクル回る人に会った。

 

瀧くんだった。瀧夏彦くん。

 

「アハーハー」

 

と笑いながらY字バランスを取りつつクルクル回っている。

 

周りの人はドン引きしていたが、僕は懐かしいなあと、ついまじまじ見てたら、

 

「ン、どうしたの、ボクの顔に何かついてる?」

 

と、声をかけられた。

 

とっさに彼が着ていたアメフト選手のTシャツを指差し、

自分もアメフトやっているのでつい、と適当な言い訳をした。

 

それからその場で彼と話をした。

お互いアメフト好きとあって話が弾んだ。

 

瀧くんはもうすぐアメリカに行くのだという。

原作ではアメリカで会っているからその出発前だったのか。

高校を落ちたからではなく、最初からアメリカに行くつもりのようだ。

 

なんでも、

「まずプロのアメフト選手になってからハリウッドデビューをするのさ!」

と、自信満々に言い切った。

 

英語は話せるの?

俳優って、演技できるの?

そもそもアメフトのルール知ってる?

 

という当然の疑問にも、

 

「ボクは天才だからノ~プロブレムさ!」

と、にこやかに輝く歯を見せて笑うのみ。

 

そんな夢を叶えるために「とりあえず」渡米するのだそうだ。

すごい行動力だ。素直に感心すると。

 

「ボクは天才だからノ~~プロブレムさ!!」

とニッカリ笑って同じセリフを言った。

 

僕はこの人は天然ではあるが決してバカではないと思う。

学校の成績のことではなく、進める人は偉いと思う。

 

 

「ところで、どうしてこんな街中でクルクル回ってたの?」

 

と聞いてみると。

 

 

「妹を待っていたのさ、今日は妹と一緒に買い物に来ていてね」

 

待つのにどうして回るのかと聞くと、

その方が目立つからという理解できない答えが返ってきたが・・・妹って。

 

「え、鈴音が来てるの?」

 

「?、どうして妹の名前知ってるの、セナくん」

 

あ・・・・つい昔の呼び方を言ってしまった。

 

誤魔化さなくては。

 

「え、えーと、さっき言ったじゃないですか、妹の名前」

 

「言ったっけ?」

 

「言いましたよ、確かに言いましたよ、うん」

 

「そうだっけ?」

 

「そうですよ、でなきゃ知ってるわけないじゃないですか!」

 

「それもそうだね」

 

瀧くんはコロリと騙された。

・・・ゴリ押しで誤魔化せた、よかった、瀧くんバカでよかった。

あ、バカって言っちゃった。

 

そんなことを道路脇で話していると、

 

「あ、見つけた、バカ兄貴!」

インラインスケートを履いた少女が飛ぶように滑ってきた。

 

「待ち合わせ場所に来ないから探したわよ、ここで何してるのよ!」

瀧くんの目の前でピタリと停止し、猛然と捲し立てる鈴音。

 

・・・鈴音だ、久しぶりだな~。

 

「ここの方が目立つから移動したって・・・・それならそれで連絡くらいしてよね!」

 

・・・・・・・・・・・・・それにしても、鈴音は全然変わらないな。

今は僕と同い年だから中学三年のはずだけど・・・・・・・・・・・

・・・最後に会ったのは、僕がアメリカにプロテストを受けに渡米する際だから、

その頃と今が同じって・・・・色々と成長してなかったんだな・・・

 

「それで、誰と話してたの・・・・・・よ・・・・・」

鈴音はそう言いながら、瀧くんと話していた僕を見る。

 

・・・おっと、今度はうっかり口走らないようにしよう、初対面で名前を呼び捨てなんて失礼だしね。

 

しかし、鈴音はセナと目が合った途端、驚愕に目を見開いて、こう言った。

 

「うそ・・・・・セナ・・・・さん」

 

「え?!」

今、鈴音は僕の名前言ったよね、初対面でまだお兄さんから紹介すらされていないのに。

 

・・・・あ、初対面で相手の名前を言ってしまうのって、今の僕と同じじゃないか?

ひょっとして、鈴音も僕と同じ記憶みたいなのがあるんじゃ・・・・・

 

・・・・ん?でも、今僕のことさん付けで呼んでたような・・・・

 

「あ、あの!!!」

気づいたらすぐ目の前にした鈴音が、ものすごく緊張した様子で僕に話しかけてきた。

 

やっぱりそうなのか。

 

 鈴音を見ると、何故か顔が真っ赤だった。

そして、カバンから四角い画用紙みたいなのを取り出すと、僕に両手で差し出した。

 

見ると手が震えていた、どうしてそこまで緊張しているのだろう?

何か違和感を感じ始めた時、鈴音は大きな声でこう言った。

 

「セナさん、私、あなたの大ファンなんです、サインください!!!」

 

「・・・・・・・・え」

 

目が点になった。

 

 

とりあえず三人は近くの喫茶店に移動して話をすることにした。

 

移動する間も鈴音は顔を赤くして俯いたままあまり話そうとせず、

チラチラと上目使いでセナを見ているだけだった。

 

(・・・鈴音どうしたんだろう?

僕の知っている彼女はもっと遠慮なく話し掛けてきたはずなんだけど・・・・

ここはパラレルなワールドなんだから、鈴音の性格も違うのかな?)

 

鈴音の様子を不審に思うセナだったが、それはセナが鈍いから気づかないだけで、

 

鈴音の様子は、端から見れば丸わかりだった。

 

つまり、彼女の様子は、

 

恋する乙女そのものだった。

 

 

セナは、自分の行動でいろいろ変わってはいるみたいだけど、それだけではないこともわかっていた。

 

偶々覚えていた創立記念日の天気が違った。

顔を覚えていたテレビのニュースキャスターのほくろの位置が違っていた。

 

等々、自分とは絶対関係ないようなことも、記憶とは違っていたのでセナはそう確信していた。

 

よって、鈴音の様子もそんな違いのうちの一つかと軽く納得してしまっていた。

 

(・・・・・・それにしても・・・・なんというか・・・話さないというか、

お淑やかな鈴音って違和感があるというか・・・いや、こんな鈴音も・・・・)

 

「あ・・・あの、セナ・・・さん?」

 

自分をじっと見るセナについ声をかける鈴音。

 

「可愛いなって思って」

 

つい思考の続きを声を出してしまうセナ。

 

「えっ!!!か、可愛い?」

 

「え、あ、あの・・・・・そのですね」

うっかり口説き文句のようなことを言ってしまったセナは慌てて弁解もどきを口走る。

 

(か・・・・可愛い・・・・私を・・・・あの・・・・セナさんが)

 

お互い真っ赤になって押し黙ってしまった。

 

 

鈴音にとっては大ファンのセナと会えて話ができるのだから緊張の極みだった。

 

兄が偶然道で会って話をしたのだと言う。

 

鈴音は生まれて初めて兄に心から感謝した。

 

セナを知った切っ掛けは、中学一年の時、

いろいろなスポーツをやる兄がアメリカンフットボールを始めようとしたことだった。

瀧兄妹のいる中学にはアメフト部はなかったので、

都大会の試合を見に行った時に試合をしていたのが、セナだった。

セナはアイシールドもしていないし、本名で試合に出ていたので顔は見れた。

そのプレーは衝撃的だった。

鈴音がセナのプレーをみて最初に思ったことは「美しい」だった。

速いものは美しい。と、どこかの本で読んだことがあったが、納得はしていなかった。

しかし、セナのプレーをみると納得できた。

もっとずっと見ていたいと思った。

そして、セナの顔を見た瞬間、心臓が跳ね上がるのがわかった。

 

・・・・・なんて楽しそうなんだろう。

 

セナは、アメフトをしていることを心から楽しんでいた。

 

プレー中も、ハドル中も、ベンチで応援中も、全て楽しんでいた。

 

特に、彼の目が、鈴音の気を引いた。

なんて力強くて綺麗な瞳なんだろう。と気づいたら見惚れていた。

そんな鈴音がセナに夢中になるのに時間はかからなかった。

それ以降、セナの出ている試合は可能な限り見に行き、

彼が乗っているアメフト雑誌は全て買い、

切り抜いて部屋に飾っていた。

試合の休憩中にヘルメットを取って汗を拭うしぐさすらキュンとくるようになってしまった。

 

実は泥門時代より今の鈴音の方がセナに詳しかったりする。

 

 

本人は自覚がないが、セナに恋焦がれる女生徒は沢山いた。

泥門でのプレイ時代、エースとしての自覚を持ってからのセナは戦う強い意志を持って

試合に臨んでいた。その覚悟は顔つきや目に表れる。

元々が整った顔の美少年だったセナに凛とした印象を加えたセナは同姓でも見蕩れる程だった。

セナ自身、告白をされたことはある、だがやはり、本人の鈍さもある上に、

その好意は、アメフトで活躍しているからで、自分自身にではないという思いもあり、

何より、アメフトが最優先のセナは、告白を全て断っていた。

アメフトを始める前は学校のクラスでも空気扱いであったことがその思いの根拠となっている。

 

ちなみに、彼に想いを寄せる女性に、彼の幼馴染や、来年から王城でマネージャーをする子がいるが、

当人は全く気づいていないし、知らない。

 

 

お見合いみたいに黙り込んでしまった二人に、全く空気を読まない瀧兄は、

こんなことを言い出した。

 

「セナ君、君ほどの実力なら日本はもったいないよ、一緒にアメリカに行かないかい?」

 




40ヤード走でググってみたら、4秒2ってマンガの世界だね。
100m走は後半伸びるからあまし参考にならない、ボルトが3秒台になってまう。

「そっちの道」=BL

瀧夏彦は原作では高校受験に失敗して渡米だったけど、ここでは最初から渡米しようとしている。

アイシールド21の正体がバレない?
原作では正体がバレずにすんでたけど、ヘルメット被っていたら汗も拭けないし、
無理ちゃうかと思っていた。

原作では鈴音は明らかにセナに惹かれていたのに、全く進展しなかった。
もどかしかった。白秋の丸子からラブレター?を貰った時、
「付き合ったりとかすんの??」
と言った時の顔が忘れられない。

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