【完結】ハリー・ポッターと供犠の子ども   作:ようぐそうとほうとふ

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04.ハーマイオニー・グレンジャーの溜息

数占いを終えて一息つく暇もなく、首にかけた砂時計のようなそれをくるっとひっくり返す。すると次私が向かうのは占い学。そうすれば同じ時間に開設された授業に出る事ができる。

ハーマイオニーは自分だけの秘密をぎゅっと握りしめた。

 

マクゴナガル先生の特別な配慮で手に入れたタイムターナーで今年は一時間に3つの授業を掛け持ちできるようになった。タイムターナーは自分が努力して一番で有り続けた証明みたいなものだから(誰にも自慢できないのが残念だけど)とても大事な宝物に思えてならない。

とは言え、人より何個も多く授業をとっているとやはり人より疲れるわけで…。

「はぁーあ」

ハーマイオニーは昼食をとりおわると大きく息を吐いて伸びをした。

「まさか勉強疲れ?」

ロンが冗談っぽく声をかけてきた。

「違うわよ。普通に疲れたの!」

「なんだ。ほら、君占い学でキレちゃったろ?僕達心配してたんだよ」

「それはどうも。でもやっぱりあんな科目が平然と運営されてるのは納得できないわ。貴方には死の運命が見えます…ふん!馬鹿らしい」

今日の占い学のことを思い出すと、思わず感情的になってしまう。あの科目はとにかく自分とは合わない…。パーバティなんかはいたく気に入ったみたいだけど、私には理解できない。

気を取り直して…次はお待ちかねのハグリッドによる魔法生物飼育学の授業だ。正直とっても不安。だってスリザリンとの合同授業だし、なによりドラゴンをペットにしようとするハグリッドの授業だ。巨大な毒蜘蛛が出てきたっておかしくない。

ついでに…

芝生を歩いてて、もう一つの心配事を発見。

マルフォイとサキだ。クラッブ、ゴイルもいるけど二人は熱心に何かを話している。

「いいかい、君ってやつはね…そう。レイシストって言うの?それなんだよ!なんで昼ごはんのシチューにライスをぶち込むだけで人でなし扱いされなきゃいけないの?」

「当たり前だろ?あんな食べ方狂ってる」

「ゴイルは美味しいって言ってた!そうやって既存の考えから脱せないから魔法界はいつまでたっても中世みたいな飯しかないんだよ。イタリア料理の本とか見たことある?」

「なんでたかが料理から魔法界を叩く流れになるんだよ!」

思ったより下らない会話でハーマイオニーはがっかりした。ハリーとロンも何とも言えない顔をしている。

特にハリー。ハーマイオニーが思うに、二人の間には絶対何かあった。秘密の部屋事件以降、サキはハリーに対して妙に距離を取ってるしハリーもサキの話になると口数が減る。ロンは気付いてないみたいだけど明らかに変だった。

色恋沙汰ではなさそうだけど…。

それとなくハリーに何かあったか聞いても全然答えてくれないし、サキはサキでいつもマルフォイといるせいでなかなか話しかけられない。

「はあ」

ハーマイオニーは溜息をついた。

怪物的な怪物の本がバタバタと大暴れしてネビルの服を切り裂いてるし、張り切るハグリッドは緊張気味だし、早くもマルフォイとハリーはピリピリしてるし…。

心配事ばっかりだわ。

 

生徒たちはハグリッドのあとについて禁じられた森の縁を歩いてく。サキは時々立ち止まって野草を引き抜いて懐にしまったりしてるのでマルフォイは先に行ってしまってる。今がチャンスだとハーマイオニーはもわもわした謎の雑草を触ってるサキに話しかけた。

「サキ、それなに?」

「ああ、ハーマイオニー!これヒカゲノカズラっていうんだ。君の猫のしっぽみたいで可愛いでしょ」

「ほんとね。そうだ、今度クルックシャンクスを見に来ない?」

「え!いいの?やったね」

「それで…その時ハリーがいても大丈夫?」

「え?…勿論さ。なんでそんなこと聞くの?」

「その…貴方たち、なんだか様子が変だから」

ハーマイオニーの言葉にサキは視線を彷徨わせた。

うん。やっぱりなんか変。

サキが嘘つくときとか何かを隠してるときとはまたちょっと違う雰囲気だ。

「なんていうかさ…うーん。気まずいんだ、一方的に。両方ともなんもしてないんだけど…」

「どういうこと?」

サキはうーんうーんと頭を抱えて悩む。持ってた怪物的な怪物の本に髪を食い千切られそうになったのをみて、慌てて叩き払った。

「例えばだけど…」

怪物の本を一発思いっきり蹴りつけて気絶させて再度縛ったあと、唐突にサキが喋り始めた。

「ハーマイオニーのお父さんが人を車で轢き殺したとするでしょう」

「えっ…ええ」

突然始まった物騒な話に驚きながらも相槌を打つ。

「その轢かれて死んだ人が…そうだね、ロンのパパとかだったらロンと普通に話せる自信ある?」

「喩えとしてはちょっと、わかりにくいというか…唐突すぎてわからないわ。でも、そうね。普通には話せないかもしれない」

「そんな感じ」

いつの間にか生徒たちはどんどん先に行ってしまってハーマイオニーとサキは最後尾だった。サキが少し早足で歩きだす。

ハーマイオニーは随分前に聞いたサキの家族、名前しか知らないという母親のことを思い出した。

「サキのお母様は死喰い人だったの?」

「いや…うん。そう、そうかも」

「でもお母様がどうだったかとか、今のサキに関係ないと思う。ハリーに対して負い目を感じる必要はないわ。それにそんなこと言ったらスリザリンの奴らの殆どは…」

「あー、違う。言い方が、悪かったな…」

ハグリッドが早く早くと手を振ってるのが見える。もう少しでサキの本音を聞けそうなのに。

「つまりさ…私の親はすんごい悪人。超悪人かもしれなくて、私も悪人になっちゃいそうで怖いって感じ」

「そんな事言わないで。貴方は…」

「おいサキ、早くしろよ」

大事なところでマルフォイが割り込んできた。空気読めないの?という意味を込めて睨んだらあっちもキッと睨み返してくる。

「グレンジャー、優等生ならあのウドの大木にしっかりついておくんだな。死人が出るぞ」

「うるさいわね。ハグリッドだってやればできるわよ。貴方たちが邪魔しなければね」

「あー、確かに早くもネビルが死にそうだね」

「ああ…もう!」

「たっく。ホグワーツも終わりだね。背表紙を撫でりゃーいい?なんでダンブルドアはあんなのを…」

「え?そんな…頬ずりしても開かなかったのに。背表紙じゃなきゃだめなのか…」

「頬ずり…?信じられない」

サキの発言にマルフォイと二人で呆気にとられてると、ロンとハリーまで寄ってきた。

「おいおいハグリッドがやきもきしてるぜ」

「ごめんごめん」

「一体どんなフリークスショーが始まるんだかね」

「あんまり言うと、お前を檻にぶちこむぞ!」

すかさずマルフォイが悪態をつく。そして合いの手のごとくロンが反撃してくる。ハーマイオニーは頭を抱えたくなった。

いつもなら加勢するサキもハリーもやっぱり気まずそうで、二人は視線を一瞬合わせてすぐに外してしまう。

もう、もどかしい。

「あー、とりあえず喧嘩するにしてもあっちでやろうよ。ね?」

サキが渋々仲裁すると、まるで号令がかかったようにぞろぞろとマルフォイはじめ5人で移動し始めた。

本当に、一体何があったんだろう?

距離をとって歩くハリーとサキの背中を見て溜息をついた。

そしてやはりハーマイオニーの心配通り事件は起こったのである。

 

 

 

ハリーがヒッポグリフに跨って空に飛んでいった。スリザリンの生徒さえ歓声を上げて天を見上げている。

「すげー…」

ゴイルまでもが思わず呟いてる。たしかにあんな大きな翼で羽ばたく姿は圧巻だ。

「…グレンジャーと何を話してたんだ?」

「ん?ああ…君と同じ用件だったよ」

「ポッターと変だって話?」

「まあね」

いい加減、はっきりしてしまえばいいのに。

前までのサキはきちんと中立だから!という態度を貫いていたからこそドラコも剣を収められていた。だけど今のサキはまるでどっちつかずのコウモリだ。

ポッターの肩を持つせいで、スリザリンではさんざん嫌な思いをしてきたはずじゃないか。

そのポッターと仲違いしたなら、もういいじゃないか。

サキは未だにスリザリンでは浮いている。秘密の部屋の怪物に襲われた、血を裏切る者として。あの日何があったかスネイプ先生からもサキからも説明は受けていたが…どうも何か隠している事実があるらしい。しかしあのスネイプ先生にそこを追及しないでほしい、とまで言われている。

けれどもこのままじゃスリザリンでの立場はきっとどんどん悪くなっていく。それがドラコには辛かった。

まるで気にしてない風のサキだが、それはポッターたちという逃げ場があったからこそ成り立つものだった。

こうしてその関係が気不味いならば

「サキ…もうポッターなんて放っておけよ。ちゃんとスリザリン生として同じ寮のやつらとつるめばいいじゃないか」

「つるんでるじゃん。ドラコと」

「そうじゃなくて、自分からもっと積極的にさ」

「……でも…スリザリンってすごい排他的じゃない?そういうの、やなんだよ」

「そんな言い方してたら一人ぼっちになるじゃないか」

「一人ぼっちか…」

サキは一瞬遠くを見るような目をした。

「そっちのほうがいいかもね…」

 

一人ぼっちの方がいい。

 

そんな言葉

 

「本気か?」

ドラコの眉が吊り上がった。サキがハッとした顔をする。しまった…と言いたげに目を逸らした。

「君がそんなふうに思ってたとはね。たしかに、秘密も話せない友達なんて要らないのかもな!」

思わず語気が荒ぶる。サキが泣きそうな顔をしたのが見えたが振り払うようにしてスリザリン生の輪の方へ歩き出した。

 

一人ぼっちの方がいいなんて

自分がいてもいなくても関係ないって?

そう言いたいのか、サキ

 

ヒッポグリフが降り立った。拍手喝采で迎えられるポッター。

生き残った男の子。毎年冒険して教授陣から崇められるポッター。サキと仲良しだったポッターが。

腹が立つ。

「なんだよ、ポッターにも出来るなんて簡単なんだな、こいつは」

ドラコはヒッポグリフのそばに近寄り、嘴をなでた。

ポッターは警戒してるみたいだ。なんだよ。サキに振られたくせに。

 

「なあそうだろ?醜いデカブツの野獣君」

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