【完結】ハリー・ポッターと供犠の子ども   作:ようぐそうとほうとふ

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03.ケナガイタチ

「見ろよ、サキ」

ドラコが日刊予言者新聞を見ながら嬉しそうに言うのでサキは口の中でモゴモゴしてた筋張った肉を無理やり飲み込んで紙面を覗き込んだ。

記事はウィーズリー氏とマッド・アイについて書いてあった。

「ウドの大木に加えてイカれた老いぼれが教師か。ホグワーツも落ちたもんだよな?」

「ムーディ先生がイカれてるってのはまあ同意かな」

本人に聞かれてたらまずいなと思いさっと周りを見回すとちょうどいなかった。よかった。見た目のインパクトもさることながらやらかすこともかなりイッちゃってるから目をつけられたくなかった。

「にしてもウィーズリーの家…これは本当に家か?」

ロンのお父さんが家の前で家族と並んで笑ってる写真を見てドラコがあざ笑うように言った。

「全く、君はすぐ人の家とかを馬鹿にするんだから」

「だってそうだろ?」

サキが呆れ気味に言うとドラコがムッとして言い返した。

「そういうとこ、いや」

残っていたキャロットジュースを飲み干してサキは席を立った。ドラコが慌ててついてくる気配がした。

「わかった、わかった。悪かったよ」

「なんでそんなにロンとかハリーに突っかかるの?」

「それは…あるだろ?天敵っていうか、気に食わないやつってのが」

「天敵ねえ」

サキにはいまいちわからなかった。サキに対するパンジーみたいなものだろうか?しかしわざわざ喧嘩し合ったりしないし男の子ってわからない。

一時期はスリザリン生の中にも険悪な仲の生徒が一人二人いたものだがサキがキレて一発殴ったり相手がキレて喧嘩になってからは完全に絶縁状態か逆に友達になってるかなので、ドラコやロンみたいにずーっと喧嘩し続ける仲はない。

「おっと」

噂をすればなんとやら。ハリーたち三人組に廊下でばったり出くわしてしまった。

「ああ…ウィーズリー、ちょうどお前の話をしてたんだ」

ドラコは新聞を掲げて早速煽る。

「親父さん、まともに名前も覚えてもらえないとはね…これじゃあいつまでたってもあばら家暮らしからは抜け出せないね」

「僕の父親を悪く言うな」

ロンはびしっと言い返す。虫の居所が悪いのかもうポケットの杖に手が伸びている。

 

「わかった、決着をつけよう」

 

バチバチ言い合う二人の間に入るのはもう慣れっこで、サキは審判のように片手を挙げて二人の間にずいっと割り込んだ。

また始まったわと言いたげにハーマイオニーが肩をすくめるのを尻目にサキはいかにもな調子で咳払いをして二人に距離を取らせた。

「じゃあはい。合図をしたら…」

「待って、待ってよサキ。今ここで決闘させるつもり?」

「え?そうだよ」

「これからマルフォイと顔を突き合わせるたびに決闘しなきゃいけないのか?」

「そっちのほうが白黒はっきりついてよくない?」

「いいわけないだろ!」

ロンとサキがごちゃごちゃ言い合ってるうちに人だかりができてきた。ハリーは事が大きくならないうちに逃げ出したかったが間に入る余地がない。

ドラコもその言い争いにイライラして、こっそり杖を抜いた。

 

「卑怯は許さんぞ!」

 

その瞬間、人だかりから罵声が轟いてバシッと大きな音がした。なんと人を掻き分けてマッド・アイ・ムーディがコツコツと杖と義足を鳴らして歩いてくるではないか。

そして…

「キューッ!」

ドラコが立っていたはずの場所には白いケナガイタチが怯えた鳴き声を上げて右往左往していた。

「む、ムーディ先生?!」

「決闘で、合図もなしに杖を抜くなど言語道断!」

ムーディ先生は生徒たちの動揺なんて無視してケナガイタチを空中でいたぶり始めた。

ロンとハリーは腹を抱えて笑っている。

「そ、それドラコですか?イタチにしちゃったの?!」

「そうだ!」

「やめてください!」

サキは無理やりムーディの杖腕をひっつかみ呪文をやめさせた。そしてイタチを抱き上げて庇うように睨みつける。

ムーディの魔法の目がギョロっとサキを睨んでいる。

あたりに緊張が走った。しかしハリーはサキがイタチの胸毛をもふもふしてるのに気付いた。

「ムーディ先生。これはなんの騒ぎです?」

野次馬していた生徒が呼んだらしい。マクゴナガル先生が小走りでこっちへやってきた。

「教育だ」

ムーディは端的に答え、戸惑うマクゴナガルがサキの抱いてるイタチと杖を持ったムーディを交互に見た。

サキは片手でイタチを抱きしめて、もう片手で首元をずっともふもふ撫でていた。

「まさか、それは生徒なのですか?」

「今はイタチだ」

「なんてことを!生徒に呪文をかけるなんて!」

マクゴナガルは怒り心頭だった。ハリーとロンはマルフォイをイタチのままにしておいてほしかったがマクゴナガルがすぐさまもとに戻そうとする。

「シンガー、そのイタチを離しなさい」

「いえ。このイタチは私物です」

ロンは吹き出してついに屈み込んでしまった。

「それは生徒なのでしょう?」

「あともうちょっと…」

サキはイタチを撫でるのに夢中らしい。ハーマイオニーがもう!と一声言ってサキからイタチをひったくって地面に放った。サキが「ああ!」と悲鳴を上げた。

マクゴナガルが杖を振るうとケナガイタチはドラコに戻り、ドラコはすぐに立ち上がり数歩下がった。

「よくもやったな!父上が黙ってないぞ」

「お前の父親ならよく知ってる!」

また杖を振り回そうとするムーディにビビってドラコはすぐさま逃げ出してしまった。サキは置いてけぼりだ。マクゴナガルはかんかんでムーディにたいして教育に魔法を使うことの違法性について説いていたが、ムーディはこっそり顔を背けてベロを出していた。

それを見てハリーはくすっと笑った。

 

「あーあ…一日はあのままにしてほしかったな…」

「…君、ほんとにマルフォイのガールフレンドなの?」

ギャラリーが立ち去る中サキの薄情な発言にロンが静かにツッコミを入れていた。

 

 

そして予想通りマッド・アイ・ムーディの授業はいかれてた。初っ端から許されざる呪文を実演してみせ、生徒たちはみんな空気に飲まれてしまった。

ドラコはなるべく表に出さないようにはしてきたがずっとムーディの一挙一動にビクビクしていた。

サキはドラコがまたケナガイタチにならないか期待していたのだがこれだと当分おとなしくしてるだろう。残念だ。

ふわふわした動物に触りたいという欲求が募っていたサキは魔法生物飼育学に大いに期待していたのだが、今学期扱う動物が尻尾爆発スクリュートなどというわけのわからない、しかも可愛くない生物なので落胆した。

ハーマイオニーですら「これは成長する前に踏み潰すべき」というほどだ。

占い学は相変わらず死ぬほど退屈で、サキは魔法史のときと同じように起きながらにして眠ることにした。

唯一楽しみなのは三大魔法学校対抗試合のために訪れるボーバトン、ダームストラング校の歓迎会くらいだった。

クィディッチの試合もないしOWLに向けて課題の量も増えてるしで休みはだいたいそれをこなすだけで潰れた。

 

「サキ!サキってば」

サキがフクロウ小屋でフクロウの足に注文書を括り付けてるとフレッドが後ろから声をかけてきた。

「あ、まだ追加注文間に合うけど…」

双子はいたずらグッズ開発のためにいろんな通販を駆使して材料を集めているのだった。サキも商品開発に多少関わっている。この夏完成したゲーゲー飴もより安価で量産できる材料探しを手伝った。

「いや、もっと大切なことさ。大鍋を持って厨房に来てくれ」

フレッドはそういうとさっと身を翻して消えてしまった。

サキは事態が飲み込めないまま言われたとおりに大鍋を持ってホグワーツの厨房の前にある絵画の前まで来た。

そこにはフレッド、ジョージといういつもの双子がナップザックを持って立っていた。

 

「ああ、よく来た!心の友」

「われらウィーズリー・ウィザード・ウィーズ特別顧問よ」

「一攫千金のチャンス、掴みに行こうぜ」

「え…なに?」

 

イマイチわかってないサキの両肩を双子がぽんっと叩く。

「何ボケてるんだ。一千ガリオン!三大魔法学校対抗試合だよ!」

「ああ…」

そうか、サキはハナから興味なかったけど彼らは違ったようだ。ウィーズリー兄弟は喉から手が出るほど金を欲してるし、加えて宛にしていた金脈がバックレたらしくて金欠だとボヤいていたっけ。

「でもみんな17歳になってないよね?」

「そう。で、俺達は考えた」

「年齢制限をかける魔法がどこかにかかってるはず」

「どうやってエントリーするのか本で調べた結果、ゴブレットに名前を書いた紙をいれるだけらしい」

「ってことは、だ。ゴブレット本体に年齢を見破る魔法がかかってるか、もしくは結界みたいなのがはられてるか…色んな予測がたてられる」

「でも俺たちそこで気付いちまったんだ」

「手っ取り早く17歳になればいいってな」

「…まさか老け薬?」

「ご明察!」

そんなちゃちな誤魔化しが効くんだろうか。二人は頭は回るけどそういうところには何故か考えが回らない。とにかく試してみようぜの精神なのだ。

「…わかった。いいよ」

「そう言ってくれると思った」

サキは頭の中で老け薬の材料を思い出した。スネイプの薬品庫に忍び込まなくてもなんとか揃いそうだ。

「他の学校の奴らが来るのは一週間後。選抜もその時だと思う」

「それまでに作ればいいのね?」

「頼むよ」

「くれぐれも、一年分だぜ!俺たちまだまだ青春を謳歌しきってないしね」

「まかせてよ」

「足りなかったら領収書はいつも通りウィーズリー宛で」

双子はナップザックの中に入れてた老け薬の材料をサキの大鍋に入れた。

商談もまとまったところで三人は解散した。

実のところサキは老け薬より確実でかんたんな年齢制限突破の方法を知っている。

サキの母系の血筋は特殊で、杖を使わない魔法の力が宿っている。なので自分の血を使えばだいたいの魔法は解くことができる。

流石に使わないけど…自分も参加しようと思えば参加できるのか。

金貨の中で喜ぶ自分のイメージが一瞬頭にチラついた。

しかし怒り顔のスネイプ先生がすぐにててきてその妄想をうち破った。

 

「サキ」

 

「うわ」

と思ったら本物のスネイプ先生がいた。思わずびっくりして数歩後ずさる。

「…何かやましいことでも?」

「いや、そんな…まさか」

「なぜ大鍋をもってる?」

サキは反射的に大鍋をさっと背後に隠した。

「…サキ、再三言ってるが…」

「危険なことには近寄らない!怪しいものはすぐ報告!わかってますって」

スネイプはまだ怪しんでいるようだが、鍋の中身を見たときに怪しい薬を作るような材料がないことくらいわかっただろう。あまり突っ込んでは来なかった。

サキはそのまま談話室に戻り魔法薬学の教科書をめくって老け薬の作り方を確認した。

ドラコもやってきて占い学の宿題を片付けはじめた。

 

「…ねえ、イタチになってよ」

「やめろ」

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