【完結】ハリー・ポッターと供犠の子ども   作:ようぐそうとほうとふ

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13.僕らはきっと大丈夫

セドリックの死という結果で終わった三大魔法学校対抗試合は盛大な宴をすることもなく、翌朝しめやかにセドリックの死とハリーをそっとしておくようにというダンブルドアの話だけで終わった。

サキは包帯まみれで帰ってきたせいで奇異の眼差しで見られたがそれが打ち消されるくらいにハリーの噂でもちきりだ。けどみんなダンブルドアの言いつけ通り直接聞いたり、本人のいる場所でその話をすることはなかった。

喪ったものがあまりにもおおきかった。

サキはドラコにだけ本当のことを話した。

 

「君……それは本当なのか?」

「うーん…少なくともあっちはそう思ってるみたいだし本当なんじゃない?」

「そんな、ハッキリさせるべきだろ」

ヴォルデモートの娘かもしれないと告げるとドラコは酷く狼狽えた。父親が死喰い人なわけだし無理もないだろう。

「でも私ヴォルデモートにつく気なんかさらさらないよ。だから…今年は君んち行けないかも」

「いや。僕の家に行ける行けないの話じゃないだろ」

「私には大問題だよ!ドラコんちのご飯が楽しみだったのに…」

「サキ、ちゃんと話そう」

ドラコは混乱しながらもきちんとサキを見た。

「あの人は復活して、君を探すかもしれない」

「でも私は会いたくないし協力もしない」

「……例のあの人の娘、だぞ?本当なら凄いことだ。下手したら一気に死喰い人のトップに…」

「私にはそんな功名心ないし、人殺しなんて絶対嫌だよ」

「…だよな。すまない」

「ごめんね…」

「なんで謝るんだ?」

ドラコは不思議そうな顔をした。

「君のお父さんは…死喰い人だから」

「ああ…そんなの気にするなよ」

そしてちょっと微笑んで首の後ろをかいた。ドラコが迷ってるときによくやる仕草だ。

「それより傷は大丈夫か?」

「ああ。ただの切り傷だからね」

「よかった」

談話室の窓を大イカが横切った気がして二人して窓を見た。水草がゆったり揺れてるだけで苦笑いした。

 

「サキ」

ハグリッドの小屋の付近でうろついてると、ハグリッドが心配そうに声をかけてきた。

「あ、ハグリッド。おはよ」

「おはようさん。なにしちょる?」

ハグリッドはサキの手に握られてるスコップを見て疑問符を浮かべた。授業もない日にこんな所にいたら不思議に思われても当然だろう。

「ああ。これ、花を埋めようと思って」

「花?」

そこでハグリッドはピンときたようだ。

「クラウチの遺体なら…先日魔法省の役人が来て探しとったぞ。骨粉だから手間取ってたが…なんとか回収したみてえだ」

「そっか。どこかわかる?」

「ああ」

ハグリッドと向かったのは禁じられた森との境目くらいにあるなんてことの無い小さな穴だった。深さ50センチもないただの穴。

クラウチはここに棄てられた。

「やるせねえ話だ」

ハグリッドが穴を見てつぶやく。

「ほんと…墓まで一家離散だね」

バーティ・クラウチ・Jrはファッジの連れてきた吸魂鬼によりキスを施され、ろくな事情聴取もままならぬまま死んでしまった。

遺体は公営の墓地に埋葬されるらしい。

母の遺体はアズカバン、息子は何処ともしれない墓地。クラウチだけがたった一人、代々の墓地へいれられる。

サキは持ってきた彼岸花の種を巻いた。東の方では死者のための花と呼ばれてるらしいその花はやがて赤い赤い花をつける。いつか彼岸で家族が再会できる目印になるように、なんて。

「……」

しばらく黙祷し、立ち上がった。

「サキ。大丈夫だ」

「ん?」

「ハリーもお前さんも、わしらが守る!ダンブルドアがいる限りきっと大丈夫だ。だから笑え」

ハグリッドはばん、と背中を叩いた。あまりの強さに一瞬息が止まる。

「あ、ありがと」

背中をさすりながら笑顔を作ると、ハグリッドも安心したように笑った。

もう夏になる。湿ったぬるい風がふいて木々がざわめく。

日差しは段々強くなって、湖で泳ぎだす奴らもちらほら出てきた。

日が昇って沈むたびにセドリックがいない穴はだんだん塞がっていき、生徒たちは夏休み何をするかを話し始める。

 

「君の夏休みは…」

スネイプが憂鬱そうに言った。

「我輩の家だ」

「え…先生自宅なんてあるんですか?」

サキはすっかり元通りになった頬をさすりながら大鍋も何もない片付いた教室を歩いていた。スネイプに呼び出されて補習か何かかと怯えていたらコレだ。

「…駅からはこの住所へ向かうこと」

「はあ…」

手渡されたメモは全く聞き慣れない土地の住所がつらつら書かれていた。

「あーあ。退屈そうだなあ」

スネイプは何も言わなかった。

「…先生、私のオトーサンは元気でした?」

「…………」

サキの自虐的な発言に対する答えはなかった。スネイプが五体満足で戻ってきてる以上交渉はきっと上手くいったんだろう。なんにせよこの先大きな困難が待ち受けていることは確実だった。

「クラウチ…あ、息子の方。あの人、母を知っていたんですか?」

「そのようだ。我輩に一度母親のことをしつこく聞きに来たことがある」

「ふうん…」

サキはふと不安になってスネイプにたずねた。

「ねえ、私そんなに母に似てます?それともヴォルデモートに似てますか?」

スネイプは困った顔をして

「母親そっくりだ。顔だけは」

と苦々しく言った。あははとサキは笑う。

「いやあ、お母さんはそこそこもててるのになんで私はあんまりもてないんでしょうね?」

「君は俗すぎる」

「的確なこと言われた!」

 

 

 

 

ダンブルドアによるヴォルデモートの復活の報せは魔法界に大きな衝撃を与えた。その一方で魔法大臣ファッジは強く否定し、発言の撤回を求めた。

三大魔法学校対抗試合はホグワーツの優勝という形でおさまり、賞金はハリーの手に収まった。

「僕…」

ハリーは1千ガリオンを手放し、ウィーズリー兄弟に託したあとその足でいつもサキが水をやりにいってる小さな庭に行った。

サキは水と肥料を撒きながらハリーの話を黙って聞いていた。

「あいつに直接会ってもやっぱり戦わなきゃって思った」

「私もそう思うよ。まあまだ会ってないけどね」

あっけらかんとした様子のサキは去年ずっと思い悩んでいた頃と全然違い、なにかが吹っ切れたように見えた。

「サキはどう思ってるの?その…」

ハリーは言い淀んだ。サキはハリーの言いたいことを汲んで応えた。

「確かにヴォルデモートは私のお父さんかもしれないけど、そんなの関係ない。打倒されるべき悪ってのは、あるんだよ」

随分ドライだった。以前体に流れる血を否定したくて毎晩森を彷徨いていたサキとは大違いだったので、ハリーは少し戸惑った。

「君、随分悩んでたけど大丈夫なの?」

思わず疑問をぶつけると、サキはちょっと考えるように、言葉を選ぶように前までガーゼでおおわれてた頬をさすりながら言葉を紡いでいった。

「…クラウチJrは母親の愛で生き長らえたでしょう?」

「…うん」

「ハリーと同じじゃん」

ハリーはギョッとした。そういう解釈をするのはサキが初めてだったが、確かに言われてみればその通りだ。

子供の命を身をていして守る、母親の無償の愛。それが今回の悲劇の発端だった。

 

「なのに、あの人は間違えた。それって生まれのせいじゃないんだよ。あの人自身が間違えて、手を差し伸べてくれたのがたまたまヴォルデモートだっただけ」

サキは言葉を切ってハリーの方へしっかり向き直った。

「私は間違えない。手を差し伸べてくれる人が沢山いるから、きっと大丈夫」

そして微笑んだ。ハリーはその笑顔に心底安心した。復活の夜からずっと抱えてた不安がその言葉で救われた気がした。

 

手を差し伸べてくれる人がたくさんいる。

ハリーも同じ気持ちだ。きっと、みんながいれば大丈夫。

 

ハリーは手を差し出した。サキも同じように手を伸ばし、掴んだ。

「手紙、書くね。今年はマグルの郵便を使うから」

「電話でもいいんだよ。君なら使い方わかるよね」

「まあ間違っても怒鳴ったりはしないよ」

細くて柔らかい手は日焼けでほんのり色づいていた。

夏の日差しが二人を照らして、撒いたばかりの水がしゅわしゅわいって蒸発してく。明るい緑の葉っぱがキラキラ光ってる。

なぜかハリーは改めて去年感じた"失恋"の感覚を思い出した。

 

「サキ、マルフォイとさ…」

「ん?」

「キスってした?」

「まあスケベ。してないよ!ハリーもお年頃だねえ」

 

サキはまだまだ子どもらしい。ハーマイオニーでさえクラムとキスしたかもしれないのに。なんだかあのマルフォイが可哀想に思えてきた。

 

「それじゃあ行こうか」

二人は畦道を登っていった。旅支度をしているハグリッドに別れを告げてそれぞれの寮へ続く道に分かれていった。

 

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