【完結】ハリー・ポッターと供犠の子ども   作:ようぐそうとほうとふ

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07.乙女の祈り

サキ・シンガーの失脚は死喰い人たちの間でまたたく間に広まり、全員が彼女の書式地獄から解放されたことに安堵した。シンガーはホグワーツに送られ、ほとんど幽閉状態だ。(一体何が闇の帝王の怒りをかったのかは明らかにされていないが、噂ではハリー・ポッターのために資料を横流しにしていたらしい)魔法省内部ではシンガーのかけた呪文や担った仕事の洗い出しが行われている。親シンガー派は手のひらを返し、今必死にシンガーのしてきたことを調べている。

 

パーシーはサキのしてきた仕事を見て愕然とした。

サキはすべてを記録して本にして棚に納めていた。彼女のデスクは神秘部入り口にある掃除用具入れだったが、その床は人一人分が立つスペースを除いてすべて資料で埋まっていた。

マグル生まれ管理局から魔法法執行部刑務室、魔法生物管理局まで幅広くパシリに使われてた彼女は縦割り行政の壁を超え、死喰い人たちの悪行を記録として網羅していた。

マグル一家殺害の現場写真。使われた魔法と杖の所有者。事故を装って殺されたダンブルドア派の役人の不都合な遺書。純血を名乗る人々の修正された家系図の原本。賄賂の行き先。焼かれたはずの闇祓いの資料。掘られた墓穴の数。

パーシーはこれを見て、即座に掃除用具入れを塞いだ。そして一緒にいた死喰い人派の同僚に忘却術をかけ、マクリールの罠にやられたと報告して聖マンゴ送りにした。

いつの日か闇が晴れたとき、この資料は奴らの罪を裁くのに絶対に必要だ。

パーシーはシンガーに渡されたコインを握った。

"stay here"と書かれたまま、冷たく眠るレプラコーン金貨を。

 

 

「いっ……」

サキは傷口に沁みるアルコールに悲鳴を上げかけた。

前の持ち主の時は地球儀とか秤が置かれていた机の上には消毒薬や包帯が置かれて手術台のようになっている。

セブルスはむっつりと黙り込んでサキの顔の切り傷に脱脂綿を押し付けている。呪文でできた傷ではないが、ここまでよく拳だけでボロボロにできたものだと感心してしまうほどだ。

消毒してから慎重にハナハッカを塗り込み、指で揉んだ。そうして一つ一つの傷跡を消していく。

左手の傷は残念ながら処置が遅れたせいで完全には治らない。断裂した筋が元通りになるかは神のみぞ知る所。仮にうまく行っても指先は動くだろうが、感覚は二度と戻らないだろう。

「無茶をしたな」

「……ハリーのせいだ」

「ポッターは剣を持っていたのだな?」

「ええ。ちゃんと本物の方を」

「次はどこへ行くと?」

「貝殻の家。その次はわかりません」

「そうか」

「…そろそろ教えてくれてもいいんじゃないですか?ハリーたちは何をしてるのか」

セブルスは手を止めて黙り、口元にできた大きな裂傷に薬を塗るため顎をぐっと固定した。

サキの抜けてしまった前歯にぐっと歯の種を押し込み、口内に無理やり綿棒を突っ込んで薬を塗り込んだ。

サキは抗議したげにセブルスの指を噛んだが仕返しに強く傷口を押してやるとおとなしくなった。

綿棒を口からぬくと、サキはおえーっと言って喉をさすった。

口をゆすぐ用の水をだしてやると、サキはそれを飲み干して口の周りをふいた。

 

「もう大詰めです。あの人は用事が終わってお暇みたいですから、自分で動き出しますよ?」

「…ダンブルドアは、我輩にもすべてを話していない」

「ほんと年寄りって嫌ですねえ。秘密を抱えたまま死ぬなんて!まあ先生が殺したんですけどね!」

「すまんのう年寄りで」

サキは突然聞こえてきた声にぎょっとして思わず脱脂綿を食べかけてしまった。

肖像画のダンブルドアが珍しく起きていて、にこにこと生前と変わらない笑顔で語りかけていた。

「セブルス、ちょっと外してくれないかの?」

「……わかりました」

セブルスはすぐに手に持ったピンセットを置きサキをひと睨みしてから出ていってしまう。

サキは肖像画と面談するのは初めてなのでちょっと緊張してしまう。

 

「…さて、サキ。随分頑張っておるようじゃな」

「まあそこそこ」

「机の一番上の棚を開けてご覧なさい」

 

サキは言われたとおりに引き出しを開けた。そこには飾り石のない指輪とリドルの日記があった。

 

「その日記はトム・リドルの魂の容れ物じゃった」

「…なんですって?」

「それらは分霊箱といって、引き裂いた魂を永劫に保管している。自分を守るためにその日記は君を誘惑し、殺しかけた」

「ガチガチの闇の魔術じゃないですか」

「そうとも。ハリーたちは今分霊箱を破壊するために動いておる」

「…あの人はそれに気づいているんですか?」

「まだじゃ。指輪と日記は元の魂から離れすぎていた故に気づかれることはなかったが、他の分霊箱はそうではないだろう。いずれ気づく」

「魂を引き裂く、ねえ」

サキは大きな穴の空いた日記帳の革表紙をそっと指先で触った。埃のザラザラした感触がした。懐かしい。今までであったトラブルの中で唯一サキがしてやられたと思ったのがこの日記だった。こいつは単なるおしゃべり好きの日記じゃない。ヴォルデモートの魂入りの闇の魔術の結晶だった。

ありえない話ではない。なんていったってサキ自身に流れる血がそういう理に反した魔法でできているわけだ。

 

サキは日記の横にある鈍い光を反射する指輪を持ちあげる。表面は鱗のような細かい彫りが刻まれていて、手入れされてないせいか間に汚れがつまっている。

「それは本来君のものになるはずじゃった。すべてが終わったら君に譲ろう」

「私に?」

「それはトム・リドルの祖父、マールヴォロの指輪じゃ。はめても問題ない。もう呪いはわしがうけた」

サキは大ぶりのそれをとりあえず左手の親指に嵌めた。左手なら感覚がないし指輪をはめていても違和感がないかな、と思っての事だった。指輪はサイズが随分違うのにはめた途端しっくりと馴染んだ。飾り石がないせいで見た目は滑稽だが、ものは悪くない。なにか代わりの石を見つけておこう。

「って…呪いっていいました?先生、呪われてたんですか?」

「そうじゃ。君にはもっと早く伝えるべきじゃった。しかし任務の性質上今の今ままで言うことができんかった」

 

肖像画は人格が宿るわけじゃない。そこには主体が存在せず生前の人物の言動と思考をトレースして動く虚像に過ぎない。けれどもダンブルドアはまるで生きてるときと同じようにつぶらな瞳を伏せ、気遣わしげにいった。

 

「わしはセブルスに殺されるまでもなく、その呪いによって死ぬ運命じゃった」

 

けれども、サキにとって自分の命と引き換えに死んでいった人物の告白は心に幾ばくかの安堵を産んだ。それが幻想に過ぎないと知りつつも、感情がだくだくと嵩を増して心から溢れそうになる。

 

「君が苦しむ必要はない。むしろ憐れむべきは、セブルスなのじゃ。彼の心はわしを殺したことと、君が傷つくことをやめないせいで引き裂かれている」

 

サキは息を呑んで、ゆっくり肺から残りを吐き出した。

 

「君が彼を助けてやってほしい。母上がそう望まれたように」

 

ふいに去年の校長室での出来事が蘇った。

箱を壊し鍵を開け、棚をひっくり返してでてきた記憶の糸。

誰かが必死につくった不揃いの記憶。

赤毛の少女が言った言葉。

 

 

赤毛の少女が微笑んでいた。

まるで恋でもしてるようなバラ色の頬をした少女が笑っている。

日が傾きかけた湖の辺りで、膝に広げた本を読まずにアリスのように微笑んだ。

 

「せんぱいは、本当にセブが好きなのね!」

「そんなことないわ」

「もう、自分の気持ちなのに気づかないの?」

彼女はいたずらっぽく笑って肩にもたれかかってきた。

 

「私、せんぱいの事もセブルスの事も好きよ」

「それはどうも」

素っ気ない態度には慣れているらしく、気にせず続けた。

「私ね、せんぱいみたいな人こそ幸せになるべきだと思うわ」

「別に不幸じゃないわ」

彼女はお構いなしに話を続ける。

「セブが私以外の友達をみつけるなんて!私、本当にびっくりしたの。でも、二人を見てて気づいたわ。二人ってとっても似てる。ちょっと嫉妬しちゃうくらいにね。ねえせんぱい、スリザリンでセブを守ってあげてね」

 

女の子はそう言ってまたほがらかに笑った。私も笑って、その子の髪をなでた。朝焼け色の髪を。

 

 

 

 

「え?」

サキは目から流れる涙を拭った。

「見たのじゃろう?棚にあったリヴェンの記憶を」

「…でもあれは作られた記憶ですよね」

サキの質問にダンブルドアは首をふる。

「いいや、あの記憶は確かにあった。彼女の繰り返した時間の中に」

「母は…先生を助けるために、何度も過去をやり直したんですか?死ぬとわかっていて?」

「そうじゃ。セブルスは彼女の試した1000通り以上の世界全てで必ず殺される。リヴェンはその運命から逃れるために努力したが…失敗した」

 

母の手記に込められた絶望の意味がやっとわかった。

 

1981.04.17 もう、思い出せない。もう戻れない。もう最悪の未来にしかたどり着かない。もう何も感じない。

 

1981.10.31

私がくちばしを突っ込んだ結果、大幅な書き換えにより1998年まで戻れなくなってしまった。私の脳がついに駄目になったらしい。もう過去へ戻れない。未来も見えない。変えられない。私は失敗した。失敗した。失敗した。失敗したんだ。私は失敗した。彼を救えなかった。

 

『私を、忘れないで』

 

何も思い出せなくなる恐怖。

自分の中にしかない思い出。

必ず訪れる死。

 

サキは消え入りそうなか細い声で尋ねた。

「スネイプ先生はそれを知っているんですか?」

「いいや知らない。わしがしれたのも、彼女が朦朧とする意識の中たまたま口を滑らせたからじゃ」

サキは震える手ではめた指輪を外し、机の上に置いた。

校長室のフカフカの椅子に座り込み、がんがん痛む頭を手のひらで包み込むようにしておさえた。

こうしないと頭が何処かに吹っ飛んでいきそうだった。

 

「母は、死に際も絶望していましたか」

「ああ。彼女はほとんどすべてを諦めていた」

 

サキは黙った。リヴェンが死に際にどれほど絶望していたのか、知る由もない。(瓶詰めになった彼女がもうそれに悩まされないことだけは確実だ)

ほとんどすべて諦めた彼女が何故サキに脳髄を遺したか。

それはつまり、脳髄を託すことが最後に彼女が縋った希望だったということだ。

 

「脳髄…は…」

「サキ、それは言えんよ。わしは肖像画で、ダンブルドアではないのだから」

 

こんな時だけ肖像画を強調するだなんて、老人って本当に狡賢い。現に知らないのだろうけど。

むっとしているサキを放っておいて、ダンブルドアは言う。

 

「ハリー・ポッターは分霊箱を一つ破壊し、今もう一つを奪取しにむかっておるはずじゃ。残る分霊箱はナギニと、2つ」

「…どこにあるんですか」

「1つはここじゃ。サキ、ハリーは必ずここに来る。そのときは…」

「わかってますよ。ええ…当たり前じゃないですか」

サキは頬をバシッと叩いて立ち上がった。

「あいつは何人の人生を破壊すれば気がすむんだよ」

「サキ、時間は迫っている。やつとの決着をつけるために備えるのじゃ。…セブルスを呼んでおくれ。あんまり待たせていたら申し訳ないからのう」

 

 

 

 

 

サキ・シンガーがホグワーツに戻されたことは全校に知れ渡った。

というのも、帰ってきてすぐ朝礼の席で突如教職員席の前に仁王立ちになって演説を始めたからだった。

 

「みなさんこんにちは。私はサキ・シンガー。ヴォルデモートの娘です。この度はハリー・ポッターを取り逃がした罰の一環でホグワーツに戻ってきました。私は愚かな娘です。愚か故に過ちを繰り返します。みなさん!この学校はおかしい。狂ってる。葬式みたいな顔をして食う飯がうまいはずがない。思い出してみましょう。いつだって若者は大きなものに立ち向かってきました。ハリー・ポッターは今も戦っている!私達も戦うべきだ。そしてこのクソッタレな死喰い人どもをブタ箱に送り返しましょう!」

 

サキの演説は途中でカロー兄妹により止められた。

はじめこそ彼らは手を上げるのをためらい、縄で縛り付けるのみだった。しかしサキがしつこく演説を続けようとしてるので口をふさがざるを得なかった。

サキの演説は生徒たちに波紋を広げた。

今まで死喰い人側だと言われていたサキがハリー・ポッターの生存を知らせ、死喰い人に殴られている。

 

まず立ち上がったのはDAのメンバーたちだった。

 

ネビルの活躍は目覚ましかった。前々からカロー兄妹に対して反抗し度々拷問を食らっていたが、今回はスネイプにまで暴れバンバン花火を投げつけて、フクロウを暴れさせ朝食を糞まみれにした。

ウィーズリーの双子の亡霊が取り付いたかのようにピーブズも暴れた。おかげでフィルチは脳の血管が切れそうだった。

アンブリッジ体制よりも過激ないたずらと罰の応酬がはじまり、戦えない学生たちは死喰い人たちの暴力に対し無言の抵抗を試みた。なんの罪も犯していない生徒が出頭し自ら罰を受けに来た。非暴力による無言の抗議は列をなし、フィルチの地下牢の許容量を超えた。

ダンブルドア軍団はサキ・シンガーの血の魔法の手助けもあり飛躍的に活動範囲を広げた。

サキは演説以降地下牢に閉じ込められていたがジニー、ネビルの手助けもあり脱獄に成功し、スリザリン寮を襲撃したあとにドラコ・マルフォイを人質にして必要の部屋に立て籠もっている。

ちなみにドラコ誘拐はすべて杖無しで、サキの単純な暴力により行われた。

 

「サキ。傷、消えてよかった」

ルーナがサキを抱きしめたまま言った。もう30分くらい抱きつかれている。ジニーはもう引き剥がすのを諦めていたので隣でアバーフォースから受け取った缶詰を分配している。

「歯も生えてきたしね」

左手は上手く動かせないので以前のように細かい木彫りはできないかもしれない。

「…あのなあ、抜けても生やせるからってまた殴られに行くのはやめろよ」

ドラコが呆れ気味に忍びの地図の贋作をたたみながらいった。ルーナが抱きつきつづけているせいで機嫌が悪いのだ。

「さすがにベラトリックスの拳は痛すぎるからもうしない」

サキの顔は治療のかいあってきれいに治った。とはいえまだ前歯に隙間があるが。

サキとドラコは思いの外あっさりと受け入れられた。ドラコは秋からずっとホグワーツ内で情報を回していたし、サキも頻繁に校内に現れてはカロー兄妹の時間を取らせて授業を潰していた。そういった地道な貢献が役立ったらしい。アーニーなんかドラコと肩を組んで歓迎した。(ドラコは嫌がっていた)

 

「奴ら、そろそろ本格的に潰しに来るな。スネイプがたまに巡回に来てる」

「3日しかたってないよ?」

ドラコに意見できるくらいにネビルは強くなった、が意見したあとは必ず睨まれてびびる。

「騎士団の残りが動き出してる。味方が来る前に潰されたら元も子もない」

「先手を打つか?」

「無理よ。ここにいるのは殆ど未成年なのよ」

必要の部屋は大きな談話室のようになっていて、ハンモックがたくさんある。

反抗しすぎて拷問されそうな生徒が寮を捨てて集まってきているのだ。

 

「君の目的はどう?」

とネビル。

「ああ…上々さ」

「僕達も手助けできればいいんだけど…」

「ああ、じゃあ献血とかしてくれる?」

ネビルは丁寧に辞退した。

 

成果らしい成果といえばバジリスクの死骸から牙を採集したくらいだ。かなりの値段で売れるはずなのだが、残念ながら買い手はいない。

 

サキは多数の味方にドラコの作ったレプラコーン金貨を送りつけ様々な抜け道を用意していた。とはいえ適切な場所は見つからず、今できたのはアリアナの肖像画からホッグズ・ヘッドに抜ける穴とマルフォイ邸から棄てられてマグルの村の古道具屋に置かれているキャビネット棚だけだ。

あとはスイッチを的確なタイミングで押さなければならない。

反撃の狼煙をあげる一番ベストなタイミングはダンブルドアが教えてくれた。

 

 

 

 

「大変だ!」

 

そこで、無線傍受係のディーンが叫んだ。

 

「グリンゴッツが破られたって!犯人が誰かは明かされてないけど、きっとハリーだ!」

「音を大きくしてくれよ」

無線機の周りに人だかりができた。

公営ラジオは賊侵入のニュースを大した事ではないと思わせたいらしく、一言触れるのみに留まったが、有志の放送しているラジオでは魔法事故巻き戻し局がロンドンを駆けずり回ってドラゴンが東へ飛んでく事実を消してまわってるといっている。

「ドラゴンの背中!想像できる?あれに乗って空を飛ぶなんて」

コリンは感激しきった様子でいった。

「ああ、できるね。乗り物酔いで真っ青だ」

ドラコがせせら笑うと、みんながワイワイ言ってドラゴンの乗り心地について議論し始めた。

 

サキはそんな喧騒からドラコを連れ出して、囁いた。

 

「私はこれから先生のところへ行く。ドラコは、ハリーを助けてあげて」

「あいつはなにをするつもりなんだ」

「わからない」

「ふん。手助けしようがないな」

「多分何か探してるんだけど…それが何かはわかんない」

「捜し物しにこんなところに来るのか。羨ましいねえお気楽で」

「うん…ごめんね」

「なんで謝るんだ?」

「ルシウスさんやナルシッサさんのこと、心配でしょ?」

「ああ。胸が張り裂けそうなほど。でも僕だってもう子どもじゃない。僕は僕のすべきことをするだけだ」

「変わったね、ドラコ」

「変わるさ、そりゃ」

 

サキは目を瞑ってドラコの手を握った。

 

「私、ずっと誰かのために死ななきゃいけないと思ってた。孤児院の友達に償うために苦しんで苦しんで、それから死ななきゃって」

「馬鹿だな。君が死んだって誰のためにもならない」

「そうだよね。本当に馬鹿みたい」

 

握り返したドラコの手を口元まで寄せて、サキは唇を当てた。

 

「でも今は違う。私は誰かのために生きたいと思う。…例えば君とか」

 

ドラコは息ができなくなったみたいに顔を赤くした。そして何度か言葉を発しかけて大きく息を吐いた。

「…用意してきた?」

「まあね。殺し文句ってやつ。心臓は動いてる?」

「めちゃくちゃに動いてる。僕だって君のためなら死ねるさ」

「おお、言うね。ドラコこそ用意してたでしょ?」

「あたり」

そう言って二人は笑いあった。

ドラコはポケットから金貨を取り出し、高く放り投げた。

 

「狼煙をあげよう」

 

 

 

 

 


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