【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様)   作:アニッキーブラッザー

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~幕間3~
第13話『忍び寄る凶気と男たちとデータとメガネ』


 麻帆良中等部男子テニス部。

 麻帆良の数多くある部活の中で、体育会に所属する部である。

 実績は正直普通。

 しかし、現在国内でテニス人気が上昇し、更に恵まれた学園の設備があることから、年々実力は上がっている。

 そんな時、全国の強豪校である立海大附属との練習試合が確定したのだが、

 

「ねえ〜、佐々部くん、試合に行かなくていいの〜?」

「けっ、あったり前だろうが。立海? んなのプロ級テニスの俺にとってはどうでもいいんだよ」

 

 麻帆良男子テニス部部長の佐々部。

 彼は今日の練習試合をボイコットし、テニスウェアのまま学園都市内をクラスメートの女子とデートしていた。

 

「佐々部君、テニスうまいんだー」

「ばーか、誰に言ってんだよ。五歳の頃からテニスの英才教育。ジュニアの試合でベスト4二回。ベスト8三回。なにより、俺の家はテニス一家だからな。兄貴も高校で活躍してるし、親父もプロ級だしな」

「すごーい! 私も佐々部くんのテニス、チョー見たーい!」

「いいぜいいぜ! 今度教えてやるよ!」

「え〜、じゃあ、今からリッカイ? 倒してよ〜」

「俺が出るまでもねーって。大体、あいつら今年は関東でも全国でも負けて、しかも一年生にやられたってよ〜、超ダセーよ。調子のってるから負けんだよ、バーカ!」

「きゃははは、ダッサー!」

「まっ、俺のプロ級テニスが相手しちゃ可愛そーだからよ、気を使って今日は中止にしてやったんだよ」

「や〜ん、佐々部くん、優し〜!」

 

 ラケットバッグを背負って、道のど真ん中を偉そうに歩く男。

 全身から自信のようなものが溢れていた。

 道を歩けば、人は勝手に避けると思っていた。

 世界は自分を中心に回っているとも思っていた。

 

「きゃっ」

「って・・・気をつけろ! プロ級テニスの佐々部様が歩いてんだろうが!」

 

 道の途中でぶつかった、小柄な少女と出会うまで。

 

「あら〜、ボーッとしてましたわ・・・」

「ったく、気をつけろよな! ・・・おっ・・・へ〜(結構可愛いじゃん。それに、テニスウェア・・・)」

 

 佐々部はぶつかった少女の容姿に、口元が緩んだ。

 肩より少し長い程度のストレート髪の毛。左右にリボンを結んだ、メガネの少女。

 ヒラヒラのスカートを履いたテニスウェア。

 彼女はペコリと頭を軽く下げて、佐々部を見上げる。

 

「そのバッグ・・・テニスされるんですかえ? それなら好都合ですわ」

「まーな。佐々部だ。サイン欲しけりゃやるぞ?(京都弁か・・・結構ポイントたけえな・・・この女より、こっちの方が・・・)」

「ねー、そんなメガネチビ置いといて早くイコーよ」

「るせーな。ちょっと待ってろ」

 

 佐々部は連れの女生徒をほっといて、目の前の少女に目をつけた。

 だが、少女はいたってマイペースで、佐々部に尋ねる。

 

「お聞きしたいんですけど、テニスコートはどこですかえ? 今日、そこで試合されるて聞きましてー」

「はっ? あー、試合ね試合。でも、行ったってつまんねーよ。二流のテニスプレーヤーとウチの学園の女子の試合だからよ。もし、本物のテニスに興味あるんだったら、俺が直々にコーチしてやってもいいぜ?」

「はー、ウチはその女子に興味あるんですわ〜。聞いた話によるとウチの愛しいセンパイが今日は剣をラケットに変えて、テニ

スウェア着て・・・はあ、はあ・・・あかん・・・想像しただけでウチ、濡れてまいわすわ〜」

「なんだかよくわかんねーけど、そんなお遊びの試合見るぐらいなら俺が教えてやるって」

 

 佐々部は強引に少女の肩を掴んで、少女を誘う。

 すると、少女は不気味な笑みを浮かべて佐々部を見上げる。

 

「うふふ、そうですなー、魔法世界でセンパイとは剣でいっぱいヤラして頂いた分、テニスでも満足させて欲しかったんで・・・・・・・ウォーミングアップにはええかもしれませんな〜」

「おっ! よっしゃ、そうこなくっちゃ! んじゃあ、さっそくテニスしてやるよ。今、二流の奴らと女子をコートから追い出して・・・」

「あ〜、ココでエエですわ」

「テニスコートを確保し・・・ココ?」

「そっ、テニスはボールとラケットさえあればどこでもできますからね〜」

「何を言って―――――」

 

 そして、数秒後、自称プロ級テニスプレーヤーである佐々部の上半身が地面に深々と突き刺さっていた。

 

「きゃああああああ、佐々部くんが犬神家みたいに!?」

 

 女生徒の悲鳴が響き渡る中、ウッドラケットを両手に持った少女が、邪悪な瞳と笑みを浮かべていた。

 

「アカン、前戯にもなりませんでしたえ。ウチの二刀流テニス・・・センパイはどんなテニスでウチを可愛がってくれるんですか? ウフフフフフフフフフフフフフフフフ」

 

 惨劇だけを残し、彼女は消えた。最後にもう一度『センパイ』とだけ呟いて。

 

 

 

 

 麻帆良学園は不思議な学園であった。

 生徒たちが問題を起こした。設備が破損した。

 更には、学園が何者かに襲撃された。

 その様な報告ですら、特に珍しいことではないと処理されていた。

 だが、今日は珍しく、学園全土を管理する学園長である近衛近右衛門は首を傾げた。

 

「テニスの試合で破損したコートの修繕じゃと? 今日で二回目じゃろう?」

「ええ。ですが、生徒たちからの報告では、激しい試合の中で発生したコートの窪みや亀裂、さらに周辺の破損を改めて修繕して欲しいと連絡を受けております」

「いや、タカミチよ、そんなわけあるかい。何故、テニスの試合をする度にテニスコートが破損せねばならんのじゃ? この間の、教職員のテニス大会でも、そこまでにならんかったじゃろう?」

「まあ、僕もおかしいとは思いますが・・・どうします?」

 

 学園が何者かに襲撃されるという事態より珍しい、一日で二度のテニスコート修繕。

 いつもなら、「勝手にどーぞ」という感じで修繕を許可するが、流石に二度目となっては学園長の目に止まったのだった。

 

「それで、ネギ君はなんと? 二回目はいかにして破壊されたと?」

「それが電話の様子では・・・気の壁の衝撃でコートを歪ませ、刹那君の雷がコートを砕き、対戦相手の生み出した竜巻が周りの全てを巻き込んだとか・・・」

「えっ・・・なんじゃ、それ? テニスコートで武道大会でもしとるのか?」

「さあ、そこまでは・・・」

 

 あれ? テニスしてるんじゃ無かったの? と、学園長はキョトン顔。

 報告にやってきた教員・高畑・T・タカミチも自分で言いながら「何言ってんだ?」と苦笑いしていた。

 状況が状況であることからも、一度確認したほうが良いのではないか? そう思いかけたとき、学園長室の扉が勢い良く開いた。

 

「失礼いたします!」

 

 慌てた様子で、一人の教員が学園長室に入って来た。

 

「ガンドルフィーニ先生。そんなに慌ててどうされたのですか?」

「あっ、高畑先生! これは丁度良かった、実は緊急事態が発生しまして・・・」

「緊急事態?」

 

 ガンドルフィーニ。褐色肌の外国人教師。しかしその正体は、麻帆良でも数少ない魔法先生の一人。

 その彼が、肩で息をきらせながら、かけつけたのだ。

 ただならぬ事情を察して、学園長とタカミチの表情が変わる。

 すると、

 

「指名手配中の神鳴流剣士・月詠を麻帆良学園内で目撃情報が!」

「「ッ!?」」

 

 それは、学園長とタカミチの表情を怖ばらせるのに十分な報告であった。

 

「それは確かですか?」

「はい。結界を通った痕跡からも間違いないかと・・・今、食堂塔近辺に居るとの話ですが・・・」

「月詠・・・魔法世界でネギ君たちの敵として立ちはだかった危険な少女じゃ。しかし、戦いが終わったのに何故まだ・・・」

「復讐・・・でしょうか? もしくは、彼女は刹那くんに、異常なほどの執着があります。それかもしれませんね」

「とにかく、今すぐ月詠を発見次第拘束! 更に、ネギ君たちにもこのことを伝えましょう! もはや、テニスどころではないでしょう」

 

 テニスどころではない。それだけ、事態が緊迫していることを表していた。

 だが、急報はこれだけで終わらなかった。

 

「ご報告します!」

「明石先生?」

「突如、世界樹が原因不明の発光! 詳細は不明! ですが、超鈴音が絡んでいるのではないかと思われます!」

「・・・・・・・」

 

 更に、

 

「大変です、学園長!」

「弐集院先生まで・・・一体・・・」

「フライト報告のない謎のジェット機が、この麻帆良に向かっているそうです!」

「・・・・はっ・・・?」

 

 こればかりは、学園長もタカミチも、表情を怖ばらせるよりむしろ呆けてしまった。

 

「は・・・はは・・・ようやく魔法世界での戦も終わり、これからというところで・・・・どういうことじゃこれはァ!!」

 

 これは、夏の最後に麻帆良魔法関係者たち全員に緊張が走った瞬間であった。

 

 

 

 

 

 

 その状況をまったく知らないテニスコートでは、平和な光景そのものだった。

 

「幸運だったね、仁王。真田が居たら、鉄拳制裁だっただろうからね」

「ぷりっ」

 

 僅差とはいえ敗北した仁王。しかし、その表情はどこかスッキリしていた。

 幸村もまた、仁王の心境を理解し、敗北に対してそれほど責めることはなかった。

 

「不二に続いて、女の子にも負けて、何か見えたかい?」

「ふっ・・・余計な情に流されないことが長生きの秘訣・・・それが、勝率を上げるコツぜよ」

「つまり、余計な感情に左右されて、未完成のメテオドライブを使ったことが敗因と?」

「ああ。だが、もう二度と使わんぜよ。あんな正面から戦うテニスは俺には合わんぜよ。それが理解できただけ収穫あったダニ」

 

 真っ向勝負は自分には合わない。自分を皮肉っているが、感情をむき出しにして未完成の技を出して失敗して負けたのは事実。

 だから、仁王の気持ちはどうあれ、結果がこうなっている以上、仁王がそう思うのは仕方のないことであり、幸村もそれを否定しようとはしない。

 ただし、

 

「仁王。誰だって可能であれば他人の真似ではなく、自分自身で培ったテニスで勝ちたいと思う。それが、自分自身の証明になるからね。でも、イリュージョンを使う君は違う。自分のプレーを捨てようとも、どんなやり方でも勝つという意志の表れ。今回はそれが揺らいだようだけど、その様子なら次は大丈夫だね」

「まっ、練習試合じゃけん、色々と調査や実験には丁度良かったぜよ。ただ・・・」

「ただ?」

「世界は本当に広いぜよ」

 

 仁王の視線の先には、たった今、死闘を終えてクラスメートたちの祝福を受けてモミクチャにされている刹那。

 

「せっちゃん、ナイスゲームやー!」

「ほんと、あんなすごい人によく勝てたよねー!」

「仁王くんも桜咲さんも超かっこよかったよ!」

 

 抱きつかれ、背中を叩かれ、拍手喝采を受けて、非常に照れくさそうだ。

 侍のように射殺すような眼光も今では潜め、ただの女子中学生にしか見えなかった。

 

「あ、どうも、みなさん。応援ありがとうございます」

「色々あったが上出来だな」

「エヴァンジェリンさん・・・どうにか勝てました・・・本当に強かったです」

「だろうな。最後に、仁王雅治本人の技ではなく、別の選手だったり、木乃香の姿をもっと織り交ぜていれば結果は違ったかもしれんがな」

「そうですね。結局、最後・・・どうして仁王さんがあんな技を使ったのかは分かりませんが、もしあれが入っていれば流れも変わっていたでしょうからね」

「どうして仁王さんがあの技を・・・ですか・・・」

「ネギ先生?」

「多分・・・それは、仁王さんが男だからじゃないでしょうか?」

「えっ・・・先生、それはどういう・・・」

「あっ、いえ、ただ・・・もし僕も立場が同じだったら同じことをしたような気がして・・・」

 

 刹那はただ、勝利の喜びよりも相手が強敵だったと、それ以外は今は言いようが無かった。

 仁王の本心だけは結局分からないままであったが、とにかく今回は刹那の勝ち。それが揺らぐことはない。

 

「だが、これでようやく一勝というわけだ。次のダブルスも取って並ばせるとするか」

 

 どちらにせよ、もう終わった話は置いておく。問題は次だ。

 

「うむ、拙者らが連敗したが、これで何とか首の皮は繋がったでござる」

「そうアル。次のダブルスも勝てば、団体戦そのものの勝利も見えてくるアル!」

 

 そう、これで一勝二敗だ。

 練習試合ということで、団体戦の勝敗にかかわらず最後までやる予定だが、これでまだ団体戦の勝敗も分からなくなった。

 刹那の勝利が俄然麻帆良側にも勢いをつけた。

 

「よーし、私たちチアリーディング部も!」

「打倒立海に向けて!」

「応援よ!」

「そーだー! ぶっ倒せー!」

「桜咲さんに続けー!」

 

 いくら彼女たちにとってイベント的な練習試合とはいえ、やはり負けていい理由にならない。

 どうせなら勝ちたい。刹那の勝利でそれが現実的になってきた。

 だが、

 

「でっ、誰があの超人軍団と試合すんだ?」

「「「「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」」」」

 

 千雨の一言で盛り上がっていた雰囲気が一斉に静まった。

 

「わ、私は応援が・・・」

「いんやー、来週はバスケの試合があってにゃー!」

「私は新体操の個人戦が控えてて」

「水泳大会が・・・」

「試合中に尿意を・・・」

「ふえーーーーーん」

「ウチはダメです! サッカー部のマネージャー! 運動部やのうて、マネージャー!」

「お嬢様を彼らと試合させるわけにはゆきません」

「う〜ん、確かにウチも風林火陰山雷や大車輪山嵐は勘弁や」

「おい、私は頭数に入れんなよな。インドア派の代表選手なんだからよ」

 

 そう、先ほどのシングルスの試合もこれでモメた。

 ぶっちゃけ応援は構わない。っていうか、応援に専念したい。

 試合するのはまっぴらゴメンな連中だった。

 

「ちっ、龍宮は帰ってこんか。となると、次のダブルス・・・茶々丸は確定としても、どちらにせよもう一人は貴様らの中から出すわけか」

 

 エヴァが舌打ちして残っているメンバーを見るが、渋い顔で悩む。

 

「絶対私たち無理だってー!」

「う〜、今、居ないのは、いいんちょに、千鶴ねえに、ザジさんに、美空ちゃんに、五月ちゃんでしょ〜、あとは龍宮さん・・・わーん、いいんちょってばいつまでモンブラン食べてんのさー!?」

 

 果たして誰をメンバーに入れるべきか。

 誰が出てきても特に差がないのであれば、やはり運動能力で選ぶしかない。

 

「皆さん、危険だと思えば、試合が始まってからすぐにコートの外に出ても構いません。二対一になるかもしれませんが、私が何とかしてみましょう」

 

 既に出場が決まっている茶々丸が、危険を回避するための案を出す。

 確かに、それだと茶々丸の比重は別にして、怪我の心配は無いだろう。

 それなら自分たちも何とかなるかもしれないと皆が思うと・・・

 

「んじゃーさ、あんなイケメン軍団と間近で接するなんて機会ないしさー、私出ちゃおっかな?」

 

 その言葉は誰もが意外だった。

 その性格は活発なれど、長谷川千雨と並ぶインドア派。

 ただし、人間関係平穏が一番の千雨と違い、望んで修羅場に身を投じて波風立たせることに興奮を覚える悪ノリ大王。

 麻帆良学園漫画研究会所属。その名は、

 

「「「「「パルーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!??」」」」」

「って、驚き過ぎ驚きすぎ!」

 

 早乙女ハルナ。自ら死地への出兵に名乗りを上げたのだった。

 

「ハルナー、どどどどど、どうして!?」

「気を確かに、ハルナ。今なら間に合うです!?」

「って、のどかもユエもどうしてそんな驚くかな〜? やっぱ、こういうのは参加したほうがイケメン兄ちゃん達と仲良くなりやすいじゃん? これで、次の冬コミの取材に協力してもらいやすいし? 題名は・・・『俺のそびえ立つこと山の如し!』とかね」

 

 当然、彼女の立候補はクラスメートからも意外だったために、誰もが驚きを隠せなかった。

 だが、自ら死地に名乗りをあげたというのに、ハルナは非常に能天気だった。

 

「って、お前、それで死んだらどーすんだよ!」

「千雨ちゃん、大げさだね〜。魔法世界のフェイトたち以上ってことはないんだしさ〜。それに、今はなんかテニス界のBLが全ての需要を満たすのではと私の勘が・・・」

「そうだけどよ・・・ってか、お前はBLの資料集めのために出るってのかよ!」

「大丈夫大丈夫、茶々丸さんが守ってくれるっしょ? それにさー、今の私は無敵なんだよね〜。何故なら、既に私のアーティファクトのスケッチブックにはピート・サンポラスや熱岡修蔵などのトッププロを・・・」

 

 確かに誰かは出なければいけないのだが、流石に彼女が出るのはいかがなものかと、クラスメートたちも自分が代わりに出るとは言わないまでも微妙な表情だ。

 

「あの、ハルナさん」

「だいじょーぶだって、ネギ君。私には『秘策』があるからね〜」

「やっ、そうではなくて、立海の人はみな真剣に試合に望まれます。こっちもふざけ半分でやるのは失礼だと思いますので・・・」

「もう、ネギ君は分かってないね〜、イタズラも悪ノリも、空気を読んでこそできるんだよ」

 

 どうやら出る意志は変わらないようだ。

 エヴァも微妙な顔をしているが、他に出るメンバーがいないのであれば仕方がない。

 

「まあ、茶々丸なら二人分どころか三人分の動きもできるからな。いざとなったら、上半身と下半身を分離させたダブルスで・・・」

「あの、マスター、私もそこまでの反則は・・・・・・いえ・・・確かに、ルールブックには載っていません。盲点でした・・・」

「冗談だ。とりあえず、パートナーは頼りにできん。奴のサーブとレシーブのポイントを期待できない分、お前が落とさないようにな」

「大丈夫です。そのために、試合前にハカセより、世界中のトッププロのデータをインストールしていただいて、・・・ネギ先生にいっぱい・・・いっぱいゼンマイを回して頂きましたので・・・ポッ・・・」

 

 茶々丸も異論は無いようだ。静かなる闘志を内に秘め・・・

 

「茶々丸さん! 頑張ってくださいね! ハルナさんを御願いします」

 

 と思ったが、ネギの応援を受けた瞬間、急に顔を紅潮させた。

 

「ネギ先生! ま・・・任せてください! か、必ずあの・・・ですから・・・試合が終われば・・・」

「いいからテメエはさっさといけ、色ボケロボ娘ッ」

「いた・・・千雨さん、・・・激励のキックありがとうございます」

「って、何が激励だよ! 私はただお前がボケボケだからイラついただけだ」

「いいえ、親友である私には分かります! 今のキックには激励90%に嫉妬10%が含まれていました」

「・・・はあ? って、なんだその割合は!? しかも、10%嫉妬ってなんだ!?」

「当然、私がネギ先生の声援を受けたことに・・・」

「どこまでボケてんだお前は! イジェクトすんぞ!?」

「ああ〜、千雨さん、ゼンマイはもう十分巻いてもらいましたので、これ以上は!?」

「うるせえ、テメエはこうだ! こうだ! こうだ!」

 

 意外と茶々丸も和気あいあいだった。

 先程までの死闘の雰囲気が急にほのぼのとした空気になってしまったが、彼女たちは忘れている。

 今から、立海の化物と戦うということを。

 

「へ〜、茶々丸さんと千雨ちゃんって仲いいんだね。私より千雨ちゃんとダブルス組んだほうが良かった?」

「大丈夫です。千雨さんは絶対に出ないと言い張るでしょうから、むしろ組んでいただいて感謝します」

「いいってば。だけど、危なくなったらちゃんと守ってよね〜?」

「問題ありません。既に立海メンバーのデータは収集し終わりました。既に私は――――――」

 

 そう、

 

「『既に私は彼らのことを知り尽くしています』・・・・・・か?」

「「ッ!!??」」

「『後は、データを元に戦えば私たちの勝ちは揺ぎません』・・・と、お前は言う」

 

 相手はテニス界の化物。生半可で通じる相手ではない。

 

「この柳蓮二。たった数時間でデータを取られるほど甘くはない」

「さあ、これにてお遊びは終わりです。舞台の幕開けと致しましょう」

 

 立海の誇るビッグ3の一人。達人・柳蓮二。

 立海の誇る模範生にして優等生にして紳士でジェントルマンで、しかし実はエセ紳士なのではと最近チームメイトにも疑われている柳生比呂士。

 立海でもあまりダブルスでペアにならない二人だが、それでも立海レギュラー。

 再び、荒れた試合が幕を開ける・・・

 

「いや・・・さっきの二人の試合でテニスコートメチャクチャじゃん」

「「「「あっ・・・・・・」」」」

 

 千雨の言うとおり、コート整備の時間が再び設けられることになるのだった。

 


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