【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様) 作:アニッキーブラッザー
「先生……私……」
「千雨さん、ど、どうしたんですか? あの、っていうか僕もどうしましょう……タカミチも学園長も、口開けたまま固まっているし………」
「いや、もういいよ……とりあえず私は……ちょっと、ゲーセンで『パワースマッシュ』やってくる」
「ちょ、千雨さん!」
「あれが一番リアルなテニスゲームって噂だから……ちょっと、自分の認識確認してくる……」
「うわあああん、置いてかないでくださいよ~、千雨さーん!」
「うるせえええ、もう知るかーっ! つか、幸村くんのばーか、裏切り者!」
幸村に裏切られた千雨が叫ぶ中、エヴァンジェリンは未だかつて味わったことのない感覚の中に居た。
「ッ、ど、どういうことだ! ラケットを握っているのに、ラケットの感触も重さも……ッ、ボールの重さすら……」
華麗なるラケットワークでどのような打球に対しても見事にボールコントロールしていたはずのエヴァの打球が、連続でホームランになってしまった。
「う……うそ……あの、エヴァちゃんが……どうしてこんなことに!」
スイングの仕方や力加減がまるで分からない初心者のようなプレーになったエヴァに、ギャラリーは凍り付いていた。
「くっ、くそ、何が、どうなって……」
「今度はホームランを打たないように手加減かな? でも、そんな探り探りのショットでは、俺は抜けないよ?」
「だ……黙れ……」
唯我独尊の女王様。常にドS丸出しの高笑いを浮かべるエヴァンジェリンが、大粒の汗を流して顔を蒼白させていた。
「どこへ打っても、何をやっても返されるイメージだ」
その時、真田が凍りついた場で呟いた。
「ゲンイチロー、どういう……」
「先ほども言ったように、幸村は特殊な技法は使用せず、相手の打った球を的確に分析して返すテニスだ。それはやがて、相手はどこに打っても、何をやっても返されてしまうというイメージが無意識のうちに刷り込まれ、やがて肉体や精神が硬直し、無意識のうちにイップスに陥るのだ」
イップス。それは、魔法や戦闘の世界で生きる者たちにとって聞きなじみのないものであった。
「茶々丸さん、いっぷす、ってなに?」
「イップス。それは、精神的な原因などによりスポーツの動作に支障をきたし、自分の思い通りのプレーができなくなる運動障害のことです。よく、野球のピッチャー、ゴルファー、そういったアスリートによく見られる症状です」
「じゃ、じゃあ、エヴァちゃんはそれになってるっていうの?」
茶々丸は機械のように淡々と説明する。しかし彼女自身、内心では未だかつて見たことのない主の姿に動揺しているのであった。
「ふ、……くだらん……何がイップスだ……」
その時、コート上で這い蹲るエヴァンジェリンは、口元に笑みを浮かべた。
しかし、その笑みは、明らかに強がりだというのは誰の目にも明らかであった。
だが、それでもエヴァは己を奮い立たせるかのように吠える。
「イップスなど、所詮は精神的なもの。トラウマなどから発症するようなもの……トラウマ? 笑わせるな。この私がこれまで、どんな人生を送ってきたと思っている!」
なぜ、たかがテニスに恐怖を抱かねばならぬのだと、エヴァは立ち上がる。
「うおおおおおおおっ!」
そして、自分がこれまでの過ごしてきた人生、乗り越えてきた苦難を思い返す。
「目覚めの来ない悪夢の日々! 寒さに凍え、飢えて、眠り、蹴られ、蔑まれ、血に濡れて戦った! 無限に続く荒れ果てた荒野の旅、死なない体ゆえに終わりなき生き地獄の日々! そんな世界を歩き続けた私に、たかがイップスなど!」
「テニスコート内では関係のないことだよね」
呪われた出生、終わりの無い闇の日々、狙われ、命の危機に晒され、時に出会うことの出来た友人とも時の流れに阻まれて別れ、殺され、失い、裏切られ、それでも自分は死ぬことも出来ずに今日まで生きてきた。
「あの幼女、気合で幸村のイップスを振り切るつもりか!」
「大した精神力だ……だが……」
エヴァンジェリンは動く。たかが感覚の一つを失ったぐらいがなんだというのだと自分に言い聞かせ。
「ふはははは、そうだ! 触覚ぐらいくれてやろう。それぐらいのハンデはあってもよかろう。たとえ、ラケットの感覚がなくとも、ボールを見ればどの程度の力で打てばいいかなど、体が覚えて―――――」
「ボールを見れば分かるか。確かにね……見えればの話だけど」
「ッ! な、し、視界が……ッ!」
次の瞬間、エヴァンジェリンに更なる異変。それは、エヴァの見る景色のすべてが光のない暗黒の世界へと変わったのだ。
「こ、こいつ、まさか私の視覚すらもッ!」
「お望みなら、他の感覚も奪おうか?」
「ッ!」
その瞬間、エヴァンジェリンに鳥肌が立った。
エヴァンジェリンはテニス以外も含めれば、戦闘経験は数え切れないものだ。
その戦の中で確かに、「目の見えない状況」や「全身が麻痺して感覚がなくなる」というような戦闘経験はあった。
「エヴァちゃん!」
「エヴァちゃんが落ちてるボールを踏んで転んだ! うそ、ほ、本当に見えてない!」
「え、エヴァンジェリンさん……あの、エヴァンジェリンさんが……」
「マスター……マスター! もういいです! 棄権してください、マスター!」
中には、相手の特殊能力やアーティファクトに近いもので、そういった「感覚を狂わせる」といった能力や、「催眠」「幻術」などを用いる敵も居た。
しかし、その全てをエヴァは乗り越えてきたし、打ち倒してきた。
だというのに、これはなんだ?
(ッ、なんなんだ、この小僧は……)
戦闘ではない。魔法でもない。アイテムでもない。ただ、テニスをしていただけ。
(これが、テニスなのか? こんな……こんなのは違う! こんなつらい思いをするなど……ッ! テニスはこんな苦しい思いをするようなものでは……)
それなのに、この全身の感覚が徐々に失われている事態に、エヴァは全く説明できないでいた。
(私ともあろうものが揺らぐな! たかがイップスなどに屈するな!)
これがただの戦闘での殺し合いであれば、視覚や触覚を奪われたぐらいではエヴァも揺るがなかったかもしれない。
だが、これはテニスだ。
「あの幼女、逆効果だ。イップスは精神的なものであり、強引にそれを克服しようとしても逆に精神が追い詰められるだけで、悪化するだけだ」
真田が痛々しいものを見るような目で、エヴァの姿を見ていた。
そんな中、エヴァは飛んできた幸村の打球に、目が見えなくても反応して正面から構えた。
「あのチビッ子、目が見えないのに反応した!」
「打球の音だ! そして匂いなどで反応しているんだ!」
「なんてチビッ子だ!」
「でも。……それでも……」
この状況でも抗おうとするエヴァに、テニス部員たちは心を打たされた。
しかし、ここから先の光景は目に余ると思ったのか、誰もが顔を少し俯かせていた。
「この私を舐めるな! 打球音とボールにこびり付いた匂いを探れば、この私にとってはそれだけで十分なのだ!」
待ち構えるエヴァは氷の魔法でボールを凍結させ、そしてそれを打ち返そうとする……が……
(ん? なんだ? 音が消えた……ボールの匂いも? なんだ? どこだ? どこに?)
突如、頼りにしていた音とボールの匂いが消失した。
一体どこに消えたのかとエヴァが神経を張るが、無駄なこと。
ボールが消失したのではない。
エヴァが感じ取れなくなっただけのこと。
「無駄だよ、お嬢ちゃん。既に嗅覚は失われている。もうボールの匂いをかぎ分けることなんて出来ない」
コート上で呟く幸村。同時に打ち返したボールは、エヴァの足元を抜けた。
一歩も動けずにただ、呆然とした顔で心ここにあらずのエヴァ。
そのエヴァの姿を見て、幸村はわざとらしいように呟いた。
「ああ……もう……俺の声も聞こえないんだったね」
当初、人形のように踊らされていたのは幸村。
しかし気づけば、糸の切れた人形のように崩れ落ちたのはエヴァ。
「ま、マスタアアアアアアアアアアアアア!」
「ちょ、え、エヴァちゃんが!」
「う、うそ! 誰か、タンカーッ! エヴァちゃんが倒れた!」
「なんでよ、さっきまで普通にテニスしていたのに、なんで!」
「ち、ちげーよ、いっぷす、こういうやつじゃないって……」
コート上に横たわるエヴァ。その瞳には生気が宿っていない抜け殻のようだ。
全身を異常なほど痙攣させ、汗が滲み出て、明らかに普通ではなかった。
そして何よりも、あのエヴァンジェリンがここまで追い詰められるなど、麻帆良の者たちにとっては未だかつて考えたこともなかったことであった。
「終わったな。もう、あの幼女は二度とテニスが出来ぬかもしれぬな……」
「仕方ねー。幸村部長と戦っちまったら……」
「半端に実力がある分、精市も容赦できなかったか……哀れなり……エヴァンジェリン……」
幸村と戦う以上、こうなることは覚悟しなくてはいけないことだった。
この場に集ったテニス部員たちは、間近でこの惨状を目の当たりにして改めて思った。
「必要なのは、テニスコート外でどんな人生があったかではない。テニスコートで命を懸けられるかどうかだよ」
「…………………」
もう、言葉も届かぬエヴァンジェリンには、何を言っても反応しない。
そんなエヴァをしばらく見下ろしながら、幸村は背を向けた。
終わった……誰もがそう思っていた。
(動かぬ……体が……分からん……私は……今、どうなっている? 感覚が奪われているから魔力も操作できん………人間相手に、恐怖を……テニスが嫌になるほどの……600年も続けたテニスを全く楽しめず……)
倒れるエヴァンジェリンは起き上がることもできず、ただ、暗闇だけの意識の世界に囚われていた。
(これが闇の福音エヴァンジェリン……か? ……テニスに怯えて……苦しんで……)
もう嫌だ戦いなくない。テニスなどしたくない。極限まで追い込まれた未だかつてない境地にまで至ったエヴァンジェリン。
(楽しくて個人的には好きだったテニスが……ここまでつらく……怖くなるとは……情けない……あれほどの人生を過ごしてきた私が……魔王とまで言われた私が……なぜ……)
人生の大半を暗闇の世界で生きてきた。
なのに、今は、この暗闇が恐ろしくつらい。
だから、もうエヴァは立ち上がりたくなかった。このまま眠っていたかった。
しかし……
(苦しい……つらい……この暗闇の世界は嫌だ……)
この暗闇の世界。誰の声も聞こえず届かない孤独の世界。
そこに一人取り残されたエヴァは思った。
(ああ……またこの世界か……かつて歩いた……堕ちた地獄……ん?)
かつて、自分が悪の魔法使いとして全盛期だった頃。当たり前のように過ごしていたこの暗闇の世界。
そこに囚われて、その時、エヴァはあることを思った。
(そういえば……かつて当たり前のように居たこの世界を……どうして私は……)
昔は当たり前のように居たのに、どうして今は嫌になったのか?
そう自分に問いかけた時、エヴァは自分の人生が走馬灯のように流れた。
―――エヴァンジェリンさんは僕の生徒じゃないですか
そして、その理由などすぐに分かった。
反吐が出るほど甘い子供やクラスメートたち。
―――光に生きて見ろよ
かつて、光に生きろと言った赤毛の男。
そのすべてがあったからこそ、今の自分は暗闇の世界で生きていけなくなったのだ。
(でももう無理だ……殺してくれ……この終わらない地獄の世界から……もう、果て無く続く荒れ野の世界で……一人で生きていけな――――)
もう無理だ。そう思ったとき、誰の声も届かないこの暗黒の世界に、一つの声が響いた。
頭に? 耳に? 心に? それは分からないが、その声を、エヴァンジェリンは確かに聞いた。
―――あんたがそんなこと言うな! 違う! 全然違うぜ! あんたの明日に続いてんのは荒れ野なんかじゃねえ!
違う、聞こえたのではない。
思い出したのだ。
「……えっ?」
―――楽しい事だってある! ダチだってたくさんできる! 好きな男だってできるんだ! そりゃ曇りの日だって嵐の日だってあるだろうけどよ……
「……ボーヤ……違う……ナギ? いや……違う! あいつだ……あいつが私に……」
―――雨が上がれば、あんたの明日はカラッと晴れた青空だ!
「コノエ…………トータ……」
それは、あまりにも気の遠くなりそうなほど昔のことだった。
だが、それを思い出したとき、エヴァの脳裏には、自分が乗り越えてきた辛かった過去ではなく、自分が過ごした楽しかった日々がよみがえった。
それを思い出したとき……
「トータ…………」
エヴァは立ち上がっていた。
「ッ! な……なに? た、立ち上がった……この子も……あのボーヤと同じように」
背を向けたはずの幸村が思わず驚き声を上げた。
「エヴァちゃんが、立った!」
「おい、あの幼女、立ったぜ! 目も耳も聞こえないってのに……立ち上がった!」
「しかも、ただ、立っているだけじゃない……ラケットを……握っている」
「あの状態でまだやるっていうのか!」
そう、エヴァがいつの間にか立っていたのである。
その表情は未だに正気を保っていないが、それでも彼女は動いた。
今のエヴァに、かつて自分と戦った少年の姿をダブらせた幸村は、心がざわついていた。
「誰もがテニスを嫌になるような状況下……あのボーヤは……テニスを楽しむ心で克服した……ならば君も?」
テニスを楽しむ気持ちを思い出し、天衣無縫の境地へとたどり着いた少年はイップスから復活して、自分を下した。
なら、この目の前の少女は? 彼女は立ち上がっただけか? 克服しただけか? それとも、その先の境地へ?
幸村がそう思ったとき、まるで壊れた人形の様だったエヴァが、その直後に愛らしい微笑みを浮かべて口を開いた。
「トータ。私の今日は……騒がしい奴らに囲まれているものの……カラッと晴れやかだぞ……」
その時、エヴァが完全にイップスから抜け出して正気を取り戻した。
「なんと! あの幼女、イップスから自力で抜け出した!」
「エヴァちゃん!」
「しかも、あの光は!」
「まさか、越前リョーマと同じ……」
そして、今のエヴァは正気を取り戻しただけではない。
これまで、エヴァンジェリンから溢れていた闇の瘴気。
その闇が、凝縮し、全身に行き渡る。
「ああ、楽しいさ……私は生きている……ここで過ごす日々も……そしてテニスもな」
屈託なく空に向かって一人語るエヴァンジェリン。
その時……
「契約に従い我に従え氷の女王、疾く来れ静謐なる千年氷原王国、咲き誇れ終焉の白薔薇」
エヴァが何かを口にした。その言葉の意味をテニス部員たちは何も分からない。
突如エヴァがヘンテコなことを口走ったとしか分からない。
だが……
「フギャアアアアアアアアアアア! まままま、マスタアアアア! そ、それはダダダダ、ダメじゃないですかーっ!」
「ちょー、え、エヴァちゃんが、闇のま、魔法を!」
「と……止めるぞーっ、タカミチ! なんか分からぬが、これ、絶対テニスじゃないぞい!」
「だ、ダメです、学園長! あの状態になったエヴァンジェリンは……ッ!」
エヴァンジェリンの上位魔法、千年氷華。
解放、固定、掌握することによって、自身の肉体に取り込み融合する。
自身を強化させる闇魔法の活用。
「マギアエレベア・氷の女王! ……さらにここから!」
本気になったエヴァンジェリンの術式装填魔法。
600年もの歴史の中で、過去から未来まで長く語り継がれる魔王の力。
しかし、今日はそこで終わりではない。
戦闘ではない。テニスを楽しむ心。
その気持ちを思い出したエヴァンジェリンは止まらない。
「ななな、なんだー、あの子! て、テニスウェアからなんか、すごい服に変わったぞーッ! 黄金聖闘士の鎧みたい!」
「し、しかも、な、なんだか、寒い! 空気が凍りつきそうなほど……」
「跡部……あの少女は一体何が?」
「待て、貴様ら。あの小娘……ここで終わりじゃねえ。俺様の眼は誤魔化せねえ。あの小娘の体内から溢れようとしている、もう一つの力……ッ!」
エヴァから溢れる、途方もないエネルギー。
その眩く温かいエネルギーが全身を覆い……
「やはり! あれは、全国大会決勝で幸村と戦った越前が辿りついた……ッ!」
「そう、間違いないッ!」
「無我の境地……その奥にある扉……ッ!」
「天衣無縫の極みッ!」
そう、エヴァから溢れるもう一つの力。
テニスをやるものならば、誰しもが抱く、「テニスは楽しい」という純粋な気持ち。
その想いを抱くものであれば誰しもが到達する可能性がある、境地。
「そう、この天衣無縫の溢れる力を……魔力と融合させ……私は到達する!」
元々、魔道の極みに達していたエヴァンジェリン。
今ここに、天衣無縫の極みにも到達し、さらにはその二つの力を融合させた。
それは……
「……ま、まさか……アレは……ッ! 蓮二……」
「バカな! ありえんことだ……貞治……何故なら、あの奇跡の力は……世界大会のダブルスのトッププロでも起こるかどうかの奇跡……そ、それを一人で……ありえるはずがない!」
魔道の極み。天衣無縫の極み。二つの力を混ぜ合わせる等、テニス界でも魔法界でも未だかつて前例のないこと。
ゆえに、今のエヴァンジェリンの姿を、ネギたちも真田たちも説明できるはずがなかった。
しかし、それでも今のエヴァについてを言うとしたら、一つしかないと、乾と柳がある仮説に辿りついた。
すると……
「その認識で間違いないヨ、乾さん。柳さん」
「ええ。我等、魔界庭球におけるグランドスラムでも……ダブルス限定で見られる奇跡です。しかし、流石はエヴァンジェリンさん。一人であの境地に辿り着くとは……」
その仮説を超鈴音とザジが肯定した。
「では、あの子供がたどり着いたのは……」
「そうネ。二つの異なる能力が共鳴しあうことにより、新たなる力を覚醒させる……ダブルスにおける奇跡をたった一人で覚醒させたヨ!」
そう、魔道と天衣無縫の二つの力が共鳴しあい、合わさり、エヴァンジェリンが覚醒させた奇跡の現象を、超鈴音はこう呼んだ。
「
そう、エヴァは辿り着いたのだ。
その心の中の闇が浄化されて辿り着いた境地。
「あの、学園長……こ、これは……エヴァンジェリンは一体……」
もはや、試合を止めるという選択肢が頭から抜け落ちた魔法先生たち一同。
完全にこの試合に見入っていた。
そして、学園長も言う。
「もう、ワシにも分からぬ。しかし……ただでさえ、その道の極みにあったエヴァンジェリンが、ここに来てテニスと通ずることによって、新たなる力を得たのじゃ……」
そう、何が起こっているかは彼らにも分からない。
それでも言えるとしたら、
「あやつめ、進化しおったわい」
そう、『進化』という言葉以外に表現が出来なかった。
そんな、エヴァンジェリンの姿に幸村も震えが止まらなかった。
「……世界大会のダブルスでも見れるかどうか分からないものを……シングルスで……お嬢ちゃん……君は……」
もはや脱帽以外の感情などない。
「待たせたな、幸村精市。さあ、楽しいテニスを始めよう」
そう言って笑うエヴァに、幸村ももう笑うしかなかった。
「ふ……ふふ、そうだね。しようか、テニスを」
極みの中の極みの境地に達したエヴァンジェリンと神の子幸村の戦いは、異次元の戦いに足を踏み入れることになる。
UQホルダーに関連するものを書いて申し訳ないです。知らない人は読んじゃいましょう。