【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様)   作:アニッキーブラッザー

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とりあえず、二時間で書いたのでかなりテキトーですが、何名かの方から要望がありました、魔法武士誕生の瞬間です。


特別アフター:アスナと魔法武士

 魔法世界崩壊を防ぐため、その礎として神楽坂明日菜は百年の眠りにつかなくてはならない。

 それが、世界を救うための代償であり、避けられないこと。

 それを知った友たちは、自分に「逃げよう」と泣きながら言ってきたが、自分は逃げないと決めていた。その運命を受け入れると。

 だが、次に目が覚めるとしたら百年後。だからこそ、この世界に居るこの時代に居る者たちとはもう二度と会えなくなる。

 だからこそ、残された時間は悔いのないように過ごしてきた。

 クラスメートたちには今生の別れについては教えていない。知っているのは、一部の深く親しい者たちだけ。

 アスナはそれでいいと思っていた。あまり大勢の友に別れのことを知られても、湿っぽくなり、悲しくなり、そして心残りが出来て、決心が鈍ってしまうと思っていたからだ。

 しかし、そんなアスナだが、一つだけ心残りがあった。

 別れの日の当日、アスナは携帯電話の過去のメールの履歴を眺めていた。

 

 

 

アスナ:今日の試合は楽しかったよ♪ あと、ナンパの時、蹴っちゃってゴメンm(__)m で、昼間も話したけど、今度の日曜日は渋谷ね! ラケット選ぶの手伝ってね! 神奈川からだと遠いけど大丈夫? 待ち合わせは定番でハチ公ね⤴

 

ゲンイチロー:全く問題ない。それと今日は俺も有意義な時間を過ごさせてもらった。あと、寝る前にちゃんとストレッチをして筋肉をほぐしておけ。

 

 

 

アスナ:ゴメン! 寝坊して、今ダッシュで電車乗ったとこだけど二十分ぐらい遅れそう! 本当にごめん……

 

ゲンイチロー:たるんどる! 集合時間の十五分前には現地に到着しているのが常識だろう!

 

アスナ:うう、ほんとにごめん……お昼おごります……

 

 

 

アスナ:今日はありがとー( ^^) ! 新品のラケットがいい感じで今日は抱きしめて寝ちゃう! 

 

ゲンイチロー:礼には及ばん。ニューラケットを手にした時に高揚する気持ちは分からんでもない。

 

アスナ:私もみんなとこれで練習しとくから、次に会った時ビックリさせてやるから! でさ、たまにテニス教えてよね

 

ゲンイチロー:うむ、無論だ。ビシビシ鍛えてやるから覚悟しておけ。

 

アスナ:お願いしまーす、師匠♪ そういえば、ビックリといえば、今日は本当にビックリしたよ。まさか、ゲンイチローがあんなにカラオケうまいなんてね……しかも、バレン〇イン・キッスとかwww

 

ゲンイチロー:俺だって、カラオケぐらいこなす。

 

 

 

アスナ:こんばんは、まだ起きてる? 今度の祝日だけどさ、那波さんが切原くんと麻帆良でテニスするって話聞いたんだけど、ゲンイチローも休みなんでしょ? もし予定なかったら、一緒に来て私とテニスしない?

 

ゲンイチロー:よかろう。どれほど腕を上げたか見てやろう。

 

アスナ:本当!? よーし、私の新技見せてやるから覚悟しなさいよ~

 

ゲンイチロー:十年早い。返り討ちにしてくれる

 

 

 

アスナ:ねえ、あのさ、ゲンイチロー、うちのクラスの朝倉がジャッカルくんから結構アプローチされてるみたいなんだけどさ……何か知ってる?

 

ゲンイチロー:それは知らなかったな。いずれにせよ、ジャッカルたるんどる。男子たるもの、例え誰かに好意を持っていたとしても、簡単にその気持ちを打ち明ける事などありえんのだ! 今度、鉄拳制裁しておく。

 

アスナ:いや、そうじゃなくてさ!? 朝倉はあんまり教えてくれないし、二人が付き合ってるのかとか知ってるかなって思ってさ……

 

ゲンイチロー:いや、部でそういった話はしたことがないのでな。

 

アスナ:ふ~ん、そうなんだ……。でさ、ちなみになんだけどさ、だからどうってわけじゃないし、あくまで参考なんだけどさ、ゲンイチローは彼女が欲しいとか、今気になってる子が居るとかそういうのはないの?

 

ゲンイチロー:たるんどる! 俺はそんなことには興味はない! そもそも、中学生という未熟な我々にはまだ早い!!

 

アスナ:……別に中学生ならそれぐらい……てか、ゲンイチロー、そんな外見と中身のくせに、そういうところだけ中学生っていう肩書持ってこないでよ……

 

 

 

アスナ:今度さ、体育祭があるんだけどさ、切原くんとジャッカルくんと丸井くんが来るって聞いたわよ? ってことは部活ないってことでゲンイチローも来なさい! イベントによっては他校の人も参加できるから絶対におもしろいわよ!

 

ゲンイチロー:ほう、体育祭とは風流だな。しかし、参加するからには我ら王者立海は全力で勝利を掴み取る!

 

アスナ:いや、体育祭だから! そんな気合入れなくて大丈夫だから、お祭りだから! お願いだからそこまで気合入れないでね!

 

 

 

ゲンイチロー:今日の体育祭は騒がせてしまってすまなかったな。

 

アスナ:うん、まさか、跡部くんが戦闘機に乗って登場するとは思わなかった……千雨ちゃんがまた目ェ回してたし。おまけに、幸村君の所為で色々な人が気を失ってたし。

 

ゲンイチロー:跡部はどうかは知らんが、幸村にも悪気があったわけではない。

 

アスナ:だからって、ネギを捕まえて賞品ゲットの企画で、他の参加者を片っ端から五感を奪うってどうなの!? っていうか、幸村くんも跡部くんもガチで千雨ちゃん狙い?

 

ゲンイチロー:分からぬ……

 

 

 

アスナ:10月ってさ、跡部くんと手塚君の誕生日なんだってね? 誕生パーティーの招待状が来たけどさ、ゲンイチローも行くの? ちなみに私たちはクラス全員参加。参加条件が、千雨ちゃんを連行することってなってたけど♪

 

ゲンイチロー:派手好きの跡部のことだ。どこかのドームを貸切るそうだ。沖縄や大阪などの者たちも招待しているそうだ。

 

アスナ:ふ~ん。でさ、跡部くんと手塚君のプレゼント買いたいんだけどさ、何買えばいいのか分からないから選ぶの手伝ってよ。今度一緒に買い物行こうよ。

 

ゲンイチロー:気持ちさえこもっていれば、あの二人ならば何も文句は言わんであろう。

 

アスナ:い・い・か・ら! とにかく今度買い物行くからね! いーい?

 

 

 

アスナ:お疲れ、もう家に帰ってる? なんか今日のパーティー、楽しかったけど色々すごかったね。でもなによりも、今日の男女混合二人三脚大会で優勝、超うれしかった! 私たちのコンビって無敵かもね。写真友達にもらったからメールで送るね♪ 

 

ゲンイチロー:お前も今日はなかなか良い動きをした。

 

アスナ:まあね。月詠と切原くん、木手くん龍宮さんのコンビが凄い怖くて危なかったけどね。いいんちょは、亜久津くんと最初から最後までずっとケンカしてたし。でも、一番怖かったのは……二人三脚大会よりもペア決めだよね……

 

ゲンイチロー:何とも言えんな

 

アスナ:跡部くん、手塚くん、幸村くんから逃げて「私もうこいつとペア組む」ってテキトーに千雨ちゃんが捕まえた人が、これまたすごい人だったね。いきなり、エクスタシーとか言い出すんだもん。跡部くんはショックで気を失ってなお君臨しちゃうし……

 

ゲンイチロー:その話題にはもう触れてやらぬ方がよいだろう。武士の情けだ。

 

 

 

アスナ:ゲンイチローはさ、11月とか……12月とかってどうなの? クリスマスとか年末とか……

 

ゲンイチロー:実はそのころから、高校日本代表(U-17選抜)候補の合宿があり、我ら立海も特別にその合宿に召集されることになり、しばらくは学校も休み、合宿に専念することになった。

 

アスナ:スゴッ!? 高校生の日本代表候補の合宿に、ゲンイチローたちが!?

 

ゲンイチロー:うむ。当然、青学や氷帝やその他の学校も特別召集されているがな。

 

アスナ:そうなんだ……でも、それじゃあ、しばらくは遊べないね

 

ゲンイチロー:そうなるな。恐らくは未だかつてない熾烈な戦いが待ち受けているだろうからな。

 

アスナ:そっか……うん、わかった! それなら、頑張んなさいよ、ゲンイチロー! 絶対に、日本代表に選ばれなさいよね!

 

ゲンイチロー:無論だ。

 

 

 

アスナ:やっほー、ゲンイチロー、合宿の様子はどう? 高校生の人たちってやっぱ強いの?

 

 

 

アスナ:おーい、疲れてメールできないの? 返事くらいしなさいよね。

 

 

 

アスナ:ねえ、ゲンイチロー、合宿ってどれぐらいあるの? 今度はいつ帰ってこれるの?

 

 

 

アスナ:ちょっといい加減、返事の一つくらいしなさいよね! まさか、携帯忘れてんじゃないでしょうね? 心配だからさ、これ見てたら一回、返信してよ。

 

 

 

アスナ:携帯に電話したけど電源が入ってないけど、まだ合宿?

 

 

 

アスナ:ねえ、合宿ってどこでやってるの? まだやってる? 

 

 

 

アスナ:しつこくしてゴメンね。私、何かゲンイチローを怒らせることしちゃったかな?

 

 

 

アスナ:ゴメンね、すごく忙しいのは分かってる。でも、お願い、一回会えないかな? 一回だけでいいから。大事な話があるの。私、今度遠いところに行くことになって、しばらく会えなくなるの。だから、その前にどうしても一回会いたいの。

 

 

 

 途中から、ずっとメールを送り続けるも、返信が無い日々が続いた。

 もっとも、無視しているわけではないだろう。真田に限ってそんなことは絶対にない。

 きっと、合宿所では携帯の確認ができないとか、携帯を忘れていたとか、そういうことで返信ができないのだろうと分かっていたが、それでもアスナは寂しかった。

 

「ったく……あ~あ、これなら、いいんちょが合宿所の場所教えてくれた時、無理やり会いに行けばよかったな……」

 

 結局、アスナはある時期から真田と会えないどころか、連絡の一つも取れくなり、気付けばもう別れの日になっていた。

 別れの日だからと言って特別なことはしないとは決めていたものの、結局会えないまま、このまま永遠の別れになってしまうのは寂しいという気持ちはやはりあった。

 でも、今日という日を迎えた以上、アスナはいっそこの方が、未練が残らなくてむしろいいかもしれないとも思った。

 もし、真田に会ってしまったら、泣いて別れが苦しくなってしまうかもしれないから……

 

「頑張ってね、ゲンイチロー。百年後……プロとして活躍したゲンイチローの名前が未来に残されていることを祈ってるよ」

 

 寂しく、そして切ない気持ちのまま、携帯を閉じて制服のポケットにしまう。

 

「アスナ…………」

「アスナさん……」

 

 振り向くとそこには、今の今まで泣きながら自分と抱き合っていた木乃香と刹那。

 唇を噛みしめるネギ。

 無言のエヴァンジェリン。

 

「……アスナくん……」

 

 こみ上げてくるものをグッと堪えるタカミチ、学園長。

 そして周りには、ネギの父のかつての仲間であった、ジャック・ラカン、アルビレオ・イマ、クルト・ゲーテル、そして魔法世界の国の皇女であるテオドラ。

 世界を代表する顔ぶれが勢ぞろいし、この場に立ち合い、そしてアスナを迎えに来て、そして送り出そうとしていた。

 

「ッ、ひっぐ、アスナ、でも、また……会えるんやろ? 百年後なら……みんなギリギリ会えるかもしれへんよね? 真田くんだって、メッチャ長生きしそうやし」

 

 普通の人間には途方もない時間。

 木乃香の狂おしいほどの願いだが、それが実現できる可能性はほぼゼロだというのは誰もが分かっている。

 

「まあ、常識的に考えて……無理だろうな」

「エヴァちゃん……せやけど……そんなん……」

 

 だからこそ、誰も軽はずみに「会える」とは言わない。

 でも、それでもアスナは……

 

「うん、大丈夫だよ、木乃香。また会える。きっとね」

 

 そう言って笑った。

 

「では、アスナ、そろそろ。もう、良いか?」

「…………はい……」

 

 テオドラの問いかけに、アスナは小さく頷いた。

 

 

「ッ、待って! 今、朝からどっか行っとる委員長が、もうすぐ帰ってくるころやから、せめてそれまで待ってや! いいんちょは! せめて、いいんちょは」

 

「……残念じゃが……もう時間にゆとりは……」

 

 

 ついに、最後の時が来た。しかし、木乃香はまだ待ってくれとすがる。

 それは、本来この場に立ち会うはずだった委員長の雪広あやかが、朝から何も言わずにどこかへ消えてしまったからである。

 どこへ行ったかは分からないが、アスナの一番の親友であるはずのあやかが、このまま帰ってこないはずはないと、必死に木乃香が訴えるも、既にタイムリミットは……

 

 

「お待ちなさーい! 待って! まだ、アスナさん! まだですわ! まだ、行ってはダメですわ!」

 

 

 その時だった。

 

「ッ! いいんちょ!」

「いいんちょの声や!」

「いいんちょさん!」

 

 ようやく聞こえてきた、あやかの声。最後の最後に間に合ったのだと、誰もがホッとしたとき……

 

 

「待たんかーッ! きええええええええええ!」

 

「「「「「………………」」」」」

 

 

 誰もが全く予想していなかった男の声が響いたのだった。

 

「うそ……なんで……」

 

 アスナもまた、叫びながら走ってくる男の姿を見て、信じられないと驚愕する。

 

「ふう、はあ、はあ、間に合いましたわ。彼を合宿所から連れてきましたわ。彼だけは……彼だけにはどうしても……」

 

 あやかは、間に合った安堵と激しく息を切らせる。

 

「あいつは、立海の!」

「真田さん!」

 

 このギリギリまでこの場に居なかったあやかは、最後のこの瞬間、この男にはどうしても真実を話さねばと思ったのだ。

 そして連れてきた。

 

「ゲンイチロー……どうして……合宿じゃ……そのジャージは? その眼帯とかどうしたのよ! 体も傷だらけで……テニスの合宿だからそれぐらいハードなんだろうけど……っていうか、どうしてここに!?」

 

 現れた男は真田弦一郎であった。

 

「このジャージは、革命軍の証でもある黒ジャージだ」

「は……はあ?」

 

 いつも着ていた立海の黄色いジャージではない。真っ黒い不気味なジャージを羽織っていた。

 そして、トレードマークの黒帽子もボロボロで、あちこちに生傷が見え、片目を眼帯で覆っている。

 

 

「当初俺は、代表合宿で脱落組に入ってしまったのだが、そこからもう一度這い上がるチャンスを与えられ、これまでずっと電気も水道も何もない過酷な崖の上のテニスコートで一から己の心身を鍛え上げていた」

 

「お、丘の上!? あっ……じゃあ、携帯の返事なかったのって……」

 

「そして今日、我ら革命軍が下山して、今こそ革命を起こすときと思ったら、これは何事だ! いきなり、雪広あやかが崖の上のテニスコートにヘリコプターで現れるは、魔法やら百年の眠りやら、支離滅裂だ!」

 

 

 真田はあくまで一般人。しかし今の話を聞いて、この場に居た者たちが驚きの表情を浮かべる。

 

「ちょっ、いいんちょ!」

「……話しましたわ。全てを」

「ッ!?」

 

 そう、真田が信じる信じない、秘匿だとかそうでないとかは関係ない。雪広あやかは、全てを真田に話したのだ。

 もちろん、真田もその話の全てを理解したわけではない。

 ただ、今日を逃せば、アスナとは永久に会えなくなるということだけは、彼も理解したのだ。

 だからこそ、真田はここに来たのだ。

 

「おい、あの帽子は誰だ?」

「アスナさんの……まさか……恋人……ですか? ただの一般人……にしては、身に纏う雰囲気が……」

 

 真田を初めて見る、ラカンやクルトたちは不思議そうな顔を浮かべるが、真田が只者ではないことと、アスナにとってただの友だちという風には見えないというのは感じていた。

 

「それよりも、神楽坂アスナァ! 二度と会えんかもしれんというのに、挨拶の一つもせんで勝手に行くとは、何と礼儀知らずだ、このたわけもの!」

「うぐっ、だって、そ、それは……だって……ゲンイチローは合宿で忙しいし……携帯繋がんないし……」

「言い訳などするな!」

「だって……だって……それに……やっぱり……会っちゃうと……」

 

 この別れは……避けられない……仕方がないのだ……覚悟を決めていたのだ。

 だからもう、泣かないで笑顔で別れようと決めていた。

 別れを言えなかったこの男への想いも大切な思い出の一つとして胸に抱いて眠りにつこうと思っていたのだ。

 それなのに、この突然の不意打ちのような登場は反則であった。

 

「バカ……どうして来ちゃうのよ……せっかく……笑顔で別れられると……」

 

 もう、アスナの涙は止まらなかった。

 

「黙らんか! 百年の眠りだと? お前はテニスでの俺の弟子でありながら、師匠に無断で百年もサボるとは何事か! 百年後、目が覚めたら素振り百万回だ!」

「ひうっ、も、もう……ゲンイチロー……こんな時にまで……もう……バカ……」

 

 涙が止まらない自分に、相変わらずの真田らしい言葉の数々。

 どうしても涙は出るものの、思わず笑ってしまう。

 しかし、その時……

 

「ちなみに俺は、百年後に目覚めたら一千万回やる!」

「…………はっ?」

 

 その時、真田の眼帯をしていない片目は、揺るぎない決意と覚悟を秘めた目をして、強い言葉を発していた。

 

「「「「「ッ!!??」」」」」

 

 その言葉の意味を、その場にいた者たちは一瞬全員理解できなかった。

 だが……

 

「ま……まさか……ゲンイチロー……わ……私と一緒に……」

 

 そう、真田の決意。それは、人柱となって百年の眠りにつくアスナに自身も付き合おうというのだ。

 

「ちょっ、バカ! そんなの出来るわけないでしょうが! あんた、何考えてんのよ!」

 

 認めるわけにはいかない。百年の眠り。それは、今の自分の全てを捨てるということなのだ。

 家族も、仲間も、今の世界も全てだ。

 

「真田君、本気なん?」

「真田さん!」

「……ふん……クソ真面目な男が……こんなアホなことを言い出すとはな」

「おいおい、どうなってやがんだよ」

「しかし……本気のようじゃのう……」

 

 当然、誰もが「そんなバカなことを」と口にする。

 だが、真田の目は本気だ。

 

「そこのたまらん女!」

「ッ、わ、妾のことか?」

「可能であろうな?」

「うっ、あっ、いや、よ、ようは、アスナと一緒に封印の眠りを施せば……し、しかし、……」

 

 話を振られたテオドラは、思わず「可能」と口にしてしまった。

 それが余計に事態をややこしくした。

 

「お待ちなさい。生半可な想いでいい加減なことを言うものではありません」

 

 その時、厳しく鋭い瞳で、真田とアスナの間に、クルトが割って入った。

 

「クルトさん! 待ってください、その人は!」

「ネギ君、皆さん、残念ですが彼の申し出を許可することは出来ません」

 

 常識的にも倫理的にも、真田の申し出を受け入れることなど出来るはずがないのだと立ちふさがる。

 

「帰りなさい。そして、全てを忘れるのです。日常へね」

 

 百戦錬磨、魔法世界の群雄割拠の戦国時代、数々の修羅場を潜り抜けてきた、神鳴流を操るメガロメセンブリアの総督、クルト・ゲーテルが、殺気を滲ませた目で真田を射抜く。

 常人では失神するほどの圧のある殺気。

 しかし、それほどの殺気を受けながら、真田は小揺るぎもしないで睨み返す。

 

「邪魔をしないでもらおう。立ちふさがるのなら、一人残らずこの俺が捻りつぶしてくれよう」

「な……んですと?」

 

 その瞬間、癇に障ったのか、クルトの目じりが動く。

 

「ふっ……ふふふふ……言うではないですか。えっと……あなたは?」

「立海大付属中、三年。テニス部副部長。真田弦一郎。神楽坂アスナのテニスの師匠を今年より請け負った。」

「テニス……? ……ほう……テニスですか」

 

 その男、魔法界の住人でも裏社会の人間でもない。

 表世界に生きるただの学生。その予想外の回答に、クルトは余計に呆れた。

 だが、同時に、どこから取り出したのか、クルトの手にはラケットが握られていた。

 

「私は正当な神鳴流の門下生と言うわけではありませんが、修行の一環で旧世界のスポーツのテニスは息抜きでやっています。そう……息抜きです」

「……何が言いたい?」

「ここから先の領域、そして彼女が居る世界は、あなたのような一般人が踏み込め……守り、支えることのできないお方です。力不足な希望は彼女を苦しめるだけ……去りなさい」

「どかぬ」

「……そうですか。では、……眠りなさい」

 

 一切譲らぬ目の真田。その時、クルトの持つラケットに稲妻が走り、何もない手には気を凝縮して固められたエネルギーボール。

 

「ッ、待つんだ、クルト!」

「クルトさん!」

「逃げてください、真田さん!」

 

 クルトは止まらない。

 生意気で、身の程も知らずのこの男は、自分たちの希望であり救世主でもあるアスナを惑わしてしまう。

 それが我慢ならなかったクルトは、洗礼の意味も込めて神鳴流とテニスの力で真田を門前払いしようとする。

 

「神鳴流庭球術・雷光サーブッ!」

 

 閃光が走り、唸りを上げたボールが真田を――――

 

 

「黒龍無限の斬ッ!」

 

「ッ!?」

 

「「「「「—――――――ッ!?」」」」」

 

 

 黒色のオーラが、クルトの放った雷を切り裂いた。

 それどころか、放たれたボールが黒色のオーラに包まれてクルトの周囲に纏わりつき、そして無限に軌道を変化させてクルトの衣服を、肌を、そしてメガネを砕いた。

 

「なっ、さ、真田さん!」

「なんだ、あの黒色の禍々しいオーラは」

「雷を切り裂き、ボールをオーラに包み込んで軌道を変化させた……ダブル……トリプル……いや、インフィニティクラッチか! あの男、以前の試合の時とは比べ物にならんほど強くなっているではないか!」

「しかし、あのクルトの技を難なく切り裂くとは!」

「ほう……やるじゃねえか……あの男……」

 

 そのあまりにも突然で、そして予想外の事態に誰もが驚愕する。

 

「これが俺の答えだ。異次元の領域に住む者たちよ」

「……ゲンイチロー……」

 

 これが真田の答えなのである。

 行く道を阻むのならば、容赦なく力づくで叩きのめす。

 その瞳と身に纏った黒色のオーラがそう告げていた。

 

「ふん……嬢ちゃんも隅に置けねーな……んな恋人がいるとはよ。まあ、筋もいいし俺も嫌いじゃねえぜ。だが……」

 

 しかし、それでもまだ駄目だと、この男が動いた。

 

「ちょっ、ま、待ってラカンさん!」

「嬢ちゃんの隣に立つには、テニスだか何だか知らねーが、スポーツマン程度じゃ役不足だぜ」

 

 それは、魔法世界最強無敵の怪力無双。生きる伝説とまで言われた男。

 千の刃のラカンこと、ジャック・ラカンであった。

 

「アーティファクト・千の顔を持つ英雄ッ!」

 

 ラカンが一枚のカードを取り出して、アーティファクトを発動。

 

「だから、せめてお前らスポーツマンの力で、引導を渡してやるぜ。ワリーな。俺らの姫子ちゃんをどこの馬の骨かも分からねえ奴にはやれねーのさ」

 

 出現したのは、テニスの試合ではルール上使用できないほど巨大なラケット。

 更にそのラケットに、ラカンの尋常ならざる強大な魔力が凝縮され、大気を揺るがすほどの波動発していた。

 

「ちょおおおお、ラカンさん、それ、シャレになんないから!」

「や、やめ! ラカンさんッ!」

 

 慌ててネギたちが止めようとするも、ラカンはニヤけた笑みを浮かべながら止まろうとしない。

 揺るがぬ真田を脅しのつもりでふっとばすつもりだ。

 もし、こんなのを食らえば、真田とて無事では済まないのではないのかと誰もが思った。

 しかし、真田は……

 

 

「言っているであろう。この俺の邪魔をするな―ッ!」

 

 

 真田は逃げず、揺るがず、そして吼えてラケットを振りかぶる。

 

 

「ならば、見せてくれよう! この俺の進化した新たなる力、『風林火陰山雷』を超えし、『嵐森炎闇岳光』の力をな!」

 

 

 打ち返す気か? 

 そう思ったとき、真田の前に人影が割って入った。

 

 

「なーにやってんすか、真田さん」

 

「ッ!?」

 

「小僧!」

 

「ういーっす」

 

 

 それは、長身の真田からすれば小柄な体格。

 白いボロボロの帽子。そして、真田と同じく、革命の証である黒ジャージを羽織った男。

 

「うおあああああああああああああああああああッ!」

「ッ!?」

 

 その男は、空間を歪めながら突き進むラカンのショットを力づくで打ち返した。

 打ち返されたショットは天へ、そして雲を突き破って彼方へ消えた。

 

「な……だ、誰?」

「あ、あの、ラカンの空前絶後のショットを……」

「打ち返した……」

「だ、誰なん、あの帽子の子は!」

 

 あの男は一体何者か?

 打ち返されたショットで頬を切り裂かれて血を流すラカンもまた無言で目の前の少年を見ていた。

 すると少年は……

 

「あんたさ……真田さんとかテニスを力不足とか言ってたけど、あんたも……まだまだだね」

「ッ!?」

 

 まだまだだ。

 あのラカンにそんなことを言える人間がかつて存在しただろうか。

 だが、その男は唯我独尊の態度の三白眼でラカンを睨む。

 

「おめえ、なにもんだ?」

「青学一年、越前リョーマ。よろしく」

 

 越前リョーマ。

 その男こそが、現在の中学テニス界の頂きに君臨する男なのである。

 

「越前、貴様、なぜここに居る! まさか、ヘリコプターの中に隠れてついてきたのか?」

「面白そうだから、来てみたんだけどさ、これから革命やろうってのに、あんたはこんなとこで何やってんの?」

「…………それは……」

「でも、まっ、いいっすけどね。桃先輩が言ってた真田さんの彼女も見れたし」

「ぬぐっ!? たわけええ! そんな浮ついたものではないわー!」

「そうなんすか? でも、まあ、どっちでもいいけどね。とにかく、あんたはやることやればいいじゃん」

「越前……」

「ここ、俺がやっとくっすから」

 

 現れた越前は、慇懃無礼な態度で真田に軽口を言い、真田も若干ピクリと来ているようだ。

 だが、越前は小さく笑みを浮かべて、真田に背中を向け、代わりにその他の者たちの前に立ちはだかる。

 

 

「中々、いい目をする少年ですが、ここは大人しくしてもらいましょう」

 

「ふん、小生意気な小僧だ。だが、幸村に敗れて以来特訓をしているこの私の前に現れるとはな……消え失せろッ! ネオ・ブリザードアクセルショット!」

 

「すまないが、時間がないんだ。君たちのやろうとしていることを認めるわけにはいかない。気絶していてもらうよ。居合拳!」

 

 

 その時、真田を止めるためにも、急がねばならぬと、多少強引ではあるものの、アルビレオが重力球を、好戦的な笑みを浮かべたエヴァが氷を纏ったショットを、タカミチが気を失わせるための居合拳を放つ。

 しかし……

 

「うおおおおおおおおおおおお!」

 

 越前リョーマはまるで恐れを見せずに、三者の攻撃に飛び込んだ。

 そして、居合抜きのようにラケットを構えて一気に振り抜く。

 

 

「サムライ・オーバードライブッ!」

 

 

 そのスイングは、あらゆるものを切り裂く。

 その鋭きショットは、たった一つのスイングで、アルビレオの重力球、エヴァの氷のショット、タカミチの居合拳を真っ二つに切り裂くだけでなく、そのまま相手に跳ね返した。

 

「「「ッ!?」」」

 

 全く予想もしていなかった反撃のカウンター。

 思わず障壁を張って相殺させるも、三人は戦慄した表情を浮かべる。

 

「なっ、ま、マスターやアルさん、タカミチの技を!」

「なんですか、あの坊やは! 確か、練習試合の時に、仁王さんがイリュージョンしていた坊やですが……」

「あ、アレが本物なん? メチャクチャ強いやん!」

 

 ネギたちも思わず声を上げてしまう、越前リョーマの力。

 土煙が舞い上がる中、言葉を失うエヴァやラカンたちに向け、越前はラケットを向けて告げる。

 

 

「テニスをナメんなよ」

 

 

 その姿に、この場に居た者たちはサムライの幻想を見た気がした

 

「真田さんの邪魔する時間あるなら、俺があんたたちにテニス教えてあげるよ?」

 

 憎まれ口で素直でない生意気な言葉。しかし、その態度と瞳が語っている。

 真田の邪魔はさせない。ここは一歩も通さないと。

 

「越前。……皆には後は頼むと伝えてくれ。革命はお前たちの手にゆだねると」

「……ういーっす」

 

 その姿は間違いなく、覚悟を決めて刃を抜く、サムライであった。

 そして越前と真田は最後に……

 

「そうだ、真田さん……」

「なんだ?」

「……お元気で……」

「……ふっ、お前もな。天下を取れ、越前リョーマ!」

 

 互いの顔を見ることなく、しかし最後の言葉を交わして別れを告げた。

 

「ゲンイチロー……どうして……どうしてそこまで」

「つまらんことを聞くな、このたわけが」

 

 再びアスナの前に立つ真田。もう、アスナは堪えきれない涙が顔を埋め尽くしていた。

 

「でも、ダメだよ……百年だよ? 百年……ゲンイチローは、立海の高校全国制覇とか、プロになってとか、野望があるって言ってたじゃん……」

「たわけえ! 弟子の行く末を見ずして何が師か! 共にテニスボールを交えて語らい合った友を一人行かせて、何が己の野望か!」

「げん……いちろ……」

「黙って、俺も連れて行かんかー!」

 

 例えどんな言葉や力であろうとも、真田はもう止まらない。

 己が口にしたことは決して曲げないのが、真田弦一郎の生き様。

 とは言え、こればかりは受け入れるわけにはいかない。受け入れていいはずがない。

 しかし、

 

「来て……ゲンイチロー……一緒に、隣に居て……私と一緒に!」

「無論だ」

 

 もう堪えることのできなかったアスナは、真田の胸の中に飛び込んでいた。

 

「アスナ……ッ、おい、そこの帽子も……良いのか?」

「構わん」

 

 真田もアスナと一緒に行く。百年の眠りにつき、百年先の未来へ共に行く。

 

「おい、いいのか? テメエは……」

 

 越前に足止めされたラカンが真田に問う。だが、真田の決心は変わらない。

 

「この真田弦一郎に二言は無いッ!」

「……ったく……そうかよ……ナギとは性格もまるで違うのに……とんでもねえ大馬鹿野郎ってのは同じだな……姫子ちゃんも隅に置けねえな」

 

 その瞬間、ラカンは観念したように笑って、手に持っていた巨大ラケットを落とした。

 そして……

 

「みんな……!」

「アスナさん、真田さん!」

 

 アスナと真田の体が浮いていく。空に現れた紋様へと吸い込まれる。

 

「みんな、私はもう大丈夫だから! 一人じゃないから……もう、大丈夫だから!」

「アスナさん!」

「ネギ! 待ってるわよ、あんたが立派な魔法使いになって訪ねてくるのを! そん時は、子供でも見せてあげるから♪」

 

 変わらず涙を流しているアスナ。ネギたちの瞳からも涙が止まらない。

 しかし、アスナは笑っている。もう一人ではないのだと。

 

「………」

「ふん」

 

 越前リョーマはアスナの傍らに居る真田を見上げ、そして姿勢を正して一度頭を下げた。そんな殊勝な越前の姿に真田は「最後に珍しいものが見れた」と満足そうな顔をしていた。

 

 

「バイバイ、またね!」

 

「アスナアアアアアアアアアアアアアアアアアアア! うわああああああああああああああああああ!」

 

 

 こうして、神楽坂アスナと真田弦一郎はこの世から姿を消し、百年の眠りについたのだった。

 

 

「アスナ……アスナ~。うぐっ、ひっぐ、ううう、う、うわああああああああん!」

 

 

 旅立ったアスナを想い、動けずに立ち崩れる木乃香や刹那、あやか、ネギたち。

 そして、その時、その場に閃光が生じ……

 

 

「あ、あれ~、これって、ここって……出発してすぐじゃ……」

「うむ」

 

 

 ――――――――――――?

 

 

「たっ、ただいまー……」

「~~~~~ッ、たるんどる」

 

 

 旅立ったはずのアスナと真田。そしてなぜかその後ろに、超鈴音が居て、帰ってきたのだった。

 何が何だか分からない一同。アスナは気恥ずかしそうに、真田は微妙な顔をしている。

 しかし、二人は本物。それが分かった時、ネギたちは駆け出してアスナに飛びついたのだった。

 

「……どーなってんすか?」

「聞くな、越前リョーマ」

 

 もう会えないんじゃなかったのか? と首を傾げて聞く越前に真田は帽子を深くかぶって顔を隠して背ける。

 

 まあ、ようするに、超鈴音が百年後に目覚めた真田とアスナをそのままタイムマシンで拾って、過去に連れ戻したということなのであった。

 具体的な説明を超鈴音がネギたちにしているのだが、正直、一世一代の覚悟が見事茶番に終わった真田は居たたまれない気持であった。

 だからすぐに足早に……

 

「さて、越前、合宿所に戻るぞ。革命だァ! きええええ!」

「ういーっす」

 

 もう、恥ずかしすぎて、速くこの場から立ち去ろうと、真田は越前と一緒に合宿所に戻ろうとしていた。

 だが、それに気づいたアスナは慌てて止める。

 

「ちょ、待ってよ、ゲンイチロー! もう戻るの? ってか、未来で言ってくれたじゃん。もう私と離れ――――」

「きえええええええええええええええええええええええええええ! 公衆の面前で何を言うかああ、このたわけええええ!」

「くくくくく、なあ、これは失敗なのでは? 超鈴音」

「ウム。アスナを失って芽生えるはずの自立心がネギ坊主からなくなり、肝心のアスナはアスナで男にデレデレ。これでは未来は不安ネ」

「だだ、大丈夫です! 僕はしっかりやりますから!」

「私だって! 彼氏できたって、ネギの面倒はしっかり見るわよ!」

 

 こうなってしまえば、もはや笑って冷やかし合うしかない。先ほどの感動的な場面が一転した状況の中、からかいの矛先が真田に向く。

 すると、真田は……

 

「このような茶番になってしまったが……安心しろ、神楽坂アスナ。約束は違えん」

「ッ、ゲンイチロー!」

「だが、ここに帰ってきてしまった以上、俺にも先に一つ果たさねばならぬものがある。それまでは今しばらく待ってほしい」

 

 逃げるように立ち去ろうとしていた足を一度止め、真田は背中を向けたままアスナとこの場に居る者たちに告げる。

 

 

「これから我らは革命を起こし、そして意地でも日本代表に残り、その後に待ち受ける世界の強豪たちと戦う。そしてそれを……この俺の……テニスプレーヤーとしての物語の最後とする……」

 

「ッ!?」

 

「それが終わり次第、俺は今度は……お前の行く末を見届けるため、お前の隣に立つべき男としてふさわしくなるよう、修練に励むこととする。それまで待て」

 

 

 それは、真田弦一郎の事実上の引退宣言でもあった。

 そして、それが終われば、お前の隣に立つと、真田は宣言したのであった。

 

「な、なあ、せっちゃん、これって……」

「え、ええ。も、もうプロポーズに近いですね……」

「あわわわわわ」

 

 真田のプロポーズ同然の言葉に木乃香たちはキャッキャする。

 そして言われたアスナは同様に顔を真っ赤にするも、完全に恋に落ちた乙女の表情で、心の底からの笑顔を見せて駆け出す。

 

「アホガモー、アレお願い!」

「ッ! 分かったぜ、姐さん!」

 

 その時、駆け出したアスナがネギの相棒であろうオコジョのカモに伝える。

 それだけで伝わったカモはネギの肩から離れ、魔法陣を真田の足元に。

 

 

「ゲンイチロー――――!」

「ぬぐっ!」

 

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」」」」」

 

「へえ」

 

 

 飛び込んだアスナはそのまま真田に無理やりキスをしたのであった。

 歓声が上がり、越前もニヤニヤ。

 そして、二人の唇が重なった瞬間、武士の姿をした真田が写されたカードが出現した。

 それは、パクティーオカード。 

 カードの称号には、『魔法武士』の文字。

 

「た、たわけえええええ! ここここ、公衆の面前で中学生がせせせせ接吻など、ふじゅ、ふ、不純、いい、異性交遊など、なにごとくわああああ!」

 

 慌ててアスナを引き剥がす真田。

 だが、離れたアスナは満面の笑みを、その手には契約のカードがあった。

 

「にひ~、契約完了。約束だからね、ゲンイチロー♪ だから頑張ってね。応援してる。日本代表になってきなさい!」

「ぐっ~~~~」

「そこの帽子の君もありがとね! 今度ゆっくりお礼させてね!」

「どーも」

 

 そう言って、アスナは真田の背中を押し出した。真田はもう何も言うことが出来ず、そのまま越前と一緒に走って消えていく。

 

「……なあ、越前よ……」

「ファンタ十本で黙っておくっす」

「……分かった……たらふく、ファンタを飲ませてやる」

 

 立ち去る二人からは最後に、口止めの話が聞こえた。

 

 これより先の明日、自分たちの作る未来を想いながら、アスナは最後の戦場へ向かう真田の背を見送ったのだった。

 




要望があったので、越前をチラッと出してみました。
時期は、U17合宿中、負け組の黒ジャージを着て下山する寸前に、真田と越前が、旅立つアスナの所へ来た感じです。

最近初めて知ったのですが、U17合宿は11月中に行われた数週間の出来事。そして、今の世界大会は12月に行われていることだそうです。てっきり、合宿は半年ぐらいはやってるのかと思ってましたが、数週間でした・・・

そして、アスナの本来の旅立ちは3月ですが、まあ、そういう細かいのは無視してください。アスナの旅立ちが早まっていたという設定です。




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