【完結】テニスこそはセクニス以上のコミュニケーションだ(魔法先生ネギま×テニスの王子様) 作:アニッキーブラッザー
綾瀬夕映が魅力的な条件を跳ねのけて、交渉を拒否した。
イリュージョンにより、夕映を見事にコントロールした仁王はほくそ笑んでいた。
これにより、君島との正々堂々な勝負となる。
だが、それはそれで君島にとっては問題なかった。
何故なら……
「ガター……です……」
魔法世界での冒険で身も心も逞しくなった綾瀬夕映。しかし、ボウリングが得意ではなく、あっさりガターを出して、仁王&夕映ペアが普通に負けたのであった。
「ユエ吉―っ! あんた、あんなに気合入れてたのに!」
「普通に負けてんじゃん!?」
何のドラマもなく、アッサリと敗北した夕映にクラスメートたちからは非難の嵐。
己の不甲斐なさに恥ずかしさを感じながら俯く夕映。
これで、デッドブル確定ということになったのだが、夕映自身は悔しさはあるものの、内心は別の想いもあった。
(まぁ、確かに負けてしまいましたが、あの飲み物には少し興味あったです……それに……あの憎っき詐欺師とあのストローで一緒に飲むのは屈辱ではありますが、これで奴を抹殺できると考えれば……案外この負けもそれほど悪くは……)
珍しい飲み物が好き。なおかつ、これにより仁王も始末することができる。
腹の底では黒い想いがあり、夕映は密かにこれはこれで悪くないと考えていた。
だが、その時だった。
「うぅ……僕が……牛に……」
「へっ? ……ね、ネギ先生!?」
デッドブルの入った、ラブラブカップルグラスの前には、仁王ではなくネギ。
その予想外の展開に、夕映は思いっきりテンパった。
「ななん、なぜネギ先生が居るですか?!」
「だ、だって……ゆ、夕映さんが……このグラスとストローで仁王さんと一緒にって……僕、た、耐えられなかったんです!」
「っ!!??」
唇を尖らせながら、顔を真っ赤にさせてモジモジするネギ。そして今の発言に、夕映はわけが分からなくなった。
「どど、ど、どういうことですか……」
「そ、そんなの……だって、夕映さんが他の男の人とだなんて……僕っ……」
「っ!??」
「だ、だったら、僕が牛になってでもって……」
ネギの行動の意味。それは、ヤキモチ。
それを理解した瞬間、夕映は心臓がバクバクポンプしながら、もう冷静に物事を考えられなかった。
「そそ、そんなは、はずな、ないです。だ、って、ネギ先生は、そ、それに、のどか、でも、私も先生が……」
「夕映はさん……僕と一緒に牛に……」
「あ、あぅ、だ、だめだめです、そ、それに、わ、の、ど、か……」
「その、い、いっせいの~せ……で……一気に飲み干しましょう」
「ふぇ……で、でも、そん、なのぉ……」
クラスメートの前で、さらには同じ男を想う親友の前で、こんなことしていいはずがない……そう苦悩しながらも、夕映はフラフラとデッドブルに導かれ、ネギの前の座り、おずおずとストローに口を近づける。
「では……」
「は、はいですぅ……」
「いっせーの……」
「せっ!」
「ぷりっ」
「っ!?」
夕映が一気にデッドブルをストローで吸い、口の中が液体で満杯になった瞬間、ネギの姿が仁王に変わった。
「負けた仕返しぜよ」
「ぶっぼほおおおおおっ!」
その瞬間、夕映はデッドブルを口からも鼻からも噴き出すという、好きな男の見ている前で女としてあるまじき醜態を晒しながら……
「んほぉぉぉぉぉぉもぉぉぉぉおおぉ!!!!」
一気に飲み干そうとしたがために、これまでの敗者たち以上にパワフルな牛になってしまった。
「ぎゃああああ、夕映ええええええ!!??」
「おもろいわ! ねーちゃん、鼻からデッドブルやー!」
「みんな、見ないであげてー! 夕映がああ!」
「しかも、あれ、『ウモォ系』じゃなくて、『んほぉ系』じゃないのよー!」
「鬼だな……仁王……」
悲鳴と憐みが広がる中、薄れゆく意識の中で、綾瀬夕映は思った。
――――人に殺意を持ったのは、生まれて初めてです……
と。
「さあ、もはや仁王くんはユエ吉のことがむしろ好きなんじゃねーのかと思いたくなるようなイジメっぷりですが、中学生チームが再び敗北! 一進一退の攻防が続く中、次のバトルはこいつらだーっ!」
夕映の死に涙を流しながらも勝負続行のアナウンスをする朝倉。
その言葉と同時に立ち上がったのが……
「おやおや、プレッシャーがかかりますな~」
仏のような顔をして現れた大男。だが、その空気は一瞬で……
「……ぬんんっ、プレイボォォォーーーーーーール!!」
一瞬、誰もが何が起こったか分からなかった。
ボウリング場に、突如、破壊神が舞い降りた。
先ほどまで、大柄だけど優しそうな表情をしていた高校生が、上半身の服を筋肉で破り、野獣のような形相をしていたからだ。
「ちょ、な、なんだありゃー! 幽遊白書の爆肉鋼体か!? それとも、ブロリー化か!?」
先ほどまでは、亜久津、金太郎、幸村など、既に自分でも過去に見た男たちの超人パワーだったために、もはやツッコミも入らなかったが、ここに来て長谷川千雨が身を乗り出した。
そして、誰もが慄く中で、デューク渡邊はボウリングのボールを野球のピッチャーのようなフォームで投げる。
「デュークストライクッ!!」
野球ボールのような軽さと速度で飛んでいくボール。
それは、ピンを倒すどころか、砕き、奥の壁までめり込んだ。
「全力でやらないと、こっちがやられますからな~」
再び破壊神から仏のような温和な表情に戻ったデューク。
だが、この衝撃には誰もが声を上げずには居られなかった。
「んな、すす……すげー! な、なにあれ! あの人、何者!」
「中学最強パワーの石田くんよりすごい!」
「108式まである石田くんよりすごい!」
「石田くんよりマッチョ!」
「石田くんよりスゴイ筋肉!」
「石田くんよりデカい!」
「石田くんより!」
「石田くんより―――」
石田よりスゴイ。
そう連呼しまくられて、全てが石田の心に突き刺さる。
そう、このバトルは、石田銀&古菲VSデューク渡邊。
誰もが小細工なしのパワーバトルを期待。
そして石田もまた、中学テニス界最高峰のパワーの持ち主として力を示さねばならない。
108式の波動球を……
だが……
「…………うう……」
半分泣きになっている石田。
そんな石田に、何故か仁王が歩み寄る。夕映が一人でデッドブルを全て飲み干したがために牛化を逃れた仁王。
歩み寄った仁王は、イリュージョンで四天宝寺中の監督の姿に変わり、そして告げる。
「やめや、銀。折れとるわ。……心が」
そして、石田とクーフェは牛になった。
「波動ンモオオオオオオオオオ!」
「攻夫がたりないンモオオオオオオオ!」
何の見せ場もなく敗北した二人。
自分の得意分野で戦う前から戦意喪失。
そのダメージは、二人だけでなく、クラスメートやチームメイトたちにも大きな衝撃を与えた。
だが、一方で……
「……とはいえ、高校生チームも苦戦させられている。お前ら、どう落とし前々つけてくれるんだ?」
「出たああああああ! 不気味な動きと共に現れた、ぜってー高校生に見えない男! 極妻泣かせのテニスロボ! 中河内外道さんっ! つか、カシャンカシャン動いてまるでロボットだーっ! ロボットの動きだー! で、普通にストライクとったー! 完璧だ! まるで機械だ! ロボットだー!」
まるでロボットのような動きで、皆をゾッとさせながらも、その奇怪な動きで、コースも球威も完璧で寸分の狂いもない一投でストライクを取った、高校生の中河内。
そのあまりにも完璧なる動きに、「ロボット」と朝倉がこれでもかと主張するが……
「あなたの動きは、所詮はただのロボットダンスです」
「っ!!??」
「最新鋭のロボットは、人間の動きをとことんまで追求し、やがては人間を超えるしなやかさやパフォーマンスを可能とします。このように……」
元祖ロボ娘の茶々丸が、見るものを魅了する、ただただ美しく滑らかな動きで完璧なストライクを取り返す。
「出たー! 目には目を! ロボットにはロボット! 茶々丸さん、ストライクを難なく取りましたー!」
それは、中河内にとっては、己を全否定されたことに等しく、そして茶々丸の動きに目を奪われたのも事実。
そのため……
「う、ぐっ……」
「あーっと、中河内さん外したー! ピンが僅かに一本残りました! 二投目はストライクならず! コンピューターがバグったかーっ!」
完璧なロボットのような性能を発揮することができなくなり、中河内は外し、そして中学生チームは……
「さぁ、油断せずに行こう」
手塚の口癖をパクった大石が、その自信通りにストライクを見事に奪い……
「落とし前々モオオオオオオオオオオっ!!」
ポンコツロボを牛に変えたのだった。
「うおおおおお、ここに来て大石くんと茶々丸さんペアにより連敗脱出! 中学生チームも負けておりません! つか、今のところ……あれ? 五勝四敗一分けで、中学生チームリードしております! 確かに高校生チームはヤバイ人たちばかりでしたが、力を合わせた中学生チームはそれを凌駕する勢いかもしれません!」
その瞬間、朝倉が声を上げて中学生チームの勝利とリードを告げて女生徒たちは一斉に歓声を上げる。
「ねぇ、これって普通にもう勝てちゃうんじゃない?」
「だよねー! 向こうの、お頭さんは恋愛ごっこじゃ世界は獲れないって言ってたけど、ラブラブパワーで勝っちゃいそうじゃん!」
「まぁ、夕映とかに言ったら怒られるだろうけど~」
そう、最初はそのあまりにも濃くて人外な集団と思われた高校生チームだったが、勝負の上では見事に五分だったのである。
平等院の言う「女の存在を堕落ではなく力に」という意味では皆がクリアしているのではないかと、皆が沸き上がった。
一方でフェイトは……
「いや、そうじゃなくて……彼女たちを相手に普通に互角に戦える高校生たちがすごいんじゃ……いや、まぁ中学生の男子もすごいけど……」
魔法世界を救った英雄たちとも言える女生徒たちの居る中学生チーム相手に、普通に互角に戦えている高校生たちがむしろすごいのではと呟く。
しかし、それでも中学生たちの快進撃は止まらず、続く対決も……
「大飯匙倩!」
「やれ恐ろしいことんもおおおおおおおおおおお!!」
「キタアアア! 龍宮さんの百発百中スナイパーのごとしストライクに続く、木手くんのグニャグニャボールですべてのピンを倒す! スナイパーと殺し屋という、お前らこそ本当に中学生かと言いたくなる龍宮&木手ペアが、袴田さんをアッサリ撃破!」
「いい仕事だ、永四朗」
「真名さんこそ」
木手と龍宮がクールにハイタッチしながら、高校生の袴田をアッサリと退ける。
更に……
「へへへ! これで、中学生チームが六勝! もうこれで俺らの負けはなくなったっすね! なら、ここで俺らも勝って、大将戦またずに勝利を決めちまいますよ、千鶴さん!」
「ええ、頑張りましょう、赤也くん♪」
続く、切原赤也&那波千鶴VS遠野篤京の対決。
だが、この勝負は……
「処刑法其の十二……電気椅子」
「っ!? ぐっ、ぐあああああああああああああああああああっ!!??」
気合を入れて千鶴と一緒に頑張ろうと、傍目から見るとイチャイチャしているようにしか見えない切原の腹部に、高校生の遠野がボウリングの球をめり込ませた。
「赤也くんっ!!」
全身に電気が走ったかのように痺れ、苦痛に耐えきれずに顔をゆがめて赤也がレーンの上に転がる。
千鶴は慌てて駆け寄り、ボウリング場に生徒たちの悲鳴が響き渡る。
「切原くんっ!」
「ちょ、ちょっとー! ボウリングの球を、何の前触れもなく!」
「あ、あんなの、シャレになんないわよ!」
「な、なに考えてんのよ、あの高校生!」
ボウリングの球を人めがけて攻撃する。そんなもの、下手をしたら命にも危険を及ぼすほどのもの。
先ほど、亜久津と大曲もお互いを目掛けて投げ合ったが、互いに被弾しなかったためにそれほど騒ぎにはならなかったが、今度は違う。
倒れる赤也の姿に、少女たちは顔を青ざめさせる。
すると……
「バカが、調子に乗りやがって。じっくりいたぶって処刑してや―――――――――」
「よくも……私の赤也くんを……」
残虐な目で赤也を見下ろす遠野。その背後でユラリと立ち上がる那波千鶴。
キレた聖母。そして……同時に……
「誰や……ウチの赤也はんを傷つけるんは……」
本来、ここに居るはずのなかったはずの、眼鏡をかけたブチキレた戦闘狂。
目覚めた史上最恐の女二人が同時に遠野に迫り―――
「……あれ? お、俺、気を失って……それで……」
「あら、赤也君、まだ動いてはダメよ」
「赤也はん、堪忍な。ウチがちょっとおらへん間に赤也はんが傷ついてもうて……」
数分後、意識を取り戻した赤也が目を開けると、後頭部に柔らかい感触。自分を覗き込んでいる、千鶴と月詠。
赤也は一瞬で理解した。
自分は二人に膝枕されていると。
「ちょっ、な、なにしてんすか!? つか、月詠までなんで?」
「だーめ。赤也君は、もっと休んでいなさい。ほら、痛いの痛いの飛んでいけ~」
「いけずやわ~、赤也はん。それに千鶴はん、一人で赤也はん撫でるんは卑怯ですえ。ほなら、ウチも……」
慌てて起き上がろうとする赤也を、微笑みながら抑え込んで可愛がる千鶴と月詠。
傍から見れば、女二人にモテモテな赤也。イチャイチャしているバカハーレムたち。そういうシチュエーションなのだが、この場に居た者たちは誰もが顔を青ざめさせていた。
そして、皆が思った。
「「「「「(((((今後は何があっても切原(くん)をケガさせたらダメだ。絶対に)))))」」」」」」
そう誓いながら、恐怖に顔を引きつらせながら、一同は天井を見上げる。
そこには、尻に葱が刺さった何者かが、天井に首から上を埋め込まれた状態でぶら下がっていた。
「え……え~っと、と、とりあえず、……た、大将戦待たずにこの戦い……六勝四敗一分け一ノーゲームで……ちゅ、中学生チームの勝利……ってことでいいですかね?」
本来、中学生チーム勝利の確定で盛り上がるはずが、最後は誰もが重たい空気の中で口を閉ざしていた。
勝利の喜びよりも、今目の前で起こった恐怖の方が上回っていたからだ。
だが……
「ふっ……のぼせ上がるな、青二才ども」
「「「「「ッッッッッッ!!!!!?????」」」」」
突如、今目の前で起こった恐怖すらも吹き飛ばすほどの強烈な覇気と殺気が突風のようにボウリング場を駆け抜けた。
「ッ、な、なんです?」
「ほう……この私が手に汗を……」
「……えっと……に、人間……だよね?」
その尋常ならざる空気に、ネギ、エヴァンジェリン、フェイトも含めた誰もが全身を震え上がらせた。
「続きだ。やるぞ……跡部」
既に高校生チームの敗北は決定したはず。しかし、そんなことなど関係ないとばかりに立ち上がる平等院。
本来なら「もう、お前たちの負けだ」と誰かがツッコミを入れるところ。
しかし誰もが、そんな言葉を飲み込んでしまうほどの圧倒的な威圧感に言葉を失っていた。
「貴様もだ……小娘」
「……げっ……」
そして、平等院の瞳は跡部と、こっそりこの場から退散しようとしていた長谷川千雨に向けられた。
プルプル震えながら振り返る千雨。その目には、魔法世界で遭難した時と同じぐらいの涙が溜まっていた。
超久しぶりに書きました。随分と駆け足でしたが、次でボウリング対決はラストなんで、なるべく早く書けるよう頑張ります。
また、最近ツイッター初めました。
気が向いたら遊びに来てください。
@anikkii_burazza