江戸の旅もついにっクライマックスが見えてくる第三話です。
お楽しみください。
胃「学生の諸君、この小説を母親に見られないよう注意しよう。あまりにくだらない小説を読む、あまりにくだらない人間と思われちゃうからね」
午後の江戸は人が少なかった。しかしあちこちから仕事をする人の声が聞こえてくる。
池「思ったより店はありませんね」
飛「江戸の人は割と朝に食材を買い込む人が多いですから。お店もあまりないのだと思います」
そこから少し歩くと、野菜を持った女性がいたので近くに店があるのか飛鳥に聞いてもらった。
飛「東に100歩ほど歩くと、野菜を売る店があるみたいです」その通り行くと、店があった。そこで野菜と、大麦とを買った。野菜は飛鳥に選んでもらって、新鮮そうなものを買った。
そのようにして、ほかの食材も買った。そして屋敷に帰り始めた。
バン、バン...。
屋敷に近づくと、パンをこねる音が聞こえた。あの男がちゃんと働いていることに驚きと不安を感じつつ、屋敷に入る。よっぽど熱中しているのか、屋敷に入ってもパンをこねる音はやまない。
飛「食材、買ってきましたよ」飛鳥の声でやっとパンを作る音がやんで、調理場から胃部鯉個が出てきた。
胃「それじゃあ、手つだってくれる?」三人で調理場に入る。
調理場は池袋が考えていたより広かった。奥行、幅ともに5メートルといったところか。向かって右側に窯が二つほど、左側には水屋があり、中央にはテ-ブルのようなものがある。そこにまだこねかけのパンが置いてある。
胃「あとちょっとで二次発酵に入るから、あと3時間ちょっとで焼けるようになるよ」
二次発酵が終わるまでに、ほかの料理を作った。
池・胃・飛「いただきまーす」
胃部鯉個が用意した机の上には、焼き立てのパンと魚のムニエルのようなものと生野菜のサラダが三人分おいてある。
胃「池袋さん、とりあえずパンを食べてみてくれる」
池「え、僕が最初に食べちゃっていいんですか?」
胃「うん、池袋さんはお客さんだからね」妙に対応がいいなと思って、パンに手を伸ばしかけたとき、飛鳥が我慢できないといった様子で言った。
飛「課長、そこは正直に毒見をしてほしいといわないと...」やっぱり。そんなことだと思った。
池「食中毒になったら絶対訴えるからな‼」
胃「とりあえず食べてみてよ」あっさりとスル-される。
まぁ、食べるか。今日は結構歩き回ったので、かなり空腹だった。
さっそくパンをちぎって口に含む。あ、これおいしい。なんか普段食べるパンとは違う独特の風味がする。ん?....
タイムマシンに乗る前、胃部鯉個は何かを必死にほじっていた。この独特な風味の素はもしかして...吐き気がしてきた。
池「あの、パンつくる前にちゃんと手を洗いましたか?」
胃「どうだったかな。忘れちゃった」
いーーーーーーーーやーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー‼
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ。
吐き気が本格的になってきた。その様子を見て、飛鳥も今起きていることを察したらしい。飛鳥のパンを食べる手が止まる。そして、みるみるうちに顔が青ざめていく。池袋も吐き気を我慢できなくなった。
池・飛「ちょ、ちょっとトイレに行ってきます」池袋と飛鳥は同時にトイレにむかって走っていった。
胃「じゃぁパンもらっていい?」平然と聞かれる。くそー、現代に戻ったら絶対に訴えてやる。池袋は決心した。
その日の夜は最悪の気分だった。
胃の中のものはすべて出したはずなのだが飛鳥と池袋は腹痛を催してしまい、結局食事は胃部鯉個がすべて食べる結果となった。
腹痛がかなりひどかったので、夜は寝れないかなと思っていたが、旅の疲れゆえかすぐに眠りについた。
夢を見ていた。
夢の中じゃないと困る。
なぜなら目の前に腹痛の原因となった男がいるからである。
しかもその太った男は、刀を持った中年の侍を必死に追いかけている。かなり貫禄のある顔の侍だ。侍はなぜか必死に逃げる。
ついに、胃部鯉個が侍に追いついた。そして侍の頭に手を伸ばした。胃部鯉個の手が侍の頭をつかんだ瞬間...侍の髪の毛がおもしろいようにとれた。
久しぶりによく寝た。悪夢を見た気がするのだが、忘れてしまった。昨日の疲れはほとんど残っていない。そういえば腹痛も完全に治っている。
人間って、思ったより頑丈だなぁ。池袋は、好きな時間に起きれる幸福に浸りながら思った。
顔を洗おうと思ったが、どこに行けばいいかわからなかったので、隣の部屋にいる飛鳥に聞きに行く。昨日の一件もあるので、胃部鯉個に聞きに行こうとは思わなかった。
池「すいませーん」そう言って引き戸を開く。急に首に冷たいものが当たる。後ずさりながら見ると、飛鳥に小刀を突き付けられていた。
飛「あ、すいません。曲者かと思って」刀を突き付けられたまま言われた。
朝の支度をした。そのあと胃部鯉個といっしょに飛鳥の部屋に集まった。
飛「今日は塩を売る商人という設定で、座の集まりに参加します」座という名前は学生のころ習った覚えがあったが、どんなものか忘れてしまった。
池「あの、座ってどんなものでしたっけ?」
飛「簡単に言うと、同業者組合ですね。江戸時代までには、座は織田信長や豊臣秀吉によって解体されましたが、商業共同体のようなものは残っていました。なので今から行くところは名目上は江戸で塩を売る商人の集会ですが、実質的には座と同じです。ただ、参加者はただの集会だと幕府に言って集まっているので、『座』という言葉は絶対に発しないでくださいね。」
胃「喋る機会はほとんどないから大丈夫だよ」
一度身支度を確認した後、池袋たちは目的地に向かって歩いて行った。
池袋たちは目的地まであと少しのところまで来ていた。近くに桜田門が見える。
胃「うわぁ、この石すっごくおもしろい形してる。もらっちゃお」胃部鯉個がそう言いながら、近くに落ちていた掌に入るサイズの石を拾う。数字の5のような形をしている。
飛「課長、過去の時代のものは持ち帰らないというルールを忘れたんですか?」
胃「こんな石くらいならいいじゃん」
飛「ダメです。もしかしたら桜田門外の変の時に、この石につまずいて井伊直弼が殺されるかもしれないでしょう」そう言って飛鳥は石を奪い取ると元あった場所に寸分たがわずに戻した。
パンはいいのに、石はダメなのか?そんなことを考えているうちに目的地である、池袋たちが寝泊りしている屋敷よりも二回りほども大きい屋敷に着いた。
豪華な屋敷の中を、女中に案内してもらい集会が開かれる部屋に入った。
そこは屋敷のほかの場所よりも一段と豪華な作りになっていて、池袋は目を丸くしてしまった。部屋にはまだ数人の人がいるだけでまだ集会は始まりそうになかった。
案の定、集会が始まるまでは30分以上かかったが、豪華な食事が出たのであまり長く待った気はしなかった。胃部鯉個はなぜかほかの商人に人気があるらしく、何やら親しげに話している。
商人「胃部鯉個さん、最近は胃部鯉個さんのお店がさらに繁盛しているようで何よりです」
胃「いやいや、これぐらいのことは簡単にできるさ。ぐふふふふ」
商人「さすがは胃部鯉個さん。ところで、今日は我らの監視のためにお侍様が来るようなんですよ。しかもかなり高い官職の方だそうです。胃部鯉個さんのような大商人の方はいいのですが、我らのような小さな店の者は、この集会で決める商品の値段で売り上げがガラッと変わってしまうもんで困ったもんですよ」
というよりかはほかの商人が胃部鯉個に気を使っているようだ。飛鳥に理由を聞くと、胃部鯉個はなぜか商才があるらしくてここに集まる商人の中でも、1,2を争うほどの利益を出しているらしい。飛鳥曰く、タイムトラベル課の仕事の片手間に遊びのように仕事しているだけだそうなのだが。あれ?そもそもタイムトラベル課の仕事もちゃんとやっているといえるのか?
ただ、池袋はそんな簡単に成功を収めることができる胃部鯉個をうらやましく思った。よく考えれば、タイムマシンの開発だって、世界中から注目される大発見なのだ。そんなことを考えているうちに、この屋敷の主人である有力商人が駆け込んできた。
有力商人「ただいまお侍様が参られました。皆さまどうかお侍様のご機嫌を損なわないよう、お願いします」
集まった商人全員がきちっと座る。胃部鯉個でさえも正座をしている。
女中「お侍様が参られました」
そして女中は引き戸をゆっくりと開けると、戸の近くに正座して、頭を下げた。そこから大柄な侍が数人の供を引き連れて入ってくる。ん?池袋はその侍をどこかで見た様な気がして、懸命に思い出そうとした。そして今朝見た夢をはっきりと思い出した。
...あ‼ あの侍は今朝の夢に出てきた侍とかなり似ている。
かなり貫禄のある顔だが、髪の生え際にかなりの違和感がある。
隣に座っている胃部鯉個からなんだか禍々しいオーラを感じていると、この屋敷の主人の有力商人が中腰で侍の前に立ち、言った。
有力商人「このお方がXXX藩、家老の出故鶴 上薄(でこつる かみうす)殿です。どうか無礼のなきよう」そう言って正座に戻り頭を深く下げた。池袋たち商人も頭を下げる。そしてまた正座に戻り、館の主人が侍に、侍の来訪に自分たちがどれだけ感激しているかを伝え始めた。侍の意識が館の主人に移るのを見て、今がチャンスと思って隣に座っている胃部鯉個をちらっと見ると、侍の髪の生え際を見ながら舌なめずりしていた。今にも手が侍の頭に伸びそうである。池袋は今朝見た夢をまた思い出して、背筋が凍りそうになった。それだけはするなよ。だが池袋の願いは届きそうになかった。胃部鯉個は確実に、狙っている。
あの侍のカツラを..................................................。
次回、池袋VS胃部鯉個のカツラ争奪戦が始まります。お楽しみ下さい。
前書きで次回がクライマックスと書きましたが、クライマックスといっても別に感動するシーンもないですし、これからの連載もないと思うので注意してください。