WING-MAN×DECADE 蘇れ異次元ストーリー    作:ブライ

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二話

小野寺ユウスケと別れ家に送ってもらったケン太は、夕食を済ませた後に再び外に出てジョギングを開始した。

正義のヒーローになるには身体を鍛えなければならない、なぜかそう思いここ最近はジョギングや腹筋、背筋、腕立て伏せ、これらの特訓を行っていた。

 

本来は朝にやっているのだが今日は寝坊してしまったので夜に特訓を行っていたのだ。

 

 

「はぁはぁ……何だろう俺って意外と体力あったんだな」

 

 

普段から特に運動をしていたわけではないケン太は、自分の予測していた体力の限界を大きく上回る運動をしていても平気だったのが不思議だった。

 

彼は覚えていないが初めてウイングマンに変身した時には、戦うどころか変身しただけで体中が痛くてたまらなかった。

 

その上に人間業をはるかに超える力を使い戦ったために、いつも身体がボロボロになるくらいであったのでどうすればいいかと考えた末に、あおいさんと一緒に特訓をすることになったのだった。

 

時間が遡ったとは言っても潜在的に残っている物はあり、戦い続けたケン太にはまだ特訓するという習慣があったのだろう。

これも彼の中のヒーローが生きている証だった。

 

 

「おっし、今日はもう帰るか」

 

 

一通りの訓練を終えて家路につくケン太、今日は松岡先生に叱られたが、小野寺ユウスケという新しい用務員さんに理解してもらえたので、おおむね良い日だったなと思いながら帰るのであった。

 

 

 

翌日 光写真館

 

 

「続いてのニュースは昨夜未明に○○市の公園で変死体が発見されました」

 

「おや、ぶっそうだねぇ……」

 

 

いつものように朝食の後片付けをしている最中に、テレビを付けた栄次郎はそう呟いた、普通ならば何でもないテレビの光景だし、良くあるという言い方には誤解があるかも知れないが、殺人事件というものは世界中で起こっている事だ、しかしこのニュースには彼らが釘付けになる内容であった。

 

その内容とはニュースの見出しに「またもや吸血鬼?連続した変死体発見」ということが書かれていたからだ。

 

「警察の調べによりますと死因はまだ特定されていませんが、首筋に歯形の様なものがついており被害者となった女性はこれで4件目になります。いずれも同じ手口の犯行とおもわれており同一犯または同一のグループの殺人とみて捜査を進めています。さらにはこの一連の変死体が発見された事件を皮切りに行方不明者も増えており夜間での一人歩きを控えるよう……」

 

 

「これってどう思いますか?」

 

「うんひょっとすると怪人の仕業なのかな……」

 

 

そう言ったユウスケは自分の世界で戦っていた相手である、未確認生命体グロンギの事を思い出す。

グロンギとは古代の遺跡からよみがえった怪物であり、人間を標的とした殺人ゲーム・ゲゲルを行う恐るべき敵だった。

 

そのゲゲルにはある一定の法則があり、その法則にのっとってグロンギ達は殺人をしていったのだった。

もしかしたらグロンギのように「女性をかみ殺す」という名目で殺人をしている怪人がいるのかも知れない、そう思ったらユウスケは居ても立ってもいられなくなった。

 

 

「ごめん俺はちょっと周りを見てくる、士!今日は休むって言っておいてくれ」

 

 

ユウスケはそう言うと愛機であるトライチェイサーにまたがって走りだす。

当てもないのだが動かずには居られない彼らしい行動だった。

 

 

「ちょっとユウスケ……行っちゃいました……」

 

「ほっとけ腐ってもあいつは仮面ライダーだからな」

 

 

茶を啜りながらどうでもよさそうに答える士であった、しかし彼ももうすぐこの世界の事件と戦うこととなる。

 

 

 

 

 

「ん~何か特ダネは無いかしらね」

 

 

彼女の名前は布沢 久美子、仲額中学校の新聞部所属の生徒で通称仲額のナシモトと呼ばれる女の子である。

時間が遡る前の彼女は、広野ケン太と一緒に戦った仲間のウイングガールズの一人でありトラブルメーカーでもあった。

 

当初は特ダネを追い続けその過程でケン太が本当に変身出来る事を知り、それから仲間となったのだった。

 

なおウイングガールズのメンバーは合計で4人いて、夢あおい、小川 美紅、森本 桃子

が他に居る。

 

現在は午前七時前、学校へ登校するにしては少々速い時間だが特ダネを求めて町をちょっと見回っていたのだ。

 

 

「新しく学校にきた先生もイケメンってだけで特に事件性はなさそうだし……あ~でも用務員さんの方がどっちかっていうと好みかも」

 

 

などと言ってる辺りは思春期の女の子らしい部分もあるのであった。そんな感じで歩いていると正面から走ってくる人物を見かけた。

 

その走ってくる人物とは学校の名物男、広野ケン太だ、ジャージ姿でジョギングをしている奴など珍しくも何ともないのだが、何かと話題の多いこの人物を朝から見つけたので他に面白そうな事もなさそうだったから追いかけてみる事にしたのだ。

 

しかし、しばらく追いかけてみたが思いのほか走るのが早く10分もしないうちに見失ってしまった。

 

 

「はぁはぁ……思ったより……速いわね」

 

 

息も絶え絶えにケン太を見失ってしまった久美子は諦めて帰ろうとするが、途中でおかしなものを見かけた。

前を歩いている数人の人間が今は廃ビルで立ち入り禁止の状態になっているのに入っていくのが見えたからだ。

 

本来ならば不良のたまり場かもしれない程度で済ましたのかもしれないが、近づいてみるとかなりの人が居そうな気配を感じる、ひょっとしたら特ダネ?そう思って中に入る久美子。

 

 

「きゃああああああああ」

 

 

しばらくして彼女の悲鳴が聞こえた。

 

 

〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 

一方そのころ門矢 士は外を歩いていた。何という事は無いユウスケが外に出て行った後にいつものごとく夏ミカンと揉めたので笑いのツボを押される前に写真館から出て行ったのだ。

少々早いがこのまま学校に行って向こうでゆっくりすればいい、そう思いながら町を歩いていると電柱の横から一人の男が姿を現す。茶色い帽子にコートを被った姿に眼鏡をかけている、それは幾度となく士達の前の現れた謎の人物。

 

 

「鳴滝……」

 

「ディケイドとうとうこの世界にきてしまったか、ここもあの世界と同じくライダーの居ない世界だというのに」

 

 

ライダーの居ない世界、その言葉に少し反応を示す士だったが鳴滝は話を続ける。

 

 

「だが貴様もここで終わりだ!!今度こそお前の旅は終着となる」

 

 

そう言って鳴滝は灰色のオーロラの中に消えて行った。

いつもの事だが鳴滝の話しは要領を得ない、大抵の事なら「大体わかった。」で済ませる士でもこの鳴滝の行動は大体わからない。

 

気にするだけ無駄かもしれないが鳴滝は事あるごとに自分に攻撃を仕掛けてきたのだ。ある時は別の世界のライダーと自分を戦わせるように仕向けたり、または移動した世界にダークライダーを連れてきたりと奴の行動は自分にとって碌なことにはならない。警戒だけはしとく程度に思い再び歩こうとする。

しかしその時不思議なことが士に起こった。

 

 

「なんだ……」

 

 

いきなり時間が止まったかのような静けさの後に天地がグルっと入れ替わったのだ。

天地がひっくりかえったというのに自分は空に落ちない、しかし空の方に重力を感じるなんとも不思議な空間だった。その空間で多少は戸惑った士に声がかけられた。

 

 

「あなたがディケイドね悪いけどこの世界は破壊させないわ。行くわよリロちゃん」

 

「はい、お姉さま!!」

 

 

声が掛けられた方に目線を移す士、そこには二人の女の子が立っていた。

 

 

 

〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 

 

 

ケン太は、ヒーローになるためには毎日の積み重ねが大事で昨日の夜にちょっと疲れたからって休まないのだ、と思いながら走っていた。

いつもの距離を走って帰るはずだったのだが今日はちょっと勝手が違った。

 

 

「きゃああああああああ」

 

 

こんな甲高い悲鳴を聞いたからだ、痴漢にあっただとか驚いたからとかいう悲鳴じゃないと断言できるくらいに切羽詰まったような悲鳴だった。

 

ケン太は驚いたがすぐに持ち前の正義感が動き出す、恐らく悲鳴がしたであろう廃ビルの中に入って行った。

 

 

「なんだろうなこのドヨ~ンとした感じ、へへまるで悪の秘密基地みたいな感じだな」

 

 

中に入ったケン太はちょっと怖く思いながらも、いつものヒーロー魂を燃やしながら奥に進んで行った。

廃ビルの中は結構入り組んでいて板を打ち付けるなどしてわざと迷路のようにしている異様な内部だった。

 

 

「おーい誰か居ませんか~居たら返事をしてくださ~い、居ない方は返事しないで結構で~す」

 

 

冗談なのか本気なのか良く分からないが声を出しながら歩いていくケン太、暫く歩くと広間を見つけた。

その広間は暗くて全体がよく見えないがなんとなく人がいそうな感じがする、そしてさらに奥に行くとローブを被った、如何にも変な事をしています、という格好の奴を発見した。

 

 

「お前は一体何者だ、さっきの悲鳴はお前の仕業だろう!!」

 

 

ケン太は格好を付けて怪しい人物に話しかける、するとローブを着た奴は低い声で話しかけてきた。

 

 

「……ゲゲゲゲ、予定は狂ったがお目当ての奴が来たぜ。」

 

 

そう言うとローブを脱ぐ男、その姿は異形だった。コウモリを巨大化させ人型にしたような姿に、長い爪と鋭い牙、どこからどう見ても怪人と言うにふさわしい姿だった。こいつの名前は怪人名コウモリプラス、かつてのウイングマンの敵である帝王ライエルの部下であった怪人である。

 

 

「かかか、怪人!!本物の!!」

 

 

ケン太は目の前の恐怖と怪人がいたという喜びというか感動というか、如何にもヒーロー的な展開になったのでテンションがおかしくなっている。

しかし異常なハイテンションになってるが当初の目的は忘れちゃいない、悲鳴を聞いて駆けつけたヒーローがする事といったら決まっている、それは怪人を倒して人々を助けることだ。気持ちを切り替えコウモリプラスに強く言い放つ。

 

 

「質問に答えろさっきの悲鳴は何だ!!」

 

「知りたいなら教えてやるぜ、まぁ前にもやったがよ」

 

 

薄暗い部屋の中でコウモリプラスが上を見上げる、すると先ほどまではよくわからなかったがまるで人間がコウモリのように逆さになった天井にぶら下がっていたのだ。

 

 

「なっこれは!!」

 

「さっき一匹ここに入ってきた奴がいてな、今こいつらに逃げたそいつを襲わせているのさ。」

 

 

コウモリプラスは首を上に向け口を開ける、すると天井に居る数人の人間が地面に降りてきた、良く見るとその人間も異常だった、目が充血してもここまではならないだろうというくらいに赤くなりキバが生えている、まるで吸血鬼にかまれた人間のように。

 

 

「ケケケ、喜べお前もこいつらの仲間に入れてやる、ひょっとしたら失敗して死んじまうかもしれないがなぁ。」

 

 

コウモリプラスはケン太に自分の部下たる人間達で襲わせようとする。

 

操られている人、それを使い悪事を働く怪人、まさにヒーロー冥利に尽きるシチュエーションだが、状況はかなりやばい、そんな事くらいはいくらなんでも分かるだが、妙な余裕と高揚感がケン太の奥底からふつふつとこみあげてくる。

あんまりにも常識から外れた現状に感覚がマヒしたのだろうか、だけどそんな事は関係ない本物のヒーローのような力は無いけどむざむざやられはしない。

 

そう覚悟を決めた時、突如としてビル内に爆音が鳴り響いた、吸血人間もコウモリプラスも驚き動きが止まっている、そうこうしている内に何かがこちらに近づいてきたのだった。

 

 

 

 

〇〇〇〇〇〇〇〇

 

 

 

 

ビル内で化物に出会い思わず悲鳴を上げて逃げてきたが、もう追いつかれるのは時間の問題だった、確かに特ダネだったが、自分の命が危ない状況になるとは思いもしなかった、しかもかなり焦って走ったため入口に戻るための道順とは違う道を歩いてきてしまった。

 

 

「もう、なんなのよあいつら……」

 

 

久美子は走りながら嘆く、ご自慢の写真もこの状況では取れないと言うよりも、そんな悠長なことをしていたら自分の命が取られる。そう考えながら逃げていたが行き止まりにあってしまった。

 

しかも後ろを向いたら吸血人間が何人もいる、もう自分は終わりなのか、そう思ったら急に涙腺が緩む、助けを求めたいがこんなところに誰も助けにきてくれる訳は無いし、そんな都合よく現れるはずもない、少し先の未来を想像し絶望がこみあげてくる。

 

だが本来ならばあり得ないような状況に、あり得ないタイミングでそんな都合よく現れる存在が、今はこの世界に居るのだ。絶望の結末を裏切り希望の未来を勝ち取る存在が。

 

 

爆音を上げ何者かがバイクに乗って壁を突き抜け外の光をバックに久美子の前に現れる。逆光が邪魔で上手く顔が見えないがヘルメットをかぶっているのでどっち道分かりそうにない。

 

いきなり強烈な光を浴びて思わず吸血人間達は奥に退散していく、どうやらこんな入り組んだビルの中に居るのは光が苦手だったからなのだろう。

 

 

「大丈夫?立てるかな?」

 

 

「はっはい!!」

 

 

思わず大声で返事を返す久美子、それに軽く笑みを返し奥に居る邪悪な気配を察する、闇雲に動き回っていたがどうやら正解だったようだ。

 

 

「ちょっと一人にして悪いんだけど今そこの壁から外に出て逃げててくれるかな、幸いあいつらは外に出れないようだし。」

 

 

そう久美子に言って彼はバイクに乗ったままビル内を移動しようとする。

 

 

「ま、まってください、あの、助けてくれてありがとうございます。出来れば、その、お名前を……」

 

 

そう言われ何となく照れくさくなったのかバイクに乗った男はこう答える。

 

 

「通りすがりの仮面ライダーの仲間、いや今は用務員かな?」

 

 

そう答え現仲額中学校用務員、小野寺ユウスケは愛機トライチェイサーで走り出すのだった。

 

 

 

トライチェイサーで爆音を上げながら内部を激走するユウスケは、奥の部屋にたどり着くそこには見たことも無いタイプの怪人と昨日知り合った少年がいた、ユウスケはトライチェイサーから降りてその少年に近づく。

 

 

「ケン太君!!」

 

「ゆ、ユウスケさん!!なんでここに!!」

 

 

いきなり現れたユウスケに驚いたケン太であったがそんな驚いている場合じゃない状況は最悪なのだと思い直す。

 

コウモリプラスは対処すべき人間が増えただけ程度にしか考えて無かったが、こうも立て続けに侵入者が増えるのは好ましくない、それ故にかなりイライラしているようだ。

 

 

「もう面倒だ!!そこの人間ともども俺の操り人形にしてやる!!」

 

 

天井に居る全ての人間を操り攻撃を仕掛けようとするコウモリプラスだった、その言葉に思わず構えるケン太だったがユウスケはそのケン太を守る用に前に立ち、こう呟いた。

 

 

「ケン太君はヒーローに憧れていたんだったよね、今から見せるよ正義のヒーローって奴を」

 

 

ユウスケは腰を包むように手を当てる、すると不思議なベルトが現れる。

そのベルトは霊石アマダムが埋め込まれた神秘のベルト・アークル。

右手を斜め上にかざし左腕を引き絞りアークルの上に置く。

 

この力を手にしてから幾度となく行ってきた戦う前の儀式、古代リントの戦士の力を使うための覚悟の構え。

 

右腕を横に移動させながらユウスケは叫ぶ。

 

 

「変身!!」

 

 

アークルの横に置いた腕に右腕を押しこみ両腕を開く。

 

そしてアマダムが赤く光り彼の姿を戦士へと変える。

 

クワガタの様な姿に赤い鎧に赤い目、一人の笑顔が見たかったために戦い続け、皆の笑顔を守るために進む事を決意した仮面ライダー。

 

 

邪悪なる者あらば 希望の霊石を身に付け 炎のごとく邪悪を打ち倒す戦士、仮面ライダークウガ

 

 

 

それが小野寺ユウスケが変身した姿で彼の決意の証。

 

いきなり目の前にいた青年がヒーローに変身するその光景を見て思わずケン太は呟く。

 

 

「かっこいい……」

 

 

コウモリプラスはクウガを見て驚いている、そして未知なる存在ウイングマンにやられてしまった、あの時の事を思い出し目の前の男は脅威となる敵と判断する。だがそう考えている間にクウガは周りの壁を壊しこの部屋に光を入れ始めた。

 

 

「キサマッ!!」

 

 

光が入ってきて吸血人間達の動きが鈍る、クウガは先ほどの久美子を助けた時に、操られている人達は光に弱いと思い光を中に入れたのだ。

 

そしてもう一撃壁を殴り一気に部屋は明るくなる、そして吸血人間達は悲鳴をあげて気絶した。それを確認した後にクウガはコウモリプラスに向かって走る。

 

 

 

コウモリプラスは超音波を操ることが出来、それを使い支配下に置いた人間を操るのだが、超音波の方向を一点に絞りこめば物理的な破壊力を増強させた殺人音波として放つことが出来るのだ。

 

クウガに向かい超音波を放ち攻撃を行う。

しかしクウガは敵の攻撃を避けて見事にインファイトに持ち込む。

 

現在のクウガの姿はマイティフォームと呼ばれる基本フォームでパワー、スピード、格闘能力、どれをとっても劣った性能の無い、オールマイティに戦えるフォームで通常の殴打戦を得意とする。

 

コウモリプラスもその長い爪を使い、クウガを突き刺したり引き裂こうとするが、インファイトの状態では生かしきれずクウガにうまくさばかれ全く当たらない。

 

このままクウガの独壇場かと思うくらいにクウガが有利に戦いを進めて行った、パンチやキックが次々にコウモリプラスにささりダメージを与えていく。

 

そしてクウガは力を込めてストレートを放つ、その威力にコウモリプラスは吹き飛び壁に穴をあけて外に飛び出す。

 

コウモリプラスはクウガには敵わないと思ったのか、そのまま飛行しこの場から逃げようとした。

 

 

「くっまてっ!!」

 

 

クウガは逃がしてはなるまいとトライチェイサーにまたがりコウモリプラスを追跡する、トライチェイサーは普通のバイクとは比較にならない性能を有していてそのスペックは150馬力、最高時速は300キロ以上出せるのでいかに飛行している相手とはいえそう簡単には見失わない。

 

「ケン太君!!君はこのビルにある窓を開けて板を壊してくれ、そうすれば安全にここから出れると思う!!」

 

ケン太にそう言って外に飛び出して暫く追いかけると広い土手の様な所でコウモリが止まったのだ、

クウガは観念したのかと思ったが警戒は解かずトライチェイサーから降りて近づく。

 

「準備は出来たぜ・・・」

 

コウモリプラスがそうつぶやくと辺り一面が急に夜のように暗くなった、いきなりの事でクウガは一瞬隙が出来てしまう。

これがコウモリプラスの能力の一つで一定の範囲を夜のように暗く出来る能力で、その範囲は数十メートル以上の円柱型に広がるのだ。

コウモリプラスはコウモリの習性のように夜行性で夜になればさらなる力を発揮できる、

この能力があるからこそ昼間でも強気の活動をしていたのだった。

さらに先ほどの建物でこの能力を使わなかったのにはいくつか訳がある。

 

「さぁ細切れにしてやるぜぇ!!」

 

コウモリプラスは急降下しながらクウガに襲いかかる、そのスピードは凄まじい上にいきな辺りが暗くなり隙が出来てしまったクウガは思いっきりその鋭い爪をくらってしまう。

これが使わなかった第一の理由のヒットアンドアウェイ。

 

先ほどのクウガの戦闘で分かった事だが純粋な格闘能力では、自分の力はクウガに及ばずあの狭い場所では例え暗闇に戻しても負ける可能性が非常に高かったからだ。

 

この広い空間ならば自分の飛行能力がフルに使える上にインファイトに持ち込まれにくい、さらに逃げている最中に恐らくクウガは空が飛べないという事も理解していた。

いかに速い乗り物を持っているとはいえクウガ自身が、空を飛べるのなら空を飛んで追いかけてくるはずだからだ。

以前は建物の中で強烈な光を出されダメージを負ったことがあったので、慎重になりいきなりは使わなかったこれが第二の理由だった。

 

 

「うわぁ!!」

 

 

コウモリプラスのヒットアンドアウェイの攻撃によりクウガは苦しい戦いとなった。当初はいきなりの暗闇で困惑しダメージを負ったが、すぐに気持ちを切り替え応戦する。

しかしそれでも状況は好転はしなかった。

 

クウガは襲ってきた相手に対してよけて攻撃をしようと思ったのだが、いかんせん敵のスピードは予想以上で拳を振るう頃には射程外に行ってしまう。

 

ならばカウンターで攻撃を仕掛けようと思ったのだが、この暗闇とスピードでは狙いが上手く定まらず、またコウモリプラスは超音波による、遠距離攻撃も混ぜて攻撃をしてきたため苦戦を強いられたのだ。

 

一撃で大ダメージを負わないがこっちの攻撃は当たらず相手の攻撃ばかり食らう、それがずっと続けば敗北するのは目に見えている。

 

空が飛べる、遠距離攻撃がある、というのは非常に強いアドバンテージだ。しかも辺りは暗く向こうは昼間よりもこっちの姿をとらえやすいときている。

 

しかしクウガにはこの状況を打破するための手段がある、それはありとあらゆる困難な状況に対応するための元来クウガが持っている、切り札フォームチェンジとディケイドとの絆の証ファイナルフォームライド。

 

それらを吟味しこの状況を打破するために思いついた考えは三つあった。

 

しかしその内の一つファイナルフォームライドは、そもそも士ことディケイドがいなければ行えないために却下。

 

もう一つは超感覚で持って敵を見分ける緑のクウガことペガサスフォームを使うこと、だがこれも却下だ、ペガサスフォームは視覚、聴覚などが非常に優れる代わりに自身の身体能力は高く無い、加えてそれを補うために武器がいるのだがこの状況では見つかりそうもない。

さらに敵の超音波も厄介だ、超強化された聴覚でもし超音波などを聞いてしまえば洒落にならないダメージを負う可能性が高い。

そして最後に残った対策に賭ける事にしたのだった。

 

クウガはいきなり後ろを向き全速力で走りだした、まるで逃げ出したかの様に。

 

そんな状況に一瞬ポカンとしたコウモリプラスだったがすぐに笑みを浮かべる。

 

 

「ゲゲゲゲゲゲ、ヒーローがにげだすなよなぁ!!」

 

 

笑いながらクウガを追いかけ攻撃を仕掛ける、しかしここで考えるべきだった、本当に逃げ出すつもりだったのならトライチェイサーに乗るはずなのだから。

 

 

 

わざと自分に追いつけるように自分の足で逃走するクウガ、コウモリプラスが自分を攻撃出来るように、今のコウモリプラスの攻撃の対象が自分だけに向けられるように、先ほどもケン太を自分が勤める学校の生徒を襲おうとしていたのだ。もし自分を見失ったら別の人を襲うに違いない、そのために攻撃をされながらあるものを探す事をしなければならなかった。

 

 

「あった!!」

 

 

クウガは工事現場などで良く見かける、カラ―コーンの上にひっかけて載せる黄と黒のコーンバーを外して手に持つ。

はたから見れば変な光景だろう、コーンバーなどはプラスチックで出来ていて簡単に割れる、それをヒーローが持って戦おうとしているのだから。

それを見てさらに可笑しそうに見下した笑みを浮かべコウモリプラスはしゃべる。

 

 

「なんだ?そんなもんで俺に勝つつもりか?」

 

 

「ああ、そのつもりさ!!」

 

 

クウガは強気で言い返す、それを聞いてコウモリは高く飛行し直接攻撃を仕掛ける。

それをクウガは待っていた、別にコーンバーで無くてもいいのだ、ようは棒の様なものでイメージさえ出来れば。

 

コウモリプラスが自分に近づくその瞬間にクウガは叫ぶ。

 

 

「超変身!!」

 

 

身体が赤色から青色へと姿を変える、クウガのフォームチェンジの一つスピード、跳躍力に優れた青のクウガ・ドラゴンフォーム。

 

マイティフォームよりも数段優れたジャンプとスピードを誇り、コウモリプラスの高さまで軽く飛ぶ事が出来る、しかしその反面パワーは大幅にダウンしてしまうため、もし先ほどの時に使えば決定打を与えられずやられてしまっただろう。そのためにコーンバーを手に持ったのだ。

 

攻撃を避けたクウガはすかさず上昇するコウモリプラスに向かってジャンプする、そして手に持ったコーンバーが変化していく、クウガの各フォームにはイメージしたものを自分の武器にする能力がある。

 

先ほど言ったペガサスフォームにはペガサスボウガンと言う武器を使えるのだが、それを使うためには弓や銃などの「射抜く」というイメージを生み出す物を変化させねばならない。

 

そしてこのドラゴンフォームの武器はドラゴンロッド「棒」のような物を媒介に変化させ作り出すドラゴンフォームの攻撃力不足を補う心強い武器なのだ。

 

 

「グゲッ!!」

 

「はぁああああああ!!」

 

 

クウガはその跳躍力でもってコウモリプラスの背後を取り、背中にある羽にドラゴンロッドを突き刺す、いきなりの反撃に驚くコウモリプラスであったが諦めずクウガを振り落とそうとする、クウガはそのまま思いっきりドラゴンロッドを下に下げて羽を一枚引きちぎる。

 

 

「ガッ……やりやがったなぁ!!」

 

 

完全に羽をもぐ事は出来なかったが左の羽はちぎれかけコウモリプラスは、空中で止まっているのが精いっぱいのようだ。

 

羽をドラゴンロッドでちぎった拍子にクウガはコウモリプラスから落ちて行く、ドラゴンフォームは跳躍力は高くとも空を飛べるわけではないので、一度ジャンプすればその後は重力に従って当然落ちて行く。

落ちて行ったクウガをみて少し落ち着くコウモリプラス、しかしクウガの攻撃は終わってはいなかった。

 

クウガは空中で止まっているコウモリプラスのもう一枚の羽をめがけてドラゴンロッドを投げつけたのだ、浮いているのでやっとのコウモリプラスは、避けられず羽にささり今度こそ高度を保てず落ちて行く。

 

 

「いてて、後先考えずにやりすぎたな」

 

 

先に地面に落ちたクウガはそう言って立ち上がる、空中でドラゴンロッドを投げるという行為をしたのだ当然バランスを崩し背中から落ちたのだから少なからずダメージはある。

 

しかしコウモリプラスの方は羽二枚の損傷でさらには飛行も出来なくさせたのだ、賭けの結果としては十分すぎるプラスだ。クウガはドラゴンフォームからマイティフォームへと姿を戻し、落ちてきたコウモリプラスに追撃を仕掛けるべく走り出す。

 

 

クウガに再び接近をされたコウモリプラスには、反撃の手段はほぼなくなっていた。廃ビル内でのように殴られ蹴られる、しかしそれで終わる気などないコウモリプラスは攻撃を受けながらもクウガの肩をつかむことに成功した。

 

 

「このまま毒を流し込んでやる!!」

 

 

コウモリプラスの最後の力、噛んだ人間を支配下に置く薬とはまた別の猛毒、噛みつきそれを流し込めばいかにクウガとはいえこの場でば無事には済まないだろう。

牙がまさにクウガに噛みつこうとした瞬間に

 

 

「超変身!!」

 

 

クウガは再びフォームチェンジを行う、体が紫と銀を基調とした色に変わり肩の装甲も大きくなり、瞳も紫に変化した、それはパワーと防御力に優れた紫のクウガ・タイタンフォーム。

 

コウモリプラスは首筋にでも噛みつければまだわからなかったが、肩の近くに噛みつこうとしてしまいタイタンフォーム自慢の重装甲に邪魔されしかも牙が欠けてしまった。

 

 

「ギャ……グゲェ!」

 

 

牙が欠けて怯んだところにクウガの容赦ないパンチが顔面に刺さる、その衝撃で牙は完全にへし折れ爪も数本折れてしまった。

 

クウガはその折れた爪を手に取りイメージする、敵を切り裂く戦士の刃を、爪は鋭利な紫の剣タイタンソードへと変化する。

 

強力なパワーと驚異的な防御力を誇るタイタンフォームの必殺の武器タイタンソード、攻撃を受けても怯まず後退せず押し切る戦法を得意とする紫の力の極めつけと言える強力無比な剣。

 

クウガはコウモリプラスに必殺の一撃を加えるべく歩み寄る、しかしコウモリプラスから予想外の事が聞かされる。

 

 

「ゲゲ、まて、俺を殺しても噛まれた奴らはもとには戻らんぞ」

 

「なんだって……」

 

 

その言葉を聞きクウガはピタッと動きが止まる、それは当然だ、コウモリプラスを倒すことができても、操られている人を助けることができなければ、この戦いは完敗したと言ってもいい。状況から見てもこいつが口から出まかせを言っている可能性は大いにあるが、それでも嘘だと言って文字通り切り捨てることはできなかった。

そんなクウガの困惑がわかったのかコウモリプラスは饒舌になる。

 

 

「そうだ、あいつ等を解放するにはあるものを飲ませなきゃいけないんだぜ、それを知っている俺を殺せるかな?」

 

 

コウモリプラスは何とかこの場から逃れるためにクウガを追い詰めようとする。しかしその時にコウモリプラスにとって最悪の援軍がクウガに訪れる。

 

 

「そいつの目玉だ」

 

 

声をかけられたほうに目線が行く、そこには

 

 

「士!?なんでここに」

 

「こんな真っ黒い円柱がたってりゃ馬鹿でもわかる、それよりそいつの目玉を粉々にしてそれを煎じて飲ませれば治るそうだ一応確かな情報だ」

 

 

そう言われコウモリプラスはもう逃げ場は無いと思ったのかクウガに特攻を仕掛ける、それを見てクウガはタイタンソードを突き刺し引き裂いた。

 

 

「マァいいさ、偉大なるあのお方にかかればいずれこの世界だけでなく……ガガガガガガガ」

 

 

コウモリプラスは何かを言いながら爆発する、それと同時にあたりが明るくなった、それはコウモリプラスの能力が解かれた証だったのだが。

 

 

「あ……」

 

「馬鹿かお前、爆破させてどうする」

 

 

いきなり走ってきたので思わず切り伏せてしまい、毎度の怪人戦のように爆破してしまったのだ、これでは目玉を粉々にして煎じて飲ませるどころか、体中バラバラだ目玉などわかるはずがない。

やばいどうしよう、とオロオロし始めるクウガだったが後ろからボトッっと音がした。

 

 

「ゲゲ、前とは違ってスカートのぞけねぇな……」

 

 

声がする方を見ると首だけになったコウモリプラスがいた、このセリフから察するに前も首だけになってスカートのぞきでもしたのだろうか。

 

情けない最後の言葉を残してコウモリプラスは息絶えた。

なんだかしまりが悪いなと思いつつも、変身を解除し士と一緒にケン太のところへ向かうのだった。

 

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