Fate/Imitate Order   作:パラボラ

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FGO7章、遂に開始。
6章に引き続きボリュームのある内容、ワクワクするストーリー。とても楽しかったです。ありがとうきのこ先生。
ただガチャ追加サーヴァントが少ないと思うのは私だけなのだろうか。

あと、これのストーリーは大体考えているんですが、今回の7章でそのストーリーがぶち壊される可能性があったので、プレイしててヒヤヒヤしました。必死に妄想を働かせたのに、全部パーになるところでした。





第一節 夜更け、特異点にて。

「先輩。起きてください、先輩」

 

自分を呼ぶ少女の声で、香介は目を覚ました。

前にも聞いたな、あの時はフォウが乗ってきたんだっけ、と寝起きのぼんやりとした頭で考える。

目を開け、まず見えたのは白衣を着た少女、マシュが自分の肩を掴んで揺さぶっているところだった。

 

「あ、漸く起きましたね。おはようございます、先輩」

 

「......おはよう、マシュ」

 

時計を確認する。カルデアにいると季節やら時間やらがあやふやになるので、香介はこうして時計を見る癖をつけていた。時計の針は7時半を示している。

そこで漸く、香介の脳は活動を始めた。

 

「あ〜......レイシフトって確か11時くらい、だったっけ?」

 

「はい。ブリーフィングがあるので、朝食を食べてからメインルームに集合だそうです」

 

ですから早く行きましょう、とマシュは香介の手を引く。

着替えがあるからと香介が言うと、顔を真っ赤にしながらマシュは出ていった。

 

「ふぅ...さて」

 

立ち上がり目を瞑る。

体の中に意識を向ける。

ーー魔術回路13本、正常

確認し、イメージする。

思い浮かべるのは、己の米神に突きつけた拳銃。

引き金を引く。

それと同時に体に激痛が走り、魔力が循環していく。

ーー魔術回路、起動完了

そしてすぐに息を吐き、魔術回路を全て停止させる。

 

これは香介が毎朝行なっている日課である。

魔術に疎く、その所為でうまくサポートができていないと感じた香介は、自力で毎朝こうして魔術回路を起動する練習をしている。

生憎と魔術師のサーヴァントはダヴィンチ以外におらず、残りのキャスタークラスのサーヴァントは皆作家系であるため、魔術を覚えることは出来ない。ちなみにダヴィンチには一度教えを受けたが、魔術の話から色々逸れていったのでそれ以降その話をしていない。

 

カルデアの制服に着替え、部屋を出る。

 

「あ、先輩。では行きましょうか」

 

部屋を出てすぐにマシュは香介の手を引き食堂へと歩き出す。

その表情は嬉しそうに綻んでおり、彼女がどれだけ香介を慕っているかがうかがえた。

 

 

 

 

 

 

 

所変わって食堂。

大体のカルデア職員は6時に起床し7時に朝食を摂る。8時少し前の今の食堂には職員はちらほらとしかおらず、サーヴァントの方が多かった。

中央のテーブルの空いている場所にマシュと香介は向かい合って座る。ちなみにここカルデアの食堂には長机が縦に3脚並べられ、その奥に厨房がある構造になっている。

厨房では数人のサーヴァントが忙しなく動いている。朝、昼、夜の特定の時間に限っては厨房は料理が出来るサーヴァント全員で担当することになっているのだが、今日からエミヤという最大の戦力が抜けるため、いつも以上に忙しそうに見えた。

 

「おう大将、それに嬢ちゃんも」

 

料理を受け取り、席に着くと声をかけられた。横を向くとそこには金髪の大男がいた。

 

「ああ、おはよう金時」

 

「おはようございます、金時さん」

 

金髪の男、坂田金時は返事をして香介の隣に座る。手には既に朝食を持っている。

そのまま金時を含めて、雑談をしながら食事を始めた。

 

「そういや大将。今日のレイシフト、俺っちも観測することになってるからな」

 

「え、なんで?」

 

「いやそれがよ、『何があるかわからないから取り敢えず待機しておいて』って言われてな。俺っちだけじゃなく他のサーヴァントもいるぜ」

 

「へぇ。ロマンから言われたの?」

 

「おう、よくわかったな」

 

「というかそういうこと言うのロマンくらいでしょ...」

 

ロマンも心配性だなぁ、と昨日報告しにいったときのロマンの青ざめた顔を思い出して香介は苦笑いを浮かべた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし、じゃあブリーフィングを始めようか」

 

まるで自分自身に気合を入れるかのように声を張るDr.ロマン。

しかしその声はメインルームに緊張感を齎すのには十分だった。

 

「レイシフト先は日本、八津木市。事前の情報によると、かつて聖杯戦争が行われようとした土地だ。君たちにはそこでいつも通り聖杯を確保し、特異点の修復をしてもらいたい」

 

「特異点が出来た原因はおそらく聖杯戦争だろう。だからもし聖杯戦争が行われていた場合は、どこかの陣営と協力してくれ」

 

ロマン、ダヴィンチの順に状況を説明する。この場においてそのことを知らない者はいないので、再度の確認のようなものである。

故に何事もなくブリーフィングは進んでいく。

 

「他に何か質問はあるかい?」

 

誰も答えない。それは問いを発したロマンも理解していた。

 

「よし。じゃあレイシフト準備に入ろう」

 

そうロマンが言い、それに続いてスタッフが動き出す。香介もコフィンに入りレイシフトの時を待つ。

メインルームは足音や装置を動かす音で騒がしくなるが、香介には音は聞こえていなかった。

 

この時間はいつも不安になる、そう香介は感じていた。

レイシフト、そして特異点の修復。もうこれで四回目になるのに、未だ慣れない。

もし失敗したら。もし帰って来れなかったら。そんなことばかり頭に浮かぶ。心臓の鼓動がうるさく感じる。

それでも、彼は行く。

大切なものがある。守りたい人がいる。救いたい世界がある。叶えたい夢がある。

そして何より、彼は一人ではない。

仲間がいるから。だから、彼は恐怖を乗り越える。

目を閉じ、じっとその時を待つ。

 

そして、彼はまた、戦いへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 

 

 

「レイシフト完了......異常ありません」

 

無事に特異点に到着した。

空は特異点に存在する光の輪を除いて闇に覆われ、肌寒く、人の気配はしない。どうやら今は真夜中のようで、街灯以外に人工的な明かりは存在しない。

エミヤ、沖田は周辺の警戒を行い、マシュはロマンに状況を報告する。

 

『わかった。少しそこで待機してくれ。今周辺状況を確認するから』

 

そう言ってロマンは通信を切る。と同時に、遠くから爆音が響く。

エミヤと沖田はすぐに戻り、ロマンとの通信が再び繋がる。

 

『サーヴァントの反応が二つ、数百メートル先で戦闘中だ!どちらの反応もかなり大きいぞ!』

 

ロマンが焦った様子で言う。マシュは構え、沖田も刀を抜く。普段通りに見えるエミヤも、いつでも投影できるよう備えている。

 

「まず様子見だ。取り敢えずそっちに行ってみよう」

 

香介はそう指示を出す。エミヤ、沖田はすぐに動き、マシュは香介を抱え、現場へと向かった。

 

 

 

 

 

公園で、二人のサーヴァントが戦闘を行なっている。

黒く日に焼けた肌の丸々としたサーヴァントが掌から矢のような形をした魔力弾を打ち出す。その威力は凄まじく、何発か相手から逸れて地面を抉り、石像を粉々にしてしまっている。

対する金髪痩躯の青年は器用に槍を操り、打ち出される魔力弾、その全てを躱し、受け流し、防いでいる。しかもその全てを、公園内のものに当たらないよう計算して躱しているようだ。

両者の実力はほぼ互角。故にお互いに未だ傷はなく、それどころか笑う余裕すらある。

彼らの他に人の姿はない。

 

『なんて戦いだ...今まで見たどの戦いよりも激しいんじゃないか?』

 

「それはどうでしょうか?どの特異点もこんな感じの戦いだったと思いますが...」

 

マシュとロマンは少し緊張感に欠けた会話をしている。

香介はその激しい戦闘を見て少し怯むが、すぐに立て直し指示を出す。あのままでは話も聞けない上に、ここら一帯が更地と化してしまう。だからこそ戦いを止めるために香介は動いた。

指示を受け、エミヤは少し離れた建物の屋根に移動した。

 

近くにあった4階建てのビルの屋上。エミヤは黒い弓となんの変哲も無いただの直剣を投影した。宝具ですらない剣ではあるが、彼らの戦闘を止めるには十分だと、そうエミヤは判断した。

息を吐き、弓を構える。狙いは彼らの戦場の中心。

もはや彼に戦闘音は聞こえていない。彼の意識にあるのは、戦場の中心という的のみ。

そして、今まさに矢が放たれようとした瞬間、

 

ーーー恐ろしい数の銃弾が、上からエミヤへと殺到した。

 

「っ...!」

 

ギリギリで反応し、最も使い慣れた双剣を投影し、弾丸を防ぐ。

全て凌いだところで、爆音が響いていた戦場を見る。

そこには先ほどまではいなかった、山高帽を被った男が立っていた。

 

 

 

 

 

時間は少し遡り、銃弾がエミヤへと放たれる前。

香介、マシュ、沖田は物陰に隠れ、エミヤが動くのを待っていた。

マシュは香介に危害が及ばないよう盾を構え、沖田はいつでも刀を抜けるように柄に手を添えている。

香介は戦闘をじっと眺め、改めてその激しさに戦慄する。

これまでの特異点でもこのような戦闘は何度も見た。だが彼はその度に恐怖で足が竦むのだ。今も膝が震え、少しでも気を抜けばその場にへたり込んでしまいそうなほどだ。

彼は優しい人間である。

戦闘において誰かが死に消えていってしまうのは、たとえそれが敵であっても彼にとっては堪え難い苦痛なのだ。今も、喋ったこともないサーヴァント二人に対して、どちらも死なないようにこの作戦をとった。エミヤも苦笑してはいたが、結局止めることはなかった。

それは彼も香介のこの優しさ、甘さを美徳と考えていたからだった。

 

 

金髪のサーヴァントが黒い肌のサーヴァントへと一歩で接近する。

香介は金髪の男はランサーだとあたりをつけた。槍を持っているだけではランサーという根拠にかける。現に弓をほぼ使わないアーチャーもいるのだ。だが今のスピードは間違いなくトップクラス。速度に特化した英雄でもない限り、ランサー以外にありえない速さだった。

金髪の男はそのままの勢いで槍を突き出す。しかし黒い肌の男はその槍をギリギリで横に躱し、離れる時に魔力弾を放った。

そのまま当たるかと思われたが、そこは流石に一級の英霊。槍を突き出した崩れた体制からそのままの勢いで前に転がることで紙一重で回避する。

金髪の男が立ち上がり、黒い肌の男と目を合わせる。

お互いに、ニヤリと笑った。

 

そこで、香介は肩を叩かれたことで戦闘から意識を逸らした。

振り向くとそこにいたのは黒いスーツに身を包んだ怪しい男。

マシュと沖田もその男に気づき、それぞれの武器を向ける。

しかし男は怯んだ様子もなく、口に人差し指を当て、【喋るな】というジェスチャーをする。

そしてその後戦場の方を指差す。

香介が目を離している間に、戦局は大きく変化していた。

 

 

 

 

二人のサーヴァントに睨まれる、先ほどまでいなかった山高帽の男。

左手で帽子を押さえ、右手にはリボルバー式の拳銃を持っている。

 

「誰です?貴方。邪魔をしないでもらえますかな?」

 

黒い肌の男が口を開いた。

 

「おいおい、人聞きの悪いことを言わないでくれ。私は邪魔などしていないさ。ただただお前等の戦いを見て、近くで見たくなった観客だよ」

 

山高帽の男は両手を広げ、芝居掛かった動きでそう返した。顔はこちらからは見えないが、声色からして笑っているのだろう。それも純粋な笑顔ではなく、人を馬鹿にしたような笑みを。

金髪の青年も、無言でその男を睨みつけている。

 

『なんだ!?もう一つサーヴァント反応が増えたぞ!?香介くん、一体何が起きてるんだい!?』

 

「Dr.ロマン、もうちょっと静かにお願いします」

 

突然の異常事態にロマンが騒ぎ、マシュが冷静に諌める。

依然としてどこか緊張感に欠ける会話ではあるが、マシュはしっかりと目の前の男を警戒していた。沖田も刀に手をかけている。

スーツの男が口を開く。

 

「今の内だ、ついてこい。話がしたい。あそこの弓兵も連れてな」

 

小声でそういって男は近くのビルの屋上を見遣り、すぐに背を向けてさっさと歩いていく。

 

「......どうしましょう...」

 

「マスター、指示を」

 

『どうするんだい香介くん。彼、かなり怪しいけど」

 

全員が香介に指示を求める。マシュは戸惑ったように、沖田は冷静に。ロマンは少し焦ったような声を出した。

 

「......ついていこう。確かに怪しいけど、今は少しでも情報が欲しい。それにもし協力ができるなら、それに越したことはないと思う」

 

そう言って香介は、エミヤに念話で状況を伝え、男についていった。

 

 

 

 

 

 

公園を抜け、市街地。

あの戦場からさほど離れてはいないものの、戦闘音は聞こえない。あのサーヴァントが水を差したからだろうか。

 

「......あの、少しいいですか?」

 

「なんだ。質問なら簡単に頼む。あまり時間をかけたくない」

 

マシュが男に話しかけ、男が振り返りもせずそれに応える。

 

「一体どこに向かっているんですか?先ほどから無言でしたが、教えていただけますか?」

 

マシュの声は純粋に疑問の声だった。それも当然だろう。歩いて10分前後、その間無言で歩き続けたのだ。はっきり言って怪しい。そう香介は思った。

今も沖田はいつでも刀を抜けるよう警戒しているし、今は霊体化しているエミヤも、なにか動きがあればすぐに実体化し男を斬るだろう。

 

「だから言っただろう。話している時間などなかった。すぐにあそこから離脱する必要があったからな」

 

しかしそんな空気に気づいていないのか気づいていて無視しているのか、男はそうのたまう。

男の言は続く。

 

「だがもう問題ない。ーーついたぞ。ここが目的地だ」

 

そう言って男が指を指したのは、どこにでもある一軒家だった。

 

「ここが私の拠点だ。ようこそ、異邦のマスター」

 

男は振り向きニヤリと笑い、そう言った。

 

 

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