こちらパガン島鎮守府、本日は晴天なり   作:荒城乃月

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大型を卒業し艦娘コンプも終って装備改修しつつ備蓄開始
噴式のコスパの悪さはいつ修正されますか……?


Engage
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 過程は大幅に端折るが、とりあえず一週間が経った。

 主なトピックスは『近接信管の量産化に成功』『トラクター完成』『オーストラリア監視体制構築完了』である。

 

 まず一つ目。妖精でも作れるようにかなりマジになって技術のモンキーモデル化を頑張ったヒュウガの働きによって、砲弾の信管を近接信管へ交換できる事になった。これによって艦隊の対空性能は大幅に増強された……と思われるのだが、当然実体を持たない仮想ターゲットに撃っても信管は作動しない。本来なら試し撃ち用の型落ち飛行機だのを用意するのだが、現状ではそれを用意する資材も惜しいので、地上での試射しか出来ていない状態だ。当然テストは問題無かったので、今のところは仮想データ上で試射から得たデータを再現する事で訓練の精度を高めるようにしている。

 

 なお、実戦は未だに経験していない。近接信管以外にも色々な事でヒュウガの手が取られまくって、優先順位の低い『初戦に丁度いい手頃な深海棲艦のはぐれ艦隊を探す』所まで手が回らなかった事が主な原因だ。

 

 次に二つ目。中規模の農家さんがよく使ってるような、小型のトラクターが完成した。これで施設の傍の一角をガーッと耕した後に、ついでだからと妖精が作っていた石取りふるいドーザー(トラクターの前部に接続して土を石ごと掬い、高振動するザルの部分で石のみを漉し取るブルドーザーのドーザー部みたいな妖精オリジナルのアタッチメント)で火山弾のような大石を取り除き、後は人力で畝を作れば簡単な畑の完成である。

 

 植えたのはサツマイモとトウモロコシ。他にも島の気候で育ちそうな野菜はあるが、種を入手できないのでいずれまた、と言った感じ。予想通り山雲は作業の間ご機嫌で、鼻歌を歌いながら鍬を振るっていた。

 

 ちなみにサツマイモは種芋から育てる場合、結構時間がかかるらしい。種芋を植えてから蔓が丁度いい長さに育つまで2ヶ月、蔓を切り取って植え直して芋が収穫できるまでに4ヶ月。対するトウモロコシは4ヶ月弱で育つが、植える数が少ないと受粉が難しく身のつき方が悪くなるので人工授粉が必要らしい。

 そこら辺の作業は全部山雲主導である。俺はサツマイモを蔓では無く種芋から育てると思っていた人間だ。いらん事は言わん方がいい。

 

 最後に三つ目。ヒュウガが量産したスパイロボットによって、オーストラリアの監視体制が整った。バッタくらいのサイズの集音・電波盗聴・撮影機能のついた小型スパイロボットを政府施設と言わず軍施設と言わずこっそりとバラ巻き、潜入させまくったのである。何せ虫サイズなので通気抗やら下水やらから容易に施設の中に入り、後は人目につかない場所で音やら電波やらを拾って情報収集。ディスプレイの出す電磁波を解析してディスプレイに表示されているものを再現する機能(いわゆるテンペスト)すらあるこいつに張り付かれては、機密もクソもあったもんじゃない。拾ったデータは量子通信でリアルタイムに施設のコンピューターに送られており、データの内容は自動的に精査されデータベース化されているため、物凄い勢いで情報が集まって来ている。

 

 データの細かい分析はもうしばらくかかるようだが、大体は終わったのでこれからヒュウガから発表がある。妖精も含めた全員が会議室に集合し、安物のスチール長机とパイプ椅子に微妙な顔をしながら彼女の準備の完了を待っていた。

 

 

 

「さて、準備が出来たし始めるわよ」

 

 プロジェクターの調整だの資料の確認だのをしていたヒュウガが言えば、部屋の照明が落ちて真っ暗になる。即座にプロジェクターが点灯し、真っ白な壁面にオーストラリアの地図が映し出された。

 

「まだ情報を集めだして3日目だけど、現状で分かってる事を説明するわ。質問は順次受け付けるから、気になったことがあったら手を上げるように」

 

 妖精や駆逐が「はーい!」と返事する。素直で結構。

 

「それじゃ、オーストラリアの制海権から行きましょうか」

 

 オーストラリアの地図のうち、ティモール海、アラフラ海、珊瑚海が真っ赤になった。

 

「この辺りは制海権を完全に失っていて、沿岸部は無人ね」

 

 つまり北部海域から東部海域は深海棲艦に制圧されているということだ。ダーウィン軍港、ケアンズ軍港という北部の軍港は徹底的に破壊され、完全に廃墟となっているという。

 

「それを取り戻すためにオーストラリアも艦娘を呼び出しているけど、面白いわよこれ。重巡、軽巡はオーストラリア所属の艦艇がモチーフだけど、駆逐は……」

 

 現在確認されているオーストラリア所属の艦娘リストが出てくる。総数435人、駆逐が大半で重巡も軽巡も数が物凄く少ない。

 リストに詳しく目を通せば、ヒュウガが面白いと言った意味が分かった。イギリスの駆逐が大半を占めてる。

 なんでこんな事になったのかと言うと、二次大戦当時オーストラリア海軍の主要な艦艇はイギリス製から供与された物のみだったからだ。造船技術の都合上、自国で軍艦を作れる国なんてものは二次大戦前後だと日米欧くらいのものだろう。特に海洋国家として技術の蓄積のあったイギリスは大英帝国時代の縁もあって世界あちこちから船の発注を受けていた。

 そして当時のオーストラリアは自国で軍艦を建造できる技術が無くイギリスに発注していた訳だが、イギリスは自国用として作った図面を流用して他国用を建造する事があった。イギリスどころかカナダに所属していた艦の名前まで混じってるとなると、その縁で呼び出せたという事なんだろう。

 

 なお、オーストラリアの所有する大型艦だが……空母はオーストラリアのシドニーとメルボルン、アメリカのレキシントンとホーネット。戦艦はイギリスのプリンス・オブ・ウェールズのみ、しかもそれぞれ一隻ずつである。

 

 予想を大幅に上回る戦力の少なさだ。こんだけ少ない、しかも駆逐主体の面子で広大なオーストラリアのシーレーンを守れってのは流石に無理が過ぎる。

 

「まず間違い無く、大型艦を呼び出せる私たちはあちらさんにとって喉から手が出るくらい欲しいはずよ」

「なら、第一段階はクリアだな」

 

 自分たちが高値で売れるなら、使い潰される可能性はまず無いだろう。使い潰したとして戦力を補充するアテが無ければ意味が無い……どころか、怒った深海棲艦が過剰に反撃して来て戦果以上に被害を受ける可能性すらあるのだから。

 

「次にオーストラリアの艦娘の扱いについてだけど、普通ね」

「普通って……」

 

 俺たちを代表して阿武隈が呟く。

 

「だって普通としか表現が出来ないのよ」

 

 プロジェクターが切り替わった。隠し撮りだと一発で分かるアングルで艦娘の写真が何枚も映し出されている。兵士に混じって走る艦娘やデスクで書類を作成しているらしき艦娘、射撃場で拳銃を撃つ艦娘に一般の食堂で兵士たちと一緒に食事する艦娘。

 

「ああ、普通ってそういう……」

 

 艦娘だからと特別扱いをしていない。女性兵みたいなものか?

 

「これならアタシたちが混ざってもストレス感じなくて済みそうだな」

 

 摩耶が気楽そうに言うが、ヒュウガは黙って首を横に振った。

 

「……なんかあんのか?」

「白豪主義って聞いたことあるかしら?」

 

 あーーー!! それがあったか!!

 

 思わず机に崩れ落ちる俺。南の方を主戦場にしていた山雲や白雪なんかが揃って顔をしかめた。

 

「提督、白豪主義って何ですか?」

 

 ピンと来てない艦の代表として阿武隈が尋ねる。それに対する回答は非常にシンプルだ。

 

「人種差別政策のことだ」

 

 阿武隈たちも顔をしかめた。

 

「もう少し詳しく説明すると白人至上主義に基づいた政策で、有色人種や少数民族を排除しようって事だ。今1960年だろ? まだ時代遅れの人種差別やってるのかよあの国……」

「霧のデータベースで確認したけど、記述があったわ。1971年まで続いたみたいね」

 

 うあー。マジか。これは想定してなかった。白人至上主義の所に俺たちが紛れようとしても上手く行く筈が無いわな。何せ二次大戦中、アメリカの黒人部隊の上陸を拒んだこともあるという筋金入りだ。最初の接触の段階で物凄い反発があるのが容易に予想できた。

 

「それが判明した瞬間から、ニュージーランドを監視する方針に転換してみたわ」

 

 …………ほほう。

 

「提督の許可無く勝手にやっていいのか?」

 

 ちょっと険しい顔をして若葉が言う。摩耶や黒潮なんかも顔が険しい。

 

「独断なのは認めるわ。あなたはどう思うのかしら?」

 

 集めたオーストラリアのデータを無駄にしないなら、隣国のニュージーランドが一番だろう。二次大戦はオーストラリア・ニュージーランド連合として参戦しているから呼び出せる艦娘はオーストラリアと同じだろうし。後は政策・国民感情として有色人種に差別意識が無ければ、接触する国はニュージーランドでいいな。

 

 加えて、これはいずれ現場がその場で決めなけりゃいけない事態に陥ったときにどうすればいいのか、という指針を示す機会でもあるのか。それを見越して独断したのか、ヒュウガ。ならば応えねばなるまい。

 

「……大幅に方針を転換する可能性すらあるような事があったなら、独断は止めて、どんな時間だろうともまず報告してくれ。それとニュージーランドの監視を開始した事については、白豪主義の話を聞いたら俺もそうしていただろうから不問にする。

 なお、今後俺に報告する時間すら無いという緊急事態に遭遇したら、遠慮なく現場で判断してくれ。ただし落ち着いたら事態の経緯も含めて詳細を連絡するようにな」

 

 はーい、と艦娘妖精が揃って返事をした。

 

「ちなみに今まで集まったニュージーランドのデータはどんなもんだ?」

 

 プロジェクターの表示がニュージーランドの地図に切り替わる。

 

「オーストラリアと協力してタスマン海に出没する深海棲艦は撃退しているから、全島が無事ね。ただ、撃退が限界で攻勢に出れる気配は一切無いわ。艦娘はオーストラリアよりさらに貧弱で、総数は210人。艦種は重巡までしかいないわね」

 

 こっちも俺たちを高く売りつけれる訳か。

 

「近海に出没する深海棲艦は駆逐や軽巡が主体で、たまに重巡や軽空母と言った所ね。航空戦力が無いから、敵に軽空母がいると毎回大きな被害を受けているみたいよ」

 

 摩耶が難しい顔をした。

 

「つまり戦艦を主体とする打撃部隊や空母機動艦隊が来たら、あっという間にやられるような状態か?」

「そうなるわね」

 

 肩をすくめるヒュウガ。

 

 これが東南アジアやミクロネシアのように島が多ければ、島影に隠れた駆逐や魚雷艇が闇に紛れて戦艦に接近して必中の魚雷を撃てたかも知れないが、ニュージーランドの北に島なんて二島しか無い。よって敵部隊と真っ向勝負をする必要があるが、重巡が最大の艦隊しか所持してないとなると戦艦や空母を主体とする部隊をぶつけられると壊滅する恐れすらあった。

 

「まあ、それは今の俺たちも同じと言えば同じなんだが……戦艦建造するか?」

「資材は大丈夫か? 戦艦は大食いだぞ? アタシたち重巡の倍くらい食うぞ?」

 

 うーむ、と唸る。見せ札として作るのも視野に入れるべきか? リスクを説いた上で、こちらにリスクを排除できる力がある、と見せなければ、プレゼンにはならない。空手形なんて交渉の世界では札にならん。

 

 妖精の話から戦艦が建造できるのは確かだが、確実に戦艦になる訳でも無し。下手をすると戦艦が出ないままに貴重な資材が食い潰される可能性すらある。

 

『提督、提督』『深海棲艦の普通の戦艦なら、重巡で対抗できるのです』『戦艦狙いで重巡が出ても無駄にはならない』

 

「ただし大戦力を持っていると警戒され過ぎる可能性もあるから、ほどほどにね」

 

 …………。こりゃ、いくら考えても正解は出ない類の悩みだな。結果論でしか語れない系だ。

 

「よし。今の所はだが、戦艦一隻建造で考えておく」

「即決してよろしかったのですか?」

 

 白雪が不思議そうに言う。

 

「即決という訳でもないぞ。ニュージーランドの情報が出揃うのを待っての建造だし。ま、いずれ戦力の増強はしなきゃいけないんだ。これも一つの契機と考えとこう」

 

 

 




>白豪政策
タグにアンチ・ヘイトがあるのは大体こいつのせい
歴史的事実だもんね、仕方ないね

山雲限定グラカワイイヤッター!
増設に機銃が載るようになった摩耶様が超絶強化されてワラタ
1.主 主 90mm★ 偵 機銃   主砲連撃+主副カットイン+対空カットイン(中)
2.主 90mm★ 探★ 偵 機銃  主副探カットイン+対空カットイン(強)
3.魚 魚 90mm★ 探★ 機銃  魚雷カットイン+対空カットイン(強)
4.90mm★x3 探★ 機銃    対空カットイン(強) 艦隊防空最強
5.司令部 90mmx2 探★ 機銃  対空カットイン(強) 連合艦隊第一旗艦
連合艦隊だと麻耶様二人体制も選択肢に入るのか……。
後、個別防空が低いのが悩みの種だった雷巡や綾波、ビスマルクに空母といった面々も強くなってる
年末に特大の爆弾を仕込んできた印象。次のイベは敵の噴式強襲ありそうだなぁ…



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