翌日、俺は簪と一緒に整備室に来ていた。約束したとおりに簪の専用機の製作を手伝うことになっている。ちなみに俺のISはダメージレベルとかそういう範囲では無くISコアは無事だが機体はほぼ融解し使い物にならない。現在は整備室で厳重に保管されているとの事。どういう状況か知るために許可を得て、見ることにした。しかし見てから言うのもなんだが酷いあり様だ。原型を留めていなかった
「これは酷い・・・よく無事だったね」
「無事と言えたら本当に良かったな。大惨事だったらしい」
「具体的にはどういう風?」
あの状態を言うのは気が引けるので言わないことにする。俺だって聞いて血の気が引いた。誰だってそうだろう、あんな事を経験すること自体がありえないことだ
「今はどうしようも無いのかな?」
「まぁ無理だろ。触ればある程度反応するだろうけどそれでもまともに使えないだろ」
今日は一旦置いておくとして本題は簪の専用機だ。やるべきことはやってしまおう
「それで進捗状況はどれくらいだ?」
「うーんと、だいたいは完成しつつあるよ。でも武装と稼働データがまだ」
てことは俺もISを使った方がいいんだろうか。だが専用機は無いから訓練機を借りなければならないのか
「まずは武装からでいい?」
「はいよ。何があるのかはやりながら聞くがいいか?」
「それでいい」
武装はマルチ・ロックオン・システムによる高性能誘導八連装ミサイル『山嵐』が6門、荷電粒子砲『春雷』が2門、対複合装甲用超振動薙刀<夢現>が1本という遠、中、近と万能な構成になっている。先日の見た鈴の武装に考えればインパクトこそ無いが非常にバランスが良いため相手にしたくない。武装に関しては簪の方が詳しいので指示を受けながら開発を進めていった。1番苦戦したのは『山嵐』のマルチ・ロックオン・システムだ。複雑なプログラムのせいで制作の進行が遅れてしまっているみたいだ
「どうしたらいいんだろ?」
「マルチ・ロックオンだったか?ちょっと見てもいいか」
「いいよ」
空間に投影されているプログラム画面を見てみるがあまり進んでいない様子。だがなぜだろう、どういう風に組めばいいのかが分かる。だがこの手の作業は不慣れの為、作業効率は悪い
「なぁ簪、どういう風にしたらいいか分かるか?」
「参考資料はあるし、そういうのは分かる。でも参考資料が理解しづらい」
「そっちも見ていいか?」
参考資料も見せてもらうが割かし適当に書かれている感が酷い。もしこれが企業から渡された物だとしたら手抜きとしか思えないほどだ。それほどに簪の専用機より一夏の専用機の方が重要なのだろう。大人としてこの対応は無いと思う
「少しやってみるぞ。完全とは言えないがだいたいは理解できた」
「ならお願いする。私は他のをやってるから」
資料を参考にプログラミングするとしよう。すぐに終わるとは思えないが、次のイベントである学年別トーナメント戦には参加できるだろう。正直、俺としては参加したくない。機体が損傷も酷いというのもあるが何よりも使ったことの無い訓練機で出るのはことになるのだろう。正直1か月あるかどうかで使えるようになるのは厳しい。現に1年だけでも専用機持ちは現状4人もいる。あいつらを相手取るのは流石に厳しい
「・・み?七実!」
「あ、な、なんだ?」
「いや・・・手が止まってたから。昨日の今日でまだ本調子じゃない?」
「考え事をしてただけだから何の問題も無い」
簪は心配そうになって俺に近づいてくる。本当にただ考え事をしていただけだ。特段調子が悪いわけでもない
「本当に?」
「本当だ。調子が悪いんだったら最初っから言ってる」
「そう・・・でも本当に具合悪くなったら言って。またこの前みたいじゃなくても倒れちゃったら・・・嫌だ」
本当に心配してくれているんだろう。どうしてそこまで思うのか、幼馴染だからか?俺にはさっぱり分からないがありがたい
「その、なんだ。心配してくれてありがとな」
「ふふ、もっと頼ってくれていいんだよ?」
慣れないことしたものだから少し照れくさい。どうしてこんな風になっているんだろう。それになんとも言えないこの胸の高鳴りは何だろう。何も分からない
「七実?本当に大丈夫?胸なんか押さえちゃって」
「大丈夫だ。何も、何も問題無い」
とにかく気持ちを切り替えプログラミングを再開する。本当にどうしてしまったんだろうか、体調にも本当に問題ないはずだが異様に鼓動が早い。いったい何なんだろうなこれ
簪サイド
時々七実の様子を伺いながら<打鉄弐式>の武装を点検や最終調整を行ってるけど、少し様子がおかしい。顔色は悪くないけど、時たま胸を押さえたりこちらを見てくる。昨日の今日でまだ体調が優れないのかな?今日は早めに上がってまた今度手伝ってもらうようにしようかな
「ふぅ・・・七実、一旦休憩にしない?」
「俺はいい。後で適当に休憩を入れる」
真剣にマルチ・ロックオン・システムの開発を参考資料を元に行っているがそれでもまだ終わる気配は無い。そろそろお昼時だから1度休憩を挟んだ方がいい
「そろそろお昼だし、ね」
「ならもう少しだけ待ってくれ。半端なところで終わらせるのもなんかあれだし」
「じゃあ待ってる」
私の方は後1時間程もあれば終わるが七実の方はまだ終わりそうに無い。でも少しずつ進めているのがわかる。こういうのが得意なのだろうか?私は七実が区切りよく終わるのを待つこと20分、無事終了したようで作業を一旦終了させた
「一応終わったぞ。まだ完成には程遠いが」
「手伝ってくれるだけでも嬉しい。ありがとう」
「お、おう」
「それじゃあお昼にしよっか。適当に売店でもいい?」
「食堂以外だったらどこでも構わん。丁度いい時間帯だろうしな」
私達は購買に向かい弁当を買って外に出た。適当なベンチで食べることにした
「「いただきます」」
お弁当を食べ始めるけど七実はどこか上の空。また何かを考えているようだ。何かを食べている時ぐらい考え事をしなくてもいいんじゃないかな?
「また考え事?」
「考え事というよりも脳内でどうプログラムを組むか考えているだけだ」
その思考は社畜の考え方だよ。一旦忘れることを推奨する
「今は忘れよ?」
「こうでもしないと今日中に終わりそうになくてな」
あれを今日中に終わらせようとしてたの!?そんな無茶しなくていいんだよ?
「もしそこまでいかなくともどういう風に完成するかとかな」
「そ、そうなんだ・・・でも今は一旦忘れて」
「すまんが無理だ。なるべく脳内に残しておきたい」
本当にどうしよう・・・思考がもう大変なことになってるよ。頼ったのが間違いだった?いやでも七実の好意を無下にするわけにもいかないしどうしたらよかった?私がプログラムの方をやった方がよかったかな
「まぁ今日終わらなくとも今週には目途は立ちそうだが」
「本当!?」
「予想だがな。初めてやったがこういった方が楽で楽しいもんだ」
「ふーん。なら2年では整備科の方に進むの?」
学年が1つ上がる時に学科分けがある。操縦科か整備科の2つだがお姉ちゃんは操縦科、虚さんは整備科。お姉ちゃんはロシア代表のIS操縦者ということもあり操縦科のエースで虚さんは整備だけではなくプログラミング技術など色々と優れていて整備科のエースとしてIS学園でも活躍している。私は今どうするか悩んでいるけど七実はどうなんだろう?
「知らん。だが操縦を専門にする方には行かないとは言っておく。体力の無い俺には厳しすぎる」
「あはは・・・七実らしいね」
ということは整備科に行くのだろう。本音もそのつもりだと聞いていたから多分また一緒のクラスになるんだろうな。羨ましい
「そういう簪は決めてるのか?」
「いやまだどっちつかずって感じ。これでも日本代表候補生だし」
「こういうのはやりたいようにするのが一番だがな。俺は応援してるからな」
「ありがと」
そう言ってもらえると嬉しいかな。最近は七実も少し物腰柔らかくなってきている気がする。本当に少しずつ変わってきてるのかな。だと嬉しいな
「ごっそさん。先に戻ってやってるからな」
「え!?は、早い!」
七実はゴミ箱に空になった弁当を捨てて先に整備室に戻っていった。相変わらずこういうところは変わらないな。さてと、私も早く食べて終わらせないとね。私もお弁当を捨てて整備室に戻り作業を再開させた。今日は時間ギリギリまでやって私の方は完全に終わらせたんだけど七実の方は終わらなかった。というより残り半分まで終わらせていた。部屋に戻るなりPCで残りの作業を終わらせようとした時は本当に驚いた。七実には本当に整備科に入ることを薦めるよ。なんなら虚さんにも伝えようかとまで考えてしまうところだった
今回もお読みいただきありがとうございます
これで簪が次のイベントに参加することが確定的になりました(戦うかどうかはまた別ですが)