元奴隷がゆくIS奇譚   作:ark.knight

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現れるもう1人と本当

 

 

深淵とはなんだろうか。暗くて何も見えないし、寒くて身体が動かないという感じだろうか。俺が落ちた後、どうなったかは知らないが撃墜できたんだろう。というかしてもらわないと困る。あれだけ余裕に感じて話していたんだからやれたはずだ。そもそも俺が落ちたのだって無防備にしていたのが原因だ。今、俺の身体がどんな状況かなんて分からない。もしかしたら今こうして考えていることも死後の世界での話かもしれない

 

『そんなはずないじゃない。()はちゃんと生きてるし()もこうして生きてる。正確に言うのであればISの生命維持装置で何とかなってるって感じかな。出血量は多いし、海水が傷口に当たって凄く痛いし』

 

どこかで聞いたことのあるような無いような声が聞こえる。ただ瞼が重くて開かないので姿は見えない

 

「何言ってんだ?」

 

『現状の報告だよ。まぁ、痛みは本来共有されるけど今は肩代わりしてるって感じ。上には二次移行(セカンドシフト)した銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)もいるから救助も出せないし来れない。いやもう来てるだったか』

 

少しずつぼんやりとしてくる思考はただ言葉として受け止めてはいるものの内容までは完全に把握してくれなかった

 

「そうか」

 

『素っ気ないね。あぁ、そういうことか。意識はあるけどぼんやりしてるんだったね。()の身体を少し借りてやらなきゃいけない事をやらせてもらうとして・・・ねぇ()、君はこれからどうしていきたいんだい?一夏や円華、千冬姉さんとの関係もそうだし簪や本音に刀奈、更にはシャルロットからの好意。わかってるんでしょ?』

 

「あー・・・悪い。何言ってんのか聞こえなくなってきたわ」

 

『あらら、仕方ないね。積もり積もるストレスはどうしようも無かったし、福音も外部からの影響でどうしようも無かった。()がどうして庇ったのかは詮索はしないけど、あれは自業自得と言えるんじゃないかな?あんなところで話している方が悪いっての。()と違って()って生易しいんだから。一度分からせてやった方が身のため・・・って、この話も碌に聞こえちゃいないんだっけか?』

 

俺には何をしゃべってるのかは分からない。ノイズや雑音にしか聞こえない

 

『仕方ないね、少し疲れたろう?だったら眠るといいよ』

 

なぜだろう、急に眠気が襲ってきた。寒いところで寝ると死ぬって言うがまさにそんな感じなんだろう。このまま死んでいくのか。あいつらに礼の1つもしてやれないまま

 

『その間、身体を借りるけどさ』

 

不吉な言葉は聞こえず、そのまま何もかもが沈んでいく錯覚にさせられやがて、何も聞こえなくなり感じなくなった

 

『でもその前にやることがあるね。さてちょっかいでも掛けに行きますか』

 

 

 

一夏サイド

 

俺は銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と戦っていたはずなのにいつの間にか水平線上がはっきりと見えるビーチのようなところに立っていた。どことなく足を進めると白い髪で白いワンピースを着ている少女が歪なソファに座っていた

 

「えっと・・・君、ここがどこだかわかる?」

 

「ここはISの深層世界、ISの操縦者が来るべき時に問答をしてその人を試す場所」

 

「試すって・・・何を試すんだよ?」

 

「力を欲しますか?」

 

試すっていうから何かと戦うのかと思ったけどそう言うことじゃないのか。いや、問答って言ってたしそういうのは無いか

 

「んー・・・難しいことを聞くなぁ。でも友達を、いや仲間を守る為かな」

 

「仲間を・・・」

 

「世の中って結構色々戦わなきゃいけないだろ?単純な腕力だけじゃなくて、色んなことでさ。そう言う時に、ほら、不条理なことってあるだろ。道理の無い暴力って結構多いぜ。そういうのから、できるだけ仲間を助けたいと思う。この世界で一緒に戦う、仲間を」

 

『織斑一夏、君が一番言っちゃあいけない台詞ナンバーワンのものが聞けて片腹痛いよ!』

 

俺の後方から聞いたことのある声が聞こえてくる。七実の声だ。あの時、俺と箒を庇って堕ちたあいつの声だ。ただ少し違和感を感じる。柔らかく暖かいそんな声だった。俺は後ろを振り返るとそこには大きな布を適当に服にしたようなものを着ていた

 

「どういう意味だよ!」

 

『意味も何も無く、純然たる事実だよ?不条理?道理の無い暴力?それは君がしてきたことなんじゃないかな。()には関係ない話だけど()に対して殴ったくせにシャルロットちゃんに何もしなかったり、戦っている最中に箒ちゃんと呑気に話したりして・・・どうして()が庇ったのか分からないよ』

 

「分からないって・・・お前こそ何も感じなかったのかよ!?」

 

『あくまで()の話であって()の話じゃないからね?そこだけは取り違えないように』

 

さっきから七実の一人称が異様なまでに崩壊している。俺が知っているのだと俺で統一してたはずだが前にも似たような事があったな。その時も今みたいに一人称が崩れていた

 

『それにしたって君が尋常じゃない程に馬鹿だってことは思ったよ。いつもいつも迷惑を掛けられるわ、殴られるわでもうやってられないよ。口は達者だけどそれだけ。結局は何もしないんだよ』

 

「俺はシャルロットの傍にいてちゃんと守ってた!それに七実だって同じだろ!」

 

そう、七実はシャルロットの一件では何もしてなかった。それこそ七実も言えた義理じゃない

 

『なーんにも知らないんだ。上辺だけで上っ面で心も満たない言葉は()には通用しない。ちゃんと知った上で言わないと全部意味が無いよ?今の君は何も知らない赤子のようなものだよ。いや、なまじ知識がある分、赤子じゃないか・・・阿呆と言えばいいかな?』

 

「いい加減にしろよ七実、今はこんなことしてる場合じゃないって分かってるだろっ!」

 

『そりゃ分かっててやってるよ。でもね、これは言っておかなきゃいけないんだ。()が撃墜されて()()()()()()()現状を作り出したのは織斑一夏と篠ノ之箒なんだよ?』

 

「なんで俺たちなんだよ!?銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)がやったことだろ!」

 

『それもあるさ。でも撃墜される原因を作ったのは君達2人なんだよ。この言葉の意味と重さをちゃんと理解した上で()と正面でぶつかることを推奨するよ。んじゃ、()は帰ることにするよ。じゃあね一夏君に()()()()

 

そういうと七実の身体は塵となって消えていった。本当に何がしたくてここに来たんだろうか。まだ銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を倒し切っていないというのに、いったい何がしたかったんだ?

 

 

 

簪サイド

 

銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と戦い始めて、既にどれくらいの時間が経っただろう。包囲してありったけの弾薬や砲撃、特殊兵装をつぎ込んでいるが一向に撃墜できる見込みが立たない。二次移行(セカンドシフト)する前の状態でどうして苦戦したのかがようやくわかった。こんなの相手にたった3人で相手にするなんて無謀すぎる

 

「これだけやってまだなの!?」

 

「もう少しだけ持ちこたえてくださいまし!こっちも大変ですのよ!」

 

いくら攻撃を与えようともSEは削れているが機動力は落ちることなく光の弾丸を撒き散らしている

 

「いくらなんでも速過ぎる!私が殿を務めるから、みんなは一旦撤退しろ!」

 

『その必要は無いよ、むしろこのまま包囲して攻撃してくれてるとありがたいな。Mirror is all Main(鏡は全て私の物)

 

一般開放回線(オープン・チャネル)で誰かが機械音声で告げてきた。次の瞬間、水中からISが現れたが何かおかしい。全身装甲(フルスキン)なのはまだいい。それ以外が問題だ。装甲が所々壊れていて、有線のシールドビットが幾つか破壊されているが4つ付いている。機体はボディが赤く、腕部は黒く、手には剣が1本、ウイングスラスターは翼状で銀色。どれも1度は見たことあるようなもので出来ている合成獣(キメラ)みたいなISだ。海上から浮上際に一閃、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)のウイングスラスターの片方を破壊した

 

「ここに来て新たな敵か!」

 

『あらら、警戒されちゃったか。でも今はそんなことに興味無くてね、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)をちゃっちゃと倒したいんだ。手伝ってくれないかな』

 

「もしかして・・・七実?」

 

『うん、そうだよ。()()()の為に倒しておかないとね。時間的には約1時間でね!』

 

七実のISは全身装甲(フルスキン)じゃないし、今まで色々と見てきたけどこんな状態のISになっているのは初めて見た。それにしても話し方といい、雰囲気や声が柔らかいような気がするのはなんでだろう?

 

「相棒!生きていたんだな!」

 

『あはは、ごめんねラウラちゃん。さて話は後にして、銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を倒すことにしようかっと、やっぱり会話しながら戦うってのは大変なんだね。()じゃ到底考えられない行動だよ。()は正面から真っ当に戦うから支援よろしくね』

 

そういって七実は銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)へ突撃していく。そうやっていつも七実は無理するんだから。こうなったらやれるだけのことをやろう。私は背中に搭載された連射型荷電粒子砲『春雷』で逃走範囲を削っていく。ラウラも私の行動を見て、みんなに指示を出していた

 

『斬りかかった後に聞くけど、降伏してくれないかな?』

 

『La-』

 

『今は無駄だったね。んじゃ鏡の本質を見せてあげるよ。()は生易しいけど()はそうじゃないからね。()()()()()()()()なんてことは無いのは知ってるからさ、そこはちゃんとやるさ』

 

七実はラウラが予想していたことを知っていた。なんで知っていたのかは後で聞こう。七実のISのウイングスラスターから銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と同じように光の弾丸が射出し、次第に七実が持つ剣に光が集まってくる

 

『逃げ場を無くされちゃたまったもんじゃないよね、零落白夜発動』

 

「あれは一夏の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)!?」

 

みんなによる攻撃のせいで逃げ場が無くなってしまった銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)は、七実に光の弾丸を集中させて仕留めようとしていた

 

『一度見てしまったものは効かないよ。あらよっと!』

 

「La!?」

 

光の弾丸を見事に躱し、逆に光の弾丸を当て、また一閃、二閃と入れていた。センサーで分かるように銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)のSEが尽きかけていた。なんで鈴が一夏を作戦に入れたのがわかるけど、私はあの行動は許しはしない。そのせいで七実が撃墜される原因になったから

 

「La!」

 

『だから効かないんだってば、バッシュからのとどめっ!』

 

もう片方のウイングスラスターを破壊して顔面に剣の柄で殴ってちょうどSEが0となる。最後の攻撃が柄ってどうなの?銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)が量子化すると中から人が現れ、そのまま七実が受け止めた

 

『これにて銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)、撃墜ってね!』

 

「これで倒したのよね?」

 

『無事、撃墜完了ってね。一夏君を捜索するもよしこのまま帰るもよし。()はこの人の事もあるからもう帰るけどみんなはどうするんだい?』

 

「あたしは一夏を捜索するわ。円華もそうするんでしょ?」

 

「うん、私もそうするよ。セシリアは?」

 

「わたくしも捜索いたしますわ。シャルロットさんはどうなさいますの?」

 

「僕は帰るよ。七実にも言いたいことがあるし、一足先に怒られることにするよ」

 

すっかり忘れてたけど無断で出撃してたんだった。嫌になるなぁ

 

「教官に怒られるのはいつぶりだろうか」

 

()は織斑先生よりも山田先生に言われるだろうね。あの人に()()()は頭が上がらないんだよね。それじゃあお先に』

 

七実は俵のように女性を担ぎ、ゆっくりと旅館へと向かっていく。それを追いかけるように私とシャルロット、ラウラも七実に続いていった

 

『そういえばこの状態で話すのはラウラちゃん以外は初めてだったね』

 

「七実の話し方、変」

 

「まさかと思うが()()()()()()なのか?」

 

『大正解!簪ちゃんやシャルロットちゃんには分からないと思うけど、簡単に説明しとくよ。陰陽みたいな関係だよ。基本的には()にできることは()にはできない。一部例外を除くけどだいたい逆も然りって感じだね。声なんかもそうでしょ?』

 

全くもって違うけど、これも七実の一面ということらしい。二重人格?

 

「うんいつもと違うね。僕も今の七実は知らないよ」

 

『知ってるとしたら1組の生徒に教師陣かな。大半は忘れちゃってると思うけど、具体的な話だとセシリアちゃんとのいざこざの時かな。鈴ちゃんは知ってるか分からないけど2人は知らなくて当然だね。全くあれも面倒な事を任されたものだよ。()は根っからの引きこもりなんだけどね!』

 

「そこは誇っちゃいけないと思うよ!?」

 

ツッコむところはそこじゃないように思う。自称引きこもりを自負している七実の別人格が出る羽目になったのか。それほどの何かを抱えてしまったの?

 

『そういえば誰でもいいんだけどさ、この人担いで貰えないかな?』

 

「なぜだ?別に相棒が運べばいいではないか?」

 

『えっとね、装甲が壊れてたりしてて不安定だったりするからというのと、全身の感覚が無くなってきてるからうっかり落としかねないんだよ』

 

そんな状態で出てきて銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と戦っていたんだ。七実は無茶し過ぎ。納得したようでラウラは七実から褐色の女性を受け取った

 

「肩貸す・・・シャルロットも」

 

「うん、分かったよ」

 

『あはは、ありがとね3人とも。もう少しで到着するけど迅速な救護をしてもらわなきゃね。そもそもの話虚偽報告が無ければ()が出ることなく無事完封できたはずなんだけど、これに至ってはしょうがないの一言で終わるなぁ。よし、賠償金の請求をしよう』

 

「思いっきりやるといいよ・・・下手したら死んでたかもしれないし」

 

この場合、相手はアメリカとイスラエルのどっちになるんだろうか。それでも勝てる見込みはあると思う。こんな会話をしていると旅館付近の岩場に到着した。そこには織斑先生と山田先生、それと担架やら医療器具を持った人が何人かが待ち構えていた。七実を除いた私達はISを量子化させ横に整列した

 

「よく戻ったと言いたいところだが勝手に出撃するとはな」

 

『それよりも先にこの人と()を助けてやっては貰えませんかね?こっちの人も暴走してた福音に乗ってたわけですし、こっちだって死にかけたんですからいいですよね』

 

「・・・わかった。鏡野はISを量子化させて担架上に乗ってくれ。ラウラはその女性も乗せてやってくれ」

 

ラウラは指示通りに女性を担架に乗せるが、七実はISを解除することなくその場で膝をついていた

 

「どうしたの七実?」

 

『あまり見て欲しくないんだけど仕方ないか。かなり痛いのを我慢してるんだよね』

 

七実がISを量子化すると辺り一面に生暖かい赤黒い液体が流れ出した。私やシャルロットの顔にもかかってしまった。七実はその液体の中に倒れる。所々焼け爛れていたり骨が折れていたりしていた

 

「七実!?」

 

揺さぶりかけても反応は返ってこない。脈を測ろうともとても弱い

 

「先生!七実が!」

 

「ああ、分かっている。山田先生は七実についていってくれ。何が何でも鏡野の救助を最優先で行ってくれ」

 

「分かりました!」

 

先生たちは七実を担架の上に乗せて旅館の方に走っていった。七実が銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)と戦っている時に言ってた1時間という意味が分かった。なんで自分の死ぬタイムリミットが分かっていたんだろうか

 

「安心しろ更識、もう鏡野は助かったも同然だ」

 

「私も七実のところに行ってもいいですか!」

 

「後でな。今は貴様らを説教だ。残りのやつらにも同様でやるつもりだ。覚悟しろよ?」

 

鬼のような表情(とてもいい顔)で拳を作り骨を鳴らしていた。いったい私達はどんな目に遭うの!?

 

「だが、よく銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)を倒した。よくやったな」

 

「実際、相棒が来なければジリ貧でした。でもSEなどではこちらの総量の方が多いため勝てる見込みはありました」

 

「だね、僕ももうあの手の相手はごめんだよ」

 

「とりあえず指令室に行ってろ。私はここで残りの奴らを待っている」

 

私達はこの場から離れ、指令室へと向かっていった。これで本当に終わりなのかな?

 

 




今回もお読みいただきありがとうございます

次回で臨海学校編は終了となります。それに伴い、一旦リクエストを終了するつもりです

1人1つとか言っていないので誰でも複数いいですよ?(採用できるかどうかは分かりませんが)

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