俺はまたしても
『は~い七実君今日こそは起きてるかしら?』
「なんだ楯無、今日は起きてるぞ」
通信越しで聞こえてきたのは楯無の声だった。今の時刻は日曜の17時、既に夕方の時刻だ。こんな時刻にどうしたんだろうか?
『昨日は起きてなかったからね。怪我の方はどうかしら?』
楯無に言われて思い出し確認してみるが右腕に包帯が巻かれていた。一夏と箒を庇った時にでも折れたんだろうか。それ以外に特に外傷という外傷は見当たらない
「骨でも折れてんのか?」
『そうみたいよ。でも、その骨折も終業式が終わる頃には治ってるわよ。それはさておき、これでそこから出せるわね。ちょっと待ってて』
こちらからは姿は見えないが声は聞こえなくなった。少しすると
「お久しぶり七実君、だいたい1週間ぶりかしら?」
「そうだな。腕の骨は折れてるが痛みもそういう感覚も無い」
「そこは医療用ナノマシン様様ね。というよりも、また無茶したそうじゃない」
そう言われると痛いな。でもあんな状況になるなんて思わなくてな。情報を過信し過ぎたのが原因でああなってしまったんだからな。いや、あの時は本当にふざけるなと言いたかった
「悪いな。だが、文句を言うべきは俺じゃないんじゃないのか?」
「それもそうね。それも含めて少し話があるから学園長室に行くわよ」
「はいよ」
この部屋を出ようとすると左腕に楯無が抱き着いてくる。この部屋は涼しいのだが外はまだ暑いだろう。そんな中で抱き着かれようものなら突き放す・・・つもりだが、今回は俺が心配をかけたからこのままにしておこう
「さっさと行ってゆっくりするか」
「・・・あれ?いつもだったら振りほどこうとするのに・・・熱でもあるの?」
俺の額に手を当てる楯無だがさっきまで
「振りほどいていいんだったら振りほどくぞ?」
「ううん、このままでお願いね。それじゃあ行きましょ」
この部屋から出て、学園長室へと向かった。曜日と時間も相まって人気は無く、俺たちの足音以外は何も聞こえてこなかった。簪達と過ごす時間も悪くないがずっととは言わないが、たまにはこういう時間が欲しいと思う。5分ぐらい歩いただろうか、学園長室の前に到着した
「ちょっと待っててね。先に来たことを伝えに行ってくるから、後で入ってきて」
「あいよ」
楯無は先に学園長室へと入っていった。残された俺は窓から外を眺めるとまだちらほらと部活動をしている生徒やら寮に向かっている生徒の姿が見える。何かに対して目標を持って活動してるのは凄いことだな、とは思うが俺には到底できるとは思わない。いや、しようとは思わない。俺だったらゲームだとかアニメを見ていたり本を読んでいたりしていた方が有益に思える
「七実君、入ってらっしゃい」
「ん、もういいのか」
楯無の招きで学園長室に入るとやはりそれ相応の部屋と言うべきか。多くのものは置いてはいないが1つ1つが高価そうなソファやらテーブルと多かった。目の前の机に肘をついて待っていたのは轡木学園長だった
「お待ちしてましたよ。ささ、ソファにでも座ってください」
「分かりました」
適当な場所に座るとその隣に楯無が座って右腕に抱き着いてくる。ここでもそうなんですか?
「おやおや、お2人はそういう関係でしたか」
「いや違うんで。それよりも話って何ですか?」
「そうでしたね。すみません、こんな老いぼれでもこう言う話は好きでして。それはともかく臨海学校ではお疲れ様でした」
「いろいろと言いたいことはあると思いますが、まずはこちらの話から。あのISと戦っている時、何か疑問に思いませんでしたか?」
「無人機という報告だったはずなのに本当は有人機だった。そのせいで本来の性能を出せず、撃墜してその後どうなったかは知りませんが死にかけたんじゃないですか?」
「・・・その通りです。アメリカ側から送られて来たのですが記載が間違っていました。鏡野さんのISの特性は知っていたのにこういう事態が起きてしまいました。申し訳ありませんでした」
学園長には一切関係ないはずだ。なのになんで謝るんだろうか?
「なんで学園長さんが謝るんですか?」
「依頼の受注をしたのはこちら側です。情報の真偽を確かめる猶予も無く遂行してもらうことになってしまいました」
「いや、だとしても虚偽報告をしてきた方が悪いじゃないですか。依頼の受注をしたのだって近隣の住民、はたまたこの国の防衛・・・これは言い過ぎか。まぁでも守る為にやったんですし、撃墜された理由だって一夏がチャンスを潰した上で箒と呑気に話してたのが原因なんです」
今更どうこう考えても変えようのない事実だ。そこは誰にだって揺るぎはしないだろう。あいつがどう思っていようが然るべき罰は下ってるといいんだが
「まぁ、俺が思ってることは虚偽報告のせいで死にかけたんでアメリカとイスラエルには訴えようかと思ってます」
「そうですか。ではその話についてはこちらでやっておきます。学生の身分で国が相手では分が悪いでしょうし、私に任せておいてください」
「あ、んじゃお願いします」
面倒事は極力したくは無いがこればかりはかまわないだろう。やってくれると言ったからにはちゃんとやってもらうことにしよう
「わかりました。思う存分やってくることにします。あとこの手紙を貴方宛てに預かっています」
学園長から一枚の手紙を渡される。書いたのはアメリカ在住のナターシャ・ファイルスという人物からの手紙だった
「誰ですか、ナターシャ・ファイルスってやつは?」
「
「そうですか。とりあえず後で見ることにします。んで、話ってこれで終わりですか?」
「はい、これで話は終わりです。こんな時にわざわざ呼んでしまってすみません。来週から始まるテスト、頑張ってください」
「うす」
俺と楯無は学園長室を出て、寮へ向かうことにした。臨海学校が終わってあいつらがどうなったかは知らんがあまり興味は無い。ただ普通の生活ができれば問題ない。ただそれだけを切に願っている。寮に到着し部屋へと向かう途中で今一番会いたくない人物と出会ってしまった。空気を読んだのか知らんが楯無は腕から離れてくれた
「・・・七実」
そう臨海学校において、一番やらかしてくれた奴が目の前にいる状況。面倒だしさっさと素通りさせてもらうことにする。だが素通りしようとしたが先回りされ立ちはだかる
「なんだよ。さっさと部屋に戻りたいんだけど」
「その・・・臨海学校の時は本当にごめん!」
平謝りをする一夏に対して俺が思うのはただ3つ。臨海学校だけか?、ごめんで済まされるようなことではない、この謝罪が本心かどうかも分からん、ということだ。臨海学校の時もそうだがシャルロットの時とかどうだ?ごめんで済んだら警察なんていらないなんて言うのはもっともだ。こっちは死にかけた身だぞ。ごめんで済まされる訳がない。最後に今まで関係を悪化させる原因を作っていたのに、今更という感じだ
「馬鹿じゃないのか?あれだけ自分勝手な行動取ってんのに許されるとでも思ってんのか?聞けば俺は死にかけたそうだな。原因は分かってんだろ?この腕もこの通りだ。情報が間違っていたとはいえ、お前がチャンスを逃してくれなきゃこうはならずに済んだかもな。俺はお前の事が許せるわけ無い。じゃあな」
俺は足早にこの場から離れた。後ろで一夏がどうなってるかは知らんが自業自得だ。部屋の前に到着し中に入るが本音を中心に取り囲み、簪とラウラ、シャルロットの3人が勉強をしていた。そら、この時期だからそうなってるわな
「また本音に教えてんのか?」
「あ~、ななみんだ~!」
簪やシャルロットが物凄い勢いで立ち上がり近づいてくる
「七実・・・生きてる?」
「勝手に殺すな」
「七実が無事で一安心だよ」
「骨は折れてたけどな」
「・・・この様子ではあの時の事も覚えていないか。相棒よ、事の顛末は聞いておくか?」
当事者と言っては分からんが知ってても損は無いだろう。一旦、席に着いて話を聞くことにした。本音や楯無は生徒会ということもあって内容は知っているみたいだ。結末としてはこうだ、簪やシャルロット、ラウラ、鈴、セシリアが支援で逃げ場を無くし俺が撃墜させた。な、何を言ってるか分からねぇが・・・なんて状況だ。俺の記憶では撃墜されたところで終わっている。なのに俺が撃墜したってことは力としての俺が出てきたんだろうか。戻ってきたら戻ってきたで機体はボロボロで死にかけていたとのこと。俺以外はみんな弩が付く程の説教された
「というわけだ」
「なんとなく理解した。みんな面倒な目に遭ったって解釈でいいんだな?」
「だいたい合ってる・・・でも群を抜いて大変だったのは先に出撃した3人」
「一夏は撃墜されて救出された後に説教に織斑先生との1対1での話し合い。箒は福音のせいでトラウマを抱えちゃった。七実は言うまでもないかな」
それぞれが自業自得という感じか。あまり俺も人の事は言えないだろうがそれでもやれるだけのことはやったはずだ。咎められるようなことはしていないはずだ
「全く七実君たらいつも心配させるんだから。今回の事は仕方ないにしろ、無茶だけはして欲しくないわ」
「すまんな。これからは無くしていくつもりだ」
「ななみん、本当に心配したんだよ?」
「本当に済まなかった」
「だからお願いくらい聞いてくれるよね~?」
「ああ・・・はぁ?」
シリアスな雰囲気だったはずなのに急に変な方向転換があったぞ?お願いを聞け?
「よし!みんな言質は取ったわよ!」
「ちょっと待て、本当にちょっと待て、いや、ちょっと待ってくださいお願いします。さっきまでのシリアスな雰囲気はどこに行った」
「それはそれだよ~。さ~あ、ななみん覚悟しな~」
「はぁ・・・これくらい仕方ない。困難な物を除き要望は聞くから、それで妥協してくれ」
甘くなったとかそれ以前だがこの程度はいいと思う。IS学園に入学してから今日まで何回心配をかけた事か。それを思うとこの程度は安いと思う
「とか言ってるがその前にテストだな。ある程度はもうまとめてあるし少し見直しておくか」
「ななみん~、私にも見せて~」
「・・・ほれ、できてるやつだけな。個人的に重要なところを抜粋して書いてあるから見やすいはずだ」
いつもは教室の机が個人用のPCにもなっているため、そっちに書き込んでいるが時間を見て暇であれば個人的に分かりやすくルーズリーフにまとめている。だから授業に関してはあまり気にしていない。むしろ自分勝手に進んでいる方だ。こっちの方がやりやすいし分かりやすい
「お~いつ見ても凄いね~」
「てか楯無はこんなとこで油売ってていいのか?」
「これでもちゃんとやってるわよ。だから今は休憩中。というよりも七実君、やっぱり本音ちゃんに甘いわよね?」
「休んだ時は大抵本音にノートとか見せて貰ってるからな。中学までだったら見せてないがこれくらいはいいだろ」
飴と鞭というわけじゃないが世話になったならこれくらいはする。赤点でも取った日に泣きつかれる前に手をうとうとなんて思っていない・・・本当は思ってます。居残りとかになると絶対せがまれるんだよ。普段はしないだけでしたらした分だけ点を取るんだから、普段からやってくれ
「とはいえ、本音がちゃんとやらなければ意味が無いからな。後は本音次第だ」
「頑張るよ~。お~!」
1人で張り切っているようで悪いが、本来は1人でやるべきことだ。俺ができることはここまでだ。俺は俺でやるか。しかしなんだ、今学期はいろんなことがあったな。一夏がISを起動させたことが原因で強制調査から始まって、セシリアとの一悶着、鈴との出会いと無人機で死にかける、そして相棒と呼べるラウラとシャルロットとの出会いとVTS事件、最後に臨海学校であった
「そういえば、さっき手紙を貰ってたわよね?それは見ないの?」
楯無の発言でラウラを除く全員の視線が俺へと浴びることになった。火種になりかねんから後でこっそり見ようと思ってたんだが
「まじまじと見るな。言っておくが福音の操縦者からだぞ」
「なら余計に心配・・・一緒に確認する」
自棄というわけじゃないがこれも仕方ないことだと割り切ってテーブルの上に開いて置いた
堅苦しいことは抜きにして、あの子を助けてくれてありがとうね。私はこの先どうなるか分からないけどこの恩は忘れないわ。もう1人の方には明日伝えるから心配しないで。ありがとうね魔法の鏡さん
手紙の下にはキスマークを添えて、簡潔な内容だ。暴走の原因は俺には分からんがあれだけの事態に発展してしまったら、俺にだってどうなるかなんて分からない。だがそれよりも重要視したいのは虚偽報告の方だ。仮に
「・・・さて、少し勉強して夕飯にしようぜ」
「話をそらさないでよ七実。僕たちは聞きたいことがあるんだ。まだ時間はあるしたっぷりとお話し、しよ?」
逃げたいが逃げられそうになさそうだ。年貢の納め時という感じだろうか?このあと、無茶苦茶OHANASIした
今回もお読みいただきありがとうございます
これでようやく3巻分が終わりました
この話を以てリクエストを締め切りたいと思います。リクエストしていただいた方、ありがとうございます