俺は虚に車椅子を押され寮の中に入り1階の部屋の扉の前で止められた
「少し待っててね。おーい簪ちゃんに本音ちゃんいるー?」
楯無は扉をノックして中にいるかどうか確認すると中から簪の声がした。ドアを開けてこちら側に簪と本音が顔を出してくる
「ななみんやっほ~。ようやく来たんだね待ちくたびれたんだよ~?」
「悪い」
「今日のニュースでもばっちり取り上げられてたね・・・流石マス○ミ」
俺にはどう映し出されてたのかは知らないが簪の嫌そうな表情を見るに内容は最悪な物だったのだろう。確かに俺や一夏は今や世間どころか世界中から注目されてる人間なのだろう。かたや第1回モンド・グロッソにおいて総合部門で優勝した元ブリュンヒルデの弟でもう片方は今ではただの一般人・・・もし誹謗中傷の対象にするのであれば一般人の方に誰だってするだろう。何せISはついこの前までは女性の特権だったのだからな
「仕方ないと割り切れ」
「でもあんな内容は許せない!七実の事を何も知らないのになんであんなことを言えるの!?」
「まぁまぁ落ち着いて簪ちゃん。話は中に入ってからにしましょう?そうじゃないと誰かに聞かれちゃうかもしれないわ」
簪は楯無の言葉を聞くと俺たちを部屋の中に入れてくれた。部屋の中にはベッドが3つにテレビにゲーム、ブルーレイ再生機器、PCと充実している部屋だった・・・こんな状態の俺じゃあゲームなんてできないけど簪がやっている所を見るのは楽しいが。部屋の中に入ると俺は本音と虚の手を借り真ん中のベッドに腰かけた
「ありがとう2人とも」
「良いんですよ。七実さんが大変なのは知っていますし昔からの仲じゃないですか」
俺は右腕以外が動かせないようになった日以来ずっとこの4人にはいろんなことで助けて貰っていた。車椅子の物珍しさから興味ない奴にからかわれ遊ばれ怪我した時なんかもあったがその時も俺はこいつらに助けてもらったし移動教室の時も助かった。まぁその分、簪と楯無の姉妹喧嘩には手を焼かされたのはつい2年ほど前の事だ
「それにしても七実君はこれから大変になるわね。ハニートラップには気をつけるのよ?もし引掛けてきた子がいたら教えてちょうだいね」
姉妹喧嘩以来、簪と楯無は妙に俺に好意的になってきている。簪はいつも通り話しかけてくるがその量も増えたが問題は楯無の方だ。楯無は脈絡もなく俺に引っ付いたり胸を押し付けてくる、その度に喧嘩しだすほど仲がいいのか悪いのかは知らん
「その時は守るから安心して」
「私も頑張っちゃうぞ~!」
「・・・すまんな。こんな身体のせいで迷惑をかけて」
もし俺がこの足を使うことができたらどんだけ楽な生活を送れたことかと常々考えるがその度にこいつらからは気にしなくていいと言われるがそんなに簡単に済まされる問題ではない。これは痛々しい記憶でもあるのだから
「いつまでもそんなこと言わないでください。私たちがついているんですから」
「無理だ」
「むぅ~ななみんの悲観的なとこヤだな~」
本音は俺の考えが気に食わないようでふくれっ面になる。俺がこうなったのは前世込みでこうなっているのだから仕方ないのだ
「相変わらず七実君も変わらないわね。まぁそのままでいいんだけどね」
「それには同意する。話は変わるけど七実の部屋って私達と一緒でいいんだっけ?」
おいちょっと待て、それはどういうことだ聞いていないにしろそんな話は無いよな。女子と一緒の部屋で寝るとか・・・とか考える奴がいるだろうが俺はそんなことはしない
「ええそうよ。七実君にはいる程度の補助が必要だからしてあげてちょうだいね」
「は~い!ななみんは私たちに任せてください楯無様!」
「よろしい。それじゃあ私たちは生徒会の仕事があるから今日はこれくらいにするわね」
楯無と虚は部屋を出ていくと簪と本音は俺が座っている所の隣に座ってくる
「これからもよろしくね七実」
「こちらこそ」
「ななみんは昔に比べたらいっぱい喋るようになったよね~一言で終わる時もあるけど」
確かにこいつらに会った時に比べてかなり話すようになったがこれもこいつらのおかげだろう。俺は元々話すのが面倒だっただけでどこかでサインを作っていたのだが誰も気づかなかったところにこいつらだけが俺のサインを知ってくれたのだからそれ相応に返すようにしたんだったはず
「どうせまたああなる」
「なんで?」
「うるさいのは嫌いだから」
なんとなく分かるが今まで女子しかいないところに男子が入ってしまうとどうなるかがわかる。大惨事になるか騒ぎ始めるのがオチだ
「・・・なんとなく想像できる」
「かんちゃんもうるさいのは苦手だもんね~」
簪はゲームやアニメが好きらしく以前にゲームセンターには行かないのかと聞いてみたことがあったがその時はあっさりと否定したのだ、うるさくて耳が痛くなるらしい
簪サイド
昨日七実を簡易IS適正検査場に連れていき彼に適性があることを知った。家に帰りそれをお姉ちゃんに教えたら明日朝早くにIS学園に行くと言われた。IS学園は海外からも生徒が来るため1週間ぐらい前から事前登校が許されてる。それで自分の割り振られた寮の部屋で待機してるように言われて2時間ぐらい暇を潰していた。その時ふとニュースを見たが七実の事を何も知らない人がバッシングしていた。腹が立ったのですぐに消したけど、それから少しすると七実を連れてお姉ちゃんと虚さんがやって来たのである。後はさっきの通りだけど七実と一緒の部屋なのは嬉しいかな
「暇だな」
「なら何か見る?流石にニュースは見せないけど」
今、七実にニュースを見せたら私もおかしくなっちゃいそう。怒り狂って何をするかわからないから見たくないってのもあるけど七実の過去をほじくり返して前の両親は犯罪者だとか言いたいように自由に言っているの
「別に見ても構わない。他人がどう言っていようとそれは第三者の視点であって俺の視点ではない。それに真実はお前たちが知っているからそれだけど十分だ」
「ななみんはそれでいいの?」
「俺の事を知っていてくれるだけで十分だ。ほかなぞ知らん」
嬉しいようなそうでないような話だけど七実はこんな感じでいつも自分の事はどうでもいいかのように話す。私としてはやめて欲しい
「そうだけど自分の事をどうでもいいみたいに言わないで」
そういうと彼は何も言わずベッドに倒れる。溜息をついてその後彼はこう言った
「昔からこびり付いた考えだ。お前らに変えられんし俺にも変えることはできない」
あの事件があった時から考えると昔と言えることはできる範囲かもしれないけど七実は私とお姉ちゃんが喧嘩して疎遠になりかけた時も助けてくれた恩人だから諦めて欲しくない
「なら変えてみよ?私も手伝うから」
「私もかんちゃんと同じだよ~無理やりにでも変えちゃうのだ~!」
「・・・勘弁してくれ」
いつもはここで引き下がる私だけど今回はそうはいかない。だって私が助けれなかった好きな人なんだもん
「嫌だ・・・だってここで引き下がったら変わるつもりないでしょ?」
「別にいいだろ」
「良くない!そうやってあなたは逃げようとしてる!」
私はベッドに倒れた彼を無理やり起こし両肩に手を当てそう言った。すると七実は震えだした
「あの時助けられなかったのが悔しかった。だから今度はあなたをあなたの傍で守りたいの!」
「・・・あの時も
「どうしてって・・・」
ここで伝えるのはちょっと恥ずかしい・・・けどいつか伝えるんだったらそれは今か後かの違いなんだから今伝えなきゃ!
「幼馴染で親友だからだよ~」
「へ?」
・・・変な声出しちゃった。というより先に言われちゃったよ!?本当にごめん何してくれてんの本音!?
「・・・もう勝手にしろ」
「ほーんーねー!」
私が決意して言おうとしたことを先に言われてしまったことに腹を立て本音に八つ当たりをしてしまった。反省はしてるけど後悔はしてない
「ほえ~!やめてかんちゃ~ん!」
「・・・騒がしい」
「あ、ごめん」
本音は目を回し七実の肩にもたれ掛かる。うらやま・・・羨ましい!
「むえ~」
「こうしていつも通りになると・・・何か言い残すことはあるか簪」
「えーっと、わ、私もしていい?」
「却下」
前は無口で無反応な彼は今では辛口で辛辣な彼になってしまったのでした・・・多分私とお姉ちゃんのせいだと思うけど
今回もお読みいただきありがとうございます
楯無に弄られれば誰だってある程度辛辣になると思うんですよ。うぷ主の好きなキャラですが