俺がこの
「やっぱり……現実だよな……」
やはり、俺がいるのは何かの間違いではないのかと考えてはみるが、
「うーん……考えても埒が明かないな」
何故俺が隼鷹になっているのか、何故工廠からの建造や
考え出したら疑問は次から次へと沸いて出てくるが、どれ一つとして答えは出ず、次から次へと新しい疑問が出てきて絡まった糸屑のように疑問が膨らんでいく。
「…………ん?………何だ、あれ?」
傾いてきた太陽が雲を薄くオレンジ色に照らしている中、雲の切れ目にキラリと何かが輝いた。確かに直援で零戦が一個小隊出ているが、今は一時給油で前方の警戒に出ていた一個小隊と共に帰還している。
艦娘になって強化された視力を駆使して目を凝らすと、段々と光った辺りが見えてきた。そこには平べったく黒と白の色が付いた物体が空を舞っていて――――
「――――って!?深海棲艦の艦載機じゃん!?」
俺の驚愕と共に周りで帰還していた零戦に給油していた妖精さん達がギョッとする。何せ俺達はまだ生まれたばかりの艦娘で錬度も何も無いに等しい。そんな中で見つからないようにと移動していたのだが、給油の隙を突かれてしまうとは。敵さんの運が良いのか、俺等の運が無いのか。
「って!!そんなこと考えてる暇無いじゃん!!?零戦の給油は終わった!?一機でも良いから緊急発艦して!
俺の指示と共に給油が完了した三機《一個小隊》が飛び立っていく。それに気付いたのか上空の敵機は雲の中へと逃げ去っていき、それを追いかけるように零戦一個小隊が逃げ去っていった雲の中へと突入していく。
航空隊の突入から少しした後、甲板に下りてきた妖精さんの一人が航空隊が敵機を撃墜したという通信が入ったとの連絡を受けた、と言ってきた。
「敵機は撃墜できたけども………絶対母艦に知られたよな、これ」
戻ってきた零戦を見ながら呟く。敵が駆逐艦等で尚且つ日が出てる内に遭遇するのであれば、まだ何とか対処のしようも有ったものだが、太陽も傾きかけてきた今頃では逃げの一択しかない。それに艦載機を搭載できるのであれば最低でも軽空母級――――軽母ヌ級か正規空母クラス――――空母ヲ級のどちらか。
「………流石に姫級や鬼級………じゃない、よな……」
大丈夫な筈だ、あいつらの艦載機はたこ焼き型の丸っこい筈。艦載機の発光部の色も緑色だったらしいから恐らくノーマルタイプ。エリート・フラッグシップ級ではない。
「-―――っていうか!!空母が単艦で動いてる訳無いじゃん!!絶対護衛で防空用の重巡や軽巡や駆逐が居るに決まってるじゃん!!」
急いで電探付き妖精が居ると思われる艦橋へと上がっていく。甲板から艦橋への扉を開け、階段を駆け上がって艦橋の扉を開ける。中には対空電探の21号電探妖精と13号電探妖精の二人と艦載機付き整備主任妖精などが揃っていた。
「どんな状況!?」
「先程の艦載機は西南西の方角へと逃げようとしていました。そこから敵は恐らく西南西の方角かそれに順ずる方角に存在するのではないかと思われます」
「先程の敵機は結構高い所を飛んでいたです……だから、見つけられなかったです………ごめんなさい………」
「いや、大丈夫だよ。俺達は今日生まれたばかりなんだ。俺自身の錬度も高くないし、見つけられなくたって仕方ないよ。次、見つけてくれれば構わないよ」
すまなさそうにする電探妖精二人を慰め、二人の士気が落ちないように気をつける。空からやってくる脅威に対処しなければならないのだから、ここで二人に落ち込まれては困る。
俺の言葉に二人は大きく頷きながら電探の計器が取り付けられていると思われる所へと戻っていく。
「…それでどうすんだ?
「私的には逃げる方がいいと思いますが。少なくとも今の錬度では太刀打ちできないと思います」
「私もぉ、逃げる方に賛成かなぁ~」
「私は一戦交えてみるべきだと思われるが?このままでは錬度も上がらないし、逃げているばかりではどうにもならないのではないか」
「…………えっと、あなた達はどちら様?」
艦載機付き整備主任妖精の他に三人の妖精がいた。それらが俺の問い掛けに三人は敬礼で返す。俺も返礼で返すと三人それぞれが自己紹介を始める。
「私は零式艦上戦闘機21型の隊長機妖精です。よろしくお願いします!」
「私はぁ~九九式艦上爆撃機の隊長機付き妖精で~す。よろしくね~」
「自分は九七式艦上攻撃機の隊長機付き妖精です。どうぞ!よろしくお願いいたします!!」
それぞれの妖精さんが自己紹介をしてくれた。要するに彼女らはそれぞれの艦載機妖精を仕切っている上位個体であるらしい。
「それで、お前さんはどうすんだい?」
主任妖精が俺にそう問いかけてくる。彼女らがどう言った所でこの
俺の手の中に彼女ら、この艦に乗っている全ての妖精さんの命を預かっていると思うと、少し恐ろしくなる。前世でそういった全てを引っ張っていく様なことをしたことが無かった俺はこの問いに答えを出すのを躊躇ってしまう。俺が出した指示で彼女らの運命が決まってしまうと思うと、空恐ろしかった。
「――――まあ、お前さんの好きな様にすればいいさ。俺らはお前さんの指示を尊重するよ」
主任妖精さんの言葉で俺はハッとする。視線を上げると彼女ら全員が笑っている。生まれたばかりでどうすればいいかも分かっていない俺でも、彼女らは俺の指示に従ってくれる。
彼女らも生まれたばかりで、できれば安全に錬度を上げていくのが良かっただろうに、俺の元で生まれたばかりでこんな状況に陥ってしまっている。それでも尚、俺の指示を受け入れてくれると言っている。そんな彼女らの信頼を裏切ってはならない。それが今俺を動かす原動力となった。
「――――対空警戒を厳に。敵はきっと先制航空攻撃の後に艦船での砲雷撃戦を仕掛けてくる筈――――甲板に零式艦戦全機を即応状態で待機!敵機襲来と同時に全機発艦!!先制航空攻撃の迎撃を行なってもらう!その後、敵艦を発見したと同時に九九式艦爆と九七式艦攻それぞれ三個小隊《九機、合計十八機》発艦!最優先目標は重巡・軽巡それと居たら戦艦を狙ってくれ!!駆逐艦は12.7cm連装高角砲で対処する!!」
「「「「了解(よぉ~)(だ)(です)!!」」」」
俺の案と共に妖精さん達は一斉に動き出す。艦内に警鐘が鳴り響き、妖精さんたちの慌ただしい声が響く。俺は目を閉じてこの
「――――艤装、展開」
すると、身体の周りに光が集まり始め、腰に艦橋構造物や電探や対空砲のミニチュアが左手には巻物が。その巻物の紐を解き、バッと開く。そこには飛行甲板が描かれている。右手を腰の艤装に翳すと飛行機の形に切られた式神が十八枚現れる。
「隼鷹所属、零式艦上戦闘機全十八機。即応状態で待機」
俺の声と共に飛行機の式神が巻物の甲板の上で零式艦上戦闘機へと変わっていく。そして、船体の甲板上にも十八機の零式艦上戦闘機が即応状態で待機している。
「電探に感有り!!距離13万!(メートル方式)方位1-0-5!!………ッ!!並びに方位1-1-5感!!総数不明!!こちらに向かい接近中!!」
電探妖精さんからの報告を聞き、俺は迷わず指示を下す。
「――――方位1-0-5の敵勢力を目標α、方位1-1-5の敵勢力を目標βとする!零式艦上戦闘機、全機発艦開始。隊長機付き三個小隊は目標αへの対応を二個小隊は目標βへの対応を任せる!!」
俺の指に紫色の焔が燈る。俺から発せられた勅令は
「ッ!!電探に更に感有り!!………これは、敵艦です!!」
「電探反応!…識別…………駆逐艦クラスが三つ、重巡ないし軽巡クラスが二つ!それと空母クラスが一つです!!」
「恐らく、空母を旗艦とする水上打撃艦隊………空母の識別は?」
電探の反応を報告する妖精さんに俺は問いかけるが、妖精さんは首を横に振る。
「識別はできません………ですが、艦載機の編隊からして恐らく正規空母クラス………空母ヲ級ではないかと思われます」
やるしかない、そうは分かっているもののやはり怖くてすくんでしまいそうになるが、ここで怯えてしまっては、この先どうなるかは分からない。それに、妖精さん達にも合わせる顔が無い。
「さあ、やろうか……………開戦だ!!」