Monsters Life 作:究極極彩色ナメクジ
試練の季節は訪れる。
待つまでもなく、突然に。
あっけない程、唐突に。
この世に住まう者ならば・・・・この世を廻る者ならば・・・・
乗り越えるがいい。たとえ・・・
・・・・・・・他者を踏みにじってでも・・・・・・。
季節は巡り、時は小川の水の如く、流れ去って行った。
小さき骸は・・・・否。体長六メートルにもなったネルスキュラ亜種は、この時期、試練の季節を迎える。
それが、フルフルの外套の入手だ。各地に散らばったネルスキュラ亜種の幼体は、フルフルの生息域で成長し、ある程度力を持った個体は自力でフルフルに挑み、打ち勝つことでその皮を手に入れる。保湿性と保温性に優れたその外套は、厳しい乾燥と刺すような寒さに包まれる砂漠の夜を生きるのに欠かせないのである。
つまり、フルフルの皮を手に入れた者だけが、砂漠へと帰る切符を手にすると言ってもいいのだ。
白き影は、既に五メートルを超えたフルフルは、この時期、試練の季節を迎える。
それが、天敵であるネルスキュラ亜種から身を守ることだ。砂漠に帰るため必要なフルフルの皮を血眼で探し求める奴らを、なんとか撃退しなければ、自分たちの命はない。
命を賭けた殺し合いが、各地で始まろうとしていた。
バチバチバチッ!!!
薄暗い洞窟の中に、青白い閃光がはしる。
フルフルの最も一般的な攻撃の一つ、放電攻撃は、ネルスキュラ亜種の機動力によって軽々と躱されてしまう。
ネルスキュラ亜種は、反撃とばかりにイーオスやガブラスを捕食することによって得た出血毒をもつ鋏角を伸ばし、フルフルを挟み込む。鋏角がブヨブヨした皮に刺さり、そこから猛毒がフルフルの体内に流し込まれる。しかし、フルフルもやられっぱなしではなく、その場で再び放電することにより鋏角を通してネルスキュラ亜種に電撃を直接浴びせる。ネルスキュラ亜種は放電のショックで鋏角を放し、驚いて距離をとった。
直後、フルフルの口から三方向に雷球が放たれる。ネルスキュラ亜種はこれを天井に付けた糸を高速で引き戻し、天井に張り付くことで回避し、さらにそこから糸拘束弾をフルフル目掛けて放った。
フルフルは軽くバックジャンプして事なきを得、怒りの咆哮を上げた。
「ゴォォォオオオアアアァァァァァァォォォォ!!!!!」
フルフル特有の不気味な咆哮が洞窟に響き渡り、地面をブルブルと震わせた。
フルフルは電撃を纏いながらネルスキュラ亜種に飛び掛かる。だが、棘も外套もないネルスキュラ亜種の機動力は成体の数段上。その程度の攻撃は軽々と躱し、催眠ガスを反撃に浴びせる。
フルフルは一瞬眠気に襲われるがすぐに回復し、天井へと張り付き、ネルスキュラ亜種の真上から何発も雷球ブレスを放つ。
ネルスキュラ亜種は攻撃範囲に苦しみつつも一発二発と躱していくが、とうとう一発が直撃してしまう。通常ならば麻痺によって体の自由が利かなくなるところだが、あいにく麻痺には強い耐性を持っていた。
フルフルが天井で奇声を上げ、ネルスキュラ亜種が見上げながら威嚇する。
殺し合いは今も続いていた。
地底洞窟に、三人のハンターが足を踏み入れた。
一人は、Wレックスシリーズを身に纏い、太刀を背負った男。
もう一人は、かつてこの地で相棒を失い、以後、憎悪に猛った男。
そしてもう一人は、巨大な笛を背負う、謎の少女であった。
三人が出会ったのは全くの偶然である。
「地底洞窟のクエストはあるか?」
突然かけられた声に、受付嬢は慌てて顔を見上げる。
まだ早朝であるこの時間帯はクエストを受注するハンターもまだ少なく、ギルドガールの面々は、簡単な書類整理をこなしていた。もちろん、ハンターが来たとなればクエストを斡旋することを最優先にするので、クエストボードから数枚の依頼書を持ち出した。
「え~っと、地底洞窟のクエストですね。」
目の前に並べられたクエストの中で、男は迷うことなく一枚を手に取った。
クエスト:縁のある暗殺者
依頼主:ナグリ村の村長
依頼内容
ウォォォォォォオオン!!!オレッちが採掘に行ったらでっかいネルスキュラがうろついてたんだ!!!まただぞ、また!!もうネルスキュラなんて顔も見たくねぇよぉぉぉ!!!
メインターゲット:ネルスキュラ一頭の狩猟(狩猟環境不安定)
「これを受ける・・・・・。」
男は暗い顔のまま、依頼書を机の上に置いた。その男の装備はグラビドU。受付嬢は若干疑問を抱きながらもネルスキュラ程度にてこずるハンターではないと判断し、クエストを受理した。
男は拳を強く握りしめ、ヘルムを被って顔を隠すと、クエストカウンターから出ていった。
男が地底洞窟に着いたのは、それから約二時間後の事だった。地底洞窟は現在危険な状況ということでパラシュートを使った直接降下によって降り立つことになった。
その時にちょっとした事件があり・・・・・
と言うのも降下直後に突風が吹き、近くを通りかかった小型気球にパラシュートのひもが絡みついてしまい、そのままきりもみ墜落した程度の事故なのだ。
「大したちょっとした事故もあったもんだな。」
その気球に乗っていたWレックスシリーズの男は絡まった糸をほどきながら誰にでもなく言う。同じく気球に乗っていたもう一人の少女が「誰に言ってるの?」と聞くと、Wレックスシリーズの男(以後、W男)はフッ、と謎の含み笑いをした。
彼らが墜落したのは幸か不幸か地底洞窟のBC(ベースキャンプ)であり、W男と少女は救援を呼ぶ準備をしており、もう一人の男は、愛用の武器【操虫棍】の手入れを終え、早速エリア1に飛び降りようとしていた。
「そういえばお前、前に一度会ったことあるよな。」
W男の問いかけに対し、男は「知らん。」、と不愛想に返す。しかしW男の次の言葉で核心を突かれる。
「・・・・仇討か?」
「・・・っ!?」
思いがけぬ言葉に、男はバッと振り返る。どうやらW男とどこで会ったか思い出したようだ。そう、それは運命の日、自分を助け出した人間だった。
何か言いたげな男に、W男は淡々と言った。
「仇討が悪いとは言わん。これまでもそういう人間は何人も見てきたからな。自分の気持ちを整理するのには必要な事なのだろう。やりたければ勝手にやるがいい。速い話が自己満足だがな。」
W男の冷たい言い草に傍らで聞いていた少女が何か言おうとするが、W男の続けた言葉が、それを遮った。
「だが同時に、仇討を終え、目標を見失って堕落する人間も何人も見てきた。最終的に決めるのはお前だが、少しは考えておけ。昔堅気の中年狩人の忠告をな。」
男は、その言葉に応えることもなく、しかしわずかに反応を見せながら、地底洞窟エリア1へと飛び降りていった。
男が地底洞窟へ行って五分程度たったころ、BCの上を飛行船が飛んでいた。
しかし、その飛行船が着陸する様子はなかった。代わりに、二人のいるBCに、点滅する光を送っていた。
「モールス信号だな、解るか」
W男が隣の少女に聞くと、少女は「当然です!」と胸をはりながらペンをとり、紙にモールス信号を写した。
「・・・・・・・・大変です!!」
解読を終えた少女が慌てた様子で書き写した紙を見せた。そこには緊急事態を知らせる伝令が書いてあったのだ。
{チテイドウクツエリア8ニテ フクスウノオオガタモンスターニショウタイガオソワレテイル。キュウジョヲキンキュウヨウセイスル。}
地底洞窟エリア8にて、複数の大型モンスターに商隊が襲われている。救助を緊急要請する。
複数、と言うことは一頭や二頭ではないということだ。それから商隊を守りながら安全圏まで送り届けるとなると厄介極まりない。
もっとも、ここにいる二人はその程度で気圧されるタマではない。
「HOOKのメンバーの実力、しかと見せてもらうぞ。」
「そちらこそ、G級の名は伊達ではないことを証明していただきますよ!!」
そして二人も地底洞窟に飛び降りた。
影の多き地に・・・・・・・。
申し訳ありません。
間が空いてしまいました。
最初に言った通り作者であるところの私、極彩色ナメクジは若いので、更新は非常に不定期です。それでも読んでくれている仏のような皆様に感謝しながら、これからも執筆させていただきます。