Monsters Life   作:究極極彩色ナメクジ

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つ~か~れ~る~・・・・・・
それでわどうぞ。


No.3 影と骸と狩猟奏 (中編)

常闇のドレスメーカーが現れてはや二か月。あの日以来奴が姿を現すことはなく、地底洞窟は平和な日々を送っていた。

 

ネルスキュラ亜種の幼体、小さき骸は体長約三メートルにまで成長し、小型鳥竜種も脅威にはならず、多少の大きさをもつ生物も捕食できるようになった。

しかしそうはいってもまだまだこの自然界では弱小な存在、地底洞窟の猛者達にはただの獲物なわけで・・・・・・・・

「グオオオオォォォォォォォッ!!!!!」

巨大な双顎が小さき骸に迫る。小さき骸は素早く伸ばした糸を急速に引き延ばして手繰り寄せ、紙一重で回避する。

すぐ横を赤い巨体が通り過ぎた。何とか回避したと、一息つく暇もなく、赤い巨体は再びその鬼のような面をこちらに向ける。

―鬼蛙・テツカブラ―

両生種に分類されるそのモンスターは、動くものには何でも襲い掛かるという獰猛にして凶悪な性質を持ち、今回も現在進行形でネルスキュラ亜種の幼体に襲い掛かっている。

テツカブラの猛攻に耐えかねた小さき骸は天井に糸を伸ばして、普通のモンスターであれば届かない天井裏にくっついた。

天井裏は、飛竜や鳥竜などの飛べる生物でも攻撃できない安置ゾーン。これまでも小さき骸はこうして危機から回避してきた。

・・・・しかし今回はそうはいかなかった。

テツカブラは身を縮め、大きく跳ね上がる。その跳躍は天井まで軽々と届き、小さき骸がいた場所を巨大な双顎で貫いた。

ドガッ・・・・・!

間一髪、というか驚いて落下してしまいギリギリで潰されてるのを回避できた。

テツカブラは天井に刺さった大牙を抜いて降り立ち、再び小さき骸を睨みつける。

一方小さき骸は落下のショックから未だに復帰できない。テツカブラは絶好のチャンスと飛び掛かる。

ザシュッ・・・・・・!

赤い血飛沫が飛び散った。テツカブラの顔面は出血毒と裂傷によって猛烈に血を吹きだす。斜めに走った傷で、テツカブラの右目と左顎は潰れる。

・・・・・小さき骸の真後ろには、巨大な蜘蛛、常闇のドレスメーカーが戦闘態勢に入っていた。・・・・否、これは戦闘態勢などではない「剥ぎ取り態勢」と言うべきだろう。

ドレスメーカーがテツカブラに襲い掛かり、四肢を見事な捌きでもぎ取り、動きを封じる。抵抗の手段を奪われ、もがくことも出来ぬテツカブラの皮を生きたまま剥ぎ取る。テツカブラだった物の体に激痛がはしり、そして、赤い体と巨大な顎が特徴だった者は、さらに赤黒い、無様な・・・物に変わって行った。

スゥ・・・・・・・

テツカブラの皮をはぎ取ったドレスメーカーは、満足げに体の色を周囲に合わせ、どこかへと去って行った。

小さき骸は残されたテツカブラの肉塊を、これまた満足げに貪った。

 

白き影も二メートルを超え、洞窟に張り付いて虫やケルピを食べて生活していた。発電細胞が成長するこの頃は特に肉が不味くイビルジョーでも出ない限り捕食される心配はない。そんな白き影が平穏に暮らしていたある日・・・・・

「ん?フルフルベビー・・・・・にしては大きいな。」

一人の人間に見つかってしまった。その男の身なりはどう見てもハンターではなく、どちらかと言うと研究員だが、しかしその筋骨隆々の足腰が、場数の多さを物語っていた。

「【まだない】さーん!何かありましたか~!?」

男に向けられて声がかかる。男を【まだない】と呼んだのはこれまた研究員風の女だった。男はそちらに目を向けると少し声を張り上げて答えた。

「いや、フルフルの幼体がいただけだ。それより上の方の調査はすんだか?」

質問を返された女は息を切らしながら男に駆け寄り、背筋を伸ばして言った。

「隊長、地底洞窟上層部、調査完了でありますっ!!」

敬礼をしながら報告する女に、男は少し苦笑いを浮かべた。

「隊長の呼び名はまだ慣れないな・・・・それより!地底洞窟って素晴らしいよな!段差が多くて、飛び降りポイントが盛りだくさん、特にエリア9なんか・・」

「はいっ、段差談義はこれまで!ほっとくと数時間ここで話を聞くことになっちゃいますから!!」

いきいきと地底洞窟を語ろうとした男に、おそらく部下なのだろう、女からストップが入った。その対応力から、こういうことが一度や二度じゃないことがうかがえる。

この二人は、王国の地質調査員である。速い話が地形学者で地形マニアなのだが・・・特に男、コードネームは【まだない】は、部類の段差好きで、高い所から飛び降りるのが大好きと言う意味の解らない趣向を持つ。しかしその仕事ぶりや運は優秀で、ほとんど情報は伏せられているので真実かは定かではないが、かの伝説の古龍、アルバトリオンを発見したのも彼だという。

女の方はそんな彼に唯一まともについていける優秀な助手だ。最近調査隊長になった男を補佐している。

白き影はそんな二人を騒がしいというかうっとおしく感じたのか、最近ようやく使えるようになった放電を放とうとする。

・・・・・しかしやめた。突然、身を隠せと本能が訴えかけて来たのだ。

人間二人も、同じく一つの方向を見て固まっていた。・・・・・彼らの視線の先にいたのは真っ赤な皮を持ち歩く巨大蜘蛛、常闇のドレスメーカー。

その複数の目が、二人と一匹を捉える・・・・・・・。

濃密な恐怖に包まれ、身動きが取れない。全身が逃げろと警鐘を鳴らす。だが動けない。・・・・・・・・・・・

・・・・常闇のドレスメーカーはしばらく彼らを見つめると、興味なさげに立ち去った。・・・・瞬間、恐怖の束縛から解放される。

女はあまりのプレッシャーにへたりと地面に座り込んでしまう。一方で、男の方は流石は古龍を直に見たことが有ると言えよう、右手にいつでも投げられるように握っていた、猛烈なフラッシュと爆音を放つ脅かし専用の「ストロポ光弾」をゆっくりとポケットにしまうと、女を起こしてその場を後にした。

そして白き影は、鮮烈なる恐怖を脳裏に焼き付けていた。この時、この体験から・・・・蜘蛛に対する猛烈な嫌悪感が生まれたのであった・・・・・。

 

それからさらに月日が流れたころ・・・・・・

 

―原生林―

一撃一撃で、緑色の飛沫が舞う。

背中にあった紫色の棘もそこには既になく、頼りにしていたゲリョスの皮の外套も、その人間の猛攻でボロボロに崩れ、今は白い体表がむき出しになっていた。

その鬼気迫る連撃は、影蜘蛛ネルスキュラを見る見るうちに追い詰めた。

ネルスキュラは攻撃に耐えかねて逃走を図るが、その瞬間に体に激しい衝撃がはしり、自由が利かなくなる。

電撃による拘束と、さらけ出した体表の最大の弱点である人間が持つ刃から放たれる電撃が、ネルスキュラの命を刈り取っていく。

・・・・・そしてその息吹は消えた。

「・・・・・・足りない。」

そうつぶやいた人間は、自分が殺めた骸を剥ぎ取りもせずに次の敵を探しに行った。

「・・・・常闇のドレスメーカーか・・・・・・」

男の拳に力が込められる・・・・・。

「俺はお前を・・・・。」

 

あの日、地底洞窟で・・・・一人の男が死んだ。

そして、もう一人のみ・・・・助け出された・・・・・・。

それが、一人の悲しき怪物を・・・・生み出してしまった。




もうしばらく続きます。
過度な期待は怪我の元ですので、くれぐれもご注意ください。
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