提督(笑)、頑張ります。 外伝   作:ピロシキィ

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spring14さんから頂いた感想欄の説明が素晴らしかったのでご許可頂き、こちらに載せさせて頂きました。

さらに小話なども加筆して頂きました。



三式自動小銃とは 改 

三式自動小銃とは

 

 

・三式自動小銃

日本帝国陸軍が昭和18年に採用した半自動式小銃。type3などとも呼ばれる。開発には海軍のとある将校が関わっていたとされるが、防衛機密により開発に携わった人物は現在に至るも不明である。

 

ドイツのstg44と並び、現代のアサルトライフルの祖とされる銃の一つ。

当時としては画期的かつ先進的でありながら、まるで長い間蓄積され洗練されたかのような機構が数多く実装されていた。一説には、後に日本軍が正式採用している七七式自動小銃こそがこの小銃本来の姿であるとも言われているが、真相は定かではない。

 

使用弾薬は当時採用・普及していた九九式普通実包が用いられ、装弾数は箱型弾倉に20発。発射モードはセミオートのみで、場合によっては減装弾を使用する場合もあった。

アサルトライフルと見た場合に大口径弾かつセミオートに絞った方式である事から、いわゆるバトルライフルの祖と見る向きも有る。

 

頑丈・簡便・高火力の三つを併せ持つ優秀な小銃であり、後に接収した物を解析・研究した米軍も本銃を非常に高く評価している。

特に耐久性と簡便さは徹底されていて、太平洋戦争当時の過酷な戦地でもほぼ問題なく運用でき、また部品点数も少なく抑えたり、弾倉の装填を単純な押し込みだけで行えるようにする事で新兵でも早期に運用可能にする工夫が凝らされている。

 

しかし、通称『末期型』と称される戦争最後期に製造されたものは欠陥銃の烙印を押されるほど粗末なもので、一時期の世界的に見た三式小銃=欠陥品とされる評価はこの末期型に由来する。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

・三式小銃弐型

 

帝国陸軍が昭和18年に採用した『三式小銃(以下原典)』の「改良型」と称される、太平洋戦争末期に配備された半自動小銃。

改良型とは名ばかり、使う兵士どころか設計者すら「あの人に申し訳が立たない」と後に言わしめた劣化品である。主な変更点として、末期の逼迫した材料関係から原典から更なる部品点数の減少や使用する材料自体の省力化の為のデザイン変更が挙げられる。

 

フレームも極力プレス加工だった原典から、材質劣化により止むを得ず金属削り出しという本末転倒な仕様に変わっているが、それでもこの銃の持つ強度は原典に及ばない物となっている。それどころか、原典で徹底的に改められた部品の規格管理がこの弐型では破綻しており、製造場所毎に部品どころか全体の形状すら微妙に異なってしまっている為、正しい意味での『三式小銃弐型』というのは実のところ殆ど存在していない。

 

以上の点から原典が持っていた優秀な点の多くが損なわれており、使用弾薬こそ原典と同じ物が使えたが「怪我したくなかったらサンパチを使え、どうしようもないなら減装弾込めてお天道様に祈れ」という暗黙の了解めいた冗句が兵士のあいだで交わされていた。

 

後にこちらを先に鹵獲研究していた米軍も、『Type3』について大きな誤解を抱える事となるのは甚だ余談である。

 

 

 

・七七式小銃

 

戦後米国からの武器製造制限が解除されたあと復活する事となった純正『三式小銃(連射機能が追加された正しい改良型)』に代わり西暦1977年に日本軍に正式採用された純国産自動小銃。

配備当初から他国のアサルトライフルに全く引けを取らない高い完成度を誇り、現代でも改良型が一線級部隊で使われ続けている。

設計の多くが三式小銃から受け継がれた、戦前当時としては画期的、現在としてはほぼ枯れた技術のみで構成された実戦での運用を第一に置く銃でもある。

 

この銃の特徴的な点としては、一部の部品を入れ替えるだけで7.62mm弾仕様と5.56mm弾仕様を簡単に変更可能で、用途に応じて形態を簡易に切り替えられる点にある。

その手の「ウェポンシステム」と呼ばれる仕様を備える銃としては米国のストーナーが有名だが、それと比較しても遥かに無駄が省かれた、単純で信頼性に比重を持たせた設計である。

 

出所不明の噂によればこの七七式こそが三式小銃開発当時の初期設計段階で起された設計に忠実な、真の三式小銃であるとも言われている。ただし情報の確度が不明瞭な為、あくまでその手の界隈でまことしやかに囁かれる噂に過ぎないと思われる。

 

 

 

 

 

実録『三式小銃』からの抜粋である。

 

長野出版発行のミリタリー系書籍。

 

日本軍が戦前に開発し、戦後半世紀以上経った現在でもその後継品が今なお使われ続けている傑作自動小銃、『三式小銃』についてまとめた解説本。基本的なデータ以外にも開発秘話や実際に使用した人物達へのインタビュー、そして四方山話から噂話などと言った確証を以て編纂されるのが基本の解説本としては珍しくバラエティ的な要素も組み込まれ、読み物としてもその手のジャンルが好きな人には大いに楽しめるユニークな書籍。

 

 

 

序。三式小銃とは?

 

日本帝国陸軍が今から〇〇年前、西暦1943年、昭和18年に正式採用した当時としては実に画期的な歩兵用小火器。

名前にある三式は、皇紀2603年から取られたもの。

転じて、海外等からは『Type3』または当時の日本人の体格に考慮したサイズから米軍などからは『T3 Carbine』の名称で知られている。

現代アサルトライフルの構成要素の殆どを既に実装していた上に超実戦的な高い完成度を持った、実用品としても優れた銃だ。

 

 

 

 

・始まり

 

元々は戦前から始まった極小規模な開発班によって進められていた、本流ではない窓際的な数ある兵器研究開発計画の一つでしかなかった。ただし、この開発班の実に興味深いところは、これが陸軍と海軍の合同プロジェクトという現在からしても実に珍しい計画であった事だろう。

とはいえ前述の通り日の目を見るかも怪しい計画の一つであったことから分かるように、プロジェクトと言うにはお粗末としか言えない人数での細々とした体制で始められたものだった。

一部の計画参加者については防衛機密に属する情報の為、非公開となっている。(※)

 

 

 

(※)海軍側は全面非公開。しかし陸軍側は一部公開されている。その当時の主要メンバーかつ開発部主任で、戦後に後継品である七七式小銃開発にも携わった〇〇氏へのインタビューを本書インタビュー集コーナーに掲載している。

 

 

 

 

 

・三式小銃諸元

 

全長 860mm

銃身長 400mm

重量 3.3kg

ライフリング 4条右回り

使用弾薬 九九式普通実包(7.7mm×58弾)

 

 

 

・長所

当時の陸軍主力小銃であった三八式歩兵銃(その長さ、おおよそ1.2m!)と比較して、30センチ以上も短縮されたその全長は、当時の日本人の体型や実戦での取り回しを加味して実に良く計算されたものだった。実際、南方などの熱帯雨林におけるその取り回しのし易さは特に現場の兵士に高く評価された。

ここまで全長を短くできたのは、当時の歩兵用銃が想定していた交戦距離が約1km先の対象を想定していたのに対し、三式は設計図が起こされる前の時点でより近距離での戦闘を想定したものとして決断的に設計が起こされていたことによる。

 

・短所

銃自体のサイズに比して(三式はストックを伸ばした状態のM4カービンにやや足した長さ)強力過ぎる弾薬を使用しているためか、反動と銃声が大きい。(銃声自体は三式の通称(後述)にも繋がる特徴となっているので欠点らしい欠点とは言いづらい)

内部部品の公差を大きく取った結果素晴らしい信頼性を獲得したが、反面それによって命中精度的な部分はあまり高くない。一発必中を是とする日本軍の一部からは、この点から忌避されていた。

 

 

 

 

・インタビュー録

 

 

『「あの人は皆が色々ああだのこうだの謂う中で、一切合切跳ね除けてこう仰ったんです。

 

「あまりに長大な射程を実現させうる機構は、むしろ邪魔だ。お互いが居るのか居ないのかもよく分からない豆粒でしか認識できない距離には、より則した火器を用いれば良いだけの事。我々が目指すべきはそんな物ではない。

我々は何処で戦っている? 見晴らしの良い平野?そんなものはバルカンの彼方に、とうの昔に消えた。

南方の密林の影、北方の吹雪の幕の向こうは言うに及ばず。人の営みある場所さえ、一度戦火に包まれれば瓦礫と煙幕粉塵に彩られた魔境と化す。(※)

緊張と疲弊の隙間を縫って不意に目の前に現れるやも知れぬ危機を想像しろ。それに対処し打倒できる武器こそが、真に兵の生命を守るのだ」と。

 

最初の時点で切って捨てていましたね。それでも納得いかない様子だったのがうち(陸軍)から面子がどうのって事であの人と同階級で入ってたお偉いさんで、

 

「陸の戦いを知らぬ船乗り風情がっ!」

 

てなりましてね? そしたらあの人が

 

「勉強の時間だ」

 

って陸戦の講義を始めたんですよ。おかしなこと言ってる風に思うでしょう?でも本当の事なんですよ。船乗りであるあの人が、陸戦の本職である我々に本職も真っ青ってぐらいの内容の講義を始めたんです。しかもこれがまた為になるったらもうね。

ウチのサンパチや露助…失礼、ソ連のモシン・ナガンの有効射程と、今後実際に頻発するであろう交戦距離の差の話は面白かったね。確かに、豆粒の先を狙う銃で目の前ほんの100か200メートル先の目当てを狙うのは非効率に過ぎる。かと言って短機関銃じゃ目当ての距離では豆粒ならぬ豆鉄砲と来るんです。

求められるのは、その前と後ろの間こそだって、あの人は熱心に話していました。

いつしか怒髪天を衝くな勢いだったお偉いさんも熱心にあの人と議論を始めてて、気が付けば皆が皆顔つきつけあって議論に花咲かせてましたよ。

で、三式の全長はあんな短さに収まった訳ですが、今度はその全長の利点について話が進んだ時でしたね。あの人が黒板に書いた文字。ウチの連中皆横文字アレルギーというか読めなかったというかお恥ずかしい限りで、それを見てとったあの人が最初に書いたやつを消して『近距離戦における利点・問題点』て書き直したんです。

その前の英語何だったか…クロースクォ…?……いやぁ、歳取って忘れっぽくなったか、思い出せませんや、申し訳ない」………………』

 

(※) 現代における市街戦の概念と思われる。

 

 

 

 

『「三式は兎にも角にも頑丈でね、私はその点を信頼していました。何せ自分の命を預けるというか、命の行く先を決める相棒な訳ですから土壇場で役に立たないんじゃ話にならんでしょう。

そう言った意味でアレは素晴らしかった。ある時南方の戦地でてめぇの不注意で沼にすっ転んじまった事が有りましてね。私も三式も泥まみれになっちまったんですが、その泥をしっかり落とそうとする前に運悪く戦闘が起こっちまったんです。半分動転してた私は、泥を落とし切ってないままの三式を遮二無二振りまわして盲撃ちしてたんですが、その日終ぞ三式が弾詰まりだのなんだのを起こした事は無かったね。

後で分解清掃した時見たら、中にまで幾らか泥汚れが入り込んで(※1)ましたが、三式は私の命を見捨てる事はありませんでした。

まぁ不満が無いわけじゃ無いんですよ。取り回しの良い大きさでは有りますが、だからこそコイツに込める弾がデカすぎた。とにかく反動がデカいんです。威力はピカイチだし連発出来ない程じゃ無いですが、小さく軽い分そこの抑えが効かないんでしょうね。それに音がかなりデカいのも手伝って、ウチらの間じゃ「雷太鼓」やら「チビ大砲」なんてあだ名(※2)で呼ばれてました。まぁ、とはいえ威勢はよろしいってんでウチらのウケは良かったですよ」…………』

 

 

※1 実際様々な理由から使用するには不適切な状態に陥るも問題なく戦闘行動に使用できたという報告が多々挙げられており、土や砂に数日間埋めたものを試射する実験(事故防止の為器具で固定したものを遠隔で発射させた)でも問題なく兵士一人が携行すると想定される弾倉6本分を撃ち切った。

 

※2 雷太鼓というあだ名は意図した訳では無いだろうが、偶然にも各所で用いられた。

興味深いことに戦時中、南方にて三式を装備した部隊と遭遇した(とされる)米軍部隊も、報告書で

「我々が発見した日本軍の部隊は見慣れない装備で武装していた。長さは我が軍のM1カービンよりも更に幾分か短く感じた。その形状はライフルと言うよりサブマシンガンのデザインに近いが、マガジンと思われる部分のサイズからして使用する弾薬はライフル弾である。それを証明する様に例の銃が発する銃声は甲高くも重く響くような、さながら雷鳴の様な音だった。また、その際の間断ない射撃からフルオートもしくは少なくともセミオートに類する間隔で発砲できる、未知の新兵器であると思われる」

という報告をし、それ受けて後に「Type3 Rifle」という正式名が分かるまで三式の事を米軍も「雷鳴(Thunder Clap)」というコードネームで呼称していた。

なお、その際の戦闘で双方に負傷者が発生するも不意の遭遇戦という事もあり両者撤退している。この時三式は撤退の際に日本軍側がしっかり回収していたらしく、米軍に鹵獲されることは無かった模様。

この時の日本軍側部隊の記録が公開されている範囲では存在していない為、三式小銃を秘密裏に実地試験していた特務部隊ではないかと推測されている。

 

 

 

 

 

 

『「元々三式には、戦後に再配備された三式改みたいに連続射撃機能も盛り込まれる筈だったんです。ただ当時の日本の工業力やらなんやら、どうにもならない壁ってもんにぶち当たった結果、その機能は削除されました。で、その連射機能に合わせて最初はよりこの銃に見合った弾薬の開発も合わせて計画されていたんです(※1)

一つが三式に使われた九九式実包の薬莢長を短くした「仮称七・七粍短小弾」。今でいうソ連の「アレ」(※2)に使われていた弾に近いものです。もう一つが、サンパチ用に配備されていた三八年式実包(6.5mm×50SR弾)を同じく短小化させた「仮称六・五粍短小弾」です。理想的には前者、ただし日本人の体格を考慮するなら後者だ、という見解で全員纏まってましたね。あの人が言うには……

 

「連続射撃によってかかる射手への負担や反動制御には、現在のフルサイズ小銃弾では威力、反動共に過多である。

三式小銃に用いるに理想とすべきは、日本人の平均的体格から鑑みて〈小口径高速弾〉が望ましい。これは製造費用の削減と軽量化による携行弾数の増加にも繋がる利点を持つ。

ただし、やはり過度に小型化を図るというのも問題点を多く生むと予想される。凡そ8mm以下、6mm以上が理想的である(※3)。

また、現在の我が国の製造能力から見て今後予想される飛躍的に増大する弾丸の消費量増大にかかる諸問題も重ねて検討する必要が有る(※4)」

 

との事でしたね。結局こう言った仕様を詰める段階であの戦争が始まって、あの人ふくめてウチらも幾人かが抜けてしまったのと、いわゆる納期の問題や新しい規格の弾を作っている余裕も無いという事で、予め減装弾も使用できるように手直しした上で、九九式実包に合わせた設計にする事が決まってしまったんですけどね……」………』

 

※1 ドイツのStG44が使用した弾薬が正にそういった観点で開発されたものだった。

 

※2 東西冷戦期初期に起きた「洒落にならない笑い話」の一つ、ソヴィエト連邦(当時)が採用していた自動小銃『AK-47』を指すと思われる。この銃が使用している弾薬が、7.62mm×39弾という。

 

※3 現代になり浮き彫りになった7.62mm、5.56mmの両NATO弾の利点・欠点及び、そこからごく最近に開発された6.8mm×43SPC弾に通ずる概念の可能性がある。

 

※4 当時の先進国の多く(米国を除く)が自動小銃(この場合は形状問わず自動連発機能付きのライフルを指す)開発を断念した理由が、この弾薬消費量増大という問題に起因している。

 

 

 

『「ああ、Thunder Clap(雷鳴。三式の米軍仮称コード)の事か。アレのことは今でも覚えている。というより、忘れられないと言った方が正しいか。後にType 3という正式名が分かったあとも、皆は大抵そっちで呼んでいたよ。

あれとの最初の出会いは、1944年の初め頃だったか。私の所属していた部隊の進行を妨害する敵に狙われたんだ。此方には気配らしい気配さえ録に伺わせず、気配がした時は雷鳴の多重奏による奇襲の一撃を与え、即座に離脱してしまう。まるで密林の悪魔か、それこそニッポンのニンジャを相手にしているようだった。

場所が場所だったから、ガーランドは振り回せばすぐ何かにつっかえるし、トンプソン持ちは連中も把握していたのか真っ先に狙われて殺されるか釘付けにされた。

あのやたらとデカい音と短い発砲間隔から、機銃でも使っているのかと思ったが、あのやたらと高い機動力は、そんな重たいデカ物(機銃の意)抱えて動くには説明のつかないモノだった。

敵の攻撃はこちらの全滅を狙ったものじゃない。言ってしまえば、単なる嫌がらせだ。しかしどんなに勇敢な人間にだって限界はある。昼とも夜ともしれないその嫌がらせに私を含め部隊はあっという間に疲弊してね。あの重くそして鋭い音は誰もを震え上がらせた。幻聴となって残り続けた者も居たよ(※)

人員交代やルート変更やらで、目的地へ辿りついたのは予定から丸々一週間遅れての事だったよ。それでも何とか戦争を無事生きて故郷に帰る事が出来てね、友人の殆どが軍を除隊したあとも何となく私は軍に残り続けた。あのころは配置転換でニホン軍から鹵獲した兵器の試射実験を行う任務に就いていた。そこで私はあの日の雷鳴と再び出会ったのさ。

だが、最初に抱いた気持ちは落胆だった。テストに使った内の最初の一挺は撃つ前から内部機構がイかれて撃てなかった。二つ三つと似たような結果に終わって、4挺目で漸くまともに撃てはしたが、その銃声はあの記憶に焼き付くような雷鳴とは程遠いものでしかなかった。実験に参加していた人間の誰かが言っていたよ。

 

「これでは雷鳴(Thunder Clap)ではなくタダのクソ(Crap)だ」

 

とね。私も同じ気持ちだった。それでは、あの恐るべきニホン軍部隊と、それに苦しめられた私たちはなんだったのだ?と。それから暫くしてだったな。実験リストの項目に「Type 3」の名前があった。それを見ただけでうんざりしたよ。アレのお粗末さはこの前ので散々に調べたろう、と。しかし註釈に小さくinitial product(初期生産品)とあってどういう違いがあるのかと興味は抱いた。そして、改めて私はあの日の眠りかけた記憶を叩き起されたんだ。文字通りのThunder Clapにね」………』

 

 

※遭遇した戦地の環境や三式小銃のその特徴的な銃声が齎した心理的効果は凄まじく、戦闘神経症を患った兵士が多く居たという。

 

 

 

 

 

 

・三式伝説

 

 

伝説1:三式の改良とは改良にあらず

 

ぱっと見意味不明だが、正に読んで字のごとくという他ない不可思議な事がこの三式では起きている。

普通、銃火器ではなくともプロトタイプから改良を重ねるというのは当たり前の話だ。例えば米軍のM16小銃。ベトナム戦争に最初に投入されたモデルを「0」とし、最新モデルのA4を「5」と見るとする。改良されてより進化するのだから数が加算されるのは普通で、加算されるのは三式も同じなのだが、これが三式の場合、始まりは「0」ではなく「-5」なのだ。そして、現在我が国の採用小銃である七七式小銃へ行き着いて漸く「0」。これはどういう事か。

新たな力を組み込んでいくのが諸外国の銃。

封印されていた力を改良によって取り戻していくのが三式。

まるでファンタジーの様な表現だ。もしくは、積み木とジグソーパズルとでも表現しようか。

どんどん新たなブロックを積み重ねていくが、調整を見誤れば破綻して崩れる積み木(他の銃)と、大きな完成図の最初のピースであるジグソー(三式)。

実に不思議だ。

 

 

 

伝説2:洒落にならない笑い話

 

東西冷戦期の初め、双方へのスパイ合戦真っ盛りの頃。

米軍はソ連軍が配備していた自動小銃の情報を掴んで驚愕することとなる。なんとそれは日本軍の三式小銃に笑えないほどそっくりだったからだ。

これに関して日米間で一悶着あったのだが、揉めたのは赤い国もであった。

その事実が判明したのは冷戦終結、ソヴィエト連邦崩壊後から暫くして東西間で雪解けが見られ始めた頃。世界首脳会談の夕食の席で当時のロシア大統領の口から酒の席という事も手伝って語られた話からだ。

『ヤポンスキーが何故君が開発し我々が配備した最新兵器と酷似したモノを持っているのだ同志よ?』

と言われたかどうかは定かではないが、ともかくソ連側も当時既に西側陣営となっていた日本軍が、恐らく自軍よりも先に自軍の銃に酷似したものを持っていた事への嫌疑で、例の銃の生みの親であるM.K.氏はあわやシベリア送りになりかけた。しかし、事実関係の齟齬からどうにか身の潔白を証明して事なきを得たそうな。

それを聞いた日米首脳も目を丸くし、やはり酒の席、かつもう終わった事であるからと、日米でもそちらのアレとうちのアレの事で、割とやばいところまで揉めたと白状。場の雰囲気で笑って流したそうな。

しかし、東西両極かつそれ以前にも敵国関係だった国の兵器の酷似というオカルトめいた謎、『繋がりのない繋がり』は残されたままである。

 

 

 

伝説3:迷銃? 名銃!? 三式弐型!

 

戦前戦後問わず惨憺たる評価を下された世紀の欠陥銃、三式小銃弐型。だが、捨てる神あれば拾う神ありとも言うように、この銃は後に生まれ変わることとなる。

そんな堕慧児を拾い上げし神ならぬモノの名を、『長野重工』という。

詳しい経緯は不明だが、戦後この弐型、というより三式小銃開発に関わった人物がこの企業に出向(後に除隊し同社に就職)し、紆余曲折のあと時系列は省くが三つの銃を世に送り出した。

一つが三式小銃改。これは戦後の日本軍再編時に配備された、三式小銃の使用弾薬を7.62ミリNATO弾(7.62mm×51弾)共通規格の減装弾に改めた上(通常弾も使用可能)で連射機能を加えた三式小銃の上位互換。

二つ目が、現在日本軍で正式配備されている七七式小銃。

そして三つ目が、スーパーフェニックス。

 

ん? 弐型はどこいった?

なんと、三つ目のスーパーフェニックスこそがあの悪名高い三式小銃弐型の生まれ変わった姿なのだ。なぜ全く毛色の違う名称なのかと言えば、この銃が軍用ではなく民間販売用(外貨獲得及び国内規制のため主に海外)に製造されたものだからだ。弐型の悪い点を直して三式に戻すのではなく、弐型を弐型のまま純粋に『しっかりした環境、しっかりした設計で作り直した』のがこのスーパーフェニックスである。

細かい部分は省くが使用弾薬は5.56ミリNATO弾を使うスポーツライフル的な仕様で、用途的に耐久性を重視しなくて良くなったため内部機構は元からは真逆にかなり精密に取られ、非常に高い命中精度を誇る傑作銃へと、名前の通り不死鳥のように蘇ったのだ。

 

余談。後年このスーパーフェニックスは口径を7.62ミリ弾に変更した03式支援狙撃銃、いわゆるマークスマンライフルとして日本軍に逆輸入されることとなる。

 

 

 




三式自動小銃は43年の中頃から運用開始ですが、全部隊にいきわたるほどの余裕も工業力も補給ないので一部部隊での運用になります。

あとガ島を巡る戦いは42年間と43年初め頃なので三式の出番はありませんでした。

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