提督(笑)、頑張ります。 外伝   作:ピロシキィ

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外伝 加賀の夢想

加賀さんの朝は早い。

出撃の無い日でも「訓練は大事ですから」なんて呟きながら朝食前に弓を番えに遠的場へ。

私もついて行きたいんですけど、なかなか起きれません。早起きは大変です。たまに置いて行かれてしまいます、ごめんなさい。

こんど目覚ましを出港ラッパにしてみましょうか?私たちは艦だから飛び起きれそう...人でも起きますか。

ただ加賀さんは私が起きれるようになるのを待っているみたいですね。寝坊しても怒らないところを見ると。

 

ですが今日は私の方が早く起きました。

同室の加賀さんの寝顔を拝見しましょう。ベッドの脇にしゃがみ込み頬杖ついて、加賀さんのほっぺにツン!

色白でキメの細かい肌ですね...あっまつ毛長い。

 

加賀さん判定士九段の私に掛かれば、加賀さんの考えはお見通しです。

目は口程に物を言う、加賀さんはずばり目で分かります。例えばこの前は、食堂で肉じゃがをじっと見てたのを思い出したので作ってあげました。「美味しいです」の一言しかもらえなかったけど、嬉しそうな目をしてましたね。

 

今日は吐息がいつもより穏やかです。

これはいい夢見てますね。

目を見ずとも分かります。

 

えっ言ってることが違うじゃないかって?

慢心してたみたいです。気をつけるとしますね。

やっぱり人は話さなきゃ分からないですしね、私たちは艦ですけど。今日は何を話して、何を食べに行きましょうか?ねえ加賀さん。

 

今、どんな夢見てるんですか...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うーん、意識がはっきりしません。

はっ私が寝てしまったか...世界がぼんやりとしています。夢の世界へご案内されました。

 

もうちょっとだけ加賀さんの寝顔を見ていたかったんですが仕方がありません。

加賀さんを念じてみましょう。

 

あっ、加賀さんがうっすら見えますよ。何か言っています。

 

 

 

 

「航空爆撃は単縦陣をとり順に降下、前の機の爆弾の着弾をみて修正して」

 

そういえば妖精さんにアドバイスしてました。加賀さんは誰に教わったんでしょうか、私は開戦前の猛訓練を思い出しましたけど加賀さんもそうなのかな?

教えているときの目が優しかったのは教えてくれた人のせいなんでしょう。

 

「かがー、艦戦隊はどーするのー?」

 

「着衣で寒中遠泳してください」

 

私にしか分からない冗談はやめてくれませんか?

ああっ...妖精さんから可哀想な噴水が...乙女の沽券に関わるのでどこからかは言いませんが。

 

 

 

 

「あの人が帰ってくるか...心配でした」

 

加賀さんを置いて、私たちはインド洋に行きました。私がインド洋に行ってた間に加賀さんはどうしてたんですか?

なんて聞いてみれば「艦載機の半分を消耗しました」と自責的に...他にないですかと問えば、あの人がと続いたのを思い出します。

そしてあの人は偵察に出てった人のことかな?

 

「戦果を上げても誇らずに次を見据える。あの人は水平線をじっと見つめて思考していたというのに、五航戦は...」

 

いいじゃないですか喜ぶくらい許してあげても...そもそも加賀さんは戦果よりも損害に目がいきがちな気がします。もっと加賀さんも誇っていいんですよ?

 

 

 

 

「艦長が助けに来てくれたぞ!って盛り上がっていました」

 

これはこの間一緒にご飯を食べた時ですね。記憶の中の乗組員の歓声に「助けに来てくれた時は艦長じゃないですが」って、加賀さんは無表情で訂正してましたね。目は笑っていましたけれど。

 

「あの時小さく視界の片隅に見えた夕張は...あの小さな巡洋艦はどんな弩級戦艦よりも頼もしく思えました」

 

気難しい加賀さんですが夕張さんの言うことは素直に聞いてる気がします。よほど恩義に感じているんでしょうか?

その夕張さんは父島にいるみたいですけど、提督を見つけたんでしょうか?理想がいささか高すぎるように思えましたが。

 

 

 

そういえば無表情ついでに思うのは加賀さんの性格は誰に似たんですか?

無口に無愛想、自他ともに辛めの評価基準。

鎧袖一触とよく口にしますけども、その有言実行のための努力を私は知っています。でも基本は無言実行と言ったほうが良いのかもしれませんが。

 

艦娘の性格は、艦時代にある程度左右される。

誰かが言っていたのを聞いたことがあります。

 

なら加賀さんは...

 

体がゆれました、この夢世界も崩れてしまいます。

無粋なことを言うなと天の思し召しでしょうか。

良いでしょう、呼び起されてあげましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはようございます、赤城さん」

 

「加賀さんおはようございます」

 

結局、加賀さんが私より早く起きてしまいました。悔しいです。

 

「起こしてしまったようですね、赤城さんが起きるのを待ちたかったんですが。寝返りをうった勢いで赤城さんに当ててしまっていたようでごめんなさい」

 

「私こそ勝手にベッドに寄り付いていたのが悪いんです。謝らないでください」

 

加賀さん真面目だなぁ...

待ちたかったですか、加賀さん待つの好きですよね。

空母は艦載機を放ったのなら、後は待つだけですもの。気持ちは分かります。

 

「そういえば加賀さん。随分と夢見心地が良さそうでしたけど、なにかいいもの見れたんですか?」

 

「秘密です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秘密ですか...

加賀さんが夢見ることですか...

 

 

かぼちゃの馬車に乗った魔女の魔法ではなく、鋼鉄の艦載機に乗った妖精さんの不思議な力で

 

甘いマスクの白馬の王子さまではなく、厳しい表情の第2種軍装の艦長に迎えに来て欲しい

 

 

というところじゃないですか?意外と加賀さんは乙女チックなのでこのくらいは思ってそうです。

私には儚く思えますが、加賀さんはずっと待っていますからね。

 

私たちは艦です。艦が夢を見るのですから儚いなんてことにはならないと信じて、赤城さんは加賀さんを見守りましょう。

 

 

 

 

 

「赤城さん、私の顔になにかついてますか?そこまでじっと見られると恥ずかしいです」

 

本当に無表情ですね…自信がなくなってきました。


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