提督(笑)、頑張ります。 外伝   作:ピロシキィ

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応援ssです。

ダンケダンケ。


外伝 阿武隈の推奨

横須賀鎮守府からの応援要請が解除されて休暇中です。ウルトラハッピーです!

でも休暇の知らせを伝えた途端に潮ちゃんから相談されました。なんでも、妖精さんがうるさいらしいのです。

 

「スゴイ ギョウザ ヨンダ」

 

「シンウチ ハ イチゴ」

 

「コレ デ ダイヤ モ カガヤクノダー」

 

うんちょっと意味が分からない...

何が言いたいのかあたしには分かりません。

 

そんな気まぐれな妖精さんたちは置いておいて、あたしは見たい映画があるのです。潮ちゃんごめんね。

夕張さんに貸して貰ったのに見てないあの映画をね...

当の夕張さんは主演の役者がかっこよくない!本物の方が万倍かっこいいのに!ってぶう垂れてましたが暇さえあればその映画をパソコンで見てたので面白いんでしょう。

 

映画の主役は長野壱業提督。

あたしはあまり知らないんですよね。一水戦旗艦で真珠湾に行った時のお見送りくらいかなぁ...大分遠目だったけど。

それで潮ちゃんにどんな人か聞いたら、あまりそのことは話したくないんです...ってはっきりと断られちゃったの。気弱な潮ちゃんとは思えなかったなぁ。

現状を考えれば気持ちは分かるんだけど。

 

潮ちゃんが少し気落ちしてたので思い出したけど、さっき見かけた金剛さんはどうしたの?

やたら早足で通りすがっていったけど般若みたいで...金剛力士像?

なぜそうなったかは予想がついてイヤ。

榛名さん伝手に「月やあらぬ海や昔の海ならぬ我が身ひとつはもとの身にして」なんて詠んでたって聞けば、不味さが分かるよ...

誰か返歌つけてください、お願いするから。

 

話がそれたね。結論、長野提督はよく分かりません。

でも同期の人があたしで艦長やってたんですよ、知ってます?

特に渋谷くんとの思い出が強いです。

長野提督が艦長に手紙をくれたことがあったり...

 

 

 

 

 

 

あれは幌筵島でまだ作戦を練っていた時、艦長室で主計長から受け取った自分宛の手紙を読んでいた渋谷くんをショーフクさんが訪ねたんだっけ。

手紙の方の差出人は長野提督で内容は妹さんにビーフシチューを作ってやりたいとか、長野商会で水エタノール噴射装置の目処が立ったとかなんとかで普通みたいでした。

 

ただ読んでる渋谷くんの顔つきが訝しんできたんですよね...

なんでもショーフクさんに伝言を頼んだみたい。

 

人事を尽くして天命を待たれよ、必ず助くるのであるからして忍耐が肝要である

 

これを見た渋谷くんはよく分からなかったみたいで考え込みました。

それこそ目の前に来ていたショーフクさんに気づかないほどに...

視線に気づいた瞬間、慌てて小さく頭を下げる渋谷くん。もう司令の顔忘れたのかと思ったじゃない。

 

そんな渋谷くんを尻目にショーフクさんは将棋をやろうじゃないかと声をかけます。

でも渋谷くんは伝言を慌てて口走る訳でした。

そしてショーフクさんは不思議そうな表情をしたと思えば、次の瞬間にはああ、得心したよとそれだけ言って終わり。あたしにはさっぱりですっ!

名将は通じ合う物があるんでしょうか?

 

自分だけが分からないのではつまらないと思った渋谷くんはショーフクさんにどういう意味ですかと問いかけたんだけど...

ショーフクさんはニヤリと笑って将棋を指せば分かるさと返します。

渋谷くんはますます怪訝な思いを深めます。艦長!あたしの力が必要なのね!いや、あたしもよく分からないけど...

 

結局流されて将棋が始まりました。パチパチと音を立てながら局面が進みます。

当時は分からなかったけど、角換わり相腰掛銀という戦型だったみたいです。

 

ショーフクさんが棋は対話なりなどと言いながら指してたんだけど、対する渋谷くんはハイと力なく返すばかり…

そして指し手のペースが落ちてきてそろそろ激しくなるかという時。

ショーフクさんは不思議な手を指しました。王様を1マス横にずらしただけという、ほとんど一手パスと言って良い手を...

 

当時、将棋を良く知らないあたしも不思議に思ったくらいだから渋谷くんはもっと不思議だったでしょう。

攻める手でもなく守る手でもなく、ただ王様を守り駒から遠ざけたんだから。

 

目を瞬かせた後、血気盛んにショーフクさんを攻めたてました。

歩を突き出し銀をぶつけて、桂を跳ねて香車を走らせて、打ち付けた角や自陣飛車さえ切ってまで。

 

顔を真っ赤にして攻める渋谷くん、ショーフクさんは穏やかな手つき、表情のままで数十手続きました。

 

気づいたら渋谷くんが攻めに使っていたほとんどの駒はショーフクさんの駒台の上でした。

攻めの一番の目標であるショーフクさんの王様は右下の隅まで来てしまってます...

 

それに気づいて項垂れる渋谷くん。不思議な将棋でした。でも渋谷くんどうこうよりも、この将棋と手紙の内容は関係あるの?

 

「キスカの敵を討つのではないぞ、キスカの陸さんを連れ帰りに行くんだ。何も攻める必要はないんだ、自分に取って都合のいい状況を作る努力をしろってことだろう。5二玉の意味を考えたまえ」

 

ショーフクさんがまるで生徒に言うように艦長に説いていました。

でも長野提督の言いたいことってなんだろう?

渋谷くんはそういうことですかって呟いて考えてたけど、ヒントになってるのこれ?

 

あたしがショーフクさんの言葉の意味を理解したのは二度目の出撃の後でした。

一手パスしたのは、指す手がないならじっと辛抱することだっていうのね!

渋谷くんの攻め駒がごとく空のキスカ島という駒台に集まる米軍、ギリギリの受けで躱しきったショーフクさんの王様のように米軍の警戒を掻い潜った帝國海軍。

 

一度目の出撃での帰投という一手パスをしてまで場を整える剛胆さを見せたショーフクさんもだけど、これを予期していた長野提督もすごいよね!まさか天佑神助のお告げを渋谷くんにしてたとは思わなかったです!

さすが戦神様?神社があるなら祈願したいくらいです。

 

そんな長野提督の映画、見てみるよ!

 

ところでアタシも長野提督みたいな提督欲s...でも素敵なカイゼル髭も捨てがたいかも。

どうしましょう?渋谷くんも悪くなかったし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

複雑な気分にさせる映画ですね...

艦だったあたしの知らない部分が多々あって考え込んでしまいます。とくに捷号作戦から先のことはあまり知らないから。

 

でもあたしの副長をやったことのある松田くんが出てきたときにはちょっと嬉しかったり...

大和さんの沖縄までの燃料を松田くんが連れ帰った伊勢さんたちから抜き取ってなんとかしたみたいだけど、移しているときに大和さんの艦長に松田くんが詰め寄ってました。

艦長が松田くんの一年後輩もあってか剣幕が尋常じゃなかったなぁ。

俺は今でも反対だ、だがそれでも長野がやると言うから油を掬ってるんだ。いいか、長野の艦隊を無駄にするんじゃないぞ。そう熱くなってるシーンはこみ上げるものがあるの。

あれだけ理知的だった松田くんが感情を露わにしてるんだもの。

 

ただこの話には面白いオチがあったみたい。

なんでもこの後、長野提督が輸送船団を連れ帰る奇跡が起きて、成功を期待していなかった連合艦隊司令部は腰を抜かしたみたいです。

第2艦隊の燃料をなんとか工面したと思ったら、望外の重油が手に入ったんだもの...

生きて帰ってくるはずはないと思って長野プランを省いた沖縄の挺身部隊の作戦を練ってたなんて話があるくらいだしね。

その点、松田くんは自分の経験から長野提督の帰還を微塵も疑ってないというのが光るでしょ。さすがです!ほんとにね。

 

その松田くんは戦後、長野提督の妹さんを手伝ってたみたいですね、井上さんも長野提督の学校の語学の授業を受け持ったって鹿島さん言ってたっけ。

あとあたし的には一水戦はどうなってたやら...聞きたいような聞きたくないような、みんな言うこと聞いてたよね?

まぁあんまり映画に関係ないけどね。

 

あとは大和さんの艦長は同期の二水戦司令に相談に行ったりしてたよ。

そうそう、戦争映画って派手になるまで長いしね。色々背景があったのを確認できたかな?

なぜ沖縄を目指したのか...何の為か知ってもらわないといけないから。

 

それで俺は入学が一年遅れてるから長野さんとは同期みたいなもんだ、階級も一緒だから俺が着いて行ってやる。本人に会えばいいじゃないかって、相談された司令が大和さんの艦長連れて会いに行ったりも。

艦長の実家は金物屋だそうだが、大和はただでかいだけの金物だろうに...お前ならなんとかできるだろう、と江田島の頃から聞いたことのない長野提督の冗談に二人は愕然としてましたね。

いつも無愛想な先輩が微笑んでるもんだから覚悟の程を思い知らされてね。もうね...

 

いろんな小話ありつつ、後に待ち受けるのは壮大な海戦シーン。

あそこまで再現できるっていうのは協賛の長野グループがすごいってことなのかな?

...でもCMのお味噌汁のお豆腐からジェットの旅客機までってどういうことなの?

 

 

 

 

 

 

でもこんな素晴らしい映画があってなんでこんな世相なんですか?

 

ある人は言います。

 

 

 

 

 

 

「奴は開戦前、対米強硬派の末次と連んでいた。海兵の一期後輩の博義王を通して総長の伏見宮に接近してたであろうし、東郷元帥の権威をそいで強硬派の総長にその権威を一本化させている。そして伏見宮と山本長官に2年はやれると吹き込んだ元凶に違いないんだ。奴があの悍ましい頭の回転の良さで開戦を陰で後押ししていたんだ」

 

「待ち焦がれた戦争を起こして好き勝手やって死んだんだ、さぞ幸せだっただろう。勝てもしない戦争で残される人間のことを気にせずにな」

 

一介の海軍大佐に何が出来るって言うんですか?

今わの際にバルキリーを願う人間が国際協調主義だったって考えないんですか?

どれだけあの人たちが踏ん張って...何を思って...

左に吹かれて赤旗に靡く人たちがいます。

 

 

 

 

 

 

「ソ連を破った北方艦隊があった、温存していた空母を主軸にした航空戦力があった、坊の岬で勝てるだけの第2艦隊があった。核爆弾とそれを運ぶ長距離爆撃機も作った。それなのにあのような不平等な講和を仕組むなど、政治的センスが欠けた現場止まりの野蛮人は...」

 

「勝てはせずとももっとやれただろう、だが負けに等しい屈辱を奴は国に擦り付けたんだ。」

 

空母があっても搭乗員はどこから連れてくるんですか?

艦隊があっても動かす重油はどこから取れるんですか?

あの人たちが渡り切った綱がどれだけ細かったと...

なにも知らない人たちが賢し気に、右に傾いた妄言を吐いています。

 

 

 

極々一部とはいえ、アタシでもムカつく...

 

潮ちゃんが悲し気に閉口するのも仕方がないです。

 

すれ違った金剛さんが怒気を孕んだ無機質な眼差しをしていたのも仕方がないです。

 

 

 

映画はこんなにも面白いのに、なんて面白くないところにアタシはいるの?

 

ちょっと困ります。

 

これをみんなが見てくれたら少しは変わるのかな...




寄稿主さんからの補足

本編の方でホモ船団のお話がありましたが、第2艦隊の燃料はその船団からではないという解釈で史実の話を取り入れてます。
具体的に言いますとホモ船団に対して期待の無かったGF司令部は肝いりの菊水作戦に向けて、出撃した苺提督を待たずにその準備を始めたという解釈です。つまり阿賀野とゆくホモ船団の旅の最中に燃料の工面などを終えていたのに、帰って来やがってチクショーという感じ。

またついでにはなりますが、金剛姉様のそれは

提督が歌いながら見上げた月は無く、提督の元で駆けた海は無く、海や月は変わってしまったのに私だけはあの頃ままに残されている。提督も変わってしまったのだろうか?(提督はもう、どこにもいないのだろうか?)

ぐらいの塩梅でございます。

苺さんは30年前後かけてたしかなことをアレンジしてますし、金剛もGF旗艦の経験ありでの従軍の長い武勲艦ですからこういう教養は事欠かないのではないかなと勝手ながら邪推しております。
春でないのは仕様です、念のため(義が機になっているのも仕様です
ただ、児戯に等しい言葉遊びにございますので、どうぞお構いなくお願い申し上げます。

ここまでお目通し頂きありがとうございました。

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