第1話 ~消えたマール
ークロノー
部屋へ入ると王妃様が窓から外を眺めていて、メイドさんが二人いた。・・・リアルメイドだ!空想の中の職業だと思っていたけど、流石はお城だね!これは嬉しいサプライズだ!密かに興奮していると、王妃様が僕に気付いたっぽい。此方を見て、
「来ましたね。・・・二人共、外してちょうだい。この者と話があるのです。」
「かしこまりました。」
・・・とそう言い、リアルメイドに席を外させた。・・・あぁ~っ!リアルメイドのお姉様が、・・・神は死んだ!なんてショックを受けていると、王妃様が僕を見ていて・・・、
「さぁ・・・、遠慮せずもっと近くへ・・・。」
蠱惑的な笑みで僕を誘ってきたのだ!流石の僕もドキドキだよ、リアルメイドの喪失感が消えたね!・・・だって、王妃様・・・めっちゃ綺麗なんだもの!そんな王妃様に誘われたら、・・・行くでしょ!
普段より1.5倍ぐらい、凛々しくなったつもりで王妃様へ近付いていく。・・・うわぁ~、手に汗がっ!ドキドキが佳境に入ろうとした時、王妃様が僕を見て・・・、
「プッ・・・・・・。」
いきなり笑い出したのだ!何で笑うの?僕ってそんなに面白い顔なの?・・・・・・ハッ!もしかしてこれは罠か!僕をからかって楽しんだ後、不敬で牢屋行きって道筋か!所謂ハニートラップってヤツですね、分かります。・・・万事休すか!自分の未来に絶望し、顔を青ざめていると、
「・・・なーんてね、来てくれたんだねクロノ!」
なんて言ってきた。僕の名前を知っているってことは、やはり王妃様は僕を知っている?・・・しかし僕は覚えが無い、そこから導かれることは・・・記憶喪失!?あの穴を抜けて安心していたけど、実は抜けた後に何かをして、そして何かの拍子で記憶を失った・・・。そうであれば辻褄が合う、その時に王妃様と知り合っていたのなら、僕のことを知っている事実に納得が出来る。そうか、そういうことなのか!・・・それならば、ハニートラップの線は消える、純粋にお礼を言いたいのだろう。・・・これで僕の首は繋がったわけだ、良かった良かった!
「・・・ねぇ、私だよ私!マールだよ!何だかみんな、私のことをリーネ様だって言うの。・・・クロノは気付いてくれていたよね?・・・何となく気付いていないんじゃないかって思っているけど。」
・・・マール?・・・・・・マールじゃないか!?何故マールが王妃様になってんの?それよりも僕がマールに気付いていなかったって?・・・そんな馬鹿なことがあるものか、今までの醜態は演技さ、・・・カマをかけただけ。
「・・・フッ、何を言うかと思ったらそんなこと。最初からマールだと気付いていたさ、ベイビー・・・。」
とりあえず、カッコつけて誤魔化すとしようか。・・・あ!誤魔化すって言っちゃった!?
「・・・・・・ほーん。」
凄い蔑んだ目で見てきました。・・・バレバレだったんですね?ごめんなさい。
嫌な沈黙に、僕はダラダラと冷や汗を流す。・・・どうしよう、・・・オロオロしていると、
「・・・でも、嬉しかった。」
・・・・・・え?
「ほんの少し、お祭りで一緒だっただけなのに、来てくれて・・・。」
・・・いきなり語りだしたマールに困惑しつつ、自分の意思ではなく強制的に来た僕は、凄くマールに対して罪悪感が・・・、
「クロノ・・・、ありがと・・・・・・。」
・・・マールのはにかみ笑顔が心を抉る、僕にそんな笑顔を向けちゃあいけない!僕にそんな資格は・・・、
「・・・で、エシャルさんはどうしたの?クロノが来てくれたことは嬉しかったけど、・・・エシャルさんだったら更に嬉しい!ねぇ、エシャルさんは?エシャルさんも一緒に来てくれたんだよね?クロノより会った時間は少ないけど、エシャルさん・・・優しいもん。何処かで待ってるの?それともサプライズを狙っているとか?・・・ねぇクロノ、教えてよ。ねぇねぇねぇねぇ・・・!」
・・・前言撤回、このアマァ・・・!僕はオマケでやっぱり兄さんか!ちょっと可愛いからってコンチクショー!結局何でも兄さんなんですよこの世の女は!・・・クッソォ~、兄さんのリア充!イケメンのモテ過ぎめ!兄さんなんか、兄さんなんか・・・大好きだぜコンチクショー!僕では到底敵わない兄さんが大好きさ!僕が女で他人だったら、兄さんに惚れている・・・間違いなく。
・・・そんな兄さんのことを、マールに話さなくてはいけないのか?少なからず、マールの影響で同じように吸い込まれ、現在進行形で行方不明な兄さんのことを。・・・ハードルが高いんですけどぉ!?どう説明すればいいんだよぅ・・・!そんな僕の心情なんか知らないマールが、僕の肩を掴んで揺さぶってくる。・・・気持ち悪い、止めさせようと思ったけどその前に揺さぶりが止まり、マールを見てみると・・・青ざめていた。・・・というか、震えている?
「・・・・・・な、何?」
青ざめ震えている状態で周囲を警戒し始める、その反応に驚きつつ僕も周囲に視線を向けてみるが、・・・何も無い。一体どうしたのだろうか?
「・・・・・・ひぅっ!!・・・な、何これ?心がバラバラになっていくみたい・・・!こ、恐いよ!私が無くなってしまうみたい・・・。た、助けて・・・、ク・・・・・・。」
マールは頭を抑えながら、嫌々といった感じで首を振り、そして・・・消えた。僕に助けを求めて手を伸ばし、光が四散するかのように消えてしまった。何が何やら分からない僕は、ただ・・・呆然とその場に佇んだ。
暫くしてから起動した僕は慌てた、だって・・・マールが消えたのだから。何故かは分からないが、マールが王妃様であったのは事実。その王妃様が消えたのだ、それ即ち・・・僕は捕縛対象ってなわけですよ!最後に会ったのは僕、故に僕が第一容疑者ってなわけだ。捕まれば・・・、確実に処刑ですよ絶対!!
・・・僕はとりあえず、王妃様の部屋を隅々まで探してみる。しかし何も無かった、・・・一瞬下着を見付けて止まってしまったけど、・・・マールが消えるような仕掛けは無かった。これはマジでヤバイだろう、・・・とりあえず見付からないように脱出してから、これからのことを考えなければ。自分で言うのもあれだけど僕は馬鹿だからね、・・・誰か助けて!
僕は慌てて、そして冷静かつ大胆に部屋から脱出し、城の外へと向かっていたのだが、
「クロノ!」
そんな僕の下に、ルッカが来てくれたのだ!天才幼馴染のルッカが来てくれた、僕は感極まってルッカに抱きついた。
「・・・ルッカ!よく、よく来てくれた!・・・僕はどうすれば良いのか分からないんだ、助けておくれよ!」
そんなことを言いながら抱きついた僕に、ルッカは顔を赤くしながらも拒絶せずにされるがままだ。されるがままの状態で、
「・・・クロノ、・・・無事みたいね?・・・良かった。・・・良かったけど、あの・・・マールって娘は?」
そう聞いてきたので、これまでのことを話した。
抱きついたままではあれなんで、それを止めて話したんだけどルッカは少し不機嫌だ、・・・何で?まぁ不機嫌だったんだけど、僕の話を聞いて、
「・・・何ですって、き・・・消えたぁ!?」
とかなり驚いたっぽい。当然だよね?人がいきなり目の前で消えたんだから。僕の場合は当事者だからね、ルッカ以上に驚いたよ。驚いた様子のルッカだったけど、ちょっと考える仕草をしてから、
「・・・やっぱりね。」
とか言ったんですよ、・・・あれ?ルッカさん、何か知ってます?
「・・・あの娘が消える時、何処かで見た顔だと思ったのよ。」
・・・見た顔だったの?それが一体どうしたの?関係なくない?
「ここは、王国は王国でも随分と昔の王国みたいね。」
周囲を見回しそう言うルッカ、だから・・・どうでもよくない?そんなこと。それよりもマールがですね・・・、
「あの娘は、自分のご先祖様に間違えられたってわけよ。あの娘は私達の時代でも、お姫様・・・。マールディア王女なのよ!」
・・・なるほど、マールディア王女様なわけね。だから王妃様に間違えられたのか、納得!ご先祖様なら似ているのも頷ける、これで謎の一つは解明された。良かった良かった・・・・・・、
「なななな何だって!?マールが王女様だって!!あわわわわわ・・・。」
マールが王女様で王妃様!?王妃様が王女様でマールが王妃様かつ王女様ってわけで、マールがお姫様な王妃様で王女様?・・・わけが分からないよ!
混乱する僕を気にすることなくルッカは語る。
「マール、つまりマールディア王女はこの時代の王妃の子孫なの。」
多少の混乱はあるものの、何とか冷静になり考える。王妃様の子孫・・・、頭の中でマール誕生まで想像する。
「この時代の王妃が拐われた。本当はその後、誰かが助けることになっていたの。でも歴史は変わってしまった。・・・つまり、マールがこの時代に現れ王妃に間違えられた為に、本物の王妃の捜索が打ち切られてしまった。」
この時代の王妃様が拐われた、仮に拐ったのは魔物だとしよう。拐われた後にマールが現れ間違えられる、捜索は打ち切られて本物の王妃様は拐われたまま・・・。
「もし王妃が殺されてしまったら・・・、マールの存在が消えてしまうの・・・。」
拐われた王妃様が殺されたら、・・・子孫は生まれない。・・・つまりマールの存在は消える、生まれてくる未来が無くなる!?・・・それはマズイじゃないか一大事だ!一体どうすれば・・・!!
「・・・でもまだ間に合うわ!今からでも王妃を助け出すことが出来れば、歴史は元に戻る筈!!」
・・・・・・!?そうだ、その通りだ!まだ間に合う筈、王妃様を助けてマールも助けなければ!
「おそらく、この時代の王妃の身に何かあったんだわ。だから、子孫であるあの娘の存在そのものが・・・。とにかく、本物の王妃の行方を捜さなきゃ!」
「その通りだね、ルッカ!慌てたり悩むよりもまず行動、可能性がある限り最善を尽くさなくちゃね!王妃様の命とマールの存在が懸かっているんだ、兄さんがいない分・・・僕が頑張らないと!」
そうしないと、兄さんと再会した時に呆れられるどころか、・・・嫌われてしまう!それだけは避けたい、兄さんに嫌われたらヘタレな僕の未来は真っ暗闇だからね!
「・・・・・・そういえば、エシャル兄がいないわね?・・・まぁあの人のことだから、人助けに命を懸けようとしているんじゃないかしら?・・・ピンチになっている姿が想像出来ないもの。」
・・・マールは兄さんをかなり気にしていたけど、ルッカはあまり気にしないよね?僕の方を気にしてくれるあたり、ルッカは何だかんだで優しいよね。ルッカに失望されないように頑張るぞ!!
・・・で、僕は色々あって城内での情報収集は出来ない身。王妃様の件があるからね、僕は現在進行形で王妃様と部屋で談笑中なのである。そんな僕が城内で情報収集をしてごらんなさい、王妃様が消えたことが発覚し、僕は捕らえられ処刑一直線だ。そういう事情がある為、ルッカ大先生に全てを委ねているまるで駄目な弟、略してマダオな僕なのです。
「クロノ!色々と聞いてきたわよ!」
おぉ・・・!ルッカ大先生、待っていましたよ!
「色々と聞いてまとめた結果、大臣が怪しいと思うわ。王妃が見付かった時に、本当に王妃かと疑っていたみたいだし、独り言で『どうやって彼処から抜け出した・・・。』とか言っていたみたい。」
・・・大臣、犯人はアンタに間違いない!
「・・・で、その大臣なんだけどね。・・・毎日のように、西の森にあるマノリア修道院に通っているみたいなのよね。・・・それにここへ来る前にね、村でも情報収集をしてきたんだけども、西の森付近で村人の行方不明事件が多発しているみたいなの。・・・何か怪しいわよね?」
・・・これで決まりだ、王妃様が囚われているのはマノリア修道院、犯人は大臣で間違いない!ヘタレな僕だけど、直感は凄いと自負している。兄さんにもやるな!と言われる程の勘働きなのだ。
そんなわけで、ルッカの助力で城を抜け出しマノリア修道院へ。王妃様、お待ちください。この僕が絶対に救い出してみせます!マール、君という存在を僕は守ってみせるからね!兄さん、こんな僕を見守っていてください!!行くぞ、おーっ!!
ドラクエとか幻水とか、マイナーなところだとラジアータとかならイケるかも。
D×Dとかでも大丈夫か?
色々考えちゃいますな!