ークロノー
敵の親玉、ヤクラとかっていう名前だったかな?兄さんとカエルさんにとってはそうでもない奴だったけど、僕にとっては死を覚悟する程の魔物だった。その強靭な爪から繰り出される攻撃に、僕は避けるのが精一杯だった。そして僕の攻撃は、薄皮一枚傷付ける程度でしかなかった。途中、カエルさんの猛攻と兄さんの一撃でヤクラが仰け反り、僕はそのスキに全力の一撃を振るう。二人のお陰で初めて、ヤクラに大きな一撃を与えることが出来た。
それで怒ったヤクラは、無差別にトゲを飛ばしてきた。兄さんとカエルさんは、王妃様達の前でトゲを弾きまくる。流石はお二人さん、トゲを物ともしない剣捌き!・・・因みに僕は真似をして失敗、トゲが顔の横をかすっていきました。当然そんなことになったら、避けることに全力を尽くしますよね?お陰様でトゲの雨が終わった時には、肩で息をして服もボロボロです。でも、何とか踏みとどまれて安心しました。
ヤクラも無差別トゲ攻撃でフラフラ、そのスキを逃す二人ではなく猛攻を仕掛けていく。僕も無理はせずに攻撃を、そんな中でヤクラは最後の力を振り絞って体当たりをし始めた。身体から血を吹き出しながら、壁に当たれば跳ねる体当たり、そして徐々にスピードを上げていく。僕には動きが読めないけど、兄さんとカエルさんは違うみたいで。互いに目配せをして、それから兄さんがアゴで僕に指示を飛ばしてくる。それを指すのはカエルさん、カエルさんに合わせろということだね!僕はその指示に従って、カエルさんの下へ。
そしてカエルさんの合図と共に・・・、
ズバッ!!
ヤクラを交差して斬った、僕の一撃がヤクラを容易く・・・!先程まで苦労したのに!カエルさんに合わせたことが良かったのかな?うん。最後のトドメは兄さんで圧巻の一撃、流石は兄さんだよね!いずれ兄さんのようになりたいよ、もっと努力しないとね。
因みに兄さんは血塗れ状態のまま、魔物のお姉さんを抱き締めてからのぐるぐる大回転。戦っている兄さんは物凄くカッコいいけど、それ以外の時は基本おちゃらけている。今もそんな感じ、・・・ヘラヘラ笑っているもの。僕はまだ興奮覚めやらぬ感じなんだよね、兄さんみたいにオンとオフを切り替えられるようになろう。
僕もその後、兄さんの真似をしようとルッカに近付いたら殴られた。これがイケメンとフツメンの格差か、・・・ぐすんっ!
ーエキドナー
匿っていた兵士を救出し、その後・・・修道院の奥にてリーネ王妃を救出。ヤクラが戻ってくる前に、リーネ王妃を連れて脱出を。そう思っていたのだが、その前にヤクラが戻ってきてしまった。その存在感に私は恐怖したが、エシャルさんは余裕でヤクラを見据えていた。私は恐怖しているにも拘わらず、その顔にキュン!ときたのは内緒である。
ヤクラは自身で襲ってくるわけではなく、手下の者達をけしかけてきた。しかし何故だろうか?本来ならば数の違いに絶望すると思うのだが、それとは逆にこの程度・・・と思ってしまう。現に私達は未だ健在で戦えている、エシャルさんのお陰で。エシャルさんはあえて目立つように立ち回り、挑発することで敵の目を引き付けている。そして数を物ともせず、全てを斬り伏せていく。
・・・そうか、そうなのか。エシャルさんがいるから、エシャルさんが勇気をくれているから・・・。エシャルさんの全てが私を、リーネ王妃に兵士の二人を勇気付けてくれる。その姿と共にある限り負けない、そう思えるのだ。なら私のすべきことは、少しでもエシャルさんの助けとなるよう戦うのみ。リーネ王妃に傷を付けさせません、ですので存分にその力を振るってください、・・・エシャルさん!
途中で新手、私達に助力をしてくれる者が乱入した。カエルに赤髪のツンツン、眼鏡少女。それにより私達の戦いは楽になり、勝利の天秤は此方に傾いた。そして驚いたことが二つある、一つ目は赤髪のツンツンがエシャルさんの弟だということ。確かにエシャルさんと似ている、似てはいるが何やらヘタレ臭がする。懸命に戦い実力はあるようだが、纏う気が何とも・・・情けなさを感じる。・・・がエシャルさんの弟であるのなら、是非とも仲良くしたいと思う。だっていずれ私とエシャルさんは・・・、ウフフフフ♪
後もう一つ、カエルの存在だ。私に自覚はあまり無かったことだけど、ミアンヌ族でも上位にいた。故に話を聞いたことがあるのだ、・・・カエルの話をだ。彼は元々人間で、魔王軍に挑んできた人間の一人だ。もう一人はサイラスと言って、知勇に優れた最も強い人間で、彼はその相棒・・・名は確かグレン、・・・と言ったか?そんな強い二人組だったのだが、サイラスは魔王に殺されグレンは・・・、あのビネガーのせいでカエルにされたと、・・・そう聞いている。まぁ何が言いたいかというと、この場にいるカエルがあのグレンであるのなら心強い。グレンであるのなら強者であるに違いないからだ、・・・エシャルさんには劣ると思うがな!
協力者乱入後、エシャルさんの見事な技でヤクラが本性を現した。・・・が、ヤクラの攻勢は全て阻まれ、奴は窮地に陥った。私達はというと、エシャルさんとカエルのお陰で健在だ。この二人には流石としか言いようがない、ついでに弟くんと眼鏡少女も頑張った。そんなヤクラが最後に繰り出したのがデロデロタックル、何とも頭の悪い技名ではあるが威力は奴の技で最強。その技で幾人もの人間を引き殺してきた、それを繰り出してきたのだ。・・・どう防げば良いか、そう考えていた時にエシャルさんが・・・、
「奴の標的は知っている、エキドナ・・・!奴を葬る為にはお前の力が必要だ、力を貸してくれ!!」
それを聞いた私は当然、
「はい、この私に出来ることなら喜んで♪」
エシャルさんが私を頼ってくれた、・・・嬉しすぎる♪
エシャルさんの頼み事は単純なものだった、カエルと弟くんが動いたら投げ飛ばせ・・・と。正確にはカエルと弟くんが動いたら、ヤクラの方へリーネ王妃を飛び越えるように投げる。私の下半身でエシャルさんを投げればいい、それだけなのにドキドキする。私とエシャルさんの・・・、初めての共同作業・・・。興奮するなということが無理、・・・エシャルさんを間近で感じることが至福なのだから。
因みに、ヤクラはエシャルさんに両断されましたとさ。その後の記憶があやふやだ、・・・何だかとても良いことがあったような?う~ん、・・・気になる。
ールッカー
何だか怒涛の展開よね、うん。マールが消えて、時代を越えて、リーネ王妃救出へ、・・・短期間で一生分の内容よね。・・・で、今はリーネ王妃救出の真っ最中。なんやかんやで親玉戦なんだけど、そこでエシャル兄と再会するし、エシャル兄&カエルさんが凄く強いし、クロノが頑張っていてカッコいいし、私は私でリーネ王妃を兵士&魔物と一緒に守っているし、・・・何かコレ夢?って感じ。・・・まぁこれは現実で、私は死にたくないから全力サポートですけど。・・・ほら、私ってばか弱い女の子だし?メインは男三人に任せましょ。・・・そういえば、カエルさんってば男よね?
・・・戦いの最中で思ったこと、・・・私ってば存在感が薄い!チマチマチマチマ・・・ッ!銃を撃ってるだけよね!全力サポートとは言ったものの、か弱いとは言ったものの、ここまで影が薄いと危機感を感じるわ!ここはドデカイ一撃で目立ちましょう!この天才ルッカ様がコレだけで終わる筈がないもの!・・・密かにもう一個、持ってきましたともナパームボム!これで一網打尽よ、オ~ホッホッホッホッ!!
・・・失礼しました、ごめんなさい!馬鹿なことは考えません、全力でサポートに徹します!!
・・・ナパームボムを投げようとしたら、それに気付いたエシャル兄に睨まれました。『味方にも被害を出すつもりか?アァンッ!!』って目をしていました!あまりの恐怖に漏れそうでしたけど踏ん張ったわ!エシャル兄は普段優しいけど、怒ったら鬼神だからね。イケメンだから、あの冷たい目が更に恐く見えるのよ。・・・・・・頑張ろう、サポートを。
全力サポートをしていたら、カエルさんとクロノの連携技からのエシャル兄の一撃、親玉真っ二つです、残酷な現場です、気持ち悪い・・・。そんなわけで、リーネ王妃を見事に救出したってことね。後は城まで連れていって、そこで初めてミッションコンプリート!ってわけよ。ホッと胸を撫で下ろす私の近くで、エシャル兄が魔物のお姉さんをぐるぐる回していた。喜び大回転ねぇ~、お姉さん・・・笑顔で気を失っているっぽいわ・・・。私も昔・・・やられたからねぇ~、あの時チビッ・・・げふんげふんっ!良い思い出だけだわ、そう思わないとね!私の過去に何もない!!
・・・それを見ていて、羨ましそうにしていたクロノ。私の方へ来たけど、殴って黙らせたわ。・・・だって恥ずかしいじゃない?こんな人の目のある場所で・・・。こういうことは二人きりでやってもらいたい、そうすれば私も素直に・・・。
ーカエルー
俺はクロノの兄と肩を並べ、ヤクラに向い剣を振るう。・・・クロノの兄との共闘に頬が緩む、初めて共に戦うというのに分かるのだ。クロノの兄がどう動くのかということ、この感覚が久々でとても心地良かった。・・・そう、この感覚はサイラスと共に戦った時と同じ。そう思っただけで、剣を握る手に力が入り、いつも以上に張り切ってしまう。忘れていたあの時の情熱が、俺の身体を包み込んでいくようだ!
俺とクロノの連携に、クロノの兄が振り下ろした一撃。それで全てが終わった、ヤクラを討伐し王妃様の安全を確保したのだ。久々の感覚で火照った身体を落ち着かせ、剣を鞘に納めて息を吐く。そして自身の手を開き、再び握る。・・・握った手・・・拳には、いつも以上に力が入っている。戦い終えた後の空しさから、開いた手を握り拳にした時、力が入らなかった普段とは違う。・・・今もまだ、俺の拳には力が・・・情熱が残っているのだ。
握った拳を見詰めていた俺だが、クロノの兄はどうなのだろう、・・・そう思い視線を向けると、
「エキドナ~ッ!勝利も勝利、大勝利の完勝だぞぉ~っ!」
「きぃやあああああっ!!」
魔族の娘を抱き締めて、ぐるぐると振り回して笑っていた。・・・クロノの兄は、身体全体を使って喜びを表している。戦闘中の勇ましさがなりを潜め、無邪気な子供のように・・・。敵を倒せば倒す程、心は荒んでいくものなのだが、この男は違う。人の温かさを忘れずに剣を握っているのだ、討ち滅ぼす戦いではなく守る為の戦いをしているのだ。・・・クロノの兄と、サイラスが重なって見えた。・・・サイラスも守る戦いをしていたな。
・・・俺も変わらないといけないな、時を進めないといけない。後悔ばかりしていられない、前へ進まなくちゃならない。忘れちゃいないだろう?サイラスは俺に託したんだ、・・・今からでも遅くはない。・・・ありがとうクロノの兄、お前のお陰で失ったモノが再び手に入りそうだ。
・・・・・・そういえば、きちんと名前を聞いていないし、名乗ってもいないな。自分の馬鹿さ加減に笑えてくる、まずは名乗り上げか?不思議とこの男、クロノの兄とはいずれ・・・共に戦うことになるような気がする。そんな気がするからな、きちんと名乗らなければならん。俺はタイミングを見計らって、
「お前のお陰で王妃様を救うことが出来、失ったモノも手に入りそうだ。・・・俺の名はカエル、良ければ名を教えてはくれないだろうか?」
この物語のカエルは、森に引き籠りません。