ーエシャルー
ヤクラを両断した俺は、剣の血を振り払い鞘に納める。そして大きく伸びをしてから、エキドナの方に視線を向ける。
「・・・・・・?」
エキドナは不思議そうな顔をしている、そんな彼女に向けて駆け出し抱き締める。エキドナはあわあわしていたが、そんなことを気にせずにそのままぐ~るぐる。
「エキドナ~ッ!勝利も勝利、大勝利の完勝だぞぉ~っ!」
「きぃやあああああっ!!」
悲鳴を上げてはいるが、エキドナも嬉しそうで何より。ある程度回ってから解放したんだけど、エキドナが幸せそうな顔で気絶してたから慌てたよ。
気絶したエキドナを床に寝かせ、やっちまったなぁ~・・・と思っていたら、
「お前のお陰で王妃様を救うことが出来、失ったモノも手に入りそうだ。・・・俺の名はカエル、良ければ名を教えてはくれないだろうか?」
と俺に話し掛けてきたのはカエルだった。・・・そういえば、自己紹介といいますか名乗ってなかったな。リーネ王妃の言葉から彼の名を知ったわけだし、うん・・・俺もきちんと名乗らなければ。
「リーネ王妃様の救出は当たり前のこと、知ったのならやらねばならんだろう?・・・因みに俺の名はエシャル、既に知っているとは思うがそこでヘタっているクロノの兄だ。そしてそこで気絶しているのが、ミアンヌ族のエキドナ。彼女の協力で兵士の二人は助かり、最終的にリーネ王妃様を救出出来た。それにカエルのお陰で俺もエキドナも無事、そしてリーネ王妃様も守りきることが出来たんだ。弟とルッカのことも感謝したい、・・・ありがとう。」
努めて爽やかな笑顔で、カエルと握手する俺。血塗れなのは許してくれよ?
お互いに名乗りあってから、今までの経緯をカエル達に話す。クロノ達も俺達に経緯を話し、それには俺は勿論のこと、カエル達も驚いている。
「・・・となると、エシャルとクロノ、それにルッカは俺達の未来から来たというのか?・・・にわかに信じがたいが、ルッカの武器を見る限り・・・嘘ではなさそうだ。」
う~む・・・と、唸りながらも俺達が未来人だと信じてくれるみたいだ。リーネ王妃も、
「・・・私の子孫を救う為にここまで、・・・危険を省みずに私を救ってくれたのですね?・・・なんて優しく、素晴らしい方達なのでしょう!」
リーネ王妃は目に涙を溜めつつ、キラキラと尊敬の眼差しで俺達を見てくる。・・・うーむ、無事にリーネ王妃を救うことが出来て良かったよ。いや、マールの存在が懸かっていたなんてさ、・・・知らなかったからね。
・・・考えることが多く、思考の中に沈んでいきそうになったが踏みとどまる。とりあえずは何とかなりそうなんだ、考えるのは後だな。今・・・優先すべきことは、リーネ王妃を無事に城へと送り届けること。そして、マールの存在を確認すること。・・・マールが消えたとされる王妃の部屋へ行けば、何かしらのアクションが起こるであろうと予想する。
・・・・・・ふむ、
「・・・少し考えたのだがカエルと兵士のお二人、クロノ達にはリーネ王妃様を城へとお連れすることを頼みたい。俺はエキドナが目覚めるまでここにいるよ、ついでに残党とかが潜んでいないか調査したい。所謂、殿みたいなものだな。」
俺がそう言うとクロノが、
「えぇ~っ!兄さんそれは危ないよ!もし本当に潜んでいたら大変だよ?一緒に行こうよ!もしくは僕も一緒に残るよ!」
なんて健気に提案してくれたのだが、
「いや、エシャルは大丈夫だろう。逆にクロノ達が共にいると足手まといになる、・・・そうだろ?」
カエルがそう言い、俺は頷く。クロノはしゅん・・・と落ち込む。
「クロノ、マールのことがあるだろう?同じ時代から来た知り合いがいた方が、マールも心細くない筈だ。それに殿は大事なんだ、リーネ王妃様を無事に送る為にはな。」
もし、まだ魔族が潜んでいたのなら・・・、追撃戦となることは確実。追撃戦・・・追われる身程、危険な戦いはないからな。その芽を摘むには誰かが殿をせねばならん、幸いにも俺は強い。それにこの修道院を良く知るエキドナがいる、俺がその役に相応しいというわけさ。
クロノは俺の目をジッと見て・・・、
「・・・そうだね、僕にはそういうことはよく分からない。分からないけど、リーネ王妃様とマールのことは任せてよ!それが僕のやるべきことなんだよね!」
そう言って分かってくれた、お兄ちゃんは嬉しいぞクロノ!それと同時に悲しいぞ、クロノ!お前・・・、殿の意味が分かっていないだろ?これから先、これぐらいは知っていないと苦労すると思うぞ?何となくだけど、俺達は戦い続ける運命にあると思うんだ。故にせめて、戦闘に関することを学んでもらわなければ。・・・俺達が生き残る為に!う~ん、空いた時間があったら勉強だな、クロノ!俺は密かにそう決心した。
そんなわけでクロノ達を見送り、エキドナが目覚めてから探索を開始した。エキドナの案内で幾つもの部屋を調べたが、魔族の姿はなく宝だけを手に入れた。役得役得♪魔族の姿がないってことは、リーネ王妃達は道中安全に城へ向かっていることだろう。・・・俺達も後を追い、合流しようと考える。そうと決まれば、エキドナには再び人間へと化けてもらわねば。その方が人と遭遇した時、面倒な問答をしないで済むからな!
・・・なんて考えて、エキドナは修道女姿になり、さぁ後を追うぞ!・・・と思った矢先、俺は強烈な違和感を感じた。・・・ヤクラ、・・・ヤクラを倒した部屋がある方角から微かにだが・・・、
「・・・エキドナ、後を追うのは中止だ。・・・何かいるぞ、・・・ヤクラのいた部屋に何かが。」
「・・・・・・私には何も感じることが出来ませんが、・・・エシャルさんが言うのであれば。」
そう言ってエキドナは俺に従い、二人でヤクラのいた最深部の部屋へと戻った。
ー???ー
「・・・というわけで頼むぞ、マヨネー!あのバカが先走らないように釘を刺しておいてくれ!」
「・・・えぇ~っ、あたいが行くんですか?ビネガー様が行けばいいのヨネ~、ヤクラはビネガー様の派閥だし。」
「ウルサイぞ、マヨネー!・・・ほら、アレだアレ!・・・え~と、・・・そう!お前空魔士マヨネーじゃないか、ワープで一瞬じゃろ!」
「・・・えぇ~っ!ビネガー様もワープが使えるのヨネ~!」
「えぇいっ!行けと言ったら行け、このあばずれ!」
「きぃ~っ!あたいはあばずれじゃないのヨネ~!バカ!アホ!マヌケ!デブ!ビネガー!!」
「こらっ!ビネガーは悪口じゃないだろ!!」
「・・・つーん。」
シュン・・・ッ!
「・・・あっ、逃げおった!・・・おのれマヨネー!お前の恥ずかしい姿を想像し、オカズにしてくれるわ!」
ーマヨネーー
全く、あの緑ジジィには腹が立つのヨネ~!こんな見目麗しいあたいに対して、あばずれ~だなんて!本当に失礼しちゃうのヨネ~。緑ジジィとソイソー、あたいで三魔騎士だぁ~って緑ジジィが悦に入っているけど、全くこれっぽっちも興味がないのヨネ~。興味がないどころか迷惑なのヨネ~、どうにか辞めることが出来ないかしら?
・・・う~ん、考えても良い案が浮かばないのヨネ~。いっそのこと、魔王軍を抜けようかしら?そうすれば、緑ジジィのイヤらしい目やパシリ扱いから逃れられるかも!・・・でもでも、裏切り者として命を狙われるかもヨネ~・・・。魔王様級とまではいかないけど、あたい並かそれ以上の人が現れないかしら?そしたらあたい、あっさり魔王軍を抜けちゃうのヨネ~♪
・・・とりあえず、愚痴と未来への展望はここまでにするのヨネ~。緑ジジィの依頼というか、命令をこなさないといけないのヨネ~。面倒だけど仕方がない、マノリア修道院に行ったらヤクラを苛めるのヨネ~。ストレス解消、今から楽しみなのヨネ~♪
マノリア修道院へ来たのは良いけど、・・・これは一体何事?周囲はボロボロだし、同胞達は死んでいるし、当のヤクラは真っ二つなのヨネ~。考えられるのはただ一つ、この場所がバレて襲撃されたってことだけど、何故かしら?・・・・・・まぁ考えられるのは、ヤクラの奴が先走った結果か、しくじった結果のどちらかヨネ~。ありのままを緑ジジィに報告、ついでに魔王様へ告げ口をしてやろう。緑ジジィ、コテンパンに怒られることが予想されるのヨネ~♪ウフフフフフ・・・、いい気味ヨネ~♪
ゾク・・・!
「・・・・・・!!」
今、・・・何か殺気を感じたのヨネ~。何者かがマノリア修道院内にいて、この部屋へ近付いてきている。たぶんというか確実に、ヤクラを殺してここを壊滅に追いやった者が・・・。今すぐ戻って報告するのが役目だけれど、どんな奴か気になるのヨネ~。殺気の強さから考えるに、あたい達三魔騎士に匹敵する程の者。・・・グレンちゃんかしら?でもでもグレンちゃんはカエルになって、森に引き籠っている筈ヨネ~?・・・想像がつかない、とりあえずは待ち構えてみるのヨネ~。倒せるのなら倒して、脅威を無くすのもあたいの仕事ヨネ~。ヤクラの尻ぬぐいは気に入らないけど、仕方がないのヨネ~・・・。
色々と想像したり、考えたりしていたら・・・、
バーンッ!!
と、勢いよく扉が開かれたのヨネ~。入ってきた人物を見た時、不覚にもときめいた!
「・・・やはり魔族!戻ってきて正解だったようだ。」
「・・・・・・!?空魔士マヨネー・・・!」
物凄いイケメンの人に、・・・魔族?・・・あ~、裏切り者ってわけなのヨネ~。まぁあたいは裏切り者だからって怒らないのヨネ~、私もそれに近い立場だし。それよりも名乗らなければならないのヨネ~、お約束として。
「貴方達が侵入者ね?・・・初めまして、あたいは三魔騎士の一人、空魔士マヨネー!!」
・・・セクシーポーズでの名乗り上げ、決まったのヨネ~♪
この物語のマヨネーはれっきとした女性です。