ーエシャルー
俺は自宅にて、後に来るであろう結婚に想いを馳せる。今の俺はかなり緩みきった顔をしているであろうが、誰もそれに気付くことはないだろう。この場には俺の他に三人もいるのだが・・・、
「私達はいずれ家族になるのだよ、わははははは!」
「ウフフフフフ、末長くよろしくお願いします。」
「未来はバラ色なのヨネ~♪オ~ホッホッホッホッホ!」
・・・とまぁ、俺を置いて盛り上がっているのです。何ともおめでたい方々なのだろうか?・・・俺も含めてだけどもね、わははははは!
そんな感じでそれぞれ盛り上がったところで、次に四人で話し合う。話し合うと言いますか・・・、この家に住むにあたってのルールを教えていると言ったところかな?世間一般的なルールなのですが、エキドナとマヨネーさんは時代が違うし、ましてや種族が違うからねぇ。ずれている可能性もあるわけだし、お互いに確認し合うことは大事だよね?
四人で顔をつき合わせていると、
バァァァァァァンッ!!
という音と共に、玄関の扉がおもいっきり開けられ、
「お父さん、帰ってくるのが遅いよ!私とエーちゃんの家で何をやっているの?お母さんが怒っているよ!」
と、怒鳴りながら入ってくる美少女が。灰色の螺旋状ツインテールがお嬢様っぽく、ツリ目気味ではあるが可愛らしい小顔、ゴスロリ?っていうのか分からんけども高そうな服を着ており、見た感じが人形のような美少女。彼女こそが町長さんの一人娘で俺の同居人であるミントだ、俺がいない時ってわりと凶暴になるのかな?威嚇するように口元から覗く八重歯がキュートだぜ、・・・それと同時に玄関の扉は壊されていないか心配ではあるけども。
わりと派手に登場した彼女だが、俺達を見てキョトンとする。・・・そりゃそうだろうね?父親である町長さんだけかと思いきや、俺と見知らぬ美女が二人もいるのだから。しばらく時が止まり、そのことに気付いたであろうミントは、
「・・・あわわわわわ、ちなうんですちなうんです!私・・・別に乱暴とかじゃなくて、・・・っていうかエーちゃんお帰りなさい!実家のお話を聞かせてもらいたいな♪・・・それと此方のお二人は誰?どんな関係なのかな?・・・かな?・・・ミント、とても気になっちゃうぞ☆」
慌てて豪快な登場を否定しつつも、俺に笑顔でお帰りと声を掛けてから一気に間合いを詰め、一瞬にして光の無い目となり小首を傾げて聞いてくるミント。めっちゃ可愛いけど、とっても恐いのは気のせいかな?
・・・・・・あの後、懇切丁寧に説明をした。因みに町長さんとミントは、俺がワープを使えるってことを知っている。その延長と言ってもいいのか分からんが、俺が過去に飛んで色々関わり、そこでエキドナとマヨネーさんと出会ってその流れで連れてきたと言った。一番重要なことである二人は魔族、そのことを隠さずに教える。この先結婚がどうのっていうのもあるが、町長さんとミントは俺の中で家族と言ってもいい関係。故に隠し事はダメ、隠してバレた時の光景を思い浮かべるだけで気が滅入るし。それに二人はこの程度では驚きもしないだろう、何てったってこの町の住人なのだから。
案の定、町長さんとミントは簡単に受け入れた。この事に、エキドナとマヨネーさんの方が驚いていたけれど。ぶっちゃけ、チョラス町の住人はみんな驚かないだろう。何故かって?・・・その理由は簡単さ、この町には北の廃墟があるからね。そう、・・・魔物被害が多いわけで人外を見慣れているのだよ。それに魔族と言っても、二人は見た目が完全に人間なのである。しかも話が通じるしコミュニケーションが取れる、それが大きいと見る。・・・流れのままにこの町で生きると決めた俺だが、この町と決めて良かったと心から言える。・・・何と言いますか、これから先もこんな感じで俺ん家の住人が増えていきそうな予感がするしね。
・・・で、色々とミントに説明しつつ彼女の様子を窺っていると、何だか俯いてプルプルしている。何かマズったか?と思ったが、
「・・・嬉しい!まだ先のことになるけれど、私・・・エーちゃんのお嫁さんになれるのね?・・・夢みたい!」
と、笑顔で抱き着いてきた。・・・え?嬉しいの?自分で言うのもあれだけど、三人と付き合うっていうわりと最低なことを言っているんだけど。俺的にその気はなかったが、町長さんとエキドナ、マヨネーさんに熱く語られて了承しちゃったという情けなさもあるが。しかしながらミントは、
「過去に行ったってことにも驚いたし、美人魔族のお二人と良い感じっていうことに思うこともあるよ?・・・でもそれ以上に、エーちゃんが私と結婚してくれるってことに対して嬉しいの!このままズルズルと曖昧なままなのかな?って思っていたから、・・・本当に嬉しいの。」
俺に抱き着いたまま、目に涙を浮かべて見上げてくるミント。・・・俺は何とも言えない感情に包まれる、・・・俺ってば最低だな。ミントにそんな想いを抱かせていただなんて・・・、俺もきちんと考えないとな。今回のことは忘れないようにしよう、そして誓おう・・・ミントを大切にすると。エキドナとマヨネーさんのことも守ると言ったからな、勿論大切にするさ。
何て思っていると、
「・・・でもエーちゃんはモテモテだからね、もっと増えそうだよね?聞くところによると、王女様も怪しいし。一夫多妻だからって調子に乗ったら・・・、怒るからね?」
抱き着く力が強まり、俺に向けられる笑顔が恐い。光の無い目に弧月に歪む口元がヤバイっす、当然のこと・・・善処します!・・・としか言い様無いよね?自分で言うのもあれなんだけど、無自覚でフラグを立てているみたいですし。・・・この先どうなるんでしょうね?・・・アハハハハハ。
ークロノー
兄さん達と別れてから、僕はマールと二人でガルディア城を目指すことになった。過去に行ったことにより、歴史とか何かしらが変わってしまうかもと言われたけど、今のところはそんなこともない。ただ・・・、
「お前商売が成功していいなぁ!その勢いで二人目の奥さんもゲットしてよぉ、・・・羨ましいぜ!」
「・・・俺としてはその気が無かったんだけどもね、押し切られてしまったわけでして。・・・この先不安なんだよね。」
「・・・っかぁ~っ!何が不安だこの馬鹿!・・・くっそぉ~っ、・・・俺も面倒が見れる程の甲斐性を手に入れなきゃだな!」
・・・とかいうことを聞きました、・・・奥さんが二人?何を言っているんだろうと思ったんだけど、視線を向ければお酒を飲んでいまして・・・、ただの酔払いだと思いました。この時はそう思っていたんだけど、僕達の時代は確実に変わっていました。何故そう言い切れるのかって?そりゃあ・・・、町中であんなモノを見たらね。
リーネ広場を抜けてトルース町に出たところで違和感、広場内での人々の会話に首を傾げてはいたんだけど、町中で感じたのは・・・、
「・・・何かが違う、僕がいつも見ていた町並みと何かが違うんだよなぁ~・・・。そもそもこの区画って、・・・こんなに発展してたっけ?う~ん・・・・・・。」
何かが違うんだけど、本当に何が違うんだろうか?モヤモヤするなぁ~・・・、僕の中ではいつもの光景っていう思いと、違う所があるっていう思いがせめぎ合っている。ウンウン唸っていると、一緒に歩いていたマールが何かを見付けたらしく、
「ねぇクロノ、・・・あれを見てよ!あの石像って誰かに似ていないかなぁ、とても身近な人で・・・。」
マールが指差す方向には立派な石像が、う~ん・・・よく出来た立派な石像だね。・・・マールが言うように誰かに似ているような気がする、僕達はその石像に近付いてよく見てみた。
・・・この背格好、この顔は何処かでと言うかさっきまで一緒にいた人に似ている。
「台座のプレートに何か彫ってあるね、・・・え~と。『未来より訪れし勇敢なる剣士へ、我らより感謝を込めて・・・。』・・・だって!・・・じゃあこの石像ってやっぱり?」
これは確実に兄さんをモチーフにした石像だね、彫られている内容を見る限りはさ。僕達が去った後に、王様と王妃様が命じて作らせたんだろう。・・・まぁメインで戦ったのは兄さんだし?それに魔族側の大幹部を味方に付けて、重大な敵の作戦を知ることが出来たし?戦功一位っていうのかな?そりゃあ兄さんだけどもさ、僕だって・・・僕達だって頑張ったんだよ?チョロッとでも僕達に感謝の気持ちとして、兄さんの石像の傍ら辺りに僕達モチーフの石像が欲しかったと思うのは我が儘でしょうか?・・・・・・どうせ中世時代もイケメンが中心ですよね、世の中不平等だよ!
・・・僕は世の中のことを考えながら、マールは何やら上機嫌で城へと向かう。微妙に不貞腐れていた筈なのに一転、マールに何が起きたのだろうか?兄さんは、『女性っていうのは色々と面倒でね、秋空みたいに変わりやすいのさ。・・・だからクロノも気を付けな!と言っても、お前にゃルッカぐらいしかいないわな。』とか言っていたっけ?女の子の知り合いはルッカしかいないけど、・・・僕はイケメンではないからね!気を付ける意味がないけど、マールと知り合いましたからね!女心を鍛えるチャンスじゃん、とりあえず・・・、
「マールは元気が良いね、・・・元気があまりなかったと思ったら復活だもん、・・・良いことでもあったの?」
と聞いてみました、僕は回りくどいことが苦手だからね、ストレートに聞くしか出来ないのさ。今はこんな感じではあるけれど、こうやって女の子と接することで鍛え上げようと思うのさ。目指せ、内面イケメン!いつかは兄さんに、内面だけでも近付きたい!
「・・・元気?良いこと?そりゃああったよクロノ!エシャルさんの石像だよ?好きな人が歴史に残って今日まで存在していたんだよ?これを喜ばずして何を喜べばいいの?・・・クロノも喜ばなきゃダメなんだよ?クロノのお兄さんであるエシャルさんなんだから・・・!クロノも弟である以上、エシャルさんのようになる可能性があるんだから今からでも・・・・・・・・・。」
・・・そういえばマール、兄さん大好きっ娘でしたね?・・・聞くんじゃなかったと、今更後悔しても遅いよね。マールがグダグダと語り出したもの、・・・憂鬱だ。
マールの話を右から左へと聞き流しながら歩き、遂に到着しましたガルディア城。やっぱり中世のガルディア城より立派だよね、城の横には空中刑務所がある・・・・・・し?ってあれ?刑務所ってあんなに立派で大きかったっけ?・・・これも過去に行った影響なのかな?まぁ犯罪者が減るって考えればいいよね?平和が一番さ!
「・・・やっとお城に着いたね!退屈だからって城を内緒で飛び出してきたけど、色々なことがあり過ぎて疲れちゃったよ。お父様には心配を掛けちゃった、・・・ちゃんと謝らなきゃいけないよね。・・・・・・大臣に怒られちゃうんだろうなぁ、中世の大臣だったら優しく怒るんだろうけど。・・・うぅ~っ、何か恐くなってきたけど何とかなるかな?・・・クロノ、私と一緒に怒られてね?」
・・・僕も怒られるの?やっぱり。知らなかったとはいえ、王女様を連れ回したのは事実になるわけで、・・・そこは諦めるしかないのかな。・・・フォローはしてくれるよね?マール、僕は捕まりたくないよ?・・・信用してもいいよね?・・・ね?
かなり不安ではあるけれど、ここまで来たんだから腹を括るしかない。兄さんにも頼まれているしね、・・・そう考えながらマールに続いて城へと入る僕でした・・・っと。
次回は、サックリと王国裁判かな?