ーエシャルー
リーネ広場の奥にある空きスペースにて、ルッカと親父さんが準備を終え、
「さぁさぁ、お時間と勇気のある方はお立ち会い!これこそ世紀の大発明!超次元物質転送マシン1号だ!!」
集まった見物客に向けて、親父さんが軽快な口調で自分達の発明品を紹介する。・・・よかった、丁度始まる時間だったみたい。マールちゃんの寄り道で、少し時間を食っちゃったからね。クロノは少々焦っていたけど、俺は焦りませんよ。多少遅れたとしても、俺と初対面であるマールちゃんには何も起きないからね。主にクロノが絡まれるだろう、遅れたことに対してと、女の子連れに対して。・・・ルッカは昔から、クロノのことが大好きだからね。近付く女の子は、クロノに気付かれぬように撃退してきたわけだし。今回はどうなるんでしょう?・・・フフフ。・・・マールちゃんに飛び火する可能性もあるが、そん時は俺が!
・・・っと、それはどうでもいいか。今は発表に間に合った、それが重要だ。
「早い話がこっちに乗っかると、あっちに転送されるって夢のような装置だぁ!そして、こいつを発明したのが頭脳明晰、才色兼備の、この俺の一人娘ルッカだ!」
身振り手振りで説明する親父さんに、そこそこの歓声を上げる見物客。・・・あまりよく分かっていないみたいですよ、親父さん!まぁそんな俺も、どういう理屈で転送されるのかは分からんけども。しかし、例えそうだとしても、転送マシン・・・凄いじゃないか!俺が昔、手品と嘘を吐いてワープをしたことがあったのだが、まさかそれを科学で再現するとは・・・!親父さんが言うように、まさに頭脳明晰、才色兼備の才女よのぅ、ルッカよ。・・・因みに、さっきチラッと言いましたが、俺・・・短距離ワープが使えます。何故かは知らんけど、・・・才能か何かだろうとは思うよ?
そんな感じで、親父さんに紹介をされたルッカはというと、テンションがバリ高の状態でドヤ顔を晒していた。・・・まぁこんな凄い物を作ったら、ドヤ顔をしたくなる気持ちは分かるよ?ボケーッと見る俺達だが、ドヤ顔ルッカはこっちに気付いたっぽい。
「クロノ!・・・とエシャル兄!」
うわっ、ついで感が半端ない!酷いぞ、ルッカ!
「待っていたわよ、二人共!実は、このテレポッドの転送に挑戦する人が決まっていなくてね。こうなったら・・・クロノ、・・・に何かあったら悲しいからエシャル兄!やってくれない?」
うぉいっ!俺はどうなってもいいってか?ルッカちゃんよ!そりゃあないぜ、お兄さんはとても悲しい!・・・が、弟を危険に晒すわけにはいかん。・・・やったろうじゃないか!
「面白そう!エシャルさん、やってみなよ。私とクロノが見ててあげる!ねっ、クロノ!」
ピョンピョン飛び跳ねちゃって、・・・大丈夫だマールちゃん!最初からやるつもりだったから!
ゾクッ・・・!!
何事!?突然、寒気が・・・!
「・・・気が変わった、・・・クロノがやりなさい。」
「・・・うぇっ、僕!?」
・・・ルッカだったのか、謎のプレッシャー。マールちゃんがクロノの名前を出したから・・・、自分の知らない女の子が・・・。
「・・・左のポッドに乗ればいいのよ。・・・つーか、乗れ!」
とクロノを蹴り上げて、ポッドに乗せるルッカ。・・・うーん、クロノが関わると恐いわ。
「スイッチオン!」
「エネルギー充填開始!」
左のポッドに蹴り飛ばされたクロノ、それを見ていた親父さんは流れるようにマシンを起動。ルッカと二人で操作をし始めた。クロノはポッドの上で悶え、マールちゃんは俺の腕にギュッと掴まり・・・、
「・・・クロノ、大丈夫だよね?」
面白そうと言ってはいたが、そこは女の子。直前になって不安になったのだろう、俺はマールちゃんの頭を撫でて、
「大丈夫だよ、マールちゃん。ルッカは天才だからね、絶対に成功するさ。」
と優しく語りかける。そんなやり取りをしていると・・・、
「・・・うひぃっ!」
バシュンッ!!
クロノの情けない悲鳴と共に、その姿が左のポッドから消えた。その瞬間、マールちゃんの掴まる力が強まったが・・・、
バシュンッ!!
「・・・あひぃっ!」
またまたクロノの情けない悲鳴が。・・・問題なく、右のポッドにクロノが転送されたみたいだ。信じてはいたものの、俺もちょっと安心したよ。
「「「「おぉーっ!!グレイト!!」」」」
見物客の皆さんも、興奮して大歓声。クロノだけ、取り残されとるがな。
ークロノー
ルッカの突然の強制により、発明の実験体にされた僕だけど、とりあえずは成功したみたいでよかった。僕はポッドから降りて、兄さんとマールの下へと戻ると、兄さんにくっ付いていたマールが、
「・・・やっぱり面白そうね、私もやる!」
と自ら前にへと進み出てきた。まぁ僕がやって成功したんだから、大丈夫だろうとは思うけど。マールって、勇気があるね。そんなマールにルッカが、
「へ?・・・貴女もやるの?・・・というかクロノ、やっぱりこの娘は貴方の連れね?・・・いつの間に、こんな可愛い娘を口説いたのよ!」
驚きつつ、僕を睨み付けてくる。くくく・・・口説いてないし!反論しようとしたけど、マールが笑顔で・・・、
「クロノとは、お祭りで知り合っただけのお友達だよ?それよりも・・・ね、いいでしょエシャルさん、クロノ?ここで待ってて。何処にも行っちゃヤだよ!」
・・・ぐはっ!マールから出た伝家の宝刀『お友達』、・・・分かっていたけども、分かっていたけども!ルッカのザマァな顔がムカツク!
・・・とにかく、マールはやる気満々だ。そんなマールのやる気を見たタバンさんが、
「さぁさぁ、挑戦するのは何とこんなに可愛らしい娘さんだ!ささ、どーぞこちらへ!」
そう言って、左のポッドにへとマールを誘導する。マールは僕と、そして兄さんに笑顔で、
「エヘヘ。じゃ、ちょっと行ってくるね!」
「大丈夫かな?やめるんだったら今のうちだよ、マールちゃん。」
と言ってきたが、すぐ様兄さんがマールのことを心配する。そんな兄さんにニコニコと、
「へっちゃらだよ!全然恐くなんかないもん。」
笑顔でそう言って、左のポッドへ乗った。ポッドへ乗ったことを確認したタバンさんは、
「それでは皆さん!この可愛い娘さんが見事消えましたら、拍手喝采よろしくお願いします。・・・では、スイッチオン!」
「エネルギー充填開始!」
そう言って、ルッカと二人でマシンを操作する。僕の時で成功しているからね、安心して見られるよ。
・・・そう思っていた時、
「何これ?ペンダントが・・・・・・。」
マールのペンダントが光り出し、マシンから変な音が聞こえてくる。僕の時には聞こえなかった音だ!
「えっ?・・・一体、何が?」
ルッカがそう呟いた時、マシンから更に高い重低音が!何かヤバイ・・・!と思った時、
ヴィィィィィィィィィンッ!!
ポッドとポッドの間に歪みが・・・、そして不気味な光を放つ穴が現れた。何なんだあれは・・・!?それよりもマールが・・・!と思った瞬間、マールがその穴に吸い込まれてしまい・・・!そして・・・、
「マールちゃん!?・・・これは何が!一体何が起きて・・・って、・・・ぬぁっ!?」
僕の隣にいた兄さんにも異変が!
マールが穴に吸い込まれた直後、兄さんの体が淡く光り出したのだ!そのことに僕も、ルッカやタバンさんも、そして兄さん自身も驚いている。その驚きの中、僕は気が付いた。兄さんの体が・・・、穴の方へ吸い寄せられている!?
「・・・兄さん!!」
僕の悲鳴に近い叫びを聞いた兄さんは、自分の体が引き寄せられていることに、やっと気が付いた。
「・・・俺も吸い寄せられている・・・だと!」
僕は兄さんを助けようと、手を伸ばしたのだが・・・、
「・・・駄目だクロノ!お前まで吸い込まれ・・・!!」
兄さんの言葉と空を切った僕の手・・・、マールと兄さんは謎の穴に吸い込まれた。穴が消えた瞬間、マシンは正常であろう音に戻り、呆気に取られた僕達だけが残った。
次は・・・。