詰まった時の悪い癖ですが、現行小説は書いている最中なので1作品を除いて打ち切りは無いです。
プロローグ
教室で鉛筆やシャープペンシルの音が響き渡り続ける。
この教室だけでなく、同じ階層のすべての教室で同様のことが起きているのだ。
(これが難しいと噂の振り分け試験か……)
新学年へと昇格するにあたってテストの点数でクラスが決まるという振り分け試験なのである。
この学園は進学校であり、試験校―――学力の低下を嘆いた今の現状を打破する特別なシステムが取り込まれている学校なのだが、それによって点数を取れないと理不尽な扱いを受けることでも有名な学園でもある。
(たしかに難しい……10問に1問解ければいい方かも知れないなあ……)
テストの点数には上限がない……故に単純に枚数をこなし続ければいいだけで空欄を多くし続ければいいのでは?と思われがちであり、実際に多くの生徒も最初はそう思っていたのだが、現実は非常であった。
(数学は25……いや20点かなあ……間違えたらその分減点があるから1問1問しっかり解かないと……)
間違いを多く残したまま次の紙をもらって解いてしまえば、その分間違えた問題を問題の点数分、最終得点から差し引いて計算されるのである。
それゆえに、勘違いした生徒の大半が1年の時の最初のテストにおいてマイナス点を獲得したものが多かった。
以降は、全員そのようなことが起こらないように飛ばさずに解き続けるしか方法はないと早く解けるように特訓したり、知識を詰め込んだりして点数の低下を防ぐ生徒が増えた。
それにより全国の中でもトップクラスの成績をたたき出す生徒が多数在籍する学園として有名にもなっている。
(……やっぱり勉強を疎かにしすぎて解けない……はあ、これはFクラスだなあ……)
問題を解き続けながら諦めているこの少年は―――吉井明久、この物語における主人公であり話の中心となる人物である。
茶色の髪の毛、整っているがバカという印象を与える顔の作り、肉付きはこの年齢層では平均的なものを持ち合わせている。
……ため息をつきながらも次の解答用紙をもらわなければ間違った問題により最大点数から減点される事はないので一応諦めることなく、この解答用紙だけでも終わらせようともう一度最初から見直して―――
二つの倒れる音が教室内で響き渡っていた。
「―――っ!?」
明久が驚いて周囲を見渡すと近くで女子生徒が二人ほど倒れていたのだ。
―――一人は黒い髪の毛を持ち合わせ、バランスのとれた体つきを持ち日本人形のような美しさを持ち合わせている少女、もうひとりは桃色の髪と一部の部分が学園の中でも大きい部類に入っており小動物のような印象を持ち合わせている少女だ。
それぞれ顔色が青ざめていたり赤みがかっていたりして、体調が悪いのは一目瞭然である。
「霧島さんに姫路さん……」
倒れた生徒に対して教室中から一斉に視線が送られる……それはけして心配するような視線ではなく、大きな音を立てて集中を切らした事への怒りの視線がほとんどだった。
―――だが、途中で倒れた生徒が誰なのかわかると今度は歓喜の笑みを浮かべていた。
倒れた少女は二人共学園でも確実に上位に入る点数の持ち主であり、その二人がこのテストという戦場で脱落するのはライバルが減ると同義だ、と多数の生徒が思っているのだ。
「霧島に姫路……途中退出は獲得点数0点として扱われるのだが―――それでいいかね?」
「な……先生!具合が悪くなっただけでそれは―――」
「黙れ吉井!貴様は馬鹿だから学園の規則を覚えていないのだろうから哀れみとして不問とするが今度声を上げれば貴様も無得点扱いにするぞ」
「―――!」
どうせ、無得点でもどのみち最低クラスであるFクラスなのだから関係ないと言い出そうと思ったのだが……周りの視線の厳しさに明久が押し黙る。
というよりも怯んでしまった―――2~3人程度であれば明久も気にはしなかったかもしれないのだが……明久と倒れた生徒および1人の女子生徒を除いて、余計なことをするなという視線や、お前程度がいなくなっても関係ないがお前のせいで集中が切れて点数が低くなったらどうしてくれる。
などといった視線にさらされ続けたのだ……怯むには十分な理由だろう。
「は……い……」
ここで姫路が退出に了承の意を示す……これ以上ここにいて体調を悪化させるのはまずいと思ったのだろう。
テスト終了後に自宅に帰れる……最低限保健室に向かう体力があるかも怪しいので動けるうちに退出しようと考えての決断であった。
―――だが、霧島は返事をしていなかった……誰も気にせず最大のライバルが消えて良かったという感じなのだが……
近くにいた姫路は出て行く足取りでふらつきながらも己自身も辛いだろうに心配なのか霧島に弱々しく呼びかけていた。
―――その間、教師は霧島を助け起こそうとせず返事を待っているだけだった。
「あ、あの……先生……霧島さんは―――」
「姫路、退出するなら早くしろ……俺は霧島から返事をもらうのを待っとるんだ……試験監督をやりながらな」
生徒のことをないがしろにしすぎな発言である……どう見ても大問題なのだが、誰も指摘せずにテストに集中している。
既にこの件を終わったものとして扱い、教師任せにしているのだ。
その教師も不正行為を探すほうがいいという感じなのか……霧島の返事を一応待っているようなのだが、態度を考えれば、構っていられないとも見受けられる。
「っ……」
「え……はい、あ、あの……霧島さんも退出します」
声も出せないほどに苦しいのか霧島は近くに姫路がいたので言伝をたのもうとする。
姫路の言っていることは本当のことであるのだが、生徒の中には巻き添いを望んでそう言っていると考える失礼なものもいた。
「では、早く退出するがいい」
要件は終わったとばかりに早急に監督位置に戻ろうとする先生。
あまりのことに姫路は目を見開き講義しようとするが、体調の悪さが災いし咳き込むだけに留まってしまう。
その場から立とうにも、倒れたままほとんど動けない霧島の事を放っておけないのか視線を先生に向けているのだが、先生は取り合わず試験を受けている生徒にのみ向けている有様だ。
怯んで動けなかった明久は……ようやく勇気が出たのか……行動を起こした。
もはや見てもいられず、文句を言われても困るので静かに席から立ち上がり―――
「眠いので退出します」
先生の前に立ち、それだけを言って姫路と霧島のもとへ音を立てないように駆け寄る。
―――先生は文句を言わず、ただ手に持った紙にレ点のようなものを記しつけて後は試験監督の作業に専念していた。
「姫路さん……辛いようなら背中に乗って……霧島さんを抱えて運ぶから」
「え……よしい、くん?でも―――」
「どうせ馬鹿だから最下位クラスだし開き直ったんだよ……このままにしておけないし」
そう言って、小さな声で「体に触れるけど緊急事態だから」と霧島に言いながら片手で肩から首にかけてを支え、もう片方の手で足を支えて抱きかかえる。
横抱きの状態である……ロマンチックな言い方をすればお姫様抱っこであり、女性にとって憧れのシチュエーションなのだろうが、今は思いっきり緊急事態である。
ほかの先生をよぼうにもなにか文句を言われ、再入室できないと言われてしまえば元も子もないし、ほかの先生がこない可能性もある。
早急に移動させるにはこうするしか方法がなかったのである。
――姫路は霧島に羨望の眼差しを一瞬送ったのだが、誰も気がついておらず、姫路も今はそんな場合ではないと言い聞かせつつ……「し、失礼します」と言いながら明久の背中に乗りかかった。
嫉妬からの行動ではあるのだが、体調が著しくなく動きにくいのも本当であるため、明久の言動に甘えたのである。
「では失礼しました」
一人を背中に、一人を横抱きにした状態で先生に話し、扉の前に来て……
「……」
「――――両手が塞がってるのね?」
先ほどまでの様子を他の生徒とは違う目で見ていた1人の女子生徒が明久が立ち尽くすのを見て近よっていた。
その行動に気が付いたのか明久がばつの悪そうな顔をする。
「……締まらないよね、この状況」
「先生、私も退出いたします……異論は認めませんわ」
退出という単語に反応し、流石にこれ以上の退出者を出したくないのか止めようとした教師が女子生徒と視線を合わせた事により、急に思考が定まらなくなる。
そのまま用紙にレ点を付けて教壇の位置に戻っていた。
「行きましょうか吉井君、反論は認めませんわよ?」
「……ごめん、ありがとう」
扉を緩やかに開けた女子生徒に罪悪感を抱くが……それ以上に今は姫路と霧島が優先なのか明久も止めようとはせず気持ち悪くしないようバランスを取りつつ、保健室へと急いでいた。
優雅に礼をした後で女子生徒も万が一に備えて明久の後を追いかけて走っていた。
「……く」
生徒の中で一人ほくそ笑み、うまくいったという表情をしている者が居たのだが……それは周りの明久への嘲りの笑みの中にうもれてしまっていた。
多分、察せられるでしょうが霧島さんの持ち物の何かに細工した人物がいます。
そして教師の大半がほぼ敵というかなんというか
……これでいいのかこの学校という状態
※メインヒロイン追加