***少しときは遡り……明久が校門にたどり着く前―――
Fクラス……ここは本来であれば最低クラスとして名を馳せ、本来居るべき人物が欠けているクラスである。
総合科目0点の生徒はいないが、それでも全体で見れば最低レベルの点数の持ち主が大半であり、馬鹿の集まりであるという事実に変化はない。
「……吉井はZEROクラス、か(原作でそういうクラスは無かったが、別にいいか)」
どこかに設置していたであろうカメラの映像を見て、明久の手元の紙を見ている男子生徒。
黒髪黒目の一般的な日本人特有の外見であり、ほとんどモブと変化がない外見の男子生徒だ。
「うっしゃ、毒物料理胸だけ娘が消えたのはラッキーだ……後は貧乳暴力娘が消えてりゃ万々歳だったんだが」
「おい、聞こえかけて……いや聞こえてねえなあの様子じゃ」
姫路が教室から見えるグラウンドに建てられていたボロ小屋に入り込むのを見て、このクラスでの不在を喜ぶ別の生徒とそれをなだめる生徒……片や銀髪のオッドアイという日本人離れしている外見は美少年であり、女子生徒の人気もかなり集めている人物だ。
もう片方は金髪で赤目であり西欧風の顔を備えているのに生粋の日本人というわけのわからない経歴を持つ男子生徒だ。
会話から察せられるだろうが、3人は所詮転生者と言われる存在である。
「霧島、姫路、吉井とモブの4人……4人だけなら別に警戒する必要もないか……?」
2人の会話を無視しながら黒髪の少年は試験召喚戦争に向けての戦力分析に入っていた。
美少女ぞろいの文月学園でハーレムを築き上げる(対象外人物あり)ほかの転生者組と違い、彼だけは試験召喚戦争をしたいが為だけにこの世界への転生を選んだ。
観察処分者も狙おうと一時期考えていたようではあるが、それによって親が困るような事態を引き起こしたくはない。
……彼の前世での育児放棄状態の両親と違い、今世では愛情たっぷりで接してくる両親に対して困らせたくないようである。
―――その点だけを見ると、彼は少なくともこの世界に落とされた他の転生者よりはまともな部類だといえよう……他の者は両親を内心で蔑ろにしているからだ。
「油断は大敵だぞ、坊主……前も言った通りあの坊主は世界の特異点的な存在だ……直に戦力が増える」
そうやって声をかけてきたのは少年の友人であり、特典として幼馴染みにして貰った野性味溢れる少年である。
少年というには少々語弊があるのだが、それは置いておくとしよう……ともかくおっさんは禁止、せめて兄貴とよべ。
「……
「ここに呼び寄せられた地点で完全受肉を果たす……あの坊主を守るために世界が努力しすぎた結果でな……そうして既に存在していたと強制認識させられる」
「……まあ、試験召喚戦争ができれば俺はどうでもいい」
いちいち難しい話は面倒くさいとばかりに空と呼んだ少年との会話を打ち切った。
転生したのはいいのだが、実はこの少年……生前はバカの部類であり大学まではギリギリ通えるレベルで高校の勉強は楽勝だとタカをくくっていたのだが、蓋を開けてみれば調整ではなく全力で試験に臨んでFクラスという有様だった。
勉強関係の物覚えが悪く記憶力のなさがものすごく目立っているのだ……ゆえに難しい話を聞きたくないのである。
「さて、ずれてるし戦争はどうなるのかなあ……」
人間関係の大幅崩壊、坂本雄二が別の人間を選んだという事を知り、一年時には明久が交流した生徒が姫路と島田だけ。
だいぶ歪められた関係ではあるのだが、世界とやらは特に問題視していないようである。
―――原作主人公の生存と文月学園の在籍さえクリアしていれば。
空から何度も聞かされた世界の意思とやららしい……ふと、少年がそういえば聞いてなかったと思い、冗談交じりに小声で聞いてみるが。
「なあ、俺が殺そうとすればやっぱ殺しに来るか?光の御子」
「この世界の幼馴染みとしての誼だ……苦しませずに俺が殺しに向かってやる」
冗談であるが故なのか、それほど冷徹ではなかったが……目は真剣そのものであった。
やましいことは何もないので少年は冷や汗はかかずに―――
「そもそも殺しに向かうほど憎んでたりしてねーから」
尚、原作のキャラが殺しに向かう分には強制力は働かないそうである。
教師が入ってきたので話題は終了した……西村でも福原でも高橋でもない教師が……
* * * * *
「……そう、試験召喚戦争が」
「初日に戦うなんて……勝算はあるのでしょうか?」
「さあ?」
ボロボロな小屋で4人の生徒が雑談混じりの自習を行っている。
元々担当教師が皆無な教室ではあるのだが、試験召喚戦争中はどこのクラスでも自習が行われるのであまり関係がない。
そして4人ともまさか教師が焚きつけたとは思ってもいなかった。
尚、この教室での自習は基本的に霧島と姫路が明久に教えるような形となっている……いるのだが。
「……それにしても全然頭に入らないな、あはは……」
「ひ、人によって覚え方は個人差がありますから仕方がないですよ」
「……日本史やそれに付随する科目の覚えがいいからそこを伸ばすという点も考慮すればいい」
明久の物覚えのなさが問題だった……ではなく、美少女3人と教室で4人きり……1人は時折姫路と霧島の交互に聞いているだけで少し離れているが……で教えられているのが勉強を阻害する最大の要素なのだ。
おまけに教えるということになっているので非常に距離が近い。
「世界史だって得意だよ!」
「たしかに去年、
「……記憶にございません」
明久が名前欄に間違えて書き込んだだけであり、この学校にそのような名前の人物は存在していない。
―――今現在まででは、の話ではあるが。
「なるほど……それ故に余の召喚が決まったというわけか……無理矢理ではあるが是非もなし。肉体を得て再び生を謳歌できるのだ、心地よいのう」
突如教室に出現した謎の気配に明久含め、全員がその気配の方向を見る。
そこには2Mを超えるであろう髭面の大男……身長もそうなのだが、それ以上に色々な意味ででかい男が立っていた。
今まで居なかったはずなのに急に出てきた存在に、明久は硬直していたが、硬直する前に3人の少女を自分の後ろに追いやっていた。
ゴーゴンだけは、その存在達をどのようなものか把握しているのか危険ではないと理解して今の状況を多少楽しんでいた。
「なるほどなるほど、僕達はいい人物に引き寄せられたんだね、うんうん」
そして硬直しているうちに気がついたのだが……他にも多数の謎の存在が立っている。
桃色の髪の毛を持つ美少女にしか見えない人物……お調子者なのか教室中をキョロキョロと見渡しながら歩き回っている。
物珍しいものを自身が得ている知識と照らし合わせつつ。
「基点となっている者に近いほど十全に発揮できる状態、か……危機に際せば全力は可能なようだが……今はここをどうにかするのが先か」
白髪で褐色肌の赤い聖骸布を―――割烹着にいつの間にか着替え、工具や掃除用具を取り出した男。
屋根の状況や教室状況を見つつ修理の目処を立てているようだった。
「倒すべき圧制者が多いのに倒しにむかえない……鍛えておくか」
突然スクワットを始めた
2Mを超えた大男ではあるのだが、それよりもまず目立つのは筋肉の塊であった……筋肉以外に形容のしようがない程に筋肉だった。
西村先生が赤子に見える程の体格の筋肉だった……様々な者を睨みつけつつ男はスクワットを続けていた。
「……ギロチン(のようなもの)が日常茶飯事とは」
「……磔で火あぶり(にようなもの)も追加みたいですよ、後私は勉学が苦手も追加のようですが」
王冠を模した帽子を被った白銀ツインテールの少女、金髪で三つ編みお下げの少女がこの学園の知識が何やらおかしいと感じつつも顔を見合わせて考え込んでいた。
以上、髭面を合わせた5つの存在は、明久は奇妙に思いながらも自分とのつながりがあるとうっすらと感じ取っており、特に桃色の髪の美少女(?)は最大適性を持ち合わせている、と。
「……これは~なんとも奇妙ですが髪の色で判断されてるんでしょうか、それとも誰かの奥さんになりたい願望でしょうか……むぅ、頭の耳が消えて人間の耳の位置に……そしてしっぽが消えてるのはまあ、アレでしょうねぇ」
桃色の髪の毛で青い少々過激に見える和服をまとっている女性……自分の本来持つべきモノが無いと思いつつその部分を何度も触っていた。
それと同時に己とつながりがあるだろう少女をジッと見つめ続けて、自身の状態を判断していた。
「…………共通点、どこよ。というかキャラが被ってる奴が居るんだけどぉ」
赤い髪の毛を持つ先ほどの女性と若干似通った雰囲気を持つ女性。
が、極端に睨むようなことはせず、手に持ったマイクをクルクルと回していた……ふりふりな服で胸が残念な点も彼女には特筆するべき事項かも知れない。
また、こちらの女性も本来あるべきものを探しているのか頭とお尻のあたりを見たり触ったりしていた。
「病死ではあるけれど、病弱という訳じゃ無いんだよね……まあ、僕をここに呼び込むために関連付けただけかな?」
緑の髪の毛をした中性的な男子が教室に入り込んだ小鳥と戯れつつ1つの存在に対して視線を送り込んでいた。
以上の3つの存在は姫路には、何故か自分とのつながりがあると感じ取れた者達である……何故なのかはわからないがそう感じ取れてしまったというのだからとしか言い様がない。
「
「…………」
「……なるほど、確かに私と共通項は多いのですね」
黄金の男と静かな男がそこにはいた……両者共に黄金の鎧を纏っており、他の存在より一線を超えた存在感を醸し出している。
黄金の男は早くも己と同等であると認識した男および友を見つめており、見つめられている男は特に何をするまでもなく、呼び出された理由の対象が冷静になるまで待ちの姿勢を見せている。
薄緑の髪の毛をした少女が扇子を開きつつ、霧島を見ていた。
霧島には、何故だかこの3つの存在とのつながりがあると感じ取れていた……こちらも理由は不明ではあるのだが…………
「我らはギリシャ繋がりなだけか」
「…………露骨に落ち込まれたら反応に困るなあ」
筋肉の熱によって変色したのか定かでない鈍色の肌、そしてこの教室にて最大のデカさを誇り、一目で存在を理解できる大男。
そしてもう片方はその男と並んでもなお、劣らぬ覇気を持つ美丈夫……本来であるならこの2つの存在を呼べているのだから贅沢を言うなというのがあるのだが、ゴーゴンにとっては微かな希望を砕かれた感覚である。
(――――ああ、やっぱり
少しだけ寂しい気持ちで居たのであった。
いっぱい登場、何この過剰戦力