異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第105話  リヴァイアサン?

照り付ける太陽と澄み渡る青い空、そしてどこまでも深い紺色の海。

異世界の海も地球同様、無数の命を育み、この星特有の生態系を築いていた。

 

「魚影探知機に反応・・・相変わらずデカいな」

 

漁船が網を海中に落とし、無線で仲間と通信しながら魚影を追いかける。

 

「うーむ・・・お蔭で今回も大漁になりそうだが、最初見た時は腰が抜けると思ったぞ・・・。」

 

漁船から少し離れた所で盛大に水柱が上がる。

 

よく見ると、巨大な背鰭のようなものが海面から突き出しており、うねる様に蛇のような体をしならせて黒い影が海中を泳いでいる。

 

「迂闊に接近するとアレとぶつかって船が転覆しかねんな、まったく、相も変わらず馬鹿げたデカさだよ。」

 

魚影探知機を見ると、異様な大きさの何かのまわりに無数の魚影が集まっており、巨大な何かが大きく体をくねらすと更に魚が集まって来る様だ。

 

海面からでも確認できるほどに巨大な何かが身震いをすると、その周辺が乳白色に濁り始める。

 

漁船に乗船した海洋生物学者が水中カメラを海中に沈めると、そこには蛇のような巨大な魚が、大量に桃色の卵を産卵しており、それに無数の魚影が群がり放精し、その規模は珊瑚の産卵を上まる程であった。

 

また、大量に生み出される卵を狙って他の種類の魚も集まりその海域の海中は混沌とした有様である。

 

「そろそろ網を巻き取るぞ?アレに接触しない様に、慎重にな」

 

巨大な魚影に気を付けつつ、慎重に網を巻き取る漁船たち、引き上げた網にはぎっちりと大量の魚がかかっており、漁船が傾きかけるほどの大漁である。

 

「海の民からアイツは海の恵みの神として崇められているけど、俺たちにとっても海の幸を恵んでくれる神様なんだろうな。」

 

「最初は自衛隊が出動する騒ぎになったけど、気を付けていれば無害と判って、特別天然記念物指定か・・・。」

 

今目の前で巨体をしならせながら泳ぐ巨大魚の姿を眺めながら漁師たちは興味深そうに頷く

 

「全長2㎞か・・・リヴァイアサンっているもんだなぁ・・・。」

 

「こんなのが衛星で確認するだけでも272匹も居るんだとさ、異世界の海っておっかないね。」

 

「深い深い海底から有機物を掻きまわす役目もあるみたいだし、アイツがいなきゃ成り立たない生態系もあるんだろう。」

 

「確認されている中でも一番巨大な奴が3㎞以上あるんだっけ?まったく、奴らがおとなしくて助かったな。」

 

「だが、これ程の巨大生物がいるんだ、人類にとって危険な巨大生物が潜んでいるかもしれないし、注意するべきだろう。」

 

「できればその予想は外れて欲しいもんだがねぇ・・・。」

 

漁船の周りを人影のようなものが泳ぎ回り、海面から上半身を突き出して手を振る。

 

「まぁ、連中が海の中で文明を築けたんだから、大丈夫なんだろうさ」

 

「ウミビトさんたちなら、そこら辺は詳しいんだろうな・・・おーい!おーい!」

 

海面から手を振る人影に漁船の漁師達も手を振る。

異世界の民と海の民が協力して手を取り合って、生きて行く姿は異種族間での争い事が絶えないこの星では一つの奇跡であった。

 

 

 

プレシチオ     通称:蛇頭魚

 

 

和名:リュウグウオウ

 

ウツボの様な頭部とラブカの様な鋭い牙を持つ硬骨魚の一種。

主に動物性プランクトンを捕食し、季節ごとに北上と南下を繰り返す習性を持ち、冬になると脂がのるので美味。

また、非常に長命な種類の魚でもあり、生きている限り成長を続けるので長生きした個体はクジラほどの体格を持つものも存在する。

しかし、その殆どはそれ程成長する前に天敵に捕食されてしまうので、秋刀魚と同じくらいのサイズのものしか見かけない。

 

 

レヴラプレシア   通称:海神蛇

 

 

和名:リュウグウオウ(特異個体)

 

まるで御伽噺のシーサーペントの様な巨体を持つ巨大魚であり、当初はプレシチオとは別種の巨大魚だと思われていたが、遺伝子検査の結果、同種と判明した。

深海に潜み、大量のマリンスノーを餌として海水と共に飲み込むデトリタス食である。普段は深海で体をほどんど動かさず過ごしており、肥大化したヒレを使って海流を捕え、潮に流されながら移動する。

動物性プランクトンの豊富な海域に移動すると、活発に活動し始め、ある程度栄養状態が良い期間が続くと、産卵のためのフェロモンを放出し、雄雌問わず仲間を集める。

十分に仲間が集まったら、その海域一帯が乳白色に染まる程の産卵及び放精を開始する。この時、どさくさに紛れて放精する雄に近づいて産卵する若い雌もいるが、これも力なき個体が子孫を残すための戦術であり、事実、通常個体である小さな異性には見向きもしないので特異個体のリュウグウオウの産卵は、彼らにとってもまたと無いチャンスでもある。

基本的にこの巨大な特異個体は雌がなる事が多く、滅多なことでは雄が特異個体化することは無い。現在確認されている中で特異個体の全てが推定年齢1000歳以上とされている。

 

 

 

 

 

 




うーん、ちょっと短いかもですね・・・。
後で追加するかもしれませんが、そのままかもしれません。

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