異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第149話  鬼の咎と人の咎

大森林の向こう側から突如現れ、大陸中央部に勢力を伸ばしている国ニーポニス、カクーシャ帝国は獲得予定の領土を新参者ニーポニスに奪われ、憤っていた。

更に不快な事にニーポニスはその身に一切魔力を持たない亜人で構成されており、劣等民族がカクーシャ帝国の領域を犯した事が許せず、人造の魔物や傭兵国を嗾けニーポニスと国交を持つ国に破壊工作を仕掛けた。

 

しかし、魔物も傭兵国もニーポニスに軽くあしらわれる様に撃破され、魔物を作り出した魔術師の村はニーポニスに亡命する事態に陥ってしまう。

いよいよもって面子をつぶされたカクーシャ帝国は、魔術師亡命の件を口実にニーポニスの占拠するキョーシャ傭兵国首都へと軍を派兵する。

 

だが、派兵した部隊が消息を絶ち、伝令の兵も訪れず、少数の調査隊をキョーシャ傭兵国首都へと向かわせるが、彼らが見たものは破壊の痕跡と死臭の漂う戦場跡地であった。

 

『何と言う事だ、もしやニーポニスを相手に全滅したというのか?』

 

『しかし、何だこの痕跡は、地面が焼け焦げ穴が開いている。』

 

『恐ろしい威力の魔法が放たれたのだろうか?だが、奴らは魔力無しの劣等民族だった筈。』

 

『兎に角、奴らに見つかる前に本国へ戻らなければ、何としても報告せねばならん。』

 

ニーポニス討族隊が全滅した可能性がある事を報告するために調査隊は、キョーシャ傭兵国を後にしようとするが、一瞬太陽を横切る影が現れ、調査隊の面々は唖然とした表情で空を見上げた。

 

『あ・・・あれは一体なんだ?』

 

『鳥か?しかし、この距離であの大きさは・・・。』

 

 

 

 

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カクーシャ帝国との戦争が起こるよりも前、カクーシャ帝国首都にて・・・。

 

 

「これがカクーシャ帝国の正体か、何ともえげつない。」

 

「この国に敗れた者達の末路とは、悲惨なものだな。」

 

「魔石がこの星の住民にとって、必要不可欠な物であるのは理解できる。だが、しかしこれは・・・・。」

 

リクビトの商人に化けた自衛官たちは、カクーシャ帝国の内情を探っていた。

だが、カクーシャ帝国首都の工業地区でまるで雑貨でも扱うかのように、リクビトやリクビト以外の亜人の人体が部位別にバラされて市場で取引されており、それが各工房で素材として扱われているのであった。

 

「魔道具の材料に魔物の皮や骨などが使われている事は、何処の国も当たり前に行っている事だ、だがしかし、人体を魔道具の素材として堂々と使用する国は、カクーシャ帝国以外見た事がない。」

 

「リクビトの鉱物器官魔石を利用するケースは、珍しくないが、その殆どが親族の遺品としての魔石だ。倒した敵兵の魔石を戦利品として使うケースもそれなりにあるが人体そのものとなると・・・・。」

 

「それに人食い族を恐れる割に、軍事貴族の一部は彼らに近づこうと敵兵の血肉を食らい人食い族の真似事すら行う始末。」

 

「1000年前の大厄災を自らの手で再現するつもりなのか、奴らは?」

 

隠し持ったカメラで人体取引市場の様子を撮影し、データをケーマニス王国自衛隊駐屯地へと送信する。

敵地調査の為に派遣された自衛隊の拠点は、治安の悪いスラム街に置かれており、元々廃墟に住んでいた子供達の住処を改造して、巧妙にカモフラージュされていた。

 

「本物の人食い族は、対話が可能だってのに、カクーシャ帝国の奴らは問答無用で文字通り食らいついてくるか、どっちが化け物なのやら。」

 

『イクウビトの兵士様、それは一体何の魔道具なのですか?』

 

『ああ、これはパソコンと言う機械で魔道具じゃないんだよ。』

 

『遠くの人とやり取りをしたり、報告書をまとめたり、まぁ色々できる便利な道具と言ったところだな。』

 

『良く分からないけど凄そうです。』

 

『そうだ、今日の分の家賃と美味しい食べ物だ、食ってみな。』

 

『有難う御座います兵士様。』

 

銀貨とチョコレートを渡されて喜ぶ孤児たち、それを横目に自衛官は、カクーシャ帝国の市場の様子を思い出しながら眉間にしわを寄せた。

 

(スラム街の人間同士で殺し合い、その遺体の一部はこの国の市場に流され、人体を素材とした魔道具や兵器に使用される・・・か。)

 

(魔物の皮や外殻を魔道具に加工する事はどの国も行っている事だ、しかしこの国の所業は度を越している。)

 

(カクーシャ帝国は明らかに異常だ、正気とは思えん。もし大陸中央部を掌握しようとしているカクーシャ帝国を放置すれば甚大な被害が発生してしまう!)

 

(カクーシャ帝国が我が国に仕掛けてくるのも時間の問題だろうな、引き続き監視を続けなくては。だが、そうだな。)

 

『?兵士様、どうしたのですか?』

 

『いや、あまりに美味しそうに食べるのでね。匿ってくれてありがとうね。』

 

(スラム街の孤児たちがあの市場に流されない様に目を光らせたいと言うのもあるか。)

 

逃亡奴隷とその子孫や没落貴族、流れのならず者などで構成されたスラム街は、カクーシャ帝国のリクビトの魔石の安定した供給源として機能しており、自衛隊が拠点を構えてからも知り合った協力者が人間狩りに遭い、消息不明になる事は日常茶飯事であった。

特に犠牲者は力のない子供や女性などが多く、まさにカクーシャ帝国の闇の一部であった。

 

(恐らくこれも氷山の一角なんだろう、カクーシャ帝国め、こんな国が世界征服を企んでいるとは・・・。)

 

カクーシャ帝国の内情を調査するために派遣された自衛隊は、それからも情報をケーマニス駐屯地へ送信し続けた。

 

 

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そして現在、潜入捜査部隊の送信した人体取引の証拠写真や、亡命した魔術師の証言などをまとめたビラを輸送機に詰め込み、離陸の準備に入っていた。

 

 

「人食い族と組んで世界を滅ぼす蛮族・・・・か。」

 

「大陸沿岸部でも魔力無しは見下されたり差別の対象となっていたが、大陸中央部はより顕著だ。」

 

「カクーシャ帝国やヒシャイン公国が流した噂が一部の国に信じられてしまうと言うのは、我々が魔力を持たない地球人と言う要素も大きいのだろう。」

 

「人食い族の齎した災禍と爪痕に怯える者も多いが、現時点での最大の脅威を正しく認識すれば少なくともあの帝国の信用も地の底まで落ち、奴らの情報戦の勢いを殺す事が出来るはずだ。」

 

C-130 ハーキュリーズのプロペラが回転をはじめ、惑星アルクスの住民が今まで耳にする事のなかった羽音が、響き渡る。

 

『あれは一体何なんだ!?』

 

『ニーポニスが操る巨鳥が居るという噂を聞いていたが、まさかあれ程巨大とは!』

 

異形の巨鳥は、黒い砂利を固めた様な平らな道を勢いよく走りだし、より強く音が響き渡り、ついにその巨体は浮き上がった。

 

『と・・・飛んだ!あの大きさで!』

 

『ニーポニスには驚かされてばかりだから、もはや何事にも動じないと思っていたが、こればかりは度肝を抜かれたぞ。』

 

 

大量のビラを積み込んだC-130 ハーキュリーズは、異星の空を舞った。

 

 

 

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カクーシャ帝国に近いとある都市国家にて・・・・。

 

 

『人食い族とニーポニスがねぇ・・・。』

 

『敵対したり気に入らない国を貶めて戦争の口実にする何時ものカクーシャ帝国の常套手段じゃないか?』

 

『だが、よりにもよって人食い族だぞ?いつになく過激な物言いじゃないか。』

 

『しかし、大陸の端っこに現れた魔力がない亜人の国なんだろ?ニーポニスっていうのは。』

 

『魔力無しの亜人がここまで大きな顔をして影響力を広めているって言うのは不自然なものだよな、確かに強大な魔力を持った未知の勢力が背後に居る可能性は高いと思うが・・・・。』

 

『だが、世界を滅ぼしかけた人食い族が他種族を使役するほどの理性があると思うのか?無力な劣等民族なんぞ食料としか思っていないだろう?』

 

『まぁ、それもそうだな。どの道カクーシャ帝国の流した噂って言うのは信憑性が薄いものだ・・・。』

 

『ん?・・・・・なんだこの音は?』

 

 

時折喧騒が響く賑やかな市場が一瞬静まり、都市国家の住民たちは聞きなれない音に戸惑い周囲を見渡すと、違和感の正体が空にある事に気づく。

 

『あれは・・・・一体なんだ?』

 

『こ・・・こっちに来る!』

 

『ひっ!に・・・に・・・逃げろおぉ!!』

 

何とも形容しがたい異様な物体が太陽光を反射しながら、耳をつんざく音を鳴り響かせ都市国家上空を通過し何かをバラまきながら雲の中に消えていった。

 

悲鳴を上げながら逃げ惑い、将棋倒しになって怪我を負う者も居たが、暫くして空からひらひらと紙の様な物体が大量に落ちてきて、それを拾い上げるものが現れ始めた。

 

『な・・なんだこれは!?』

 

『なんとおぞましい!』

 

巨大な翼を持つ異様な物体が拡散した紙の様な物にはカクーシャ帝国の人体取引所の絵が写実的に描かれており、まさにその場面を切り取ったかのような精巧な絵で表現されていた。

複数の言語で書かれている事に驚くが、より見識深い者は、それよりもここまで写実的な絵を、大量に描かせ木の葉のように空から撒くという行為そのものに驚愕するのであった。

 

『河川の汚染に使った怪植物はカクーシャ帝国の仕業だったのか。』

 

『しかし、この白地の赤い丸はニーポニスの物・・・あの巨鳥はニーポニスが使役しているというのか?』

 

『それに、どんな絵師にこんな絵を描かせたのか、そもそもこの紙は獣皮紙ではないぞ?一体何で出来ている?』

 

 

都市国家の混乱は深夜にまで及んだ。

唯一つ言えることは、ニーポニスはカクーシャ帝国どころか、カクーシャ帝国を含むすべての大陸中央部の国が束になっても勝ち目のない圧倒的な国力を持つ国だという事を本能的に認識したのであった。

 

 

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とあるカクーシャ帝国の属国にて・・・・。

 

『今頃、ニポポ族の占領するキョーシャ傭兵国も落ちている所だろうな。』

 

『いや、曲がりなりにもあのキョーシャを落とした国なのだ、案外粘るかもしれん。』

 

『しかし魔力無しがここまで勢力を伸ばしてくるとはな、魔法が使えないのにここまでやるとなると、魔法が使えない分ほかの分野に特化しているのかもしれん。』

 

『剣術に優れているとかか?確かにそれは厄介かもしれんが、それでも戦局を左右するほどの物でもないだろう?やはり最後に決着をつけるのが魔法だ。』

 

『やはり人食い族と手を組んでいるという情報は本当なのだろうか?今回の蛮族の討伐は多少手こずりそうだ。』

 

『カクーシャ帝国に我らも徴兵させられているんだ、あまりに大きすぎる被害は看過できんぞ。』

 

『大体最近のカクーシャは・・・?・・・音?何か聞こえないか?』

 

徴兵を逃れた若者たちは、聞きなれない音に怪訝な表情をしながら酒場の扉を開き音の発生源を探した。

そして、彼らが見たものは鈍く太陽光を反射する異形の物体であった。

化物の雄叫びと表現するしかない、不気味な音を響かせて、街の住民たちを恐怖に落とす。

 

城壁の上で見張りについていた極数名の魔術師は、果敢にも謎の飛行物体に魔法を放ち、撃墜しようとするが、異形の巨鳥の速さは尋常ではなく、魔法が届く前に空の彼方へと消えていってしまった。

 

『あ・・・あれは一体何だったんだ?』

 

『む!何か落ちてくる!?』

 

『っ!これはっ!!』

 

カクーシャ帝国の属国であるこの国の住民は、うすうす人間の魔石を加工する工房がそれなりの規模で存在するという事に気づいていた。

しかし、魔石どころか人間の体そのものを魔道具の素材として扱う事は一部の貴族にしか知らされておらず、このあまりの所業に言葉を失うものも多かった。

 

(何という事だ、まさか打ち破った国の住民を徹底的に殺戮し尽くし魔道具の素材にまでしてしまうとは・・・。)

 

(それに何だこれは?属国から徴兵した兵士を使い潰した挙句、魔石を引き抜き遺族に返却もせず、無断で魔道具に使用だと?)

 

『・・・・徴兵された兵の遺品魔石は遺族へ返却される義務をカクーシャ帝国が負っていた筈だが、これは明確な協定違反だ。』

 

『幾ら宗主国と言えど、これではあまりにも・・・・。』

 

『少なくともニポポ族はあの巨鳥を操る国、カクーシャ帝国は、我々は本当に奴らに勝てるのか?』

 

 

 

カクーシャ帝国の属国の幾つかは、ニーポニスの偽装工作だとビラの回収を住民に禁止し、あくまでカクーシャ側であるという立場を貫いたが、多くの属国はカクーシャ帝国のやり方に疑問を持ち、カクーシャ帝国影響圏の団結力は崩れつつあった。

 

 

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そして、カクーシャ帝国首都上空にて・・・・。

 

 

 

「こいつで、最後だな。」

 

「カクーシャ帝国には警告文と、ちょっとしたサプライズを見せてやろうか。」

 

「距離と、ばらまく順番を間違えるなよ?」

 

「分かっている、針路を維持しろ。」

 

C-130 ハーキュリーズは、カクーシャ帝国首都のある峡谷へと侵入コースを維持し、高度を下げていった。

 

 

カクーシャ帝国は国土の大部分が入り組んだ峡谷で囲まれており、僅かな平地が穀倉地帯となっている。

峡谷に広がる天然洞窟を利用した巨大かつ強固な城塞都市は、甲獣の襲撃すら跳ね返す防御力を誇り、大陸中央部へとその名を轟かすカクーシャ帝国の象徴となっていた。

 

V字峡谷から挟むように矢や弩砲を放つための陣地が設けられており、甲獣の外殻をその物量で粉砕する攻撃力も備えている。

 

『ふあぁー・・・あ・・・。』

 

『おい、居眠りするなよ?』

 

『そうは言っても、ここを襲撃する様な蛮族は此処暫く現れていないし、ニポポ族の討伐には行けなかったし暇で仕方ないんだよ。』

 

『まぁ蛮族の討伐に参加したかった気持ちは分かるが、気が緩み過ぎだぞ?これも重要な任務であることを忘れるな。』

 

『済まないな、あーあー、はぐれ甲獣でも現れない物か・・・うん?』

 

『なんだ?何か聞こえる?』

 

日光を鈍く反射する巨大な何かがカクーシャ帝国首都の正門めがけて轟音を響かせながら飛んでくるのが見えた。

 

『な・・・な・・・な・・・・・・』

 

『ば・・・化け物!巨大な怪鳥だ!!』

 

不気味なほどゆっくりに感じるが、それは巨体が故にそう錯覚するのであって、速度自体は相当な物だと熟練の兵士は直感で判断した。

 

『奴が何かは分からなんが撃ち落せ!絶対に此処を守り通すのだ!』

 

『来るぞ!!』

 

次の瞬間、巨鳥の体が炎に包まれた。

いや、正確に言うと腹部から無数の火の玉を放ちながら突進を続けている。

 

『火炎弾!?伏せろ!!』

 

ブオオオオオオオオオオン!!

 

巨鳥が放った火炎弾は想像していたよりも早く燃え尽き、地上を焼き払う事は無かったが、警備についていた兵士たちを驚愕させ怯ませるのには十分であった。

 

『通り抜けられた!』

 

『鐘をならせ!緊急事態!敵襲!敵襲!』

 

『むっ、白地に赤い丸だと?ま・・・まさか、あれは・・・!!』

 

カクーシャ帝国首都は蜂の巣をつついたような騒ぎになっていた。

地上部分の街は、異形の巨鳥が火を噴きながら飛来した事で街の住民は逃げ惑い、混乱した兵士は街中で弓矢を放ち、それが流れ矢となって住民を襲い、怒号と悲鳴が更なる混乱を齎した。

 

『ぎゃ!』

 

『いてぇ痛てぇよぉ!どこ狙ってやがる!』

 

『奴を撃ち落とせ!いや、こっち矢を撃つな!やめろぉ!』

 

『魔法が全然届いていない、悠々と飛びやがって!』

 

防壁に点在する監視塔の頂上からは魔術兵が必死に魔法を巨鳥に向けて放っているがあまりにも速すぎて命中せず、そもそも射程も足りていなかった。

 

『畜生!なんて速さだ!』

 

『どれだけ巨体なのか!距離感が狂う。』

 

『眩暈が、くっ魔力を使いすぎたか!』

 

『ぐぬぅっ!何たる屈辱!』

 

天然洞窟を利用した地下部分は、巨鳥を直接目視する事は無かったが、その轟音は地下にも響いていた。

 

『な、何だよこの音は!』

 

『まさか敵襲?このカクーシャ帝国に?』

 

『甲獣でも現れたんじゃないだろうな?』

 

『誰か上の様子を見に行けよ、あ?俺は遠慮しておくよ。』

 

 

端材などで作られたボロ屋が並ぶスラム街では住民たちが唖然とした表情で立ち尽くしていた。

無防備に立ち止まっていれば即座に盗みや暴行を加えられるスラム街だが、この時ばかりは住民は空に目を奪われていた。

 

『ひーーー!!』

 

『イクウビトの兵士さま、大変です!怪物が空を!』

 

『大丈夫だ、あれは俺たちの仲間だよ。』

 

『仲間?あの鳥はイクウビトが飼っているのですか?』

 

『あれは生き物じゃないんだが、まぁあれに俺たちの仲間が乗っているのさ。』

 

『あの、食べたりしないですか?』

 

『食べないよ。』

 

(まさか、フレアを焚くとは、まぁインパクトはあっただろうな。)

 

(・・・来たな、中々良く出来ているじゃないか。)

 

C-130 ハーキュリーズがばら撒いたビラが風に乗り、潜入捜査部隊の拠点近くにも舞い落ちてくる。

 

『ニーポニス討伐隊、全滅。』

 

『ニーポニス軍の圧倒的な火力。』

 

『カクーシャ帝国とニーポニスの国力差。』

 

『ニーポニス首都トーキョーの紹介。』

 

(上の連中、気合い入れて作ったな?これ。)

 

スラム街の協力者である子供たちが興味深そうに印刷されたビラを眺めている。

自衛官は、人体取引所などのグロテスクな画像の物は見せない様に隠し、東京の街並みなどが印刷されたものなどを見せていた。

 

『凄いです!お城がいっぱいあります!行ってみたいです!』

 

『お城じゃないんだけど、まぁ大陸中央部の情勢が落ち着いたらケーマニス王国の開発都市に連れて行ってあげようか。』

 

『これは鎧虫ですか?色んなのが居ます!』

 

(拠点の外は阿鼻叫喚なのに此処だけ平和なもんだな。)

 

(これも慣れってもんか、さてどれだけ効果があったのやら。)

 

潜入捜査部隊は空の彼方へと消えて行く仲間たちを見送りながら、伝単の効力を図る為、調査を続けるのであった。

 

 

 

 

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カクーシャ帝国王城にて・・・。

 

 

『なんたる事か!!!』

 

『おのれニポポ族め!』

 

『・・・・まさか、あの様な巨鳥を使役するとはな。』

 

『少々見くびり過ぎたか、まさかこうも堂々とカクーシャ帝国に楯突くとは。』

 

目をつぶっていた皇帝がゆっくりと目を開き、獰猛な笑みを浮かべる。

 

『面白いでは無いか、魔力無しの蛮族と思っていたが少なくとも媚び諂うだけの劣等種では無いという事か。』

 

『皇帝陛下!?』

 

『いいだろうニーポニス、貴様らを敵と認めよう、我らが滅ぼすべき敵、それが貴様らだ!!』

 

『兵を集めよ!魔術師もだ!全力であの巨鳥を撃ち落とす手段を模索するのだ!!』

 

『は・・・ははっ!』

 

カクーシャ帝国王城は慌ただしくなる。

潤沢な資金を投入して、人食い族から剥ぎ取った萌葱色の魔石を利用した対・ニーポニス用の決戦魔導兵器の開発を急がせた。

 

(人食い族の魔石は厄災の象徴たる甲獣の外殻すら容易く破壊する魔導兵器となる。)

 

(大陸中を滅ぼしかけた力、その一端を身をもって味わうが良い!)

 

皇帝は、ニーポニスから受けた屈辱に怒りを燃やすが、同時にカクーシャ帝国に正面から対抗する勢力に喜びを見出していた。

 

(あれだけの巨鳥を操るのだ、あっさりと崩れるなよ?)

 

カクーシャ帝国は、全力でニーポニスを叩き潰す事を決定し、部隊を再編するが、異形の巨鳥、C-130 ハーキュリーズがばら撒いたビラがカクーシャ帝国の足並みを乱し、早くもその効果を発揮し始めていた。

 

特に、人食い族に近づく為の真似事や、人体取引行為は近隣諸国を大きく警戒させ、自然とカクーシャ帝国包囲網を形成しつつあった。

 

『人食い族を超える人類の敵、カクーシャ帝国!』

 

『新たな厄災、カクーシャ帝国!』

 

『人でなし国家、カクーシャ帝国!』

 

何時の間にか人食い族と手を組むニーポニスと言う噂は、殆ど聞かなくなり、人食い族に変わる人類の敵としてカクーシャ帝国は認識されるのであった。




今回は此処まで。

ヒシャイン公国の反応は別の話です。

成るべくテンポを維持したいですが、中々体力も続かずプロットを追いかけるのが大変です。

ね・・・眠気MAX!!後で編集するかもです。

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