日本ゴルグ自治区から少し離れた港町、かつてゴルグが収める町だったが、ゴルグが陥落した事で、日本が統治する事になった。
大型船が乗りつけられるように拡張工事の最中である港町は、未だかつて無い程の繁栄をしていた。
「ほぉーーっ、ヘンテコな魚が沢山並んでいるぞ!」
日本と大陸を結ぶ交通の要となりつつあるこの港町は、休暇中の自衛官が見物しながら散財する事が多く、市場も賑わいを増していた。
「烏賊なのか蛸なのか微妙な生き物が壺の中を蠢いているぜ?味はどうなんだろうな?」
「いらっさゃいませ、何をお求めでしょうか?」
「この頭がまん丸くて白い蛸っぽい奴、どうやって食べるんですか?」
「あー・・・これは、〆た後、一晩塩に打ち込んでおいて、食べる時に水洗いをしっかりやった後、茹でてそのまま食べるんですぜ。」
「へぇ、美味そうだな、じゃ、それを1匹・・・・うん?」
異世界固有種と思われる魚介類に並んで、見覚えのある魚が葉っぱを利用した皿に山積みになっているのを見つける。
「赤目河豚と草河豚じゃないか?へぇ、こんなのもここら辺の海域でとれるのか!」
「あの・・・旦那、これは毒魚ですぜ?最近潮の流れが変わったのか、見た事も無い魚が釣れるようになりましてね。」
「見た事も無い魚?」
「へいへい、つつくと膨らんだり、ぎょっぎょっと、変な鳴き声を上げるから、珍しがって食べた奴らが居まして・・・・。」
「河豚を食べる!?・・・あの、その人たちはどうなったのですか?」
「暫くすると青い顔をして、口から泡を吐いたと思ったら、そのまま土色になって死んじまったよ、だから最近は毒矢の材料として使われるようになっとりますね。」
「何とも痛ましい事故ですね、日本ではその魚を食べてしまった場合の対処法がある程度確立されてはいますが、死亡率はやはり高いですね。」
「ニーポニアは、この毒魚の毒も対処済みという事ですか、やはりと言うか、流石は大陸に名を轟かせるだけありますな。」
「ちなみに、この河豚だけど、日本では毒の部位だけ取り除いて食べる方法もあるんだよ。」
「毒魚を食べる方法!?そんなのもあるんですかい!?」
魚屋の店主は信じられない事を聞いたと言う感じで、目を大きく見開く。
「私は、やり方を知っている訳ではないけど、専門の料理店が、河豚の毒を回らない様に毒の臓器を切り取って食べられるようにしているってさ。」
「ニーポニアは何故そこまでして、毒魚を食べようとしたんですかい?」
「はははっ、我々は食い意地を張っていますからね、」
「食い意地だけで毒魚に手をだすなんて、信じられませんな」
「最近ゴルグに進出した料理屋でフグ料理でも頼もうかね、店主さん、さっきの白い蛸1匹と草河豚を3匹くださいな。」
「は・・・はぁ・・・。」
自衛隊員が去った後、魚屋の店主は、茫然とした顔で自衛隊員の消えた城塞都市ゴルグに続く道を見続けた。
「ニーポニアは・・・異世界の国は、食い意地だけで毒魚すら調理してしまうとは・・・・。」
レディカ・ポロクチオ 通称:赤毒玉魚
和名 アカメフグ
日本では、毒魚として認識が広い赤い目を持つ河豚の一種。神経毒のテトロドトキシンを含み、食中毒で命を落とす者が後を絶たない。
元々地球原産の魚だが、異世界へ転移する事で、惑星アルクスの海に生息域を広げ、生態系汚染を引き起こしている。
また、その特徴的な姿から、好奇心で口にする異世界人が多く、中毒死が多数発生している。
プクク・ポロクチオ 通称:緑毒玉魚
和名 クサフグ
日本では食用として広く知られている、毒魚で、その身には神経毒のテトロドトキシンが含まれる。
日本の転移に巻き込まれる形で、異世界にもその生息域を広げ、大陸沿岸部で食中毒の被害が発生している。
適切な処置を施していないで、食すと非常に危険、一方、ウミビトを初めとする海の民はテトロドトキシンに強い耐性を持つことが確認されている。
耐性もさることながら、肺機能が低下しても高い皮膚呼吸による酸素供給で生存性は地球人や陸生型アルクシアンよりも高いが、
それでも、摂取は危険で、海の国で法規制が検討されている。