異空人/イクウビト   作:蟹アンテナ

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第84話   拡散される魔素と魔力不足

惑星アルクス・・・異次元の宇宙に浮かぶ地球型惑星。

この次元特有の物質、魔素を構成物質にしつつも、地球に酷似した環境で知的生命体も発生し、文明を発達させているが、とある文明の引き起こした天災に等しい戦災により大陸の広範囲の魔力が失われていた。

かつて、広大な平原に青々とした草木が生い茂っていたが、干し草の様に萎れた草や葉の少ない痩せた樹木が多く、色の濃い植物は少ない物となっていた。

そんな時、別次元から突如出現した異星人の国、日本によって、ひび割れた黄昏の大地に変化が訪れる・・・。

 

「ここ最近雑草が増えて来たな・・・。」

 

「まったくだ、抜いても抜いても生えてきやがる。」

 

「先の発電所事故の件もある、魔石を使用した機器の近くの雑草の処理は念入りにやらなきゃならん。」

 

「ったく、荒野なら荒野らしく干乾びていろってんだ・・・しつこい雑草め・・・。」

 

「でも日本から持ち込んだ作物は、普通に育つんだよな、土の質自体は言うほど悪いものでは無いが、この土地の植物には合わないという事なんだろうか。」

 

「土自体は悪くないのか、しかし元々生えている植物が育たないと言うのは妙だな・・・いや、まてよ?」

 

「どうした?」

 

「雑草が生え始めた時期と、発電所の事故が起きた時期って被らないか?」

 

「あ・・・・・。」

 

「一応調査する必要がありそうだな・・・。」

 

日本ゴルグ自治区の、各所からの報告があり、魔石の粒子が拡散された付近の調査が始まり、その結果、動植物の活性化が認められた。

 

日本ゴルグ動植物研究所にて、魔石の粉末を摂取させた生物が活性化し、特定条件で急速に環境に適応する変化が確認されていたので、魔石粒子の拡散は重要な問題として日本ゴルグ自治区は動き出した。

 

この大陸は、現在は黄昏の大地・荒野の地等と呼ばれているが、この惑星の名称であり、大陸の名前でもあるアルクスと言う本来の意味は紺碧の大地・青き世界である。

伝承では、元々この大陸は魔石由来の青白く輝く草花が咲き乱れ、生命の息吹に包まれた土地とされていた。

何らかの影響で環境が激変し、魔素が大地から失われ、この星の生物にとって水や空気と等しく必須な元素である魔素が枯渇した事により、生命活動を縮小せざるを得なくなってしまったのではないかと、分析されている。

 

「元々の環境に戻ると言うのならば、魔素をばら撒いて荒れ果てた大地を本来の自然豊かな姿に復活させた方が良いんじゃないか?」

 

確かに、そう言う意見もあった、しかし、伝承の1000年前に起きたとされる大戦で、魔素が枯渇した環境下で細々と営まれていた生態系に、急激な変化を齎すのは危険を伴う物である。

もし、発電所を破壊した突然変異体の様な生物が溢れかえってしまったら、流石の日本も大陸の開発に支障をきたし、現地の文明を滅ぼしかねない危険性を孕んでいる。

 

「既に拡散してしまった魔石の粒子は回収しようが無い、これはある程度諦めるべきだろうが、これ以上の拡散は防がなくてはならない。」

 

「現時点では悪影響らしき悪影響は起きていないな、ただ、農民がこの土地特有の作物の育ちが良いと喜んでいる様だ、閉鎖環境下での実験で、バイオプラントに応用できないか研究するべきだろう」

 

「現地のリクビトの健康状態が良好になったと言う情報を確認、新陳代謝の活性化と体内の鉱物器官の肥大化が確認された、魔術師クラスに成長したケースもある様だ。」

 

「栄養状態が悪かった筈の農民が、急に血色がよくなり、健康が改善されたケースを確認、ただし、魔素以外の栄養素は依然として不足しているので、引き続き養成が必要。」

 

 

日本ゴルグ自治区が懸念していた様な悪影響は無く、逆に多くの恩恵を齎した。

元々魔石を必要としない日本人には、全く影響は無かったが、赤茶色にヒビの割れた大地は次第に青々とした草花に覆われ始め、濁っていた川も魔素の供給により復活した微生物の働きか透明さを増していた。

これが、かつてアルクス[紺碧の大地]と言われていた、荒野の地の本来の姿の片鱗であった。

 

そして、アルクシアン[アルクス人]の持つ生物本来の性質により、魔素を求めて無意識にゴルグに向かう旅人や商人も増え、結果的に日本ゴルグ自治区の繁栄をもたらしたのであった。

 

 

 

 

 

 

 


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