Aqourも可愛いですが、μ's派な私です。
とある学校の、とある階の、豪華な部屋にて。
「と、いうわけで、あなたからも言ってほしいのよ。無理にとは言わないんだけど、彼がいた方が学校と彼、両方が得するのよ?」
会話している片方は大人の女性。椅子に身体を預け、言い聞かせるように言葉を発する。
「無理です!彼はまだその段階まで来ていません!負担がかかりすぎる!」
もう1人は制服を着た女子生徒。余裕そうな女性とは打って変わって、切羽詰まったような、そんな印象を受ける声質で女性に話す。
「それでもね、現在務まるのは彼しかしないのよ。他の男子高校生なら色々マズいと思うけど、あの子なら問題ないでしょ?」
「大有りです!」
「そうは言うけどね、あなたもここは無くなってほしくないでしょう?」
「彼とこの学校は天秤にかけられません」
「…変わったわね。あなたも」
もちろん、いい意味で。目の前の女子生徒がこうも断言するということは、余程彼に愛着があるのだろう。だからこそ、今の議論にまで発展している。困った顔で女性はため息をひとつ吐く。
「とにかく、反対です。彼ではそれは出来ません」
「そうかしら?私は逆にぴったりだと思うけど?」
1人でこのアイデアを思いついた時は、心の中で狂喜乱舞したものだ。後で考え直すとかなり恥ずかしいが。が、自分の考えにも穴があることは知っている。
最大の問題点は、メリットが偏ること。ギブアンドテイクとも、win-winとも言えないような、そんな取り引きモドキ。反論するのもまあ分からなくもない。しかし、そんな暴論を唱えてしまうほどに今は切迫しているのである。過大評価ではないが、彼が最後の頼みの綱といっても過言ではない。
「不可能です。仮にこれを承諾しても、彼はもう少し慣れる時間が必要になります」
「…そうね。まずはこのことを彼に話して、2人で相談してちょうだい。その結果次第で、こちら側も対応の仕方が変わってきますから」
「了解しました。失礼しました」
最後の方は消え入るような声だった。それを残して女子生徒は退室した。
「困ったものね…気に入ってくれるのは何よりだけど、過保護過なのも考えものだわ…」
独り言が増えたのも、こんな状況に自分が置かれているからだろうか?
◆◆◆◆◆
絢瀬絵里は苦悩していた。先程の一件で、自分の思考が一気に傾き始める。
学校は無くしたくない。だけど、彼に余計な負荷をかけたくもない。
どちらか一方を捨て、一方を取るとしたら?前者なら学校という存在と名誉を手にできる。後者ならば、彼という存在を手にできる。これが最大の悩みの種である。こんなに悩むのならいっそ…という物騒な考えすらも生まれ始める。
「疲れてるのね…わたし。流石に詰め込み過ぎたかしら?」
こういう時だからこそ、自然と足が速くなる。そして、自分の家の玄関を開け、リビングに入れば…
「お帰りなさい。今日は随分遅かったですね」
彼はいつも通り、微笑んで迎えてくれた。
プロローグなので短めに。主人公と絵里の会話は次回からになります